Walliserops tridens & Acastoides zguilmensis

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一体この謎のフォークにどんな機能があったのでしょうか?
戦いの武器?、一種のセックスアピール?
いずれも想像の域を出ませんが、興味が尽きません。

こちらは、Walliserops tridens (ワリセロプス・トリデンス) & Acastoides zguilmensis (アカストイデス・ジグイメンシス) です。このうち、特にワリセロプスは見ての通り、あまりに奇妙な頭部先端のフォークが目立ち、見た目がド派手な為、モロッコ三葉虫の中でもとりわけ人気が高い種です。

さて、このワリセロプスには複数種がいて、
✔︎フォークが長いタイプ:
 Walliserops trifurcatus
✔︎フォークが短いタイプ:
 Walliserops tridens
 Walliserops hammi
 Walliserops lindoei
と大まかに分けられます。

長いタイプの唯一の種、ワリセロプス・トリフルカトゥス (Walliserops trifurcatus) は実に奇天烈な見た目の種で、『あんた一体何者なんだ?』とツッコミたくなります。フォークや棘の掘り出しには技術を要し、プレパレーターの腕が試される種でもあります。この種は、とりわけ人気がありますが、フォークが短いタイプに比べれば、比較的産出量は多いようです。

一方、短いタイプには主に上記3種類がいます。
ハンミ (Hammi) はフォークが細く両脇の角が大きく湾曲している事が特徴です。リンドエイ (Lindoei) はフォークの3つの角が潰れて、平坦になっている事が特徴であります。本種トリデンスは、特徴がない事が特徴といいますか、細くもなく潰れてもない短いフォークなら、トリデンスかなと私は判断しています。流通量的には、リンドエイ>ハンミ>=トリデンスなイメージです。リンドエイとトリデンスはやや似通っていて、混同されている標本も見かけます。

ところで、このフォーク、日本のカブトムシのようだと思われた方もいるかもしれません。しかし、実は全然構造が違います。カブトムシの角はよく見ると、先が4つに分かれ左右対称です。一方、このフォークは見ての通り3つ組構造です。3つ組の構造物は、古代〜現生種でみても、実はかなり珍しく、この種を特別なものにしています。

三葉虫の形の面白さや奇妙さを説明する際に、これほど適した種もいないと思います。

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  • Acastoides zguilmensisについて。
    本文中で、ワリセロプスの説明だけでかなり長くなってしまったので、こちらにAcastoides zguilmensis (アカストイデス・ジグイメンシス) について記載します。

    この種、ワリセロプスに比べると地味な種ではありますが、実はワリセロプスの仲間です。共にAcastoidae (アカストイド科) であります。一見全然似ても似つかないように見えますが、ワリセロプスのフォークを取り去り、更に体全体の棘棘を全て無くせば、アカストイデスに似ている‥?気がしなくもないです。

    モロッコの他の多くの種同様、長らくAcastoides sp. とされるだけの、名無しの権平でしたが、2006年に記載がなされています。このジグイメンシス以外に、A.haddadiという同属異種もおりますが、なかなか鑑別は困難です。この標本はいくつかの理由から、ジグイメンシスの方だと思うのですが、確信はありません。

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    Trilobites

    2020/06/13

    近年は、柄が中位のタイプも市場に出てきて、もう一種類増えた感じですかね。W.trifurcatusは、一時期最大の産出地がモロッコ軍の管轄地になり、今後の産出は難しいなどと言われた時期もありますが、それなりに安定供給されているのは嬉しい事です。フォークは、産出エリアが同じなら同一のフォークの個体が産出するようなので、種類差は雌雄差ではないという事は言えそうです。Acastoidesに関しての言及も流石ですね、Walliseropsを含むド派手な棘々種の多くはAcastoidae(科)で、その基本形が本種で、忘れてはならない存在です。小型ですが産出量が少なく、ここから色々派生するのかと考えると想像が膨らみますね。

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    • ご指摘有難うございます。そういえば、フォークが短くもなく長くもないというタイプがいるという話を聞いた事がありますね。私はあまり見かけないのですが、市場的には少数派なのでしょうか?
      いずれにせよ、トリフルカトゥスが比較的多産するのは、本当に幸運だったと思います、あの見た目で、もしも希少だった場合市場価格がとんでもない事になっていたでしょうからね。

      アカストイデスは仰るように重要な種ですよね。多分アカストイデスと、その他派手種との共通祖先がいて、ほぼそのままだった本種と、棘を発達させて特殊環境に適応していった派手種に分岐していったのかなあと妄想します。

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      Trilobites

      2020/06/13

      中くらいの柄の登場は、ここ1、2年の気がします。MDLさんが得意としていますので、見かけますが、それ以外では扱いは何故か無いレベルですね。この種類、登場当初は今と比べれば偽物かと思うほど状態が悪い標本でも手が出せない値段でした。今はHammi氏の標本でも手が届く範囲であるのが嬉しいですね。ショートフォーク系まで全て揃えたいのですが、良いものは簡単には入手できないですね。

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    • なるほど、MDLさんで出ていますか。盲点でした、今後ちょっと気をつけてみてみようと思います。

      私は実は、ロングフォークもまだ持っていませんので、やはり欲しいですね。それはできればハンミ氏のもので。ちょっと最近出費が多いので、なかなか手が回りませんが。ショートフォーク全揃えは、私には努力目標ですね。

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