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- LP3: Poison Dwarfs / FunTastiKlons in V.A. “German Punk & Wave 1978-1984 vol.1”
LP3: Poison Dwarfs / FunTastiKlons in V.A. “German Punk & Wave 1978-1984 vol.1”
LP3は、E面がPoison Dwarfs、F面がFunTasiKlonsとなっています。私はどちらも知らなかったので、ちょっとバイオグラフィーも調べてみました。
先ず、Poison Dwarfsですが、1981年にケルンで、Helmut WesterfeldとHans Castrupのデュオとして結成されています。後、メンバーではないのですが、ケルンのアーティストGabriele Seifertがデザインやビデオを担当しています。それで、彼等はカセットテープを使って、実験的インスト曲を作ることで始まり、1981年には、直ぐにカセット作品”Poison Dwarfs”(c-10)を、直ぐに”Angst Und Ekstase” (c-40)を自主制作でリリースしています。彼等は、所謂、宅録派で、フリーで長い即興演奏を先ず録音し、それをカットして、多重録音して作製しています。演奏自体も、小さなギターアンプの音をステレオマイクで拾ったり、直でテープレコーダーに録音しており、機材も2チャンネルのステレオテープレコーダーしか使っておらず、足らない場合にはバウンスしたりして宅録しています。なので、ミキサーとかEQも使っていません。また、当時ですので、1本1本をダビングしています。1983年の3作目のカセット作品”Wechselbad”では、ヴォイスも加わったトリオ編成への過渡期的作品で、その後、メンバーは、Ralf-Dieter DlubatzとHans Dlubatzと言う安定したデュオになっています。そして、Set Fataleとのスプリット・カセット作品”1986 / Take Care !”を、ゲストにStephan Groß (B, Kbd), Rainer Mönkediek (G), Sabine Ganske (Vo)を迎えて作成し、ブレーメンのカセットレーベルIndependanceから出しています。1987年には、カセット作品”Master 04.08.1987”を自主制作で出した後に、1988年に、初のLP “La Ronde”を独のRoof RecordsとBlue Frogの共同リリースで出しています。1989年には、カセット作品”CUT!”を独レーベルIRRE Tapesから、2012年に最新作”Labil”をTiimezoneからカセットとCDRと言う2つの媒体でリリースしています。現在のメンバーと担当は、先述のように、Hans Castrup (Kbd, Field Recordings, Studio Work)とRalf-Dieter Dlubatz (Vo, Kbd, Drs)となっています。本作品E面は、1981年の自主制作カセット2本と1983年作カセット”Wechselbad”からのセレクトされた曲が収録されています。
次に、FunTasiKlonsですが、Discogsには、Exo NeutrinoことLudger Andreas Rößnerのソロ・プロジェクトで、1986年にカセット作品”Musik Für Zwei Ohren”を独のカセットレーベルWir Wollen Nur Dein Bestes Bänderから出しているだけのように記載されていますが、どうも実情は異なるみたいです。確かに、彼はマルチ奏者兼ソングライターで、1970年代から多くの実験音楽グループ等に参加していたらしいですが、元々は、米国のニューウェーブやThe Residentに興奮した、ミッテルヘッセン在住のExo NeutrinoとUwe Linkeの2人が、1980年初頭に、デュッセルドルフのDer Planを体験して、地元に戻ってきて、同年後半に始めたのが、Dangerous Clonesです。彼等は、The Residentsの原則「最小限のもので最大限の成果を上げる」(=Geri Reig)を実行することを決意し、Der Planもこれを支持しており、ファーストLPのタイトルにしています。それで、Dangerous Clonesも、テープデッキと沢山のおもちゃの楽器を使って、20曲入りのファースト・カセット作品”Reise Durch A Sunday Afternoon”をリリースしています。彼等は、米国The Residentsの徹底した匿名性をロールモデルとして、毎回、違うアイデアで違う名称、例えば、Little Clones, MicroClones, PsyClone, FunTasti, Different Clones等を名乗って、作品をリリースして、多くのメインストリームのリスナーを煙に巻いていました。その代わりに、MarkusやHubert Kahと言った新しいNDWのグループにもリスナーの目を向けさせます。一方、彼等は、カセット・レーベルWir Wollen Nur Dein Bestes Bänderを1980年代初頭に運営し始め、自分達のカセット作品(デビュー作”Reise…”と”Musik Für Zwei Ohren”の他に、前述の偽名で”Urrh? – The Kinderkram Tapes” [1982年], “Auf der Suche nach dem 6. Quark” [1983年], “Delikate Delikte” [1983年])を出しています。そうして、Dangerous Clonesから派生したのが、Die FunTasiKlonesで、前述のGeri Reigのコンセプトを極限まだ推し進めた作品”Musik Für Zwei Ohren“を1984年にリリースします。ここでは、Exo Neutrino1人が、小さなおもちゃのキーボードを演奏し、ディレイ と古いギター アンプだけでエフェクトしています。そうして録音された基本トラックに、Uwe Linkeが更に音を重ねて録音しています。そして、レーベルの謳い文句では、「小さなキーボードと粗雑なエフェクトと優れたアイデアさえあれば、立派なサウンドシステムは不要です。ヒット曲になりそうな 11 曲を収録。ヘッドフォンがあれば最高の旅のお供です!」とあり、Music Express誌やSounds誌は「おもちゃと安っぽいエフェクトを無制限にクリエイティブに悪用している」と評しています。一方、Exo Neutrino は、1979 年にバッド・ヘルスフェルトのハードロック・バンドThe Hand of DoomのVoとして LP”PoisoNoise”(最近追加曲を加えて High Roller Records から再発)をリリースしており、1981年には、あの異才Tom Dokoupilとコラボとして、Lustige Mutanten名義で“UnPop”をリリースしています。また、彼等のレーベルには、ExoやExoとのコラボによる他のカセット作品Erster Größenwahnの”Abfälle 1971 – 1981”、Lustige Mutantenの”Gute Fetzen”(1982)や”Heimatklänge fremder Planeten” (1986), “Das Spielzeug” (1987)の他、1983年には、Uwe Linkeの初ソロカセット作品”Da kommt die Braut”をMarkenzeichen XY名義でBestes Bänderからもリリースしています。それで、本作品F面に収められているFunTastiCloneでは、Exo Neutrinoが、おもちゃのキーボードYAMAHA PS-300, テープデッキ, ディレイ , 古いギター アンプのみを担当しています。
と言う、割とDIY的実験宅録音楽的なユニークなバンド2組の各曲を紹介していきましょう。
VOD 82.3 - Poison Dwarfs / FunTastiKlons
◼️Side E: Poison Dwarfs
★E1 “Untitled4” (0:50)は、アップテンポのリズムマシンにモアっとしたシンセのSEだけから成る小曲(?)です。
★E2 “Untitled5” (1:15)は、色々弄っているリズムマシンと単音シンセのSE音から成る曲で、音自体は貧相ですが、実験精神には溢れています。
★E3 “Untitled6” (1:26)は、DR-55にディレイを掛けて、悲しげなメロディを単音シンセが奏で、そこにSE的シンセが挿入される曲です。
★E4 “Untitled7” (1:51)は、シンセのパルス音と軽いリズムマシンに、仰々しいVoや物音テープ等も加わる曲です。終わり方も秀逸!
★E5 “Sturzflug” (2:31)は、やや高級なリズムマシンとシンセのやや太い音がメロディみたいな旋律を奏で、SE的シンセも加わる曲です。おもちゃとしてのシンセですね。
★E6 “Frequenz7” (5:42)は、DR-55のリズムと他のリズムマシンを同期させ、そこに明確だけど垂れ流しっぽい、シンセによるメロディを加えた曲で、ここで、漸く「曲」らしくなってきました。
★E7 “Ätherpest” (1:35)は、変調したマントラのようなVoと聴こえ辛いリズムマシンから成る曲です。
★E8 “Schwitzen” (3:10)は、フェイドインしてくる慌ただしいリズムマシンのリズムとシンセのパルス音が合ってるのか?合ってないないのか?良く分からないように鳴っている曲です。
★E9 “Die Rückkehr Des Schwarzen Abtes” (2:52) は、怪しげなシンセのメロディに導かれて、ベースシンセとスローテンポなリズムマシン(回転速度を落とした?)に取って代わられる曲です。
★E10 “Im Klostergarten Der Geistigen Melissen” (1:50)は、絡み合うシンセによる明る目の曲ですが、やがて、ダルダルのベースシンセで終わります。
★E11 “Nachtmahl” (1:45)で、初めて、リズムマシンと煌びやかなシンセから成る曲で、バックで素っ頓狂なシンセとSE音もなっています。
★E12 “I.C.I.” (2:59)は、ナメクジが這うようなシンセの音が重層化していく曲です。
★E13 “Der Fluch Der Götter” (1:37)では、ポリシンセが使われており、男性の朗々と歌う唄が加わってくる曲となっています。
★E14 “Liespenckolg” (2:07)では、鉄琴とリズムマシンが織りなす、煌びやかで、ドリーミーな曲でE面を締めています
◼️Side F: FunTastiKlons
★F1 “Hit Namba Wann?” (3:37)は、金属質なリズムマシンに合わせて、カシオトーン(?)によるコード演奏にシンセによるメロディと言う構成のミニマルな曲です。
★F2 “Zwielichtiges Stück” (4:10)は、多分カシオトーンで演奏している曲で、ディレイの掛かったシンセがキラキラしたメロディと言うかリフを奏でています。結構、シンセの音作りに凝っています。
★F3 “Heftiger Walzer” (3:37)は、歪ませたカシオトーンによる6/8拍子の曲で、ワルツっぽくも聴こえます。曲調は陽性で、何処か楽しげなインスト曲です。
★F4 “Zwischen Spiel” (1:08)は、トレモロを掛けたカシオトーンを歪ませて、それに合わせてシンセのメロディが乗った小曲です。
★F5 “Mystery Way” (2:32)は、何処となくSuicideを思わせるようなスウィングしたリズムが特徴のインスト曲で、シンセがサビのメロディを担当しています。
★F6 “Western Space Walze” (3:50)は、カシオトーンだけでは無く、シンセも結構ちゃんと弾いているワルツですが、やや物悲しさが漂います。名曲!
★F7 “Alan Parsons Lebt” (6:24)は、結構、アップテンポのリズムに乗って、結構カッコ良いメロディをカシオトーンやシンセが演奏している曲で、これが結構ドラマチックな出来になっています。何だか鎌田忠さんの作品に感情を込めたような大曲です。
★F8 “Brutales Lied” (3:40)も、アップテンポでドラマチックな展開を示すカッコ良い曲です。中近東風の間奏部分も良く出来ており、ある意味、素晴らしいメロディメイカーです。
どちらも、初めてシンセとかカシオトーンを手にした10代の若者がやってみたくなることを、そのままやっているようなプリミティブさを感じますね。特に、Poison Dwarfsの”Untitled”シリーズは、子供が初めてシンセを買ってもらって、TGとかの真似をしているような、そんな無邪気さすら感じます。「音楽」と呼べるギリギリですね。その後も、機材は多少立派になったようですが、やはり「曲」として成り立つギリギリですね。一方、FanTastiKlonsは、日本のDD.Recordsの首謀者だった鎌田忠さんのカセット作品を想起させるカシオトーンとシンセの使い方が興味深いです。鎌田さんよりももっとドラマチックな曲展開ですが、このアレンジには舌を巻きました。皆さんはどちらが好きですか?
[Poison Dwarfs album “Wechselbad” (1983)]
https://youtu.be/E5_vCmU96Qw?si=MD04hmvyQi-SmM7P
[Poison Dwarfs album “Angst Und Ekstase” full album (1981)]
https://youtube.com/playlist?list=PLY5UKJkW-oqKC7qoZBa3dBwcPVE1Z4QwG&si=5GwA3SHxldPo4UWW
*FunTasiKlonsの動画はYouTubeにはありませんので、Exo Neutrinoのソロ作品を上げておきます]
[Exo Neutrino “Taiga Stone” (1986)]
https://youtu.be/ZZ0EkM0WyhI?si=1xLiIpp_sayZchip
[オマケ: Lustige Mutanten live? “Missgeburten”]
https://youtu.be/r_I1eyt8WZ8?si=Frb8zq6pFxnBuOiw
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