LP4: Die Werkpiloten / No More in V.A. “I German Punk & Wave 1978-1984 vol.1”

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さてさて、LP4は、G面がDie Werkpilotenで、H面がNo Moreです。No Moreは以前にも紹介しましたが、Die Werkpilotenは、私も知りません出したので、ちょっと調べてみました。
 Die Werkpiloten(ディー・ヴァルクピローテン)は、1981年に、独の重工業地帯であるルール地方で、Krischi (クリシィ)ことChristian Aufderstroth (Vo, B; クリスチャン・アウフデルシュトロート)とPrinz Eisenhart(プリンツ・アイゼンハルト)ことStefan Caesar(Synth, Drum Machine, Programming; シュテファン・カエザル)によって結成されたエレクトロ・ミュージック・デュオで、1986年まで活動していました。その間に、彼等自身のレーベルWerkpilot Industrial Releaseから1983年に出したコンピ・カセット作品”Der Werkpilot”と1986年のコンピ・カセット作品”Der Werkpilot 2”を含む5本のカセット作品を出しています。特に、コンピ・アルバム”Tape-Compilations of the 80's Cassette-Culture”に参加したことで、曲だけではなく、ブックレットで彼等の写真や記事に多くのリスナーが接することが出来て、認知度もグッと上がりました。Der Werkpilotenの単独カセット作品は、”So Sad” (1984), “The Wonderful World Of” (1984), “Half Alive” (1986)があります。また、彼等の音楽は、英国マンチェスターのFactory系のバンドSection 25やJoy Divisionにインスパイアされたエモーショナルでメランコリックな雰囲気があると言われています。多分、彼等がルール地方出身と言うことに関係しているのかもしれません。彼等の当時の言葉で、「重くてうるさくて意地悪な機械(音)に人々が惹かれるのは至極当然なことです(中略)。、、、産業時代の終わりに、絵や音楽で痛みと欲望を感じさせてくれるのです」とあり、私自身は、特に最初の言葉に気づきがありました。Der Werkpilotenは、自分の力で何かを作り上げ、空想を現実にし、それを他の人と比較することを目指していたようですが、結成から約 25 年が経ち、彼等の再評価するべき時期にきたのでしょう。2012年に、Der Werkpilotenのセルフ・コンピ2枚組LP “Wonderful World Of Werkpiloten”がリリースされていますが、本作品G面には、1981年〜1985年で未発表トラックをコンパイルして収録されています。
 次に、No Moreですが、元々は、独北部の街キールで、No Waveバンドとして、Andy A. Schwarz (Vo, G, B; アンディA.シュヴァルツ), Tina Sanudakura (Synth; ティナ・ザヌーダクラ), Christian Darc (Drs, Vo; クリスチャン・ダルク), Thomas Welz (B, Vo; トーマス・ヴェルツ)の4人で結成されています。1980年にEP “Too Late”を小さな洗濯場で4トラックのMTRにて録音して、リリースしています。同年末にThomas Welzが脱退し、1983年末まではトリオで活動しています。1981年にシングル”Suicide Commando”をリリースして、これが大ヒットし、「正に独電子音楽」と評せられ、国際的にも人気が出てきます。1982年にミニアルバム”A Rose Is A Rose”を出しますが、英国NME誌は「独の若者が作った、Rou Leedのアルバム”Berlin”から外された作品」と評したこともあり、その後、No Moreは、東洋的要素をミックスしたダーク・ウェーブへとスタイルを変化させます。1984年に、Thorsten Hartung (B; トルステン・ハルトゥンク)が加入し、独/蘭ツアーを敢行。No Moreはアルバム”Hysteria”を完成して間もなく、1986年末に分裂、Tina SanudakuraとAndy A. SchwarzはバンドNijinsky Styleを結成しますが、2006年に、No Moreは、Tina SanudakuraとAndy A. Schwarzのデュオとして、アルバム”Remake/Remodel”をリリース。 2008年末に再びツアーを開始し、2010年1月にシングル”Sunday Mitternacht / A Rose Is A Rose”をリリース。2010年にアルバム”Midnight People & Lo-Life Stars”を、続いて2012年にアルバム”Sisyphus”を出しています。更に2015年にバンドはシングル”Stardust Youth”とアルバム”Silence & Revolt”をリリースし、よりポップ志向のサウンドに転向しました。No Moreのバイオグラフィーは、こんな感じなのですが、本作品H面に収められているのは、彼等自身のレーベルToo Late Recordsからの極初期のカセット作品”No Promises” (1980)及び”French Kisses” (1981)とLustobjekteからのコンピ・カセット”Lustobjekte Sampler”からセレクトされたトラックがコンパイルされています。”No Promises”は極初期のNo Waveなスタイルが、他の2本には、ミニマル・ウェーブへの過渡期的な曲が見受けられます。そして、1981年7月25日に、”Lustobjekte Sampler”用に、”Blood And Flowers”の曲名の元に、ヴォーカル以外の電子音パートを何度も録音しており、それらのセッションが収録されています。本作品H面では、極初期の”No Promises”, “French Kisses”及び”Lustobejekte”からの曲がコンパイルされています。
 それでは、本格的エレクトロ系NDWの2バンドの各曲をご紹介していきましょう。

VOD 82.4 - Die Werkpiloten / No More
◼️Side G: Die Werkpiloten
★G1 “Fanfare” (1:11)では、今までの収録バンドとは大きく異なり、かなり本格的にシーケンサーとリズムマシンを使った曲を演奏しています。
★G2 “New Arrangements” (7:34)は、強力なリズムと流れるようなシンセをバックに、ポップなメロディとストリングス・シンセが絡まった本格的エレ・ポップな曲となっています。明るい音色の中に、僅かに翳りがあるのが特徴ですね。
★G3 “New Life” (2:21)は、重層化するシンセと不思議なマシンリズムから成る曲で、Depeche Modeの曲とは同名異曲です。
★G4 “Take Off” (3:37)は、強靭なマシンリズムとBとGと言う組合せでのインスト曲で、バックの淡いシンセ音が、英Factory系です。
★G5 “War Pilots 1” (2:56)は、不鮮明なエフェクトVoで始まり、ストリングス・シンセの荘厳な調べと歪んだGから成るダイナミックなインスト曲です。
★G6 “Something Must Break” (2:45)は、かなりロック色の強いビートの効いた曲で、初めてVo入りとなっています。バックもブラス系シンセをたっぷり使ったゴージャスな仕上がりになっています。
★G7 “The Big Bed” (4:38)では、ピアノとPercにBと言う組合せで、感傷的なメロディを奏でています。ここら辺には英Factory直結系のインスト曲を感じます。
★G8 “Excersise” (4:25)は、ノリのよいマシンリズムに、スラップ奏法も混えたBで始まりますが、途中で柔和なシンセ・パートにもチェンジしたりして、飽きさせないインスト曲に仕上げています。

◼️Side H: No More
★H1 “Curfew” (0:32)[“French Kisses“より]は、ドコドコしたDrsとシンセから成るインスト曲です。
★H2 “Love & Cry” (2:44)[“French Kisses“より]は、指パッチンとBとDrsに合わせて、単調で空虚なシンセとロック的Voが加わる曲です。
★H3 “Fog” (2:44)[“Lustobjekte-Sampler”より]は、シンセのSE音をバックにピンクパンサーのようなフレーズのBとDrsが乗ってくる曲で、シンセのパルスもリズムを刻んでいます。
★H4 “Days Of Mercy” (4:44)[“Lustobjekte-Sampler”より]は、不明瞭なシーケンスに、タム多用のドコドコしたDrs、そして脱力したようなVoから成る淡々とした曲で、生気が感じられません。
★H5 “Suicide Commando” (3:07)[“No Promises“より]は、オリジナル・ヴァージョンで、ややスローテンポで、Voがパンキッシュです。正直、シンセもやや安っぽいです。
★H6 “Hypnotized” (1:36)[“French Kisses“より]は、ドラムマシンにSE的シンセと捨て鉢なVoから成る曲で、英語で歌っています。
★H7 “Nothing Ever Changes” (3:13)[“No Promises“より]は、極めてスローテンポなDrsにドローンっぽいシンセベースと呟くようなVoから成る曲です。途中からシンセによるメロディも出てきます。
★H8 “Blood And Flowers I” (0:41)[“Lustobjekte-Sampler”より]は、回転するシーケンスにシンセによるメロディが絡むヴァージョンです。
★H9 “Blood And Flowers II” (1:28)[“Lustobjekte-Sampler”より]は、上昇するシンセ音とシンセベースに呟くVoが乗るヴァージョンです。
★H10 “Blood And Flowers IV” (0:42)[“Lustobjekte-Sampler”より]は、DR-55とシンセベースに、SE的シンセ音が挿入されるヴァージョンです。
★H11 “Blood And Flowers V” (0:45)[“Lustobjekte-Sampler”より]は、カクカクした幾何学的リズムに如何にもシンセらしい電子音が絡むヴァージョンです。
★H12 “Blood And Flowers VI” (0:56)[“Lustobjekte-Sampler”より]は、連打されるキックにドローン的シンセベースとシンセによるスネアから成るヴァージョンです。
★H13 “Blood And Flowers VII” (1:01)[“Lustobjekte-Sampler”より]は、スローなキックに様々なシンセ的SE音が絡み合うヴァージョンで、それなりにメロディもあります。
★H14 “Blood And Flowers IX” (1:22)[“Lustobjekte-Sampler”より]は、シンセによって作られたリズム隊とシンセベースから成るヴァージョンです。

 このLPは、G面でかなり機材的にも充実した曲を演奏・録音しており、聴き応えもあります。ただ、それ程インダストリアルな要素は感じませんでしたね。寧ろ、ダーク・ポップ或いはゴスロック的な部分が見え隠れした、興味深かったです。一方、H面のNo Moreは、”Suicide Commandoがヒットする前の極初期のNo Waveな音源を聴くことが出来たのが嬉しかったです。また、”Blood And Flowers”のヴァージョン違いが余りにも違い過ぎて、その柔軟性に驚かせられました。そう言った意味で、このLP4は、如何にもNDW的な2バンドをコンパイルしていると感じました。貴方はどちらが好きですか?

[Der Werkpiloten “The Wonderful World Of”]
https://youtu.be/zw1vd00ZtU8?si=Z_Ge2UHWh8uw_y2T

H5 “Suicide Commando” (3:07)
https://youtu.be/0nNEjiwcuXM?si=Feofyr-y1Exj7nTK

H6 “Hypnotized” (1:36)
https://youtu.be/6aMpehPYpC0?si=uiJnj_xam6L2tjI2

[No More live at Nantes, France on Sep.13, 2017]
https://youtube.com/playlist?list=PLMuhpHgA_qRMowSv65qTIjHW84FVBwvlm&si=21Xa_NRWE_eehuwf

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