V. A. “Devastate To Liberate”

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昔は、YouTube等も無く、店内のポップや雑誌のレヴューなんかを頼りにして、レコードを買っていた訳ですが、例えば、ノイズ/インダストリアル系に関しては、先述のレヴューなんかも殆ど無く、情弱の状態での購入になることが多かったように思います。そんな中で、コンピレーションは、リスナーにとって良い道標になっていたこともあって、良く購入していました。そんな中で、このコンピ・アルバムは、「動物の権利を守る」と言うAnimal Liberation Front (ALF; 一時期、大学や研究所に忍び込んで、動物実験用の檻を破壊したりして問題になっていた過激な団体)のベネフィットの為の企画物ではありましたが、1980年代中期のノイズ・シーンを俯瞰するのにピッタリでしたので、購入した覚えがあります。それで、発行元のレーベルは、Yangkiですが、恐らく、United Diariesが絡んでいたようで、Steven Stapleton, Debby Sazer, Simon Edwardsに謝辞が書かれています。それで、少し注意点があります。A7は元々ロックト・グルーヴだったこと、A4&A5は2倍速でマスタリングされてしまっていること(正しい速度での再生は、後にアルバム”Tionchor”に収録)、B5&B6は、”The Nearest Door”で既にリリースされていること等です。それで、参加グループ/アーティストが全員、ALFを支持していたかは不明ですが、まぁラインナップを見れば、思わず買って聴いてみたくなるでしょう。と言う訳で、各曲/各グループを紹介していきましょう。

★A1 Nurse With Wound “Elderly Man River” (3:46)は、前半2/3はドラムマシンの単調なビートに、Gの弦の摩擦音や声やKbd?クラリネット?等の音が絡んでくる曲で、途中から男性の叫びと共に、怒涛のサウンド・コラージュで締めています。
 ◉NWWは、1978年にSteven Stapleton, John Fothergill, Heman Pathakによって結成された英コラージュ・ノイズ・プロジェクトで、後にStapletonのソロプロジェクトとなる。この頃にはアルバム”The Sylvie And Babs Hi-Fi Companion”やCurrent 93とのスプリット・アルバム”Nylon Coverin' Body Smotherin'”を出していた。
★A2 Sema “The Pleasure Of The Text” (4:56)は、アコースティックで不定形のドローン音から成るダーク・アンビエントな曲で、オルガンの音が混じっていますが、何か有機的な感じですね。
 ◉Robert Haighのソロ名義で、元Truth Club/元Foteのメンバーの英の実験アンビエント作家。この頃には、アルバム”Three Seasons Only”を出しています。
★A3 Shock Headed Peters “Blue Rosebuds” (4:50)は、長めのGフィードバック音で始まる重いハードロック調の曲で、途中で早回しのコーラス或いはSaxやシンセも加わり、暴れまくりますが、やがて元に戻りますが、フィードバック音はしつこいですが、Voは気合い充分です。
 ◉元Lemon KittensのKarl Blakeが、1982年に、Ashley Wales, Dave Knight, Mark Rowlatt, Clive Gloverと結成した英ポストパンク・バンドで、この頃に、ファースト・アルバム”Not Born Beautiful”を出しています。
★A4 P16 D4 “'Okay' She Said With Her Customary Total Lack Of Consideration” (0:38)は、チョコマカするサウンドコラージュ作品で、本来の再生では無いことが分かりますが、当時はこんな曲なんだと思って聴いてました。
 ◉P.D.のリーダーであったRalf Wehowskyが、Roger SchönauerとEwald Weberとで編成し直し、Stefan E. Schmidtも加入した独実験コラージュ・ノイズ・グループで、この頃には、S.B.O.T.H.I.との2枚組コラボ・アルバム”Nichts Niemand Nirgends Nie!”をだしています。
★A5 P16 D4 “Aus Angst Davor, Zu Ersticken, Sprach Er Beim Essen Nie” (1:34)も、サウンド・コラージュですが、やはり倍速再生の為、ガサゴソしてチョコマカしたユーモラスな曲になってしまっています。
★A6 Coil “Restless Day” (4:24)は、何処かの部族の儀式のような反復するDrsとBに、独特のメロディの歌から成る曲で、後半にGノイズが乱入してきます。
 ◉1983年に、英Psychic TVのJohn Balanceのソロプロジェクトとして始まり、パートナーの元T.G.のPeter ‘Sleazy’ Christophersonが加入、翌年、フルスケールのグループとなったポスト・インダストリアル・バンドで、この頃に、アルバム”Scatology”を出しています。
★A7 Current 93 “Jesus Wants Me For A Moonbeam” (3:05)は、ガラス瓶Percに、茫漠とした笛が始まり、少年少女合唱団の断片や正体不明の持続音が混ぜこぜになっていく曲で、NWW色が強いですね。
 ◉David Tibetが、1982年にMichael CashmoreとSteven Stapletonらと結成した英ポスト・インダストリアル・グループで、後にネオ・フォークへと変遷する。この頃、アルバム”Dog Blood Rising”を出しています。
★B1 Legendary Pink Dots “Mmmmmmmmmmmmmm” (4:14)は、リズムマシンのビートに乗せて、反復するBと暴れまくるKbd?のイントロから始まり、やや抑制的なVoが入るとG, B, Synthは其々カッコ良いアンサンブルを弾き始めます。
 ◉1980年に、Edward Ka-Spelが中心となって、Erik Drost, Randall Frazier, Joep Hendrikx, Raymond Steegと共に結成した英蘭混成ネオサイケ・バンドで、この頃に、アルバム”Asylum”や”The Lovers”を出しています。
B2 Hafler Trio “In The Cradle” (1:15)は、フィールド録音を変調しまくった小曲で、それぞれの音はコラージュされています。
 ◉1980年代初頭に、Andrew McKenzieと元CabsのChris Watson、それに架空の科学者Dr. Edward Moolenbeekで「トリオ」として結成された英の実験音楽バンドで、この頃には、アルバム”Seven Hours Sleep”を出しています。
B3 Annie Anxiety “Soweto Suntan” (4:58)は、ダルな女性Voに、不思議なバック音や民族音楽紛いの音が流れており、時にオーバー・ディレイの掛かった音も聴取されます。レコードからの音なんかも使用されており、やはりNWW色が強いです。
 ◉本名Ann Robie Bandes O'Connorで、英の詩作家/ マルチメディア・アーティスト/ ポストモダン・キャバレークイーンで、この頃に、アルバム”Soul Possession”を出しています。
★B4 Crass “Powerless With A Guitar” (7:13)は、笛のような音をバックにVoが乗っていますが、直ぐに政治的発言のコラージュになり、やがてハードなパンクソングに代わりますが、またまた女性Voのミディアムテンポの曲に代わり、コラージュと目紛しい曲です。最後は、電話のコール音と陽気な曲で終わります。
 ◉1977年に英North Wealdで、Penny RimbaudとSteve Ignorantのジャムから始まったアナーコ・パンク・バンドで、徹底したDIYやアナーキズム、政治的風刺を主張・実践し、1984年には解散しています。
★B5 D&V “Today's Conclusion” (1:33)は、シンバルを効かせたドラムに、生に近いVoからなります。英語が聞き取れたら、もう少し楽しめるかな?、
 ◉1982年かそれ以前に、Andy LeachとJeff Antcliffeによって結成されたドラム&ヴォーカルの英デュオで、この頃に、Crass Recordsから”D & V (Inspiration Gave Them The Motivation To Move On Out Of Their Isolation)”を出しています。
★B6 D&V “Wake Up” (1:36)でも、ドラムンヴォイスの曲ですが、鉄琴が使われています。Cuntsの原型なのかな?
★B7 Who Will Carry My Arms “Carnival Of Souls” (1:21)は、シンセ?オルガン?のリフと単調なDrsから成る短いインスト曲です。
 ◉バンド或いはアーティストとしての情報は調べた限りありませんでしたが、聖書の文言らしいので、Crass関係かと思われます(自信無し)。

 まぁ、メンツを見れば大体予想は付くのですが、ザックリと分けると、NWW系とCrass系になるのかなぁと思います。Crassもレコード等でコラージュをやっていますので、更に大雑把に言えば、サウンド・コラージュがこのアルバムの「主流」と言ってもよいかもしれません。多分、Crass系は、ダイレクトに「動物の権利」についてのナレーションを使っているようで、NWW系とは似て非なるものでしょう。しかしながら、1985年の音楽の流れの一面ではありますので、興味のある方は是非聴いてみて下さい!

https://youtu.be/3hKeqY36DOg?si=ILOySxEFEvqmGTzW

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