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Matthias Schuster “Atemlos”
先ず、Matthias Schuster (マチィアス・シュスター)について語る前に、彼が在籍していたバンドGeisterfahrer (ガイスターファーラー)について少し紹介したいと思います。Geisterfahrerは、1979年、Hamburgにて、Michael Ruff (Vo; ミカエル・ルフ), Matthias Schuster (G, Synth, Vo), Hans Keller (Vln, Synth, B; ハンス・ケラー), Holger Hiller (Synth)とドラムマシンとで結成されています。それで、バンドは、地元のIn die Zukunft (イン・ディー・ツフンフト)フェスに初出演しますが、バンドのサウンドは即興の電子ノイズであった為、他のハードコア・パンク・バンドに電源を切られてしまいます。その後、Hillerは直ぐに脱退し、Palais Schaumburgに加入しています。代わりに、Jürgen Weiß (Drs, B; ユルゲン・ヴァイス)が加入しています。そうして、Geisterfahrerは、Zick Zackから最初にシングルを出したバンドとなります。しかし、スタジオの技術不足により、出したEP “Geisterfahrer (1980年作)”の音質は充分ではなく、彼等は、その後、メジャーレーベルと契約した最初のNDWバンドとなります。1980年に、デビュー・アルバム”Schatten Voraus (シャッテン・フォラウス)”をリリースしますが、VoのRuffの猩紅熱とペストについての歌詞と、Cold Wave或いはGothic Rockと言われるサウンドを組合せた音楽は、後にDark Waveと言われるもので、スタイルとしでは斬新でしたが、1980年頃はまだ奇抜過ぎて、孤立していました。その後、Hans Kellerが、NYCでジャーナリストになる為に、バンドを脱退し、バンドは3人組(Ruff, Schuster, Weiß)にスリムアップして、セカンド・アルバム”Fest Der Vielen Sinne (フェスト・デル・フィーレン・ジーネ)”をリリースしますが、よりロック志向となり、Joy DivisionやBauhaus的な方向(Dark Wave)により近づいていきます。シングル”Himmel Auf Erden (ヒンメル・アウフ・エルデン)”でちょっとしたヒットを飛ばし、この曲はNDWではよくサンプリングされています。その後、バンドはツアーを敢行、Erdem Güngörecek (B; エルデム・ギュンゲレチェック)が加入しています。その後、ライブを精力的行い、1983年に、サード・アルバム”Topal”がリリースされますが、これはメジャーレーベルとは別に自身のインディー・レーベルからリリースしていますが、以前程の成功には繋がりませんでした。そこで、Matthias Schusterは、Erdem Güngörecek (B)とMichael Bühl (Trampet, Trombone, Flute; ミカエル・ビュール)とで、バンドのMVとして、幾つかの実験的電子音楽のサントラを録音していますが、これらの曲は、1987年に、アルバム”The Other Side Of….”として限定盤としてリリースされています。1986年に、バンドは、Ruff, Schuster, Güngörecekの他に、Andy Giorbino (G; アンディ・ギョルビーノ)とKirsten Klemm (Cello; キルステン・クレム)が加入して、4枚目のアルバム”Fi$ch Gott (フィッシュ・ゴット)”をリリースしており、このアルバムで、バンドの初期の雰囲気/サウンドを復活させることが出来ました。しかしながら、その後にリリースした6枚目のアルバム”Stein & Bein (シュタイン・ウント・バイン)”は成功とは言えず、確かにタイトル曲は、ヒットしましたが、残りの曲は、英詩のメジャー路線であったようです。Güngörecekに代わって、Marco Van Basten (B; マルコ・ファン・バステン)が加入し、新録アルバム”The G-Far-I”を制作しますが、余り変わり映えしなかったので、バンドのメンバーは、それぞれがソロ活動を始め、Geisterfahrerは1990年以降、長い沈黙期に入ります。それで、2005年9月29日に、彼等は、新録シングルと、1979年〜1989年のベストCDで復活して、ライブを行いますが、Michael Ruffが2023年9月に癌の為、67歳の若さで亡くなってしまい、バンドは消滅しているようです。と言うのが、Matthias Schusterも所属していたGeisterfahrerと言うバンドなのですが、このバンドを含めて、Schusterが結構、NDWでも重要人物であったとのことです。そんな彼が、1981年にリリースしたのが、本作品”Atemlos (アテムロス; 息が詰まる)”です。そう考えると、Schusterは、結構、早い時期から、ソロ曲も作っていたことになりますね。ここでは、Jürgen Weißらをゲストに迎えて、他の楽器は全部Schusterが作曲・作詞・演奏してのアルバム制作となっています。なので、参加者は、Matthias Schuster (Instruments, Vo), Jürgen Weiß (Drs [A1, A3, A5, A6, B4-B6], B [B6], G [A3]), Jan T. Krahn (Sequencer [A3]), です。内容的には、A面6曲/B面7曲となっています。それでは、各曲を紹介していきましょう。 ★A1 “Für Alles Auf Der Welt” (4:04)は、イントロのオモチャの機関車のようなパルスに、生Drsによる突進するような性急なビートとVoが加わって、時にSE的な電子音なGのカッティングも挿入され、生き生きとした曲に仕上がっています。 ★A2 “Umarmung” (1:47)は、ドラムマシンのキックとシーケンスに、引き攣り気味のGとVoから成る曲で、中々の緊張感です。リズムは途中からディスコ調です。 ★A3 “Schlaglichter” (2:38)は、シンセ音から生Drsと唸るBによるビートとVoから成る曲で、ロータムの重さが良い塩梅で、Gもフリーキーでカッコ良い! ★A4 “Language Trainer” (1:59)は、四つ打ちドラムマシンに、回転数の上げたVoと通常のVoの掛け合い?から成る曲で、ドラムマシンが煽っている感じです。 ★A5 “Habari Gani” (4:09)は、エスノな生Drsによるリズムと時折のリリカルなピアノと不穏なシンセ音から成るインスト曲で、似非民族音楽的で、ちょっとだけThis Heatっぽい? ★A6 “An Rah Robeel” (5:42)は、シンセのパルス音に、リリカルでセクシーなピアノのメロディも絡んできて、不思議と落ち着いた雰囲気の曲になっています。途中から生DrsやシンセのLFOも入ってきます。 ★B1 “Atemlos” (3:57)では、エフェクトの掛かったマーチングのようなドラムマシンで始まり、手弾きのSynth-Bと正体不明なSE音それにピアノ等も混在し、まるで音のアマルガムで、不安を煽ります。 ★B2 “Harakiri” (1:08)は、単調なリズムに鈴等のPercやSE的シンセ音等が絡むインスト小曲です。 ★B3 “G.F.” (2:39)は、ドコドコした生Drsとそのバックのシンセ音とシーケンスから成るインスト曲で、巻きつくシンセ音や赤ちゃんの声?も聴こえます。 ★B4 “Geschichte Der Nacht” (2:23)は、生Drsの強力なビートとカッコ良いシーケンスに、Voが乗る曲で、時にヘンテコシンセやフリーキーなGも挿入されます。 ★B5 “Verlangen” (2:26)は、水音のようなシンセとドラムマシンのキックに、シーケンスと生DrsとVoも入ってくる曲で、不思議なシンセのメロディも聴取できます。 ★B6 “Mussuri Sana” (5:11)は、トライバルな生Drsとピアノの音が中心になるインスト曲で、Bも唸っています。バックには歌詞はありませんが、人声らしき音や不穏なシンセのメロディや物音系ノイズも聴こえます。 ★B7 “Der Schwarze Engel” (1:09)は、雑踏の音と電子音をループから成るインスト曲で、最後はロックト・グルーヴになっている? インスト曲もあって、「音楽の海」への冒険心を刺激してくれるアルバムだと思いますが、何とも一筋縄ではいかない魅力にも溢れています。このソロアルバムを作った時に、既にGeisterfahrerはCold WaveとかGothic Rockと呼ばれていたことを考えると、Schusterの本来の音楽はこちらだったのでは?と思います。実験音楽と言う程、かけ離れたものではないですし、寧ろ、シンセをイジっていたら、こんな曲が出来たと言う初期衝動に近いものではないのでしようか。なので、色んなヴァリエーションがあって面白かったです。かと言ってバラバラでも無く、ちゃんとMatthias Schusterらしさも保持しているところも、一種の才能ですね。そんな体験、してみませんか? A5 “Habari Gani” (4:09) https://youtu.be/imN7Qdy9Izk?si=UGWUBXyr4jsxf3uP [full album + bonus track “Ritual IV (remix)] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kj8wp4UnPOb9P8au6pna40XvhX5sClC2o&si=DJagJhHMenXscqmp #MatthiasSchuster #Atemlos #KonkurrenzSchallplatten #Phonogram #FirstSoloAlbum #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Experimental #Electro #Minimal #Geisterfahrer #Multi-Instrumentalist #Guests #JürgenWeiß #JanT.Krahn
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Synth Wave Konkurrenz Schallplatten / Phonogram €20.00Dr K2
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Die Gesunden “s/t”
Die Gesunden(ディー・ゲズンデン; 健康人の意). 私は全然知らなかったんですが、他のアイテムを注文している時に、思わず、ジャケ買い/試聴買いしてしまいました。なので、少し調べてみました。 元々は、Eschi Rehm (エシィ・レーム)とMabel Aschenneller (マーベル・アシェンネラー)のデュオとしてベルリンで結成されていますが、その前に、Rehmは、Reiner BorchertとBent Jacobsenと共にクラウトロック・バンドWarmer Südwind (ヴァルマー・ズュドヴィンド)を結成しており、その時にリリースしたアルバム”Schwul”で、堂々とメンバーの同性愛とゲイとしての自己イメージについて公然と語っており、この前身のバンドが、独逸初のゲイ・ロック・バンドと看做されている理由でもあります。そうこうしている間に、Die Gesungenは結成され、その後、ドラムのThomas Wylder (トーマス・ヴィルダー)が加入してトリオになりますが、Wylderは後に、Nick Cave And The Bad Seedsにドラマーとして加入することになります。因みに、Rehmは、Die Gesundenと同時にGeile Tiere (ガイレ・ティーレ)というデュオも平行して始めているようです。それで、彼等は、Die Gesundenを始まるに当たり、Kraftwerk, Roxy Music, Eno及びDavid Bowieからの影響を受けており、それはこの時期に、偶々、Bowieがベルリン3部作の”Low”の録音でベルリンに滞在していたことも考えられるようです。Die Gesundenは、当時のNDWの流れに乗れるような音楽性に変化し、1982年にKraus Schulzeが1978年から運営していたレーベルInnovative Communication (実はSchulzeは、この初期のNDWの動きに早くから反応して、興味を持っていたらしいです)からファースト・アルバムであり、唯一のアルバムのセルフタイトルのアルバムをリリースしています。それで、Mabel Aschennellerは、ベルリンのNDWシーンを盛り上げる為に、この地区での、初期のEinstürzende Neubautenのライブをプロモートしたり、初期のThe CureがショーをやっていたExecess Clubでもショーをブッキングしたりしており、そのことが、Die Gesundenの結成に大きく関わってとされています。Die Gesundenは、1981年には、DAFの独国内ツアーも一緒にやっており、かなり好評であったらしいです。なお、1981年には、同年8月12日にベルリンのTempodromで行われた企画"Rock Against Junk"フェスでのライブ・カセット作品”Live At Rock Against Junk"も出していますが、公式にはこの2つだけしか残していません。 以上が、Die Gesundenの略歴なのですが、クラウトロックからNDW、そしてニューウェーブ/ポストパンクへのジョイントとなった重要なバンドだと思います。本作品は、トリオになってからの作品で、Eschi Rehm (Electronics, Vo, Mechanics), Mabel Aschenneller (Electronics, Vo, Mechanics), Tommi Wydler (Drs)がメンバーとして参加しています。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。 ★A1 “Instru-Mental” (2:10)は、不明瞭なホワイトノイズ混じりのシンセによるリズムに、不思議なメロディと譜割のリフとシーケンスから成る曲で、ミニマルですが、結構、凝ったインスト曲です。 ★A2 “Die Gesunden Kommen” (3:25)は、低音シンセドローンから始まり、シンセで作ったリズムが乗り、シーケンスとシンセのリフ&最低限のVoから成る曲で、電子音が心地良いです。 ★A3 “Der Weg Zum Erfolg” (3:20)も、陽性のシンセポップな曲で、シンセで作ったリズムに手弾きのリフやVoから成る曲で、途中にブレイクが数回入ります。 ★A4 “Krieg Und Frieden” (3:19)は、空中戦のSEとリムショットのドラムマシンから始まり、ややミドルテンポの曲へと移行し、やや不明瞭なVoとSynth-Bと生Drsから成る曲で、最後のレトロなシンセの音色が心地良いです。 ★A5 “Sometimes/Manchmal” (3:37)は、パルス的なリズムとシンセによる打撃的低音、それにエフェクトVoから始まる曲で、やがてバックにSE的電子音やコード弾きのシンセが挿入されてきます。Voは悲し気で叙情的な雰囲気です。 ★B1 “Baby Love” (3:15)は、ウニョウニョしたシンセと不明瞭なリズムとVoから成る曲で、コード弾きのG?っぽい音も挿入され、盛り上がってきます。 ★B2 “Leutnant Miller” (3:50)では、ディレイを掛けせたSynth-Bが中心になって、そのリズムにVoが乗っています。6/8拍子の生Drsが途中から入ってきて、結構ノリが良いです。 ★B3 “Galaxy” (3:28)は、シンセ・リズムに、裏拍子のオルガン?と緩やかなシンセが対比して流れる曲で、Voもよく歌っています。 ★B4 “Atmen” (2:40)は、まるで機械の内部にあるかのような複雑だか単調なシンセ・リズムが中心になる曲で、息遣いやVoが挿入されます。 ★B5 “Film Musik” (2:10)は、ドラムマシンと直線的シークエンスとSE的電子音から成るインスト曲で、コード弾きのシンセ音も被ってきます。 個人的には、英国The Future〜初期Human Leagueのようなシンセによる実験ポップ的音作りに対する真摯な態度に感銘を受けました。非常に面白かったです。後、生Drsが余りフィーチャーされていなかったのも惜しい感じがしましたが、シンセを使って、リズム楽器の代わりにしたりする試みとは、非常に興味深く、シーケンサーに頼らず、手弾きで対応していたのも良かったです。お恥ずかしい話しなのですが、私は始め、このレコードを33 1/3回転で聴いていて、なんかVoがエフェクト掛かったみたいに不明瞭だなあと思っていたのですが、実は、このアルバムは45回転でした。そうしたら、全然印象が変わりました。いやーお恥ずかしい。なので、シンセ・ポップのリスナーさんには受けると思いますよ! “I’m Waiting For The Man”(cover) https://youtu.be/d5u8RNaQIF8?si=4VNvc1KiYSnlfUYT [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_liL-ABWBX-4JI1e4bgy-5xVz0C5dFM--A&si=OLzsjn6IeZcjlo7V #DieGesunden #SelfTitled #InnovativeCommunication #KlausSchluze #First&LastAlbum #1982年 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Electro #SynthPop #Synthesizers #Electronics #Drums #EschiRehm #MabelAschenneller #TommiWydler #WarmerSüdwind #KrautRock #Homosexuality #GayBandInGermany #GeileTiere #WestBerlinScene #NickCave&TheBadSeeds
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Synth Pop Innovative Communication €25.00Dr K2
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Bizarre Leidenschaft “Geheimnis”
Bizarre Leidenschaft (ビツァーレ・ライデンシャフト; 奇妙な情熱)と聞いて、ピーンと来る方は、相当のNDW好きかと思われます。私がこのバンドを知るキッカケになったのは、NDW期の独パンクをちょっと調べていて、その中のRotzKotz (ロッツコッツ)をちょっと深掘りしたからなんです。実は、独パンクバンドRotzKotz(ファースト・アルバムはパンクですが、セカンド・アルバムはニューウェーブっぽくなっています)のギタリストHorst Illing(ホルスト・イリンク)とドラマーMarcus Joseph (マルクス・ヨーゼフ)及び鍵盤奏者Gregor Ludewig (グレゴール・ルーデヴィック)が、RotzKotz解散後、シンセ奏者のMulle (ムーレ)を加えて、1982年に結成したバンドが、このBizarre Leidenschaftなんです。しかも、Bizarre Leidenschaftは、本アルバム1枚だけ出して、解散したようで、Illingはそのずっと後2000年代になって、ポップパンク・バンドDie Ärtzeに参加していたり、JosephはBeatklubや他のバンドに参加しているようですが、MulleやLudewigについてはその後の情報が全くありませんでした(すまん!)。それで、本作”Geheimnis (ゲハイムニス; 秘密)”についてなのですが、RotzKotzとは全くの別バンドのようなシンセ・ポップを演奏しています。ライブ動画等は確認できませんでしたが、ニューウェーブを通り越しているような印象です。A面5曲/B面6曲が収録されており、曲や歌詞はIllingがやっています。そして、参加メンバーはHorst Illing (G, Vo), Gregor Ludewig (Synth, Vo), Mulle (Synth), Marcus Joseph (Drs)となっています。それでは各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “Bizarre L.” (3:36)は、シーケンスに生Drs(同期したDrsマシンも)と言うリズム隊にシンセの綺麗なメロディが乗るインスト曲で、中々ドラマチックな展開の曲です。 ★A2 “Störung” (3:17)も、Synth-Bのシーケンスと生Drsにシンセのリフと若々しい独逸語歌詞のVoが乗る曲で、Gも加わり、サビでのコーラスワークもキャッチーで心地良いです。 ★A3 “Oho” (4:20)は、ディスコティックなリズム隊(打ち込みSynth-B, Drs, Drsマシン)とファンキーなGに、ホーン系シンセとVoが加わる曲で、当時の流行りを反映しているようです。 ★A4 “Geheimnis” (4:50)は、可愛いらしいシンセ音から始まり、打ち込みSynth-BとDrsが加わって、優しげな2人のVoがちょっと甘酸っぱいメロディを奏でる曲で、勿論、Gも聴取でき、間奏のシンセもシンプルで良い感じです。 ★A5 “Kulissen” (3:57)は、Synth-BとDrsの堅実なリズム隊に、コロコロしたシーケンスとおぼつかないようなVoとセンスの良いシンセのメロディでメロメロになりそうです。途中のブレイクも良い曲構成です。 ★B1 “Himbeerschokoladentorte” (4:17)も、着実なリズム隊に、しっかりと歌うVoから成る曲で、中音域のシンセのサブメロディや出過ぎないGも良く、サビのコーラスワークにも痺れますね。ちょっと青春! ★B2 “Plasticpuppen” (3:05)は、直線的シーケンスとシンセで始まり、結構、ミニマルな曲構成の曲で、スネアやダブルVoや重いSynth-Bも効果的です。 ★B3 “Tanzbär” (2:52)は、割と軽めのテクノ・ポップ調の曲で、単音切りのようなリズムがプリミティブで、逆に新鮮です。サビのコーラスワークも素晴らしく、ややピッチをずらしたシンセのリフも良い。 ★B4 “Mädchen” (3:02)は、テクノ・レゲエな曲で、Gや生Drsが活躍していますが、独語歌詞のVoがキモですね。間奏のオルガン風のシンセも中々良い塩梅です。 ★B5 “Frauenbeine” (3:53)は、切迫感のあるシンセ・メロディ、それに連続するGSっぽいシンセのリフと着実なリズム隊に、甘めのVoが乗る曲ですが、サビのコーラスワークには、ちょっと甘酸っぱい感じがします。 ★B6 “Rio” (2:25)は、マーチっぽい2ビートのDrsと透明感のある音色のシンセ・メロディに、ダブルVoが乗る曲で、上手いシンセワークや間奏のシンプルなGソロには懐かしさすら感じます。 彼等の内3人の出自がパンクバンドですが、本作品に収められている曲は、どちらかと言うと若者独特の輝きとか甘酸っぱい思い出とかを連想させる「青春エレ・ポップ」で、それはそれで、個人的には、懐かしくもあり、恥ずかしくもあります。メロディもキャッチーだし、曲構成も良く出来ていると思います。何で、Bizarre Leidenschaftが、このアルバムだけで終わってしまったのか、ちょっと残念には思いますが、テクノ・ポップが持っている「抒情性」を感じることのできるアルバムだと思いますので、もし、気になる方は聴いてみて下さい!意外とお勧めです。 https://youtu.be/hbMx-seot88?si=XLJh_vhG8CXqTVYT #BizarreLeidenschaft #Geheimnis #GeeBeeDee #1982年 #First&LastAlbum #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Electro #SynthPop #Synthesizers #生Drums #Guitar #Chorus #青春 #HorstIlling #GregorLudewig #Mulle #MarcusJoseph #RotzKotz #Beatklub #DieÄrzte
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Synth Pop GeeBeeDee €40.00Dr K2
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Holger Hiller “s/t”
後にPalais Schaumburgの最初のVo/Gとなり、その後、ソロでサンプラーをメインに使った実験電子音楽の天才と言われるようになったHolger Hillerの最初のリリースが、この7㌅EPなんです。多分、Palais Schaumburg結成前に、自分達の溜まり場でジャムっていたり、セッションしたりしていたものを録音しており、そこからセレクトしたテイクをこの時期に発表しているのではないかと想像します。本EPでは、芸大時代の同級生Walter Thielsch(後にPalais Schaumburgの2代目Voとなります)の他にChris Lunchがサポートで参加しています。Christian Lunch、本名Christian Gregory Ingleで、米国人シンセ・パンク・アーティストで、1979年には、既に米国Fish Ranch Recordsより、Christian Lunch名義で7㌅シングル”Product”を出しています。実は、この人物、Jello Biafraとも関係があって、Dead Kennedysの初の欧州ツアーの時に、Eric BoucherことBiafraとRay PepperellことEast Bay Rayと英国The SoundのAdrian Borland及びMorgan Fisherと一緒にThe Witch Trialsとして、12-㌅Maxi-Single(内容はダーク・ウェーブです)をロンドンで録音しており、それが、1981年にZick ZackとAlternative TentaclesとNew Roseからリリースされているという所で、何となく繋がっているのではないかと想像させられますね。多分その時のZick Zackを通して、本作品にも参加しているのではないでしょうか。まあ、それは置いておいて、本作品をリリースしたレーベルWarning Recordsは後のATA TAKです。と言うことを踏まえて、本作品の各曲を紹介していきましょう。7㌅で45回転なのですが、A面3曲/B面2曲が収録されています。 ★A1 “Ich Kann Nicht Mehr Warten”は、DrsにBらしき音と不穏なシンセのメロディ及びGから成るインストの小曲です。 ★A2 “Ein Ganz Normaler Kuss”は、不明瞭な電子音リズムにHillerの語るようなVoが乗る曲で、途中でヘンテコな電子リズムになったりします。 ★A3 “Dingdonggefühl”は、直線的DrsのビートにフリーキーなGとシンセに合わせて、Hillerが呪文のように歌っています。そのバックでは叫び声なんかも。Voとかにはリバーブ処理も後からしてあるようです。 ★B1 “Herzmuskel”では、単調なリズムマシンと金物Percに合わせて、ピアノやHillerのVoや幽霊のようなシンセ音が聴こえてきます。なお、この曲はPalais Schaumburgの持ち歌にもなっています。 ★B2 “R In S/W”は、レジデンツっぽいシンセのメロディを持ったチープなテクノポップ風インスト曲で、Hillerのルーツの一端が窺い知れます。 短い時間に、Holger Hillerの若かりし頃の音楽性を見事に現している内容になっていると思います。特に、B2はモロThe Residentsで、思わずニヤリとさせられました。それにも増して、他の曲もルーズでありながらもアイデアに溢れていて、興味深かったです。今となっては、本EPは、歴史的価値としての要素の方が大きいかもしれませんが、これを聴いて、また新たな発見がある可能性もありますので、気になる方は是非、聴いてみて下さい!因みに、ジャケは2種類あるみたいです。 https://youtu.be/9t3oD09-DVI?si=pGYaorpGn6VNEeR- #HolgerHiller #Self-Title #WarningRecords #FirstEP #7-InchEP #1980年 #Electronic #SynthPop #Experimental #ChristianLunch #WalterThielsch #Pre-PalaisSchaumburg #ChristianGregoryIngle #USSynthPunkArtist #TheWitchTrials #ZickZack #AlternativeTentacles #TheResidents
Experimental / Synth Pop Warning Records €20.00Dr K2
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Holger Hiller “Demixed”
天才Holger Hillerのソロ・アルバムとしては4枚目にして、タイトル通りDemixed (Remixed)アルバムです。Holger Hillerは、Palais Schaumburg脱退後、1984年から、ロンドンに移り住み、Mute Recordsのプロデューサーとして働き始めます。1988年には、ビデオアーティスト羽田明子とKarl BonnieとOh! Hi Bang Bangと言うバンド?を始め、12㌅マキシ・シングルとCDVideoと言う2つのフォーマットでリリースしています。と言うような活動もしていましたが、2003年からはベルリンに移り、英語教師をしています。 それで、本作品なのですが、「クラウトロック大全」の小柳カヲル氏によると、新曲は1曲のみで、他はそれまでのHillerの曲のリミックスと言うかデミックス・ヴァージョンから成ります。因みに、Kitschfingerとは、弟子のAndreas Dorauのことで、A.J.とは、ヒップホップ・グループBorder CrossingのAlex Angolのことです。Julian Briottetは、ロンドンのダブソニック・グループRenegade Soundwave関係の人物らしいです。Paul Treeは調べても分かりませんでしたが、Russellは恐らく、Russell Haswellのことでしょう。Paul Valentineは、テクノやハウス辺りで活動しているリミキサーのようです。また、O.C.P.も全く分かりませんでした。クラブ・カルチャー関係は不勉強の為、良く分からないので、教えて貰えると有り難いです。なお、A4は、元NMEの記者Chris Bohnが書いた曲らしいですが、Steveが誰かは不明です。また、A1とA5は、Holger HillerとKarl Bonnieの共作で、前作”As Is”に収録されています。そんな訳で、良く分からないアーティストによってデミックスされたHolger Hillerの曲がどうなっているか、各曲について聴いていってみましょう。 ★A1 “Yum (Demixed By O.C.P. )” (6:52)は、軽めのビートに合わせて、Hillerの呟くようなVoが多層化して聴こえる曲で、Synth-Bは割とミニマルに抑えてあります。時に聴こえる金属質なリムショットが心地良い。 ★A2 “Wrong (Demixed By A.J.)” (3:18)は、サンプリングした雑踏音をリズムとして使い、リズムマシンと同期させた曲で、原曲の持ち味が生きています(今なら皆んな考える方法かな?)。 ★A3 “Me Too (Demixed By A.J.)” (4:58)は、強力な四つ打ちリズムで始まりますが、やはりサンプリング音をリズミックに同期させている所が見え隠れします。 ★A4 “Neighbours (Demixed By Steve)” (3:47)では、民族音楽調なリズムに、Hillerが語るように歌っており、リズムの後ろにはサンプリング音らしき音が聴こえて、それが良いアクセントになっています。 ★A5 “Cut (Demixed By Julian Briottet)” (5:45)も、四つ打ちキックで始まり、スネアの音等がサンプリングされた金属音だったり、伴奏がそれらの音のループだったりで、隙が無いですね。 ★B1 “Count (Demixed By Kitschfinger)” (3:03)では、人声のサンプリング音をリズムに組み合せて、まるで「音」が歌っているかのようなミックスになっています。途中からシーケンスも出てきます。 ★B2 “Passion (Demixed By A.J.)” (5:28)は、水音のサンプリング音からヒップなリズムトラックに移行しますが、やはり人声のサンプリングが歌のように聴こえます。後半にはランダムなラジオ音等も合わせてきます。 ★B3 “XXX (Demixed By A.J.)” (5:10)は、アフリカ系民族音楽のリズムで味付けしたヒップなリズムトラックに、Hillerのサンプリング音を無理クリ合わせてくる荒技を使っています。 ★B4 “Egg (Demixed By Kitschfinger)” (5:45)は、強力なリズムに合わせて、電子音らしき音を中心に組み合わせており、他の曲とはやや趣きが異なります。 ★B5 “Hose (Demixed By Paul Tree And Russell)” (3:18)は、一聴、惚けたようなリズムで始まりますが、そのうち、Hillerの間の抜けたようなVoも挿入されたり、スクラッチ音も入ったりします。 ★B6 “Sing Songs (Demixed By Paul Valentine And Julian)” (3:28)では、やや勢いのあるリズムトラックに、声のサンプリング音等が同期しており、タイトル通り「音」が歌ってますね。あとベースラインが凄いです。 やっぱり、Holger Hillerはどこまで行ってもHolger Hillerですね。これだけ弄られていても、一聴して、「あれっ、これってHolger Hiller?」と分かってしまう程、当時としては音の個性が強烈でしたね。当然、当時の機材的な制約もあり、リミックス作業が困難であったことも容易に想像し得るので、それ程、突っ込んで紹介してはいませんが、やはりHolger Hillerっぽい音がそこここに聴こえて、これは”Remixed”ではなく、”Demixed”なんだなあと感心してしまいます。また、クラブ・ミュージックとしても聴くことは可能ですので、そう言う聴き方もしてみてはどうでしょう(かなりヘンテコですが)? [アルバムを纏めた動画はなかったので、個々の動画を貼っておきます] A1 “Yum (Demixed By O.C.P. )” (6:52) https://youtu.be/3m16cyEubBU?si=dF4dsVQcs345sqGg A2 “Wrong (Demixed By A.J.)” (3:18) https://youtu.be/l3AkMrK9x10?si=QTU9FMG4sDlkmxYK A3 “Me Too (Demixed By A.J.)” (4:58) https://youtu.be/4drinyeEHOw?si=gnHraJwsMaKHtawF A4 “Neighbours (Demixed By Steve)” (3:47) https://youtu.be/6zgcorImUS0?si=xSqXz5uMyU7e3yRZ A5 “Cut (Demixed By Julian Briottet)” (5:45) https://youtu.be/3b5mg4o75Kg?si=I0hb2R__z9MGrE54 B1 “Count (Demixed By Kitschfinger)” (3:03) https://youtu.be/UWtqSlR0DeU?si=_P8bOFzGnt_GOEdN B2 “Passion (Demixed By A.J.)” (5:28) https://youtu.be/WoKWnW5eS7U?si=B3lrg7phOIa7p0mj B3 “XXX (Demixed By A.J.)” (5:10) https://youtu.be/-EyK38rJHc4?si=rr09dNN5jMf_y-FI B4 “Egg (Demixed By Kitschfinger)” (5:45) https://youtu.be/QsbZKxgahoI?si=2pet9Sp9R_hrG_yw B5 “Hose (Demixed By Paul Tree And Russell)” (3:18) https://youtu.be/gZUtUq6b44o?si=cQVb2SUryRpC4ZW_ B6 “Sing Songs (Demixed By Paul Valentine And Julian)” (3:28) https://youtu.be/xsx7qGP0Qo8?si=T0fwKZAAG5WaFyOs ooo #HolgerHiller #Demixed #MuteRecords #SoloAlbum #LeftfieldTechno #Experimental #RemixedAlbum #O.C.P. #A.J. #AlexAngol #Steve #JulianBriottet #Kitschfinger #AndreasDorau #PaulTreeAndRussell #RussellHaswell #PaulValentineAndJulian #Sampling #ClubMusic
Experimental / Leftfield / Club Music Mute Records 不明Dr K2
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Gudrun Gut & Mabe Fratti “Let's Talk About The Weather“
今回は、独Mの系譜(Mania D., Malaria!, Matador, Monika Werkstatt)の1人Gudrun Gutとグアテマラ出身の前衛音楽家Mabe Frattiのコラボ作品”Let’s Talk About The Weather”をご紹介したいと思います。Gudrun Gutの方は、前回、ソロ作品”Moment”の時にも、その略歴は書いてありますので、そちらをご参照下さい。今回は、コラボレーターのMabe Frattiのバイオグラフィーを少し書いてみたいと思います。Frattiは、そのエーテル的な声と音楽から、グアテマラの代表的な前衛チェリストとして知られていますが、現在は、メキシコに住んでいます。その振り幅は、ノイズ〜クラシック〜エレクトロニクス〜現代音楽のインディペンデントな領域にまで及んでいます。彼女は、グアテマラのペンテコステ派の家庭で育っており、小さい頃から、クラシック音楽しか聴かず、チェロのクラシック教育を受けていました。 また、父親がランダムに持ってきたGyorgy Ligeti(ジョルジ・リゲティ)のレコードや、レコード店で見つけたチェリストのJacqueline du Pré (ジャクリーヌ・デュ・プレ)のDVD等を見聴きして、より前衛的な音楽も体験することとなります。 彼女は10代の頃から自分の音楽を作り始め、教会から外に出た時には、レゲエ、ブルース、ファンクなどさまざまな演奏スタイルを演奏していたようです。因みに、現在使用しているチェロは学校からのプレゼントだそうです。その後、自分のPCで、ファイル共有サイト LimeWireを使いこなすようになって、更に色々な音楽を聴くようになり、その結果、本格的な前衛演奏家/作曲家として、活動を始めています。そうして、2015 年に、Goethe Institutの研修の一環とした、彼女は音楽制作のためにメキシコに行っており、その時に、彼女は著名なアーティストであるGudrun GutやJulian Bonequiなどの多くの音楽家達と共演し、Mexico Cityの即興音楽シーンに参加するようになります。また、その時に、彼女のパートナーとなるHector Tosta(その時はLa Vida Bohèmeに在籍していた)とも知り合い、その後、Amore Muereというグループを結成することになります。2019年に、Frattiは、作家W.G.Sebaldの作品「土星の輪」にインスピレーションを受けて、彼女のファースト・アルバム” Pies Sobre La Tierra”を制作しており、その翌年には、彼女のセカンド・アルバム”Será Que Ahora Podremos Entendernos”を、作曲家Claire Rousayと彼の実験音楽グループTajakの協力の元、作製しています。そうして、2023年には、彼女のパートナーである画家のHector Toscaとのコラボ・ユニットTitanic名義で、アルバム”Vidrio”を作製、「ジャスとチャンバー・ポップの間にある音楽」と評されています。また、同年には、Amor Muereとして、アルバム”A Time To Love, A Time To Die”を作製、リリースしています。このグループは、FrattiとConcepción Huerta, Gibrana Cervantes, Camille Mandokiから成り、またこのアルバムには数年間掛けて作製されているそうです。 以上が、Mabe Frattiの略歴となります。それで、本作品ですが、恐らく、2015年に、FrattiがMexico Cityを訪れた時に、Gudrun Gutと出会い、コラボの約束をしたものだと思います。クレジットを見ると、ヴァーチャル・コラボであり、FrattiはMexico cityの自宅スタジオで作業し、GutはBerlinの自宅スタジオで作業し、2020/2021年に、GutがBerlinのStern Studioでミックスを行っています。なお、レーベルはメキシコのUmor Rexからのリリースです。内容的には、A面4曲/B面5曲が収録されていますが、B2-B5は連作のようです。A1の歌詞はGut, A2の歌詞はFratti, B1-5の歌詞はGut & Frattiの共作となっています。B2-B4は大きな曲を4章に分けていますが、実際の曲間の境界は不明瞭ですので、全体を1曲と捉えても良いかもしれません。それでは、各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “Aufregend” (4:25)は、軽いリズムマシンに太めのSynth-Bによるミニマルな曲で、Gutの呟くような歌が微音で入っており、バックには辛うじて/はっきり聴こえるチェロが入っているのが不気味です。 ★A2 “El Cielo Responde” (3:47)は、ダブ的な打楽器と子守唄を囁くようなFrattiのVo、それにピアノやドラムマシンのキック音等から成る曲で、声のループや刻むハイハット、太く蠢くSynth-Bの低音等が挿入されています。 ★A3 “Walk” (6:03)は、ジャジーなハイハットとそれに不釣り合いなSynth-B、歪んでいくチェロや不明瞭なVoice等が複雑に絡み合う曲で、単に「ジャズ的」とは片付けられない程、破壊的音響になっていきます。 ★A4 “In D” (5:25)では、蠢く低音シンセと四つ打ちキックで始まり、段々とビート感が増して、ダイナミックになり、チェロや電子音も入ってきますが、キーはDからは外れません。Terry Rileyの”In C”の別ヴァージョン⁈ ★B1 “Air Condition” (5:21)は、浮遊感のあるFrattiのVoとハスキーなGutのVoの絡みが、バックのピアノや電子音の上で繰り広げられているような曲で、全てが曖昧模糊で、虚空に溶けていきそうです。 ★B2 “Let's Talk About The Weather I” (2:30)は、不明瞭なチェロの音に、電磁波音やナレーションが絡む曲で、段々とチェロの音が埋もれていきます。 ★B3 “Let's Talk About The Weather II” (2:16)は、B2との曲の境界がハッキリしませんが、ナレーション等の音と曖昧な電子音の蠢きから成る曲で、混線した通信を傍受しているようです。 ★B4 “Let's Talk About The Weather III” (3:50)も、B3に連続して始まり、バックでドラムが鳴っていますが、完全に前面のナレーションや不明瞭な電子音?に隠されています。 ★B5 “Let's Talk About The Weather IV” (4:01)も、B4に連続して始まりますが、段々とモコモコと蠢く電子パルスに形を変えていき、すこーしだけビート感が感じられますが、やはり具体音等に隠れてしまい、収束していきます。 Gudrun Gutのポップネスは完全に封印され、Mabe Frattiが自由に出来るように配慮されたものと想像します。しかも、明瞭な音は少なく、何処か曖昧模糊として不明瞭な音が鳴っているキャンバスに、2人が水彩画で抽象画を描いているかのような音楽となっています。しかしながら、ぼーっと聴いていても、聴き込んでみても、大丈夫なだけの完成度と強靭さも兼ね備えていますので、片意地張らなくても、充分楽しめます。しかし、意外なところで、接点があり、かつ今の通信環境であれば、ヴァーチャルでコラボも出来ると言う、現代のテクノロジーはこの2人のように異文化間の接続を可能にしているのだなぁと感心しました。多分、Gutのミックスも相当、気をつけてやっているのが分かりますね。そんな2人のイカした音楽も体験してみて下さい! A3 “Walk” (6:03) https://youtu.be/IrGtWduunS4?si=GKcPO32Rsw2RL3Hv [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_klJCx56gloYSTVn9sp8QxYwreDM0GefHE&si=ECtpsf1AT2YGGSfu #GudrunGut #MabeFratti #Let’sTalkAboutTheWeather #UmorRex #CollaborationAlbum #VirtualCollaboration #Berlin-MexicoCity #FinalMixByGudrunGut #GermanComposer #GermanElectronicsPlayer #GuatemalanCellist #GuatemalanComposer #Experimental #Electronics #Abstract #Cello #SoundArt
Experimental / Ethno / Electro Umor Rex 2450円Dr K2
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V. A. “Vidal Benjamin Presents: Uprooted #1 Vladimir Ivković“
これを見つけた時は震えた!何せ、CHBBの音源がオフィシャルで入っているからだ!しかも、ジャケの作り1980年代前半っぽいモノクロで、中々センスが良い。と言う訳で飛びついた訳ですが、一応、スプリット・シングルなので、それぞれのアーティストについて調べてみました。それから、これは、Vidal Benjamin Presents Uprootedと言うシリーズものらしいのですが、まだこの1作しか出ていません。 それで、A面のRex, Goran & Milanですが、 全員ルーツが東欧です。Rex Ilusiviiは、本名Mitar Subotić "Suba"で、セルビア生まれで、ベルグラード大学で電子音楽の研究を続けており、ユーゴスラビアでは、1980年代にはその国のニューウェーブ・バンドのミックスやプロデュースを沢山行っており、それ故に電子音楽の第一人者と称されています。彼は、Elik SatieやBrian Enoに興味を持っていたようです。1986年には、電子音楽とユーゴスラビアの民族音楽を融合したりして、UNESCOからの資金で、3カ月間、ブラジルのリズムの研究員としてブラジルに行きますが、そこでブラジルの音楽に惚れ込んで、サン・パウロに移住してしまいます。そこで、Milan MladenovićのプロジェクトAngel's Breathに参加、アルバム”São Paulo Confessions”の制作にも参加しています。それで、1999年11月2日に、彼の新しいパートナーBebel Gilbertoのアルバムのポストプロダクションを行っていたところ、煙草の火が原因で、スタジオから出火、彼はBebelと彼女の新作を何とか救い出そうとして、亡くなってしまいます。 一方、Milan Mladenovićは、1982年に結成された、ユーゴスラビアのアートロック・バンドEkatarina VelikaのVo/Gかつフロントマンで、最初はハードロックが好きだったようですが、その内、Elvis Costello, Paul Weller, Andy Partridge (XTC)に好みが移っていき、1981年末に、Mladenović (Vo, G)は Limunovo drvo Gagi Mihajlović (G)を誘い、更にMargita Stefanović (Kbd), Bojan Pečar (B), Ivan Vdović Vd (Drs)を加えてKatarina IIを結成し、セルフタイトルのアルバムを出しますが、その後、Gagi Mihajlovićが脱退します。それで、バンド名をEkatarina Velikaと改名し、1985年にまたもやセルフタイトルのアルバムを出します。その後もセカンドアルバムを出しており、ユーゴスラビアでは重要かつ人気のバンドになります。1992年に、Mladenovićは、戦争反対プロジェクトRimtutitukiを結成し、1枚のシングルを出していますが、1994年春に、古い友人のRex (Mitar Subotić)とブラジルで、アルバム”Angel’s Breath”を録音しています。しかしながら、1994年8月に、膵癌が見つかり、同年11月5日に亡くなっています。 Goran Vejvodaは、英国生まれのセルビア人作曲家/サウンド・ヴィジュアル・アーティスト/ パフォーマンス・アーティスト/ 写真家/作家/役者で、主に仏で活動しています。1980年代初頭に、Vejvoda (G)は、ガールフレンドのBebi Dol (Vo), Slobodan Trbojevic (B), Vd (Drs)でAnnika Rougeと言うバンドを組んでいましたが、何もリリースはしていませんでした。その後、彼は、Bebi Dolのソロ・シングル”Mustafa”や”Rudi”を出し、彼女のアルバム”Ruze i krv”も出しています。その後、Vejvodaは、ユーゴスラビアのニューウェーブ・バンドやシンセ・ポップバンドと一緒に仕事をしています。その途中で、Mladenovićが、電子音響音楽を学びに、1985年に、パリにやってきた時、Vejvodaは、彼とコラボ・アルバム”The Dreambird, in the Mooncage”を制作し、1986年〜1992年の間、ユーゴスラビア、イタリア、ブラジルの主要都市でラジオ放送されています。 そんな東欧にルーツを持つ3人が、1984年、ベルグラードで録音したトラックを一部が、本シングルに収録されています。その3人が組むことになった経緯は判然としませんが、多分、この時期に、ユーゴスラビアに3人共いて、偶々、録音されたものではではないでしょうか。 それから、B面のCHBBですが、このデュオは、元DAFのChrislo Haasと元Mania D.のBearte Bartelと言う男女で、名前の頭文字を取ってCHBBとしています。このデュオは、後に、あの超重要かつ超有名な独エレクトロ・バンドLiaisons Dangereusesの前身でもあり、50本限定の10分カセット作品4種類(赤、青、銀、黒)しか公式の音源は無く、過去にもブートレッグが出たりしており、マニア誕涎の貴重なアイテムです。内容の一部は、今はYouTubeでも聴くことができますが、Korg MS-20を中心に作ったハード・エレクトロニクスな作品です。恐らく、Haasのシンセ偏執狂的志向が反映されているものと考えられています。と言う訳で、今回の狙いは、B面のCHBBなのですが、調べてみると、A面も非常に興味深いですね。それでは、各曲を紹介していきましょう。 ★A1 Rex, Vejvoda, Milan “Untitled”は、淡々と続くミドルテンポのDrsと単調なリフBに、恐らくシンセらしき音と過剰エコーを掛かった女性Voが被ってくる曲で、やがてGのカッティングが入ってきます。 ★B1 CHBB “NBKE”は、重く激しいキックとホワイトノイズのスネアのリズムを中心に、Bearteの呪文のようなVoや民族的歌うようなVoが被ってきて、そのバックには不明瞭な電子音が聴取できる曲で、次第に電子音は無くなって、リズムとVoだけになり、曲もフェイドアウトしていきます。 どちらかも抽象的な音楽なのですが、A面はロックの基本構成成分によって形成されているのに対して、B面のCHBBは、ほぼほぼ電子音と人声だけで形成されているところが違う点でしようか? 意外とどちらも面白かったです。それにしても、CHBBの音源が正規のルートで発表されたのは喜ばしいです。これを機に、4種類のカセット作品のリイシューとか未発表音源の蔵出しとかをやって欲しいですね。また、旧ユーゴスラビアの音源とかも珍しいので、また、規模を拡大して出して欲しいものです。このアイテムはある種コレクターズ・アイテムになるかもしれないので、買うなら今のうちですよ! A: Rex, Vejvoda, Milan “Untitled” https://youtu.be/8YkCSc5U9Ww?si=UmxGpdbYktgYmfGI CHBB “Go Go Go” [“NBKE”はYouTubeに無かったので代わりに] https://youtu.be/C4wC4LvA8T0?si=8N7prkrvZbLx6ca3 #RexIlusivii #MitarSubotićSuba #GoranVejvoda #MilanMladenović #Untitled #CHBB #ChrisloHaas #BeateBartel #NBKE #VersatileRecords #EastEurope #YugoslavianUnderground #1984年 #GermanUnderground #1981年 #VidalBenjaminPresentsUprooted #Experimental #PostPunk #JamSession #Electro #Synthesizers #KorgMS-20
Experimental / Post Punk Versatile Records 1144円Dr K2
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Andreas Dorau und Holger Hiller “Guten Morgen Hose”
来ました!師弟の共作です!そうです。ギターの先生Holger Hillerとその生徒Andreas Dorauの共作マキシ・シングル”Guten Morgen Hose (グーテン・モルゲン・ホーゼ; 「お早う、ズボン」の意)”です。この作品は訳が分からないのですが、バックの曲は、確かにDorauとHillerのコラボ曲なのです。しかしながら、この作品のコンセプトは、実に難解と言うか可笑しな程バカバカしいものみたいです。「クラウトロック大全」の小柳カヲル氏によると、「現代表現主義大全」なる権威のある書籍を適当に開いたところで、目に付いた記述を元に、2人が即興で演じた不条理音楽劇らしいのです。筋書きとしては、人妻Lucyを巡って、父親Johnny (Dorau)、絨毯、ズボン(Hiller)とが争うと言うことらしいのですが、全く持って意味が分からないです。因みに、脚本は、Catherine Lienertとなっています。それで、歌手をスカウトしに大学に行って、偶々、そこにいた守衛と女性清掃員が抜擢されたとか。と言う訳で、次のような役が振られています。 ◼️歌; Johnny (Andreas Dorau) Hosenchor (ズボン合唱団; Catherine Lienert, Hagar Groeteke, Moritz Reichelt) Lucy (Erika Kochs) Die Hose (ズボン; Holger Hiller) Der Teppich (絨毯; Sol Rubio) ◼️喋り; Johnny (Andreas Dorau) Hosenchor (Jochen Liedisch) Lucy (Claudia Kaloff) Die Hose (Holger Hiller) と言うことを踏まえて、曲/音楽劇を紹介していきましよう。 ★A “Guten Morgen Hose”は、重厚なポリシンセで始まり、可愛らしい電子音や具体音のサンプリングに変わって行き、やがて男性Vo(Dorau)とバックの物音系音へ。そしてズボン合唱団を挟んで、はたまた男性Vo(Dorau)とバックの音へ。いつの間にか、女性Vo(Lucy)も出演して、シタール風のシンセやヴァイオリンの爪弾きをバックに男性Vo(Dorau)へ。そしてズボンVo(Hiller)も現れます。と言う風にコロコロと音とVoは変わっていきます。 ★B “Guten Morgen Hose”も、絨毯Vo(Rubio)が流れる中、バックの音はどんどん変わっていきますが、これはサンプラーによるのでしょう。ここら辺で男女のを挟んで、再びズボン合唱団のコーラスが。そしてまたもやサンプリング音と女性Vo(Lucy)をバックにズボンVo(Hiller)が。相変わらず、バックの音はシンセとサンプリング音で忙しないですが、男性Vo(Dorau)が絨毯を刺しで、自死します。最後にはズボン合唱団の独逸らしい歌が、バックのホーンのリズムに合わせて、ユニゾンで聴こえてきますが、雨音と爆発音とで終わります。 まあ、確かに音楽劇としたら、この2人ならこんな感じかなぁと納得はしますが、これを本当にレコードとして出すかぁ?と言われれば、ちょっと首を捻りますね。まあ、私は独逸語を聞き取れないので、この音楽劇の内容まではよく分かりませんが、音楽として聴くのであれば、かなりHiller色の強い音楽だとは思います。独逸語の分かる方は何を言っているのか?教えて下さい。でも音楽としても面白いので、特にHolger Hillerファンの方には受け入れられるのではないでしょうか!実は、蘭では、この音楽劇を映像化しているので、動画と一緒に聴いてみれば、何と無く言いたいことが分かるかも? https://youtu.be/auH4A9ZHzVw?si=r7ywa70KZ4eypIPl #AndreasDorau #HolgerHiller #GutenMorgenHose #ATATAK #12inchMaxi-Single #不条理劇 #音楽劇 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #ExperimentalPop #CatherineLienert #HagarGroeteke #MoritzReichelt #ErikaKochs #SolRubio #JochenLiedisch #ClaudiaKaloff #DieHosen #DerTeppich #Hosenchor #Lucy #Johnny
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Experimental Pop ATA TAK 4800円Dr K2
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Die Tödliche Doris “Live SO36 Berlin 19.11.1982”
またまた、来ました!Die Tödliche Dorisの初期のライブ盤です。Die Tödliche Dorisのバイオグラフィーについては既に書いてありますので、そちらをご参照下さい。元々は、バンドに無許可で録音したライブ音源をカセット作品として、(π+RQ-J6) Tape Productionが1982年に出していますが(要するにブートですね)、この作品に関しては、バンドが自身のレーベルから1986年にカセット作品として、正規でリリースしています。ライブは、西ベルリンの有名なクラブSO36で、1982年11月19日に行われたものであり、メンバー等の情報は何もありませんが、少なくとも、Wolfgang MüllerとNikolaus Utermöhlenは参加していると思われますが、残りの女性メンバーについては不明です(Käthe Kruseかな?)。と言う訳で、謎が多い音源ですが、まあ、正規のLPとして、独Vinyl On Demandが再発してくれていますので、彼等の貴重なライブ音源を聴いてみて、各曲についてご紹介していきます。あと、驚いたんですが、通常のアルバムとかに収められている曲をちゃんと曲として(つまり、全くのフリーな即興曲ではなく)演奏していると言う点が、即興的なノイズ・ミュージックではないのだなと感心してしまいました。 ★A1 “Stümmel” (3:30)では、無定形な塊状のノイズが放射されていますが、どうもGとかを使っているようで、やがてハウリング音やディレイを掛けたB、更にはDrsらしき音も入ってきます。 ★A2 “Der Tod Ist Ein Skandal (Kavaliere)” (6:35)は、A1に連続して、男性Voとそれらしきビート感を叩くDrsの演奏を中心に「曲」になっています。バックには、何かのノイズ(男性Voのテープ操作?)も鳴っており、段々エキサイトしていきます。最後にテープループも。そして拍手! ★A3 “Über-Mutti” (2:15)は、重いDrsとスライドGに素っ頓狂な男性Voの繰り返しで始まりますが、Voはやがて叫び声っぽくなります。そして拍手。 ★B1 “Rhythmus Im Blut” (6:12)は、筒を吹いているような持続音(テープ操作?)とビート感のあるDrsに、語るような男性Voから成る曲で、段々とバックの音は乱れ、ディレイも掛けられたり、Gノイズらしき音も聴取されます。最後は拍手もあり、盛り上がっています。 ★B2 “7 Tödliche Unfälle Im Haushalt” (4:23)は、男性の語りとキック音及び太いBから成る曲で、バックにシンセらしき音やモーター音(?)等が鳴らされています。最後はまた拍手で! エアーでのラジカセ録音なのか、音質はペラペラで全然低音が出ていない悪い音質ですが、Die Tödliche Dorisの生の音を聴くことが出来たのは、中々、貴重な体験でした。多分「観客を裏切るのがDorisで、それを期待して観に行ってしまう観客を更に裏切るのもDorisである」と言われていたことが、本作品を聴くと何と無く分かりますね。同じ曲(?)でも、そのパフォーマンスを含めた音が大きく変わって「演奏」されていたのでしょう。そう言う意味で、彼等は、単に即興演奏/ノイズ・グループでもカッチリ演奏するグループでもなく、演る度に、その「演奏仕方」を変えていた特異なグループだったのではないでしょうか?その事に気付けただけで、ここ一連のDie Tödliche Dorisの音源を聴いてきた意味があったと思います。本作品を真っ先に聴くことはお勧めしませんが、他のちゃんとした録音作品の後に聴けば、彼等の意図が分かると思いますよ❗️ https://youtu.be/AyLVrpvEpvk?si=S3z1yTcoOJ8rai_S #DieTödlicheDoris #LiveSO36Berlin19.11.1982 #VinylOnDemand #2004年 #Reissue #LimitedEditions #500部 #LP #(π+RQJ6)TapeProduction #1982年 #Unofficial #1986年 #OfficialRelease #Cassette #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Avant-Garde #Dadaism #Experimental #LiveRecording #WolfgangMüller #NikolausUtermöhlen #KätheKruse
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Avantgarde Vinyl On Demand ((π+RQ-J6) Tape Production) $53.00Dr K2
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V.A. “Die Große Unterganhsshow: Festival Genialer Dilletanten”
このボックスセットは、1981年9月4日に西独のTempodrom (テンポドローム)と呼ばれたベルリンの壁近くのテントで行われた歴史的イベントFestival Genialer Dillentatenの記録的アイテムであり、ここから、NDWの多くの、そして重要なバンドが輩出されていったと言う意味で、大変貴重なものです。先ず、その内容に驚かされます。LPアルバム2枚組と1枚のCD、それにDVD1枚で、加えてLPサイズの豪華ブックレットも付いています。その前に、1981年、ベルリンで行われたFestival Genialer Dilletanten(フェスティファル・ゲニアラー・ディレタンテン「天才的アマチュア展」)とは何であったかを紹介したいと思います。元々のこのイベントのタイトルDilettanten (ディレタンテン)のタイプミスをそのままフライヤー等に使っていた事から分かるように、意味性を剥奪するところから、このイベントのコンセプトは始まっています。そして、このイベントでは、新しい音楽、アート、映像、その他表現を一つの場に集まって、皆んなが共有し、刺激し合い、発展されていくDIYでの試みであると言える訳で、それが可能だったのが、1981年の西ベルリンであったのだと思います。このイベントを企画したのは、Die Tödliche DorisのWolfgang Müller(ヴォルフガング・ミューラー)とEinstrützende NeubautenのBlixa Bargeld (ブリクサ・バルゲルト)で、その後、同様の25周年記念イベントが、今度は、オーストリアのViennaで、Wolfgang MüllerとFrieder Butzmann (フリーダー・ブッツマン)によって行われています。それで、話しを少し戻しますと、このフェスでは、パンクやポスト・パンクから派生してきたノイズやエクスペリメンタル・バンドやアーティストを初めて観ることも出来ましたし、それまでの不毛な音楽シーンからの脱却も出来ました。また、当時のリアリズムの支配から違う何かをしたいヴィジュアル・アーティストも多く、それには、東西に分断されていたそれぞれのベルリンのリアリズムからの脱却も含みます。その為に、コンセプチュアル・アートやパフォーマンス・アート等の地下芸術を広めたかったのです。当然、出演者は、色々な形態で参加・披露し、変容可能で、国境を越えたオープンな形で音楽とアートが行われています。因みに、翌年、Wolfgang Müllerは、出版社であるMerve(メルヴェ)社から”Genialer Dilletanten”と言う本を出版し、これが初めて、仏のポスト・モダニズムを独逸に紹介した書籍とされています。そこでもミススペルのまま、タイトルが使われていますが、彼によると、それは「プロ」とは対照的に、「天才的アマチュア」が自らの「間違い」を傍観するだけでなく、それを、実際に存在する現実と受け入れていることの証拠であるらしいです。このフェスで、Die Tödliche DorisやEinstrützende Neubautenなどのバンドがより多くの観客に知られるようになりました。 しかし、あまり知られていないのは、後の独テクノの重鎮たちの何人かがここで初めてステージに登場し、先述のMüllerの本にも寄稿していることです。1980年代、このフェスの後継として、既存のポップ・ミュージック・シーンに対抗したベルリンの音楽家達は、自らを”Geniale Dilletanten”と呼んでいたそうです。それから、このフェスでは、 ベルリン映画祭で長年”Panorama”の監督を務めたWieland Speck(ヴィーラント・スペック)が、場違いな程の正装で、いちいち司会・進行を務めているのも面白いですね。それで、出演者を列挙しておきます。Alex Kögler (アレックス・ケグラー)のバンドWir Und Das Menschliche E.V.(ヴィア・ウント・ダス・メンシュリッヒェ・E. V.), Frieder Butzmann, Sprung Aus Den Wolken (スプルンク・アウス・デン・ヴォルケン), Mark Eins (マーク・アインズ)のバンドDin A Testbild, Dagmar Dimitroff (ダグマー・ディミトロフ)とWolfgang Müller及びNikolaus Utermöhlen (ニコラウス・ウーテンメーレン)から成るDie Tödliche Doris, Blixa BargeldとF.M. Einheit, Mark Chung及びN.U. Unruhから成るEinstrützende Neubauten, Kriegsschauplatz Tempodrom (クリークスシャウプラッツ・テンポドローム; そのメンバーにはWestBamがいました), Christine Fとその恋人Alexander von BorsigのデュオのSentimentale Jugend(ゼンチメンターレ・ユーゲント)や他にもGudrun Gut (グドルン・グート), Max Müller (マックス・ミューラー), Padeluun (パデルーン), Mark Reeder (マーク・レーダー), それにDr. Motteは、本名Matthias Roeingh[マチアス・レインフ]で、DPA (Deutsch-Polnische Aggression[ドイッチュ・ポルニッシェ・アグレション])と言うバンドで出演しています。そうして、千秋楽は、Klaus Mabel Aschenneller (クラウス・マーベル・アッシェンネラー)とBlixa BargeldがオーガナイズしたBILD + TON im TEMPODROMが務めています。それでは、本作品に収録されたバンドと各曲を紹介していきましょう(主にレコードについて紹介していますが、CDやDVDとは同じ内容ですので、後者2つについてのご紹介は省略させて頂きます。また司会のWieland Speckについてのコメントも省略させて頂き、単に(司会)と表記します)。 ◼️LP1 ★A1 司会 (2:19) ★A2 Kriegsschauplatz Tempodrom “Ich War Tot” (5:01)は、始め、スローなBのリフとリズムマシンのキックが流れていましたが、突然アップテンポして、Gや投げやりなVoも加わってきて、パンキッシュな演奏になります。メンバーは、Frank Xerox (G), Andreas Bleckmann (B), Markus Linde (Vo, RhythmBox), Markus Ernst (Sax) ★A3 Kriegsschauplatz Tempodrom “Wer O Sag Muss Auch B Sagen” (2:39)は、リズムマシンのチープな音に、直線的なBとG、それにフリーなSaxとVoで始まります。 ★A4 司会 (0:23) ★A5 Nekropolis (Die Unbekannten) “Kiss Me I Am Cold” (2:00)は、単調なリズムマシンとBのビートにSax?らしき音が乗るインスト曲です。メンバーは、Mark Reeder (G, B, RhythmBox), Alistair Grey (B, Vo) ★A6 Nekropolis (Die Unbekannten) “Poseidon” (5:12)も、リズムマシンとBの単調なビートに、掻きむしるようなフランジャーGと語るようなVoから成る曲です。 ★A7 Nekropolis (Die Unbekannten) “Casualties” (2:37)は、ディスコティックなリズムマシンと直線的なBと一定のリフを弾くGと怠く語るようなVoから成る曲です。 ★A8 Nekropolis (Die Unbekannten) “Alone” (4:47)は、全体的にダルな雰囲気で、のっそり歩く怪獣のようなリズムマシンのビートにBとGが乗っており、Voもダレている感があります。 ★B1 司会 (0:29) ★B2 Leben Und Arbeiten “Hundebesitzer” (3:07)は、ノリの良いBラインから始まり、DrsやGもテンポ良くノッてきます。Voと犬の鳴き声ようのコーラスもパンキッシュで良いです。メンバーは、Fromm (G), Rumme Beck (B), Matraze (Drs), Frisch (G, Vo) ★B3 Leben Und Arbeiten “Gefühl Nix Gut” (2:29)も、焦燥感溢れるポストパンク的演奏で、好感が持て、また程良く荒くて、カッコ良いです。Bラインはミニマルです。 ★B4 司会 (1:26) ★B5 Die Tödliche Doris “Die Schuldstruktur” (4:41)では、MüllerがVlnを弾きながら、引き攣るように叫んでおり、それに合わせるかのようにDrsやBが自由に演奏されています。メンバーは、Wolfgang Müller (Vo, Vln), Dagmar Dimitroff (Drs), Nikolaus Utermöhlen (B) ★B6 Die Tödliche Doris “Kavaliere” (1:04)は、ひたすら弾きまくるBを中心にMüllerの叫び声とDrsの断片が聴こえてきたら、終わってしまいます。 ★B7 Die Tödliche Doris “Der Tod Ist Ein Skandal” (3:19)は、最初、男性2人のコーラスから始まり、その後、DrsとBがビート?と取り始め、Müllerはひたすら叫んでいます。スライド奏法のGらしき音も聞こえますね。 ★B8 Die Tödliche Doris “Stümmel Mir Die Sprache” (1:26)は、グダグダのDrsとBに、Müllerの瀕死のVoとBと絡むVlnも聴取できます。 ★B9 司会 (1:13) ★B10 Gut Und Bargeld “Marokkoblut” (1:56)は、マーチングDrsで始まり、フィードバック奏法を駆使したGとBlixaの咆哮から成る小曲です。メンバーは、Gudrun Gut (Drs), Blixa Bargeld (G, Vo) ★B11 Gut Und Bargeld “Blutarmut” (0:53)は、初期のBlixaにみられた叫び声から成る小曲で、知らない間に終わっています。 ★B12 Gut Und Bargeld “Blutjung” (2:32)は、Blixaの叫び声から、割とノリの良いDrsとGも入り、シャーマンのようにBlixaは歌詞を反復して叫んでいます。 ◼️LP2 ★C1 司会 (0:25) ★C2 Drei Mädels Und Das Meer “Nimm Mich Mit Kapitän” (1:46)では、3拍子のアコーディオンに乗せて、可愛らしいコーラスが聴くことができます。大受けですね。メンバーは、Beatrice (Vo), Ulla (Vo), Gudrun Gut (Accordion) ★C3 司会 (0:39) ★C4 Sprung Aus Den Wolken “Leidenschaftlich” (2:38)は、ディレイの効いたVoiceと金属音に何か低音ノイズから成る曲で、時にシンバルなんかも聴こえてきます。メンバーはKiddy Citny (Tape Recorder, Echo, G)で、彼のソロユニットです。 ★C5 Sprung Aus Den Wolken “Lust Last Liebe” (2:45)では、オルガンらしき音にディレイ処理された怒号のようなVoと微かにバックにDrsのビートも聴こえます。 ★C6 Sprung Aus Den Wolken “Bis Zur Erschöpfung Gegen Den Strom / Stampfen Tanzen Laufen” (4:26)でも、Gを弾いているような音とリズムマシンらしき音をバックに、Citnyがひたすら叫んでいます。ハウリングも回っており、1人で阿鼻叫喚な場を作り上げています。打撃音やSaxの音なんかも聴取できます。 ★C7 司会 (0:46) ★C8 Sentimentale Jugend “Intro” (1:12)は、ハウリング音から始まり、シンセ音が一部入ったかな?と思っていたら、次の曲が始まっています。メンバーは、Alexander von Borsig (Tapes, Synth, Vo), Christine X (Echo, G, Vo)。 ★C9 Sentimentale Jugend “Ghetto” (2:14)では、シンセのパルス音をリズムに、ハウリング音とエフェクト処理されたVo等がアマルガムのように鳴っています。 ★C10 Sentimentale Jugend “Der 10.5.” (3:12)は、リズムマシン音をバックにぐちゃぐちゃに変調させられたVoやGの音が渦巻いています。最後のリズムマシン音はカッコ良かった! ★C11 Sentimentale Jugend “Hiroshima” (2:22)は、3拍子のワルツのリズムマシンとオルガンに合わせて、Borsigが歌い、ChristineのGがエフェクトをかけまくって変調しまくっています。 ★C12 Sentimentale Jugend “Weglaufen” (1:35)は、エグゾースト・ノイズです。時々、メタルジャンクの音も聴こえてきますが、多分、テープ操作ですね。 ★D1 司会 (0:22) ★D2 Einstürzende Neubauten “Kollaps” (9:37)は、Unruhの重いリズムで始まり、やがて、ChungのBとBlixaのGと叫ぶようなVoと重なっていき、Einheitのメタパーやカシオも被ってきて、危険極まり無い雰囲気になっていきます。ディレイをかけ過ぎているせいか、もう音はグチャグチャになっていますが、逆にそれがカッコ良いですね。メンバーは、Blixa Bargeld (G, Vo), Endrew Unruh (Metal), F.M. Einheit (Metal, Casio), Mark Chung (B) ★D3 司会 (1:07) ★D4 Din A Testbild “Satisfactory” (6:54)は、リズムマシンのノリに合わせて、シーケンスと呟くようなVoとちょっとしSE風のシンセも乗ってきますが、割としっくりした感じの曲です。メンバーは、Mark Eins (Synth)で、彼のソロユニットです。 ★D5 Sentimentale Jugend “Pour Mon Bibi” (3:41)は、音質の良いシンセウェーブなインスト曲で 今までのメチャクチャさを落ち着かせようと彼等が考えてくれたフィナーレですね。メンバー I’mは、Alexander von Borsig & Christine X ◼️CD 1 Wieland Speck 司会(2:13) 2 Kriegsschauplatz Tempodrom “Wer O Sagt Muss Auch B Sagen” (2:15) 3 Wieland Speck “Moderation (司会)” (0:18) 4 Nekropolis (Die Unbekannten) “Casualties” (2:19) 5 Wieland Speck 司会 (0:31) 6 Wir Und Das Menschliche E.V. “Baum Der Versuchung / Schatten Der Freude” (6:33) 7 Wieland Speck 司会 (0:29) 8 Leben Und Arbeiten “Hundebesitzer” (3:07) 9 Leben Und Arbeiten “Gefühl Nix Gut” (2:29) 10 Wieland Speck 司会 (1:45) 11 Die Tödliche Doris “Schuldstruktur” (3:32) 12 Die Tödliche Doris “Kavaliere” (0:51) 13 Die Tödliche Doris “Der Tod Ist Ein Skandal” (3:08) 14 Wieland Speck 司会 (1:05) 15 Gut Und Bargeld “Marokkoblut” (1:45) 16 Gut Und Bargeld “Blutarmut” (0:52 17 Gut Und Bargeld “Blutjung” (2:25) 18 Wieland Speck 司会 (0:25) 19 Vroammm! “Punks & Bullen United” (2:25) 20 Wieland Speck 司会 (0:14) 21 Drei Mädels Und Das Meer “Nimm Mich Mit Kapitän” (3:35) 22 Wieland Speck 司会 (0:22) 23 Sprung Aus Den Wolken “Leidenschaftlic” (1:32) 24 Sprung Aus Den Wolken “Lust Last Liebe” (1:06) 25 Wieland Speck 司会 (0:17) 26 Sentimentale Jugend “Ghetto” (1:47) 27 Sentimentale Jugend “Der 10.5.” (2:35) 28 Sentimentale Jugend “Hiroshima” (1:18) 29 Wieland Speck 司会 (0:15) 30 Einstürzende Neubauten “Kollaps” (6:38) 31 Wieland Speck 司会 (0:27) 32 Din A Testbild “Satisfactory” (6:54) 33 Sentimentale Jugend “Pour Mon Bibi” (3:41) ◼️DVD 1 Wieland Speck “Moderation (司会)” (2:13) 2 Kriegsschauplatz Tempodrom “Wer O Sagt Muss Auch B Sagen” (2:15) 3 Wieland Speck “Moderation (司会)” (0:18) 4 Nekropolis (Die Unbekannten) “Casualties” (2:19) 5 Wieland Speck “Moderation (司会)“ (0:31) 6 Wir Und Das Menschliche E.V. “Baum Der Versuchung / Schatten Der Freude” (6:33) 7 Wieland Speck “Moderation (司会)” (0:29) 8 Leben Und Arbeiten “Hundebesitzer” (3:07) 9 Leben Und Arbeiten “Gefühl Nix Gut” (2:29) 10 Wieland Speck “Moderation (司会)” (1:45) 11 Die Tödliche Doris “Schuldstruktur” (3:32) 12 Die Tödliche Doris “Kavaliere” (0:51) 13 Die Tödliche Doris “Der Tod Ist Ein Skandal” (3:08) 14 Wieland Speck “Moderation (司会)” (1:05) 15 Gut Und Bargeld “Marokkoblut” (1:45) 16 Gut Und Bargeld “Blutarmut” (0:52) 17 Gut Und Bargeld “Blutjung” (2:25) 18 Wieland Speck “Moderation (司会)” (0:25) 19 Vroammm! “Punks & Bullen United” (2:25) 20 Wieland Speck “Moderation (司会)” (0:14) 21 Drei Mädels Und Das Meer “Nimm Mich Mit Kapitän” (3:35) 22 Wieland Speck “Moderation (司会)” (0:22) 23 Sprung Aus Den Wolken “Leidenschaftlich” (1:32) 24 Sprung Aus Den Wolken “Lust Last Liebe” (1:06) 25 Wieland Speck “Moderation (司会)” (0:17) 26 Sentimentale Jugend “Ghetto” (1:47) 27 Sentimentale Jugend “Der 10.5.” (2:35) 28 Sentimentale Jugend “Hiroshima” (1:18) 29 Wieland Speck “Moderation (司会)” (0:15) 30 Einstürzende Neubauten “Kollaps” (6:38) 31 Sentimentale Jugend “Pour Mon Bibi” (3:41) と言う訳で、音も映像と当時の様子を楽しめますが、何と言っても、出演者や観客を含めて、とにかく、何かを作り出そう!それを目撃しよう!と言う熱意が凄いですね。知っているバンドの知っている曲ですら、特別バージョンのように全く違うように聴こえたりするので、充分に楽しめました。ライブ録音なので音がペラペラでは?と心配していましたが、そんなことを吹き飛ばす程の熱量でした!ここから、ベルリンのNDWは始まったようなものなので、やはり押さえておいた方が良い記録作品だと思います。日本でも、こう言う質の高い記録作品があれば良かったかな?とちょっと羨ましいです。 *全音源はYouTubeに上がっていなかったので、拾えるだけ拾って、貼ってあります。 [trailer] https://youtu.be/-MSN2P5VIs4?si=C_yriqv_TgKMkpKA DVD 4 Nekropolis (Die Unbekannten) “Casualties” https://youtu.be/rcXAJQQma1c?si=wpp5xM8d0DpwE8Jt DVD 7-9 Leben Und Arbeiten https://youtu.be/JdEEdzOGnO0?si=M8apM-qtYLWJs3Ur DVD 10-13 Die Tödliche Doris https://youtu.be/9mktoRLcv84?si=f0c_xBWXhAFJQCPS CD15-17 Gut Und Bargeld https://youtu.be/bNLe11Tto8A?si=Ehsits-gPojLBqq5 DVD 23-24 Sprung Aus Den Wolken https://youtu.be/YBuUyQgVV-w?si=zwoUSRIusLoBtEEE DVD 25-28 Sentimentale Jugend https://youtu.be/2Exp63Lo4QQ?si=p8GsWMa5mszw0jK9 DVD 30 Einstürzende Neubauten “Kollaps” https://youtu.be/Hkrv0Q11tWM?si=LvByEHqjCDo_skvz #VariousArtists #DieGroßeUnterganhsshow #FestivalGenialerDilletenten #Berlin #Tempodrom #1981年 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Event #Avant-Garde #Experimental #PopMusic #Multimedia #ConceptualArt #PerformingArt #VisualArtists #KriegsschauplatzTempodrom #Nekropolis #DieUnbekannten #WirUndDasMenschlicheE.V. #LebenUndArbeiten #DieTödlicheDoris #GutUndBargeld #Vroammm! #DreiMädelsUndDasMeer #SprungAusDenWolken #SentimentaleJugend #EinstürzendeNeubauten #DinATestbild
Neue Deutsche Welle (German New Wave) Vinyl on Demand 12800円Dr K2
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Mittagspause “s/t”
やっと手に入れました。独逸で2番目に早かったパンクバンドMittagspause (ミッタークスパウゼ)のファースト・アルバムです!元々のフォーマットは、7㌅2枚組でしたが、私が購入した再発盤では、12㌅LP盤になっており、かつリマスタリング/ミックスし直しもされています。また、ジャケも変わっています。 それで、先ず最初に、Mittagspauseのバイオグラフィーについて書いてみます。元々、1977年にDüsseldorfで結成されていた前身バンドCharley’s Girlに在籍していたPeter Hein (Vo; ピーター・ハイン), Franz Bielmeier (G; フランツ・ビールマイアー), Markus Oehlen (Drs; マルクス・オェーレン)から、1978年7月にMittagspauseは結成されており、その時点で、セカンド・ヴォーカルとして、後にDAFのVoとなるGabi Delgado-Lopez(ガビ・デルガド-ロペス)も加入しています。それで、Mittagspauseは、1978 年 8 月 12 日に開催された ベルリンの有名なクラブSO36のオープニング・フェスに初めてライブ演奏を披露しています。 1978年12月26日、Düsseldorf でのクリスマス・コンサートの後、Gabiがバンドを脱退したので、このオリジナル・ラインナップでの唯一のライブ音源は同名のコンピレーション・アルバムで聴くことが出来ます。それで、1979 年初頭に、Thomas Schwebel (G; トーマス・シュヴェーベル )がバンドに加入しています。バンドはベースレスで、独自のサウンドを作り出します。Bielmeierがリズムやコードを担当し、Schwebelが高音のメロディを担当する形になり、他のバンドよりやや遅いビートをOehlenがキープするようになります。1979年夏に、彼等はデビュー・シングル2枚組をリリースしており、これが、今回紹介するアルバムのオリジナルに相当します。この作品に収録されている2曲”Militürk” と”Ernstfall”は、その後も Fehlfarbenでも演奏されています。1979年末にリリースされたシングル”Herrenreiter”/“Paff”のB面”Paff”は、独の有名な女優/歌手Marlene Dietrich (マレーネ・デートリッヒ)の古いシャンソンのカバー曲です。Mittagspauseの最後のライブは、Bielmeierが企画した大晦日Rondoレーベルのコンサートで、1979年12月31日にNeussのクラブOkie Dokieで、1980年には、バンドは解散しています。ちゃんとしたLPを企画していましたが、その時はリリースされず、後に、この為のデモ音源が、1992年にWhat’s So Funny AboutからCDでリリースされた”Herrenreiter"に収録されています。解散前から、HeinとSchwebelは、サイドプロジェクトとしてFehlfarben (フェルファーベン)を始めており、解散後は、このプロジェクトをメインにやっていき、NDW以降も影響力の強いバンドになります。Bielmeierは、自身のレーベルRondoの運営に集中するようになり、また、Oehlenは、ビジュアル・アーティストとして活躍し、時々、Red KrayolaやFlying Klassenfeind等の色々なバンドにサポートとして参加したりしています。しかしながら、MittagspauseのアルバムLP”Punk Makes A Big Ass”は、グループ解散後の1981年にリリースされています。 以上が、Mittagspauseの略歴となります。それで、本作品(LP再発盤)の時のメンバーは、Peter Hein (Vo), Franz Bielmeier (G), Thomas Schwebel (G), Markus Oehlen (Drs)で、プロデュースはBernd SchmidtとMittagspauseによる共同作業で、再発に当たってのミックスし直しは、Peter HeinとPyrolatorで行なっています。内容的には、A面6曲/B面5曲が収録されています。それでは、各曲について紹介していきましょう。 ★A1 “Testbild” (2:41)では、シグナル音のようなGノイズとリズムを刻むDrs&Gがじわじわと盛り上がって、最後にVoが入ってきますが、Voがちょっと歌った後、”Testbild!”と叫んで終わります。 ★A2 “3x Nordpol” (0:31)は、ドカドカしたリズムを中心としたバンキッシュな小曲ですが、針飛びしているかと思ったら、テープ操作みたいです(びっくりしました!)。 ★A3 “Intelnet” (2:37)は、大歓声のテープ音で始まる小気味良いビートの曲で、ひたすら呪文のように反復するVoも面白い。途中で如何にもUSっぽいロッケンローなフレーズも出てきますが、何処か小馬鹿にしていそうです。 ★A4 “X-9200” (0:57)は、コーラスワークの冴えている、如何にも独逸っぽいパンクソング(Oiっぽい?)で、あっと言う間に終わります。 ★A5 “Militürk” (3:55)は、セミアコとG、それとミドルテンポのDrsから成る曲で、哀愁一杯なメロディが泣かせます。と思ったら、これはDAFの”Kebab-Träume”じゃないですか!その後の反復するコーラスワークも独逸っぽいですね。 ★A6 “InnenStadtFront” (1:08)は、バタバタした演奏から成るロッケンローな小曲で、早口Voも思い切りが良い。 ★B1 “Deutschland” (1:58)は、ジャカジャカしたGで始まり、硬い感じのリズムを演奏するGとDrsに、投げやりなVoから成る曲ですが、サビのコーラスが何ともイカしてます。 ★B2 “Derendorf” (1:25)は、Bのような低音Gで始まり、テンポがコロコロ変わる小曲で、かなり変なアレンジです。 ★B3 “Überblick” (1:06)も、2本のGの絡みが面白いバンキッシュな曲で、1本のGがB代わりに刻んでいるビートも、投げやりなVoもグーです。 ★B4 “In Der Tat” (1:50)も、バタバタしたDrsにGが絡む曲ですが、叫び声のようなVoがパンクっぽいです。途中にフリーキーなGが挿入されるのも秀逸です。この曲だけ録音が違っているようです。 ★B5 “Ernstfall” (3:51)は、段々と速くなるフレーズの後に、やや疾走感のあるDrsとGに合わせて、吐き捨てるようなVoが絡んでくる、中々緊張感のある曲ですが、途中のコーラスがヘナヘナで、かつ演奏も止まってしまいますが、直ぐに復活して、あっという間に終わります。 正直言って、「これがパンクか?」と言われれば、パンクよりも寧ろポストパンクではないかと思ってしまいます。ベースレスなのも一因かも知れませんが、とにかく、一筋縄では行かない曲が目白押しで、単に曲が短きて下手位しか、パンクロックの要素は見出せないです。しかしながら、視点を変えれば、これこそが「独逸のパンク」なのかもしれませんが、個人的には、S.Y.P.H.が一番近いようにも思えます。少なくとも、こう言うサウンドをUKやUSではパンクとは言わないでしょう。一番近いのは、NYCのNo Wave一派かもしれません。既存のルールから外れていくと言う意味で、正にパンクなんでしょう。まぁ、とにかく聴いてみて、判断してみて下さい❗️ [オリジナル・ミックス] https://youtu.be/uqcfVg0f6j0?si=t-FFP-qRimsmWIgg #Mittagspause #SelfTitled #PureFreude #FirstAlbum #Reissue #Remastering #Remix #SecondGermanPunkBand #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #PunkRock #Punk #GermanPunk #BasslessBand #NoWave #PeterHein #FranzBielmeier #ThomasSchwebel #MarkusOehlen #Co-produce #BerndSchmidt
Punk / German Punk Pure Freude $33.00Dr K2
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Die Tödliche Doris “…”
漸く、たどり着きました。独逸が誇るアヴァンギャルド・グループ、Die Tödliche Doris (ディー・テードリッヒェ・ドーリス)のファースト・アルバムです。特にタイトルとかは付いておらず、”….”なんて表記されていたりします。それで、Die Tödliche Dorisの命名については皆さんも知っているとは思いますが、英語に直訳すると”The lethal Doris”で、lethal dose(致死量)とDoris(女の子の名前)を引っ掛けた造語のグループ名で、そこら辺にも彼等が只者では無いのが分かると思います。そして、その結成には、1981年に西ベルリンで行われたイベントGeniale Dilletanten運動(ゲニアーレ・ディレタンテン; タイプミスをそのまま使っていますが、意味としては「天才的アマチュア」)が大きく関わってきます。このフェスでは、音楽、絵画、映像等を問わず、何か面白くて、新しいことをやろうとするのが、コンセプトだったようで、音楽方面からは、Die Tödliche Dorisの他に、Frieder Butzmann, Einstürzende Neubautenなんかのメンバーが集まっています。また、Die Tödliche Dorisのリーダーであり、作家兼音楽家でもあるWolfgang Müllerが出版社メルヴェ社に”Geniale Dilletanten”という本を書いており、これは、仏のポストモダン哲学者を独で最初に出版したこととして知られています。Die Tödliche Dorisは、ポップミュージック・グループに通常不可欠である一貫したアイデンティティを構築するのではなく、「慣習」や「固定観念」の概念に挑戦しています。 その代わりに、彼らはそれぞれの楽曲やプロダクションにおいて、「スタイル」とか「イメージ」に従わないようにしています。 ボードリヤール、フーコー、ガタリ、リオタールのポスト構造主義に触発されたDie Tödliche Dorisは、音によって作られた彫刻を解体したいと考えており、この音楽的、娯楽的、或いは非音楽的な目に見えない彫刻は、Die Tödliche Dorisそのものの身体となるはずだと言うことです。とまぁ、その頃のDie Tödliche Dorisは、ポストモダンのコンセプトで理論武装した頭脳派演奏下手バンドだった訳です。 それで、Die Tödliche Dorisの最初の12インチのアルバムにはタイトルがありませんが、通称”7 tödliche Unfälle im Haushalt (「家庭内の 7 つの死亡事故」の意味)” と呼ばれており、それは前回ご紹介しました。 その後、彼らは、1982年に”….”(通称”Die Tödliche Doris”と呼ばれています)をリリースしています。このアルバムには 13曲が収録されていますが、共通点は無いように思えます。つまり、「面白い」曲、「シリアス」な曲、その次が「平凡」な曲、「残酷な」曲、「ソフト」な曲、 どれも一緒に収録されるようには思えず、すべてのスタイルやテーマが互いに厳密に分離されて、バラバラになっている訳です。 なので、Die Tödliche Dorisは人間と同じように、多くの異なる矛盾した特性で構成されており、それらは 1 つの身体の中に存在しますが、同時に存在する訳ではないと言うことを表していると言えましょう。それで、彼等は、このコンセプトを更にレコードで再現することはできないとの考えに至り、「レコード」と言うメディア自体も解体することにしました。それが、あの有名な1983年作の”Chöre & Soli”で、要するに、音質の悪い小さなソノシート8枚とそれ専用のバッテリー付き再生機及びブックレットをボックスに入れたと言う作品です。この作品は、世界中のコレクターズ・アイテムとなっています。 と言うように、かなりコンセプチュアルな作品を作り続けているDie Tödliche Dorisですが、今回は、先述の”….” (通称”Die Tödliche Doris”)をご紹介します。何せ常に観客を裏切るのが、Die Tödliche Dorisであり、それを期待している観客を更に裏切ってくるとまで言われた頭脳集団の音ですから。先ずは、タイトル”….”のファースト・アルバムから聴いてみます。因みに、参加メンバーは、Wolfgang Müller(ヴォルフガング・ミューラー)とNikolaus Utermöhlen (ニコラウス・ウーターメーレン)及び(多分)Käthe Kruse(ケェーテ・クルーゼ)の3人ですね。内容的には、A面7曲/B面6曲が収録されています。それでは、各曲の紹介をしていきましょう。 ★A1 “Stümmel Mir Die Sprache” (3:37)では、単調なDrsに、男性の叫び声と女性のうめき声の阿鼻叫喚と歪んだBらしき音から成り、一部でコードを弾くオルガンやフリーキーなGも聴取されます。 ★A2 “Posaunen Der Liebe” (1:40)では、壊れたラジオのようなノイズが段々と分厚くなってきます。大声援のテープ音も最後に放たれます。 ★A3 “Der Tod Ist Ein Skandal” (4:29)では、何とも頼りな気ないDrsと存在感あり過ぎなBに、弱々しい男性Voが呪文のように流れ出してきます。 ★A4 “Panzerabwehrfaust” (0:13)は、叫び声とDrsから成る一瞬の曲で、直ぐに過ぎ去ります。 ★A5 “Wie Still Es Im Wald Ist” (2:21)は、チェロとおもちゃ楽器(?)をバックに、引き攣るような語り男性Voから成る曲で、不安感が部屋中に充満します。 ★A6 “Sie Werden Nicht Beobachtet” (1:50)は、ドカドカしたDrsに合わせた男性の叫び声と、そのバックでGが鳴っている曲で、その構造自体がヘンテコ。 ★A7 “Haare Im Mund” (3:35)は、単調なスネアの打撃音に、男性の叫び声Voと女性の叫び声の合いの手が乗る曲で、多層化されたクラリネットが挿入されたり、一瞬の大音量ノイズやBのループ音も加わります。 ★B1 “M. Röck: Rhythmus Im Blut” (2:27)は、言葉遊びのようなリズミックな合いの手に、スライド奏法のGとB及び男性Voが乗る曲で、その内、バックに伸びやかな男性コーラスが挿入されてきます。 ★B2 “Kavaliere” (3:42)では、多層化したリズムを刻むDrsに、フリーなクラリネットとGノイズ及び多重録音された男女Voが被ってきて、せめぎ合います。 ★B3 “Fliegt Schnell Laut Summend” (2:48)は、反復するアコーディオンの上に、語るような女性Voが乗る曲で、それぞれの音や声は多層化して再生されます。 ★B4 “Robert” (3:09)は、ホワイトノイズのリズムの上にナレーションが乗っていたと思ったら、いきなり、リムショットにフリーキーなBやG、或いはそれらの逆回転再生音が押し寄せますが、ナレーションは続いています。 ★B5 “Über-Mutti” (2:21)では、単調なDrsにBとGの不協和音と段々エキサイトしてくる女性Voが乗る曲で、まるで出来損ないのMarsのようです。それが数回繰り返されます。 ★B6 “In Der Pause” (4:25)は、リズムマシンとSynth-Bから成る曲で、ラジオ調のナレーションが重なってきます。しかし、リズムレスになってきて、音数は減少していき、そのまま終わります。 いやー、凄かった!と言うのが、このアルバムを聴いた時の第一印象です。とにかく、男女問わずにVoはただただ叫んでいるだけで、「歌う」ことはしてないです。Drsとかも多分、Kruseだと思いますが、とても叩いていると言える程のテクはないと思われます。メインVo(男性)のMüllerもただ喚いているだけのように聴こえますが、独逸語が分かれば、もっと楽しめるのでしょう。彼の歌の調子っ外れ振りが魅力的ですね。しかし、それらの外れた音をUtermöhlenがしっかり補完している感じで、ちゃんと「曲」として成り立たせ、ギリギリのところで一線を保っているのも凄いです。そう言う意味で、Die Tödliche Dorisは「天才的アマチュア」なのかもしれませんね。必聴の一枚です! https://youtu.be/iVMGLohJV1Q?si=efxh7yz5ZsMdO9q0 #DieTödlicheDoris #… #ZickZack #FirstAlbum #7TödlicheUnfälleImHaushalt #1982年 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Berlin #Avant-Garde #Dadaism #Fluxus #Noise #GenialeDilletantenFestival #WolfgangMüller #NikolausUtermöhlen #KätheKruse
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Avantgarde Zick Zack 不明Dr K2
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Die Tödliche Doris “Ohne Titel”
独の最大の「不思議」である致死量ドリスことDie Tödliche Dorisを紹介します。前回も書きましたが、正直言って、私は割とこう言う感じの音楽は避けてきました。あのWaveが出した2枚組は持っていますが、当時は、何故かピーンとはきませんでした。Die Tödliche Dorisのバイオグラフィーについては、前回もちょっと書きましたが、少しだけ復習を。グループは、1980年の西ベルリンの壁に設置されたTempodromで開催されていた、新しい表現を組合せたり、試みたりするイベントGeniale Dilletanten 運動 (ゲニアーレ・ディレタンテン[天才的好事家]; 本来の綴りはGeniale Dilettantenですが、意図的にスペルミスを入れて、そのままイベント名にしています)に参加していたWolfgang Müller(ヴォルフガング・ミューラー)とNikolaus Utermöhle (ニコラウス・ウーターメーレ)が中心となって、後に、Käthe Kruse (ケーテ・クルーゼ)、Dagmar Dimitroff (ダグマー・ディミトロフ)やTabea Blumenschein (タベヤ・ブルーメンシァイン)も加わり、Die Tödliche Dorisが結成されています。この時期には、コアメンバーの男性2人にDagmar Dimitroffの3人で活動していたようです。そのイベントには、他に、Einstrützende Neubauten, Frieder Butzmann (フリーダー・プッツマン)や Sprung Aus Den Worken (スプルンク・アウス・デン・ヴォルケン)なんかも参加しています。また、このイベントについてはドキュメント作品がありますので、そこで詳細を紹介することにします。 今回、取り上げたのは、Die Tödliche Dorisの1981年作の12㌅EP”Ohne Titel (オーネ・ティテール)”で、Die Tödliche Dorisにとっては初のヴァイナルです。これは、どう見ても”7 Tödliche Unfälle Im Haushalt(実際、A-1に収められている)”がタイトルになりそうなんですが、グループ側は、この作品のタイトルは”Ohne Titel (無題)”であると主張していますので、それに従うことにします。また、ジャケが素っ気ない感じなんですが、そこがまた彼等らしくもあり、好感が持てますね。内容的には、A面4曲/B面2曲が収録されています。それでは、各曲について紹介していきましょう。 ★A1 “7 Tödliche Unfälle Im Haushalt” (3:45)は、不安な響きのDrsとクラリネットに、男性Voが語り口調で乗る曲で、バックには怪し気なドローン音も聴取できます。多分、「家庭内における7つの死亡事故」について語っているものと思われます。 ★A2 “Tanz Im” (3:38)では、リズムマシンのビートに、男性の叫び声と何らかの空気音も聴こえ、途中からアコーディオンや囁き声も入ってきたりします。こう言う曲には「パンク」を感じますね。 ★A3 “Avon-Gard” (1:10)は、リズムマシンとDrsと木琴とアコーディオンに、男女語りVoが絡み合う、何とも忙しない小曲ですが、Voはダルダルになります。 ★A4 “Stop Der Information” (1:53)は、バシバシしたDrsにフリーキーなGと切羽詰まった男性Voから成る曲で、途中、短波ラジオノイズも聴取され、その成分は増えていきます。 ★B1 “Der Krieg Der Basen” (4:58)では、歪んだGカッティングと何かのノイズに、切羽詰まったように男性煽るVoが乗るのですが、時に別の女性?Voも挿入されてきて、それが更に不安を煽ります。そして最後には物音系な音も。 ★B2 “Der Astronaut Und Der Kosmos” (4:13)では、6/8拍子のリズムマシンと生Drsの単調なリズムに、リズムを刻むオルガン?と深いリバーブを掛けた語り口Voとコーラスが挿入されます。途中で音が変わって、クラリネットのフリーな演奏が不穏に鳴り渡り、再び男女のコーラスも復活します。 やはり、Die Tödliche Dorisは、LP位の長さでガッツリ聴いた方が良いですね。それにしても、彼等のぶっ飛び方は凄いです。それは、まるで「アート・パンク」のようです。何者にも縛られない発想と実践を、この最初の時点で既にやっていることに驚かされますね。12インチ45回転なので、音質も良好で、そこら辺も拘ったのか知りたいところです。それにしても、Die Tödliche Dorisの初期の魅力の詰まった、このミニ・アルバムは基本の基なので、是非とも聴いて欲しいです!「表現とは何か?」の発想の芽が感じられると思いますよ。 https://youtu.be/Prl3MzmqPS8?si=7GNPmuE6DyStYxiv #DieTödlicheDoris #OhneTitel #ZickZackPlatten #12inchEP #LimitedEditions #2000部 #FirstVinyl #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Avant-Grade #Experimental #FreeMusic #7TödlicheUnfälleImHaushalt #WolfgangMüller #NikolausUtermöhlen #KätheKruse #ChrisDreier #DagmarDimitroff #TabeaBlumenschein
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Avantgarde Zick Zack 8949円Dr K2
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V.A. “Sammlung - Elektronische Kassettenmusik, Düsseldorf 1982 - 1989”
1980年代は、カセット・カルチャーが爆発した年代であると思います。それは、単価が安いこと、世界中どこでも再生可能なフォーマットであること、それに送料などもそれ程高くないこと等の要因に加えて、当時、安価な録音機器やシンセ等の電子楽器が庶民の手に届くようになったことも、カセット・カルチャーを底上げしていたと思います。なので、多重録音も可能になり、宅録アーティストが多く出現したのだと思います。今回は、そんな時代(1982-1989年)に、独、特にDüsseldorfに活動の中心を置いていた宅録電子音楽アーティストのカセット作品からセレクトした曲を集めたコンピレーション・アルバム”Sammlung (ザムルング)- Elektronische Kassettenmusik, Düsseldorf 1982 - 1989”を紹介したいと思います。いわゆる、匿名性でのコンピでもある、この偉業を成し遂げたのは、いつもお世話になっている独レーベルBureau Bです。感謝! そのような時代背景を思い浮かべて聴いてもらえると幸いです。また、NDWに詳しい方は、Düsseldorfが1980年代初頭、様々なバンドを排出した都市としても重要であることが容易に予想出来ると思います。内容的には、A面6曲/B面7曲となっていますが、良く分からないグループ名が多いです。しかしながら、そう言う未知の音を聴くと言う楽しみを存分に味わいましょう。それでは、各グループと各曲の紹介をしていきたいと思います。 ★A1 Konrad Kraft(コンラッド・クラフト) “F” (5:08)は、クリック音から、複雑な民族音楽調のドラムマシンとピコるシーケンスの打ち込みから成る曲で、明確なメロディはハッキリしませんが、リズム重視なので、そこら辺が面白いですね。 ◉Konrad KraftはDetlef Funder(デトレフ・フンダー)のソロユニットで、この曲は1985年作ですが、1987年以来、SDV TonträgerやAuf Abwegenから最近までリリースを続けています。以前にも彼のアルバムを紹介しています。 ★A2 Deux Baleines Blanches (デュー・バライネス・ブランチェス)“Draht 8” (2:30)は、バンブードラムのようなドラムマシンとギターループから成るミニマルな曲で、音の質感がそれ程、電子的では無く、そのギャップがまた面白いです。 ◉DBBはStefan Schneider (G-Loop; シュテファン・シュナイダー)とHeinz-Adolf Tack (Synth; ハインツ・アドルフ・タック)のデュオで、本曲は1986年11月に録音されています。 ★A3 Ettlinger(エッティンガー) “bzw” (2:10)は、ホントにカシオトーンのリズムと簡単なシーケンスに、カシオトーンによるメロディが乗っかった曲で、プリミティブかつプリティーな曲になっています。 ◉Ettingerは、Stefan Ettingerのソロ名義で、Casio VL-Toneを使って、Fostex録音機器Model 250で多重録音した曲で、1982年作です。 ★A4 Mentocome(メントコメ) “b6” (4:28)では、民族打楽器らしきドラムマシンが、スカスカにプログラムされていますが、後半は硬質なリズムと微かなメロディに突然変化して、浮遊感から土俗性すら感じます。 ◉Mentocomeは、Axel Grube(アクセル・グルーべ)とRainer Robowski (ライナー・ロボヴスキー)のデュオで、本曲は1986年作です。 ★A5 Frigorex (フリゴレックス) “The Beginning” (2:51)では、ポップ調のドラムマシンとシーケンスなのですが、バックにはシンセの持続音が流れており、ピコった音も聴取でき、中々ファニーな曲になっています。 ◉Frigorexは、Dino Oon(ディノ・オーン)とKonrad Kraftのデュオで、本曲は1982年作です。 ★A6 Dino Oon “Nr. 6” (3:52)は、不協和音的で唸るオルガンのドローンから成る異色な曲で、時々、シンセやドラムマシンの短いシグナル音が入ってきます。 ◉A5のDino Oonのソロで、1989年作です。 ★B1 Pfad Der Tugend (ファド・デル・ツゲント) “Einklang” (2:26)は、バンド演奏で、テンポチェンジも含めて、始終、バックの演奏が主導権を握っており、その上をシンセが飛び回ります。 ◉PDTは、Martin Kobele (B; マルティン・コベレ), Jochem Simons (G; ヨヘム・ジモンズ), Heinz-Adolf Tack (Synth), Stefan Krausen (Drs;シュテファン・クラウゼン)から成るバンドで、1987年2月録音です。 ★B2 Kurzschluss (クルツシュルス)“L'Inconnu” (1:58)は、ポリシンセとシンセBから成るミニマルな展開の曲で、単音シンセがその上で踊っているように不明確なメロディを奏でています。 ◉Kurzschlussは、Catherine Ledit(キャサリン・レディット)のソロユニットで、本曲は1986年作です。 ★B3 Wooden Barrows “Zyklus VI” (2:29)は、ちょっとだけYMOを想起させるオリエンタルな雰囲気の打ち込みから成る曲で、そう言う意味では異色ですね。 ◉WBは、Andreas Bongartz (アンドレアス・ボンガルツ)とAndrea Bearch (アンドレア・ベアルチ)のデュオで、本曲は1986年にGood Boy Studioで録音されています。 ★B4 Le Petit Mort (ラ・プチ・モール) “Geheimes Wissen” (3:04)は、不気味雰囲気のドラムマシンとシーケンス成りますが、やはりバンブードラムのような音質が目立ち、民族音楽調、かつミニマルな曲です。 ◉LPMは、Catherine LeditとDirk Grutzmann (ディルク・グルッツマン)のデュオで、本曲は1988年に録音されています。 ★B5 Strafe Für Rebellion (シュトラーフェ・フュール・レベリオン)“Boston” (3:26)は、時計の音とディレイを掛けたキックに、チェロのようなシンセ音から成る不定形の曲で、時に野卑なヴォイスやテープループや色々なノイズ要素が挿入されます。 ◉SFRは、Bernd Kastner (ベルンド・カストナー)とSiegfried M. Syniuga (ジークフリード・M・ジニュガ)のデュオで、2人が全てのノイズと楽器を担当して、1988年に自身のスタジオで録音した曲です。 ★B6 Maria Zerfall (マリア・ツェルファール)“Wohin” (2:32)は、反復するシンセ音に、女性Voやテープ音も入るパワー・エレクトロニクスです。中々、様になっています。 ◉1986年作の彼女のソロ曲です。 ★B7 ADD “Dörper's Dream” (3:56)では、機械仕掛けの内部音に、オルガンとテープ音が被ってきて、更に不穏なメロディでダークな音像を醸し出しています。DörperってDie Kruppsの? ◉ADDは、Bernd Zimmermann (ベルンド・ツィマーマン)のソロユニットで、1983年作です。 He 「流石、Düsseldorf !」と言った幅の広い曲がコンパイルされていますね。それこそ、エレ・ポップ調〜ドローン〜パワ・エレ〜ノイズまで押さえてあり、Bureau Bの底力が発揮されています。数年前に、日本でもカセットブームがありましたが、最近のブームというのは、カセットはフィジカルとして、音はDLして聴くという感じが多かったのですが、ここに収められているのは、いずれもカセットのみで配給・交換が為されていた訳で、そこに大きな違いがあるようにも思います。そんな独のアングラ音楽シーンを支えていたカセット作品群の中でも、電子音楽に特化した点が興味深いです。そして、その音楽の振り幅も広く、興味深く聴けました。今でも通用する音楽もありますので、一度は聴いてみてはどうでしようか?面白い世界ですよー! B3 Wooden Barrows “Zyklus VI” (2:29) https://youtu.be/ZEOuYIAP174?si=Z0QXCoOQc8NGqCTO [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_meALp9YzQZvcovRewwvwg3nF63GNxsF6E&si=bfs5ZteUbdvsR1zi #VariousArtists #Sammlung #ElektronischeKassettenmusikDüsseldorf1982-1989 #BureauB #CompilationAlbum #CassetteCulture #Düsseldorf #1980年代 #Electro #SynthWave #Experimental #Industrial #Drone #Noise #KonradKraft #DeuxBaleinesBlanches #Ettlinger #Mentocome #Frigorex #DinoOon #PfadDerTugend #Kurzschluss #WoodenBarrows #LePetitMort #StrafeFürRebellion #MariaZerfall #ADD
Experimental / Electro-Pop / Industrial Bureau B €20.00Dr K2
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Lost Gringos “Nippon Samba”
久しぶりに入手しました。そうです、独ATA TAKのLost Gringosの12㌅EP “Nippon Samba”です。発売当時、私はこのEPは認識してはいたのですが、ジャケの余りにもやり過ぎ感が強くて、どうにも触手が伸びませんでした。しかしながら、NDWを極めようとする中で、どうしても聴いておかなきゃと思い立ち、海外購入した次第です。Lost Gringosについては、前回のEP “Troca Troca”の時に書いてありますので、そちらをご参照して下さい。それで、Lost Gringosは、Eberhardt Steinkrüger (Piano, Vo, Tapes; エバーハルト・シュタインクリューガー)とPete Jekyll (G, Sax; Programming [A1, B1]; ピート・ジェキル)のデュオで、今回は、Keiko Miller (Vo), Zins Zinsius (B, Wood-B), Karl-Heinz Tango (Drs, Perc, Vibraphone, Marimba), Hideto Sasaki (Back-Vo), Laurie Lovecraft (Back-Vo), Rudi Glaser (Back-Vo)が、ゲスト参加しており、A面2曲については、Pyrolatorがマスタリングを担当しています。ただ、Pete Jekyllは、ATA TAKのスタジオ・ミュージシャンのようで、このLost Gringosが本当の意味での「デュオ/グループ」だったのか?それともレーベルが仕掛けた洒落みたいな存在(ゲストも含めて)だったのか?は、今持って不明です。と言うことを念頭に置いて、各曲を紹介していきましょう。 ★A1 “Nippon Samba (Receitap'ra Sambar)” (5:30)は、打ち込みから始まるサンバ調の曲で、「歌え、踊れ、叫べ、行け、行け、日本サンバ!」を始めとして日本語の歌詞をKeiko Millerが歌っており、思わず脱力しますが、時に挿入される牛の鳴き声や自動車のクラッシュ音等が中々味わい深く、コラージュのセンスの良さを感じますね。 ★A2 “Ohne Dich (Sinti)” (2:25)は、一転、スパニッシュ調で、男性Vo(Steinkrüger?)が、フラメンコGとリムショットとWood-Bに合わせて朗々と歌っており、これはこれで脱力してしまいます。 ★B1 “Tambo Machay” (4:32)は、ドラムマシンとシーケンスに、シタール様の弦楽器が何となく中近東風で、囁くような男性Voがしっとり歌っています。細かいGやKbdも中々捨て難いポイントになっていますし、コーラスによる盛り上がりや民族楽器調のSaxもグー! ★B2 “Vida De Inés” (2:20)は、鶏の声で始まり、女性による語りと微かなアコーディオンらしきバックで始終さる曲で、正直、意味不明です。 この作品も、無国籍風というか、日本&ブラジル〜スペイン〜中近東〜スペインと言うように何の脈絡も無く、しかも沙汰なくこなしており、このレコードの存在意義自体が既に意味不明です。ですが、A1での歌詞もさることながら、サウンド・コラージュのカットインとかの手法は、当時としては画期的であり、そこに実験性を見出すことはできます。しかしながら、全体としては、ジャケのゴチャゴチャ感が彼等の本質なんだろうなと想像しますが、どうなんでしょう?それとも、単なる語呂合わせ的なおふざけなんでしょうか? Pete Jykeyll氏に直接問いたくなっちゃいますね。そんな珍盤です!好事家の方にもお勧めです。 https://youtu.be/kDF-9hyIOzA?si=T5Y7t9YS0kKzgpMJ #LostGringos #NipponSamba #AtaTak #1982年 #12inchEP #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #MondoMusic #NewWave #KeikoMiller #EberhardtSteinkrüger #PeteJekyll #ZinsZinsius #Karl-HeinzTango #HidetoSasaki #LaurieLovecraft #RudiGlaser #Mastering #Pyrolator
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Synth Pop ATA TAK €20.00Dr K2