Flipper “American Grafishy”

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またまた登場のFlipperです。このアルバムもCDは持っているのですが、どうしてもレコードで聴きたくて、購入しました。それで、意外かもしれませんが、1993年に出た、このアルバムは、1982年にファースト・アルバムを、1984年にセカンド・アルバムを出したFlipperにとって、スタジオ録音としては3枚目になります。その間に、3枚のライブ・アルバムを出してはいるのですが、やはり彼等はライブ・バンドと言うことでしようか? 後、関係あるかどうかは分かりませんが、オリジナル・メンバーのWill Shatter (B/Vo)が、1987年12月9日にドラッグの過剰接種で亡くなっており、そのこともあって、バンドとしての体制を立て直す為に、新たに、John Dougherty (B, Back-Vo)が1990年から1993年まで加入しており、また、VoのBruce LoseもBruce Looseと改名しています。なので、このアルバムでの編成は、Bruce Loose (Vo), Ted Falconi (G), John Dougherty (B, Back-Vo), Steve DePace (Drs, Back-Vo)となっています。また、シングル”Someday” c/w “Distant Illusion”を最後に、Subterranean Recordsを離れ、今回は、Def American Recordingsからのリリースになっています。正直、このアルバムをCDで初めて聴いた時は、「何て、Bが上手いんだ!」と驚きました。そんな新生Flipperの最初のスタジオ・アルバム”American Grafishy”を、今回はご紹介します。因みに、ジャケはTed Falconiによるドローイングで、プロデュースはFlipper自身によるものです。それでは、本アルバムの各曲をご紹介していきましょう。

★A1 “Someday” (4:18)は、流石にシングルになっただけに、ミドルテンポのFlipper節全開、かつ間奏で音数を減らしていくとかの新しいアレンジも加えての名曲となっています。
★A2 “Flipper Twist” (4:48)は、ノリの良いビート感に全員でのコーラスと、Voに専念しているBruce Looseのパンキッシュさも映える曲です。Ted FalconiのGは相変わらずです。
★A3 “May The Truth Be Known” (2:51)も、緩急を付けた曲調に、上下してドライブするBととめちゃくちゃなアレンジのG、それにパンキッシュなVoと言うFlipperらしい曲です。Bのコード弾きもグー!
★A4 “We're Not Crazy” (3:11)も、イカしたBラインに導かれて、突っ走るパンク・ナンバーで、サビのコーラス部分が堪らなくカッコ良く、またBruce LooseのVoもいつもにも増してパンキッシュです。
★A5 “Fucked Up Once Again” (5:31)は、スローテンポで、世の中にパンクがハードコアとして速さを求めるに対して、パンクのフィールドにあってFlipperの当初からのスローな曲は異質で、Bラインも割とミニマルで、Voは伸びやかに、Gは「良く分からない」、そしてDrsがテンポをキープしつつ盛り上げていくと言う彼等らしい曲です。
★B1 “Exist Or Else” (5:18)は、割とノリの良いビート感の曲で、Bもミニマルながら、そのテクがFlipperの音楽性をアップさせています。コーラスで歌うのも高得点です。しかしながら、Gは相変わらずの無茶振りです。
★B2 “Distant Illusion” (4:28)は、重く引き摺るようなBと煽りまくるVoとつんのめるようなDrsに、何だかよく分からないGから成る曲で、曲調は今までの曲の中でよりシリアスな雰囲気で異質です。
★B3 “Telephone” (3:18)は、割れた音色のBのリフから始まるノリの良い曲で、途中の「電話ヴォイス」も効果的です。もう、Gなんかは音を出しているだけのような「雑音装置」と化しています。
★B4 “It Pays To Know” (4:50)は、再び、ややスローでシリアスな曲調になり、必死で訴えかけるVoの迫力も流石です。繰り返すリフから成るBとそれを盛り上げるDrs、珍しくリフを刻みかけも、再び無関係になるG。完璧にFlipperサウンドです!
★B5 “Full Speed Ahead” (3:37)は、Flipper流「ロッケンロー」的解釈によるノリの良い曲で、Bにちょっとした所に上手さを感じますが、Gは相変わらずです。Voの迫力も満点で、最後の曲に相応しいです!

 本作品を聴き直して、気付いたことがあるのですが、単にBテクのあるJohn Doughertyが加入したからだけではなく、全体的に、曲のテンポが速くなっており、ノリの良い曲が多いこと、それとアクセントのように、スローでシリアスな曲も散りばめられていることが、このアルバムの最大の特徴ではないかと言うことです。今までの「何となくやる気のない」、コミカルというか「おふざけ」な雰囲気を払拭して、かなり真摯なロック・バンド的になったことに気付いてしまいました(まぁ、確かに前作より9年も経っていれば、それなりに大人にもなるか?)。だからと言って駄目だとかつまらないとかとは、全然思わず、新たな魅力を感じることが出来たね。それに、Steve DePaceの徐々に盛り上げていくドラミング(彼の役割は結構重要!)やTed Falconiのギターノイズにならない意味不明なGアレンジは、always greatなので、聴いていて安心すらしますね!それと、ヴォーカルに専念しているBruce Looseの迫力が凄いことも指摘しておきます。このアルバムは、Flipper史上最も「音楽的」でもあるので、是非ファンの方を含め、パンクロック・ファンの方にも広く聴いて欲しいですね! 後、「Flipperは、パンクとノイズを繋いだバンドだ」としたり顔で言う方がいらっしゃいますが、私はそれには賛同しかねます。それは、Flipperは、どこまで行っても、「クズとしてのパンク」を体現し続けているからです。

A4 “We're Not Crazy” (3:11)
https://youtu.be/5miq4YBIlMk?si=tX0J7PFNx2l0-l3m

[full album]
https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kpqZbH4qVLAWEPvN8tlXMmMu4vcaFa7kE&si=Ctva23rf1R--yY8J

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