DNA “A Taste Of DNA”

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名盤”No New York”の中で、唯一シンセを使っていたバンド、そして唯一日本人が在籍していたバンド、それがDNAです。その後、シンセ奏者のRobin Crutchfueldは脱退し、代わりにベーシストのTim Wrightが加入します。多分、このコンピ・アルバムで、初めてDNAと言うバンドを知った人が多いのではないでしょうか? その後も、メンバーのArto LinsayやIkue Mori、それにRobin Crutchfieldの活躍は続いています。今回は、DNAの第二期とも言えるTim Wright加入後に、初めてリリースされた12インチEP “A Taste of DNA”をご紹介します。当時、私はレコ屋でこれを見かけたのですが、シンセ奏者がいなくなって、ベースが入って、普通のロック・トリオみたいになったメンバー構成を見たので、その時は買いませんでした。まぁ、また縁あって、今回購入した次第です。
 では、先ず最初に、彼等のバイオグラフィーを書いておきます。DNAは、元々は、Arto Lindsay, Robin Crutchfield, Gordon Stevenson (その後、Teenage Jesus & The JerksのBとなる)及びMirielle Cervenka (LAのパンクバンドXのVoのExene Cervenkaの妹)の4人で、1977年に結成されており、そのバンド名は、同じNo WaveバンドMarsの曲名から取られたそうです。Ork Recordsの首謀者Terry Orkが、彼らをライブハウスMax’s Kansas Cityにブッキングしたのが、DNAの最初のライブです。しかし、この後、StevensonとCervenkaは脱退し、残った2人は、日本人で英語も余り出来ず、楽器の演奏経験も無かったIkue MoriをDrsとして引き入れます(因みに、Linsay自身も11本だけ弦を張った12弦ギターにまったくチューニングせずに演奏しています)。このラインナップで、Tier 3, CBGB, Max’s Kansas City等に出演し、1枚の7インチ・シングル”You & You”を録音しています。この最初の1年で、確固たるNo Waveバンドとなり、それでBrian Enoの目に留まり、先述のコンピに参加することになります。その録音後、直ぐにCrutchfieldは脱退し、彼は新バンドDark Dayを結成します。そこで、元Pere UbuのベーシストTim Wright (彼だけがちゃんと楽器を弾けました)が加入し、DNAは「通常のロック」トリオな編成となり、サウンドも劇的に変化します。音的には、更にシンプルでカクカクしたものとなり、Wright のBラインは、Lindsayの引っ掻くよう無調Gをサポートするために、時には威嚇的に演奏したりして、更にMoriの不規則なリズムも特徴となっていきます。その結果、曲構成はよりタイトで短く抽象的になって、「俳句」に例えられることもあったそうです。このラインナップは、1979年〜1982年で、カルト的人気を博しましたが、ロック・ファンと言うよりもアート関係者に受けていたようです。そうして、本作品でもあるDNAのEP(これをミニアルバムと言う人もいる) ”A Taste Of DNA”が、Kip HanrahanのレーベルAmerican Clavéで録音され、1981年には、英国Rough Tradeからもリリースされています。しかしながら、DNAの3人は、1982年にはバンドを解散することを決めており、ファイル・ライブは、CBGBでの3夜連続で、しかも完売!最後のアンコール曲は、Led Zeppelinの”While Lotta Love”のカバーでしたが、その後、John ZornのレーベルAvantからリリースされたCD”Last Live At CBGB”には収録されていません。その後、2004年には、DNAの音源を集めまくったセルフ・コンピCD“DNA On DNA”がNo More Recordsからリリースされています。各人のその後の活動については、またの機会にご紹介します。ただ、Wrightは、2013年8月4日に、癌の為、61歳の若さで他界したいます。
 それでは、第二期DNAによる初の12インチEP “A Taste Of DNA”の各曲について紹介していきたいと思います。この時のメンバーは、先述の通り、Arto Linsay (G, Vo), Ikue Mori (Drs), Tim Wright (B)で、NYCのVanguard Studioでの正式なスタジオ録音となっています。

★A1 “New Fast” (1:13)は、地獄から立ち上がるようなBに結構タイトなDrsと呻くようなVo及び痙攣するGから成る曲で、テンポは一定ではありません。このような短い曲で、一定のテンポを保たないのは、革新的ですね。
★A2 “5:30” (1:05)は、3拍子のリズムを刻むBにタム多用のDrsに、引き攣ったGとVoから成る曲で、比較的ノリも良いのですが、Linsayがそれに反発しているようです。
★A3 “Blonde Red Head” (1:55)は、コード弾きするBとやはりタムとキックから成るDrsに、針金のようなGと全てを拒絶するかのようなVoから成る曲で、ノリは良いのですが、まぁLinsayがぶち壊しています。
★B1 “32121” (0:53)は、独特のフレーズのBとそれを追いかけるDrsとGに、Voと言うか喚き声が挿入される曲で、やはりビート感は皆無です。
★B2 “New New” (2:49)は、Gの引き攣ったフレーズから始まり、やがてBとDrsが直線的なフレーズで主導権を握る曲で、それを繰り返すのですが、もうGとVoが破壊的過ぎます。
★B3 “Lying On The Sofa Of Life” (1:53)は、ヘビーなBとDrsのキックをバックに、喚くVoから成るスローな曲で、所々でBは弦を弾いてリズムをキープしています。この曲ではGはそれ程目立ちません。

 僅か10分足らずの作品ですが、コンピ・アルバム”No New York”の頃のミニマルな印象とは異なり、WrightのBがかなり曲の軸を為しており、また、適度に崩すMoriのDrsもコンピの時よりも、録音が良いのか?テクが数段上がっているのもポイント高いです。それに対して、LinsayのGとVoは、コンピの時よりも、破壊的/アナーキックに成っており、これらの要素が全て統合された本作品は、DNAの魅力を最大限に封じ込めているのかもしれませんね! アッと言う間に終わってしまいますが、傑作だと思います!
(後、直接関係無いですが、私と石橋英子さんとF. Kosakai氏で、DNAにあやかってRNAと言うバンドをやっていました。1枚”A Taste Of RNA”と言うCDも出していますので、良かったら聴いてみて下さい)

https://youtu.be/CeA4uaYBCUg?si=3DCihqWOk7fdlQGy

[オマケ: RNA 1st CD “A Taste Of…. RNA”]
https://youtu.be/v33SjGGSfVU?si=5V0ds8q5sgb1QyQl

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