Matthias Schuster “Atemlos”

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先ず、Matthias Schuster (マチィアス・シュスター)について語る前に、彼が在籍していたバンドGeisterfahrer (ガイスターファーラー)について少し紹介したいと思います。Geisterfahrerは、1979年、Hamburgにて、Michael Ruff (Vo; ミカエル・ルフ), Matthias Schuster (G, Synth, Vo), Hans Keller (Vln, Synth, B; ハンス・ケラー), Holger Hiller (Synth)とドラムマシンとで結成されています。それで、バンドは、地元のIn die Zukunft (イン・ディー・ツフンフト)フェスに初出演しますが、バンドのサウンドは即興の電子ノイズであった為、他のハードコア・パンク・バンドに電源を切られてしまいます。その後、Hillerは直ぐに脱退し、Palais Schaumburgに加入しています。代わりに、Jürgen Weiß (Drs, B; ユルゲン・ヴァイス)が加入しています。そうして、Geisterfahrerは、Zick Zackから最初にシングルを出したバンドとなります。しかし、スタジオの技術不足により、出したEP “Geisterfahrer (1980年作)”の音質は充分ではなく、彼等は、その後、メジャーレーベルと契約した最初のNDWバンドとなります。1980年に、デビュー・アルバム”Schatten Voraus (シャッテン・フォラウス)”をリリースしますが、VoのRuffの猩紅熱とペストについての歌詞と、Cold Wave或いはGothic Rockと言われるサウンドを組合せた音楽は、後にDark Waveと言われるもので、スタイルとしでは斬新でしたが、1980年頃はまだ奇抜過ぎて、孤立していました。その後、Hans Kellerが、NYCでジャーナリストになる為に、バンドを脱退し、バンドは3人組(Ruff, Schuster, Weiß)にスリムアップして、セカンド・アルバム”Fest Der Vielen Sinne (フェスト・デル・フィーレン・ジーネ)”をリリースしますが、よりロック志向となり、Joy DivisionやBauhaus的な方向(Dark Wave)により近づいていきます。シングル”Himmel Auf Erden (ヒンメル・アウフ・エルデン)”でちょっとしたヒットを飛ばし、この曲はNDWではよくサンプリングされています。その後、バンドはツアーを敢行、Erdem Güngörecek (B; エルデム・ギュンゲレチェック)が加入しています。その後、ライブを精力的行い、1983年に、サード・アルバム”Topal”がリリースされますが、これはメジャーレーベルとは別に自身のインディー・レーベルからリリースしていますが、以前程の成功には繋がりませんでした。そこで、Matthias Schusterは、Erdem Güngörecek (B)とMichael Bühl (Trampet, Trombone, Flute; ミカエル・ビュール)とで、バンドのMVとして、幾つかの実験的電子音楽のサントラを録音していますが、これらの曲は、1987年に、アルバム”The Other Side Of….”として限定盤としてリリースされています。1986年に、バンドは、Ruff, Schuster, Güngörecekの他に、Andy Giorbino (G; アンディ・ギョルビーノ)とKirsten Klemm (Cello; キルステン・クレム)が加入して、4枚目のアルバム”Fi$ch Gott (フィッシュ・ゴット)”をリリースしており、このアルバムで、バンドの初期の雰囲気/サウンドを復活させることが出来ました。しかしながら、その後にリリースした6枚目のアルバム”Stein & Bein (シュタイン・ウント・バイン)”は成功とは言えず、確かにタイトル曲は、ヒットしましたが、残りの曲は、英詩のメジャー路線であったようです。Güngörecekに代わって、Marco Van Basten (B; マルコ・ファン・バステン)が加入し、新録アルバム”The G-Far-I”を制作しますが、余り変わり映えしなかったので、バンドのメンバーは、それぞれがソロ活動を始め、Geisterfahrerは1990年以降、長い沈黙期に入ります。それで、2005年9月29日に、彼等は、新録シングルと、1979年〜1989年のベストCDで復活して、ライブを行いますが、Michael Ruffが2023年9月に癌の為、67歳の若さで亡くなってしまい、バンドは消滅しているようです。と言うのが、Matthias Schusterも所属していたGeisterfahrerと言うバンドなのですが、このバンドを含めて、Schusterが結構、NDWでも重要人物であったとのことです。そんな彼が、1981年にリリースしたのが、本作品”Atemlos (アテムロス; 息が詰まる)”です。そう考えると、Schusterは、結構、早い時期から、ソロ曲も作っていたことになりますね。ここでは、Jürgen Weißらをゲストに迎えて、他の楽器は全部Schusterが作曲・作詞・演奏してのアルバム制作となっています。なので、参加者は、Matthias Schuster (Instruments, Vo), Jürgen Weiß (Drs [A1, A3, A5, A6, B4-B6], B [B6], G [A3]), Jan T. Krahn (Sequencer [A3]), です。内容的には、A面6曲/B面7曲となっています。それでは、各曲を紹介していきましょう。

★A1 “Für Alles Auf Der Welt” (4:04)は、イントロのオモチャの機関車のようなパルスに、生Drsによる突進するような性急なビートとVoが加わって、時にSE的な電子音なGのカッティングも挿入され、生き生きとした曲に仕上がっています。
★A2 “Umarmung” (1:47)は、ドラムマシンのキックとシーケンスに、引き攣り気味のGとVoから成る曲で、中々の緊張感です。リズムは途中からディスコ調です。
★A3 “Schlaglichter” (2:38)は、シンセ音から生Drsと唸るBによるビートとVoから成る曲で、ロータムの重さが良い塩梅で、Gもフリーキーでカッコ良い!
★A4 “Language Trainer” (1:59)は、四つ打ちドラムマシンに、回転数の上げたVoと通常のVoの掛け合い?から成る曲で、ドラムマシンが煽っている感じです。
★A5 “Habari Gani” (4:09)は、エスノな生Drsによるリズムと時折のリリカルなピアノと不穏なシンセ音から成るインスト曲で、似非民族音楽的で、ちょっとだけThis Heatっぽい?
★A6 “An Rah Robeel” (5:42)は、シンセのパルス音に、リリカルでセクシーなピアノのメロディも絡んできて、不思議と落ち着いた雰囲気の曲になっています。途中から生DrsやシンセのLFOも入ってきます。
★B1 “Atemlos” (3:57)では、エフェクトの掛かったマーチングのようなドラムマシンで始まり、手弾きのSynth-Bと正体不明なSE音それにピアノ等も混在し、まるで音のアマルガムで、不安を煽ります。
★B2 “Harakiri” (1:08)は、単調なリズムに鈴等のPercやSE的シンセ音等が絡むインスト小曲です。
★B3 “G.F.” (2:39)は、ドコドコした生Drsとそのバックのシンセ音とシーケンスから成るインスト曲で、巻きつくシンセ音や赤ちゃんの声?も聴こえます。
★B4 “Geschichte Der Nacht” (2:23)は、生Drsの強力なビートとカッコ良いシーケンスに、Voが乗る曲で、時にヘンテコシンセやフリーキーなGも挿入されます。
★B5 “Verlangen” (2:26)は、水音のようなシンセとドラムマシンのキックに、シーケンスと生DrsとVoも入ってくる曲で、不思議なシンセのメロディも聴取できます。
★B6 “Mussuri Sana” (5:11)は、トライバルな生Drsとピアノの音が中心になるインスト曲で、Bも唸っています。バックには歌詞はありませんが、人声らしき音や不穏なシンセのメロディや物音系ノイズも聴こえます。
★B7 “Der Schwarze Engel” (1:09)は、雑踏の音と電子音をループから成るインスト曲で、最後はロックト・グルーヴになっている?

 インスト曲もあって、「音楽の海」への冒険心を刺激してくれるアルバムだと思いますが、何とも一筋縄ではいかない魅力にも溢れています。このソロアルバムを作った時に、既にGeisterfahrerはCold WaveとかGothic Rockと呼ばれていたことを考えると、Schusterの本来の音楽はこちらだったのでは?と思います。実験音楽と言う程、かけ離れたものではないですし、寧ろ、シンセをイジっていたら、こんな曲が出来たと言う初期衝動に近いものではないのでしようか。なので、色んなヴァリエーションがあって面白かったです。かと言ってバラバラでも無く、ちゃんとMatthias Schusterらしさも保持しているところも、一種の才能ですね。そんな体験、してみませんか?

A5 “Habari Gani” (4:09)
https://youtu.be/imN7Qdy9Izk?si=UGWUBXyr4jsxf3uP

[full album + bonus track “Ritual IV (remix)]
https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kj8wp4UnPOb9P8au6pna40XvhX5sClC2o&si=DJagJhHMenXscqmp

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