After Dinner “s/t”

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皆さんはもうご存知でしようか?今も関西のみならず、海外でもソロ活動を続けているHacoさんや音響のマッドサイエンティストとも呼ばれ、最新のマイクBAROm 1で”Utsunomia Mix”を支えている宇都宮泰さんが在籍していたバンドAfter Dinnerを! Wikiにも載っていませんでしたので、ちょっと調べてみました。結成は、1981年で神戸でHacoさんを中心に。そうして、1982年には、Hacoさんに、小森御幸(G, Drs), 志村学(Kbd), チャカ (B)を加えて、宇都宮泰さんのMUEスタジオにて、デビュー・シングル“After Dinner” c/w “夜明けのシンバル”を制作し、かげろうレコードからリリースしています。このシングルは、独逸国営放送で永久保存盤となったそうです。翌年、1983年には、MUEプロデュースにて、Hacoさんと小森御幸、志村学らの演奏に加え、管楽器/弦楽器の導入、前田笛風、川口雅明、奥田亮による民族楽器を用いた即興や、Hacoによるテープ構成作品など、アコースティックな音色と実験的なアナログ・テクノロジーが融合したファ-スト・アルバム”Glass Tube”をKang-Gung Recordsからリリースします。瞬く間に、Fred Frith, Chris Cutler, Robert Wayatt等の海外のアーティストから支持を得、Sounds誌では、「美味なヴォイスと共に伝統とエレクトロニクスがうまく落ち着いている」と好評価を得てます。1984年には、アルバム”Glass Tube”とファ-スト・シングルを合わせた構成の海外盤アルバム”After Dinner”を英国Recommended Recordsよりリリースしており、Marquee誌にて「日本の伝統的美意識をクリスタルのような結晶世界に封じこめたアフタ-・ディナ-の自主制作盤は、その音の魅力だけで海外リリースの壁を突破した」と高評価されています。After Dinnerは、Hacoさんの歌を核としながら、ニューウェイヴ、電子音楽、民族音楽、フィールド・ワークなど様々な要素が混ざりあう、独自の迷宮的音世界を構築しており、また、そのメンバー編成は、録音やライヴに応じて、自由自在に変わることがあったらしいです。そした、1987年には、仏MIMIフェスに参加を機に、初の欧州ツアーを、Haco (Vo), 横川タダヒコ (B, Vln), 井上一路(Perc, 和太鼓), 黒田清一 (B, 篳篥), 泉陸彦 (G), 山形秀行 (Drs), 宇都宮泰 (Tapes, Engineer), 林皇志 (Sub-Engineer)と言うメンバーで敢行しています。その際、英国Londonの現代芸術協会(ICA)でのライブを対して、英国Melody Maker誌は、「あいかわらず西洋ポップスべったりだった日本の音楽シーンを覆そうとする小さな底流を築いた」と評されています。1988年には、国内外でのライブ音源をHacoさんが自ら編集した作品”Souvenir Cassette”を日本のZero Recordsと英国Recommended Recordsからリリースしています。この時期、彼女達のライブでは、テープ同期やヴィジュアルの導入、ワイヤレス・ヘッドフォン、4スピーカー・システムによる実験的PAなどが話題のひとつでしたが、宇都宮さんが脱退した為、演奏形態や録音に新たな変化が生じています。1989年には、Hacoさんを軸にし、一色洋輔 (Kbd), 北田昌宏 (G: 元INU), 横川タダヒコ (B)の参加、及び多彩なゲスト・ミュ-ジシャンとの緻密な共同作業によって生みだされたセカンド・アルバム”Paradise of Replica”をスイスRecRec Musicと日本のZero Recordsからリリースします。RecRecの評では「明朗になったり、悲哀を感じたり、心象風景のチャンネルが瞬時に切りかわる航海のよう」とされ、そのポップで映像的なサウンドが各界で賞賛されています。同年、欧州19都市を巡るツア-をHaco (Vo), 横川タダヒコ (B), 一色洋輔 (Kbd), 福島匠 (Vln), 川崎義博 (Engineer)で行い、大評判だったとのこと。1990年には、Fred Frith主演のドキュメンタリー映画”Step Across The Border”(Nicolas HumbertとWerner Penzel監督作品)の中で、MUEスタジオでの録音風景やHacoさんのピアノの弾き語り等のシーンも含まれ、話題となっています。同年、フランス、ベルギー、イタリア、オーストリアの国際フェスに出演しており、メンバーは1989年と同じです。1991年には、カナダのヴィクトリアヴィル・フェスティヴァルに出演(Haco (Vo), 横川タダヒコ (B), 志村哲男 (笙), 川口雅明 (Drs, Banjo), 岡本大介 (Trombone, Kbd)と言うメンバーで参加しています。同年、アナログ盤”After Dinner”のCD再発の際、”Souvenir Cassette”の中から、5曲とライブ・トラック4曲を合わせた”After Dinner/Live Editions”を英国ReR Megacorpからリリースしています。このCDの国内盤は、Locus Solusが1997年から配給をしています。ただ、これを最後に、After Dinnerは活動に終止符を打っています。その後、Hacoさんや他のメンバーはソロや新しいプロジェクトで活躍していますが、2001年には、Hacoさんのプロデュースで、セカンド・アルバム”Paradise Of Replica”のリマスタリング盤と、ジョシュア・マッケイ (MACHA)、テリー・テムリッツ、SKIST、パスカル・プランティンガによるリミックス4作を加えた統合盤CD “Paradise Of Replica / Paradise Of Remixes”がBad News Recordsから国内で、米国Detector及び英国ReR Megacorpより海外でもリリースされています。また、2005年には、After Dinnerの1982年のデビューシングルと1984年の国内アルバムがリマスタリングされ、紙ジャケ仕様で復刻され、CD+mini CDセット”Glass Tube + Single”として、Disk Union傘下のレーベArcangelioから再発されています。

 それで、今回は、彼女達の1984年作のファースト・アルバム”Glass Tube”と1982年作のセルフ・タイトルのシングルを統合したセルフ・コンピ・アルバム”After Dinner”をご紹介します。多分、この時の参加者は、Haco (Vo, Kbd, Synth, Perc, Tapes, Miniture-Koto, Taisho-Goto, Plastic Flute, Tape-Splicing), 小森御幸/Miyuki Komori (G, Fretless-G, B, Drs, Perc, Vo), 宇都宮泰/Yasushi Utsunomia (Tapes, Vo, Synth, Taisho-Goto, Drs, B, Glass Tube, Peros), Chaka (B, Perc, Vo), 横川タダヒコ/Tadahiko Yokoyama (B, Vln), Masaharu Ito (Marching Drs, Soprano Sax), 志村学:Manabu Shimura (Piano, Vo), Tanii Yokokawa(Vln), 川口雅明/Masaaki Kawaguchi (Snare, Surumondal), Yukio Fujimoto (Field-Playing of Sound Object), Toru Shimamura (Field-Playing of Sound Object), Yoko Inui (Field-Playing of Sound Object), Ayuma Torii (Field-Playing of Sound Object), Teppei Maeda (Indian Pipe, Vo), Ryo Okada (Tabra), Kaname Nakagawa (Alto Sax), 黒田清一 /Seiichi Kuroda (Tenor Sax)と思われます。内容は、A面5曲/B面4曲で、シングルの曲はA1とB1です。それでは、各曲を紹介したいきましょう。
★A1 “After Dinner”は、太鼓と笙及びヴァイオリンをバックにHacoさんの初々しいVoが乗る曲で、途中にDrsや物音系Percが無骨に鳴り響く中、時々テープ音等の音も聴取できるパートもあります。
★A2 “Sepia-Ture I”は、不思議なリズムの構成に、Hacoさんの優しく語るようなVoが乗っている曲で、良質なポップソングになっています。
★A3 “An Accelerating Etude”は、虫の音のフィールド録音から始まり、不明瞭なリズムと自在なVoから成る不可思議な曲です。細部にまで凝りまくった録音になっており、それを気付かせることなく、聴かせるのは驚異です!
★A4 “Soknya-Doll”は、物音系PercとBに、HacoさんのコケティッシュなVoで子守唄のように歌う曲で、鉄琴や弦楽器等の色んな音が混じり合い、一聴、下手に聞こえるかもしれませんが、かなり緻密に作り込まれています。
★A5 “Shovel & Little Lady”は、タンバリンの弾語り(?)から成る小曲で、物音系音も時に挿入されます。冒頭で、本曲がバイノーラル録音されていることがアナウンスされます。曲自体は何だか儚い感じですね。 
★B1 “Cymbals At Dawn”は、軽快なマーチのリズムから成るポップソングですが、朗々と歌うHacoさんのVoと男性Voの対比に時代を感じますが、時に逆回転等のギミックを入れており、単なるポップソングには終わりません。
★B2 “Glass Tube”は、足踏みオルガンとアコギの爪弾きをバックに、HacoさんのVoが優雅に聴取でき、その後、物音系の音やフィールド録音にヴァイオリンも絡みますが、それすらも加工され、最後には、マーチっぽいポップソングへと再び変容していきます。
★B3 “Dessertは、アコギとタブラや物音系PercにSaxが段々と絡み合って、盛り上がっていきます。一種の宅録的な発想の曲ですが、かなり緻密です。そして、唐突に終わります。
★B4 “Sepia-Ture II”は、ワルツのリズムに乗って、輪舞のように踊る音やVoがなんとも優雅な一曲ですね。そして、当時の時代性に異議を唱えるべく、アコースティックな肌触りで、アルバムを締めています。

 本作品を聴いて、先ず思ったのが、「難解」な音楽だと言うことでした。確かに、シングルの2曲(A1とB1)は、比較的聴き易いのですが、アルバム収録曲は、どれも複雑な構成や緻密な録音が為されており、素直に聴くには情報量が多過ぎると感じました。ただ、逆にそう言う緻密さ/難解さを有した音楽であることが、当時、海外からも評価された一因ではないかな?とも思います。また、HacoさんのコケティッシュなVoと複雑な曲構成の対比も面白く、色んな聴き方の出来るアルバムだと思います。日頃、私が思っている「ポップ・ミュージックこそが、一番難解な音楽である」を再確認できた作品でもあるので、その真意を知りたい方は、是非とも入手して、体験してみて下さい❗️

クレジット
A1 “After Dinner”
A2 “Sepia-Ture I”
A3 “An Accelerating Etude”
A4 “Soknya-Doll”
A5 “Shovel & Little Lady”
B1 “Cymbals At Dawn”
B2 “Glass Tube”
B3 “Dessert”
B4 “Sepia-Ture II”

https://youtu.be/3CahygtsXQE?si=qHpL0SXRtkbgPnek

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