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- 1954-55 Town & Countory "Mallard Duck"
1954-55 Town & Countory "Mallard Duck"
さてと…『野生のマガモちゃん』柄です。トラウトの紹介の時に絵柄の製法については、さんざん書きまくったので、もう、このシリーズについて書ける事は大してないのであるが…
この個体の底面刻印が創業時の"UNITED STATES PATENTS"の最初の特許取得番号#2032695が、20年間の特許権保有期限が満了するに当り、再び継続申請した出願番号(取得後の特許番号)の#2517191に移り変わっている。
画像6でもわかる通り、特許出願中を示す文言(PATENT PENDING)が盛り込まれているため、刻印される文字数がジッポー史上、最も多いフルスタンプとなっている。
ちなみに、コールマンのランタン愛好家の世界では、燃料タンクに特許出願中(PATENT PENDING)の文言表示のある、Colemanロゴのシールの付いた200A(赤い色のシングルマントル・ランタンの型番)を略して、『パテペン』と呼ぶそうだが、ジッポーの世界では、特にそういった時期や年式にまつわる愛称は無い。
閑話休題…好みの分かれるところではあるが、私としては刻印文字がゴチャゴチャし過ぎていて、うるさく感じる。米国の製造物に関する表示義務法令で定められているからかもしれないが、元来、アメリカ人というのはどうも…製造物にこういった、より多くの文字数の刻印を打ちたがる傾向がある様に思う。
かつてアメリカ軍の正式拳銃であった"COLT GOVERNMENT MODEL 1911"の歴代のスライド刻印等をみても、社名やモデル名、製造工場所在地、特許取得番号、取得年月日などが、ご丁寧にも延々と刻印されている。
対照的なのは、旧ソ連のトカレフやマカロフ、スチェッキンASPなどのスライドは実に簡素な刻印で、シリアルNo.くらいで本当に殺風景なほど必要最低限の刻印しか打たれていない。
やはり、お国柄なのだろう…。そういった整然とした文字列を意味あり気に刻印する事が、欧米デザインの一部として一種の美意識の表れとなっている様に思う。
話は絵柄の事に戻るのだが、この個体…ケース本体の使用頻度というか、傷みの具合に比して、絵柄がやけにキレイなのだが、本来、ケースがこの状態ならば、もっと擦り切れて色を失っていても不思議の無いコンディションである。
聞くところによると…当時、ジッポー社はこの手のベイクド・セラミックの物に関しては耐久性の低さを承知していて、幾ばくかの追加料金を支払って郵送すれば、リペイントを請け負ってくれていたらしい。
これらのサービスは軍人の部隊章などを張り付けるサービスや、名前のイニシャル刻印などのサービスメニューにあったようだ。
このタウン&カントリーに代表される絵付け技法は広告柄としても活用され、グラマンやビーチクラフト、ガルフ石油などをはじめとする、名だたる大企業や、菓子・食品メーカーなどが色鮮やかな社名ロゴや商品パッケージをモチーフとした広告柄に採用している。
そういった背景から、'60年代後半くらいまでは絵付けが出来る人材が在籍していたと思われるので、製品の絵付け作業の傍ら…片手間で劣化したT&C定番柄のリペイントも引き受けていたのだろう。
なので、確証はないものの…この個体もひょっとしたら、そのリペイントサービスを利用して絵柄を修復した物であったのかもしれない。
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