- Shinnosuke Collectables Museum
- 4F "THE OLD TIMERS" Unforgettable Vintage Toy Guns
- TANAKA WORKS, S&W M10 2.5 in Real Custom
TANAKA WORKS, S&W M10 2.5 in Real Custom
今回から、まともな形で残った数は少ないが、お気に入りのトイガンの展示をやっていこうと思う。
まず第一回目はタナカの旧カートリッジ装填式のM10…つまり、ミリポリだ。発射性能に関しては多言無用のお約束(笑)
それでも、カートリッジをシリンダーに装填するアクションが出来るというのは大事なことだ。同社の最新機構ペガサス・システムはコロンブスの卵ではあったが、叶わぬことだ。
しかし、まあ、法で許されているとは言え…あれほど厳しいモデルガン規制に対し、ガスガンという似て非なるジャンルのトイガンはというと、銃身はすっぽ抜けで真鍮のインナーバレルまで入り、シリンダーもほぼ貫通状態。日本の銃刀法ってのは、なんともザルな法律だ。
ともかく…これが出た当時、とても嬉しかったことを思い出す。
タナカのS&W M10ガスガンの"近日発売"広告を見たのは、創刊して間がない頃のアームズマガジンであった。
当時、あまり馴染みの無いメーカーのタナカだったが、S&Wのフォルムを的確に捉えデッサンも良く、私のハートをワシ掴みにしていった。
それはそうだよね…
昭和46年のモデルガン規制前、全真鍮製のコルトガバメントやピースメーカー、ミリポリ、ブローニング1910などの素晴らしい高級モデルガンを少量生産で作っていた幻のモデルガンメーカー『六研』の故 六人部 登氏(以下ムーさんと呼称する)が、このミリポリの原形を設計・製作していたのだから。
さて、実際の私の所有するタナカ製S&W M10ミリタリー&ポリスについてだが、発売と同時に即購入。
そして、20代前半の若かりし頃の私は、Gun誌などの写真資料を徹底的に解析し、元々、外見的に良く出来たタナカ製M10に最後の詰めのディテール・アップを試みた。
S&W社の実銃工場で最終仕上げのフィニッシャー職人のヤスリ癖の特徴を最大限表現するため、一度、平面出しやシリンダーの真円出しをしてから、ワザとバフダレさせるといった研磨工程や、トリガーガード周りの独特のヤスリ仕上げなど、ツールマークも余すところなく再現した。
ここまでやろうと思ったのは、他でも無い。
これまた、アームズマガジンの巻末にあるショップ広告にABS製モデルガンのメッキを請け負うガンショップが現れたからだ。
確か、北九州のガンホビーショップだったと思う。ロイヤルブルーだか、ベルジャンブルーだったか名前は忘れたが、モデルガンメーカーの既成のメッキと違い、黒くて深みのある半永久的に褪せることのないメタルメッキなのだそうだ。多少、眉唾モノではあったが、これに賭けてみることにした。
元から、ほぼリアル刻印だったし、これで究極のリアル形状と最高の金属感を持った究極のミリポリを作れる…。
切ったヤスったを繰り返した後、その業者に結構高かった加工料金の入った現金封筒と、バレル、シリンダー、フレーム、サイドプレートなど、ABS製の主要パーツの包みを郵送した。
しかし、メッキが上がって来るまでホントーーーーに長かった…。あんまり長いんで詐欺かと思い始めていたが、待つこと10か月目でパーツが返ってきた。
待っただけの事はあって、硬度が高く厚みのある本当に素晴らしい上質のメッキであった。30数年経った今でも全く色褪せる兆候も無い。
今思うと…このメッキ、いわゆる『黒クローム』と呼ばれる工業用クロムメッキですから…そりゃ丈夫なわけですわな(笑)
早速、ケースハードゥン風に染め上げたトリガーやハンマーなどのパーツを組み付け、実銃用のS&W社製M10-7用のサービスグリップとテイラーのグリップアダプターを奢った。
タナカのM10の実銃モチーフは、S&Wのモノグラムの円形刻印がサイドプレートからフレーム左面に移り、バレルピンが省略されたM10-8(ダッシュ8と読む)なのだ。
本来、このグリップが付いているのは矛盾するのだが、M10-8のグリップはチェッカリングの面積が小さく、どことなく品祖なので、形の良かった1個前のモデルの物を採用したという訳だ。
と、さらっと書いたが…
こいつはガスガン。グリップフレーム一杯にガスタンクが鎮座している。もったいないが、実銃用グリップの裏面、メダリオンのワッシャーを外し、タンクの交渉する分だけリューターで削りまくった。
埒が明かないので、大型の彫刻刀の丸刃まで導入して、表のチェッカリングを突き破る2㎜手前ぐらいまでガリガリと掘削し、取り付けた。
やっぱり、ムーさんでもカート式ガスリボルバーの設計で一番悩むのは、ガスタンクをどうフレーム内にレイアウトするか…だったのだろう。
グリップフレームの形状も多少のアレンジが必要だったと思われ、実銃通りの形状とはならなかったようだ。
この個体では、むりくり実銃用木グリのアウトラインに合わせただけなので、実銃製造の時の共削りの様な完璧なフィット感は得られなかった。
しかし、このM10、さすがムーさんのデザイン。繊細なシルエットが美しい。
じつはこのミリポリ、コストダウンのためか、全体的にフレームの厚みが実銃より若干薄い。でも、気にしない。
ムーさんの伝説の作品である真鍮製ミリポリも、通常版はデラックス版と比べて若干薄いのだが、理由ははっきりしている。
当時、六人部氏がミリポリを作ろうとした際、採寸した実銃がミリポリそのものではなく、エア・クルーマンという、初期型のM12をベースにしたアルミニューム・アーロイ製フレームの戦闘機搭乗員用の携行銃の米軍払い下げスクラップ品から採寸したからである。
それらの事とは因果関係は一切無いかもしれないが…このM10もムーさんの作るミリポリの系譜なんだなぁ…と思えば、むしろ誇らしさすら感じる。
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