Runhild Gammelsæter & Lasse Marhaug “Higgs Boson”

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何故か、突如として、ノイズ・ミュージックが聴きたくなって、購入したままになっていたRunhild Gammelsæterと日本でも有名なLasse Marhaugのコラボ作品を聴いてみました。その前に、この2人について少しバイオグラフィーを書いておきます。
 Runhildの方ですが、調べてみて、ちょっとびっくりしました。彼女は、ノルウェー生まれなのですが、1995年〜1996年に米国バンドThorr’s Hammerの、2006年〜2008年にはKhlystのヴォーカリストをやっています。そして、現在は、オスロ大学医学部細胞生理学で博士号を取って、マジの生物学者として働いています。Thorr’s Hammerは、シアトルのBallardにて、Greg Anderson(G)とStephen O’Malley (G)によって結成されたデス・ドゥーム・バンドで、その時に交換留学生で渡米していた、17歳のRunhildがVoで加入し、その後、Jamie Sykes (Drs)とJames Hale (B)が加入して、バンドとして完成しています。ただ、6週間に2回だけライブをやり、デモテープを作成し、1997年に、The AwakeningからEP “Dommedagsnatt”をリリースしただけで、Runhildがノルウェーに帰国したことで、バンドは解散します。また、Runhildは、KhanateのJames PlotkinとのコラボからKhlystを結成し、2006年に、フルアルバム”Chaos Is My Name”を、2008年に、ライブDVD”Chaos Live”をリリースしています。因みに、Thorr’s Hammerは、2009年に再結成されています。
 一方、Lasseは、1990年代から、ノルウェーのノイズ・ミュージック/実験音楽シーンで活動を始めた最もアクティブな作曲家/ミュージシャンです。彼が関わったCDやレコード、カセット等は数年の間で300枚以上にも上り、かつライブや世界中でのツアーも持続的に行っています。また、Lasseは、ソロだけでは無く、ノイズ、実験音楽、即興、ジャズ、ロック、エクストリーム・メタル等のフィールドのアーティストとのコラボだけではなく、ダンスや劇場、インスタレーション、映画、ビデオの為の音楽にも関わっています。1990年代に、彼はTWR TapesとJazzassin Recordsの運営を開始しましたが、2000年代には、Pica DiskとPrisma Recordsを始め、更に、2011年には、彼自身の出版社Marhaug Forlagの運営も始めます。そして、彼は、プロデューサー、オーガナイザー、プロモーターとしても活動しています。彼は、ノルウェーの北極圏北部で生まれましたが、現在はオスロ在住です。Lasseについては、書き出すとキリが無いので、ザックリとこの位にしておきますが、彼が出版社している雑誌Personal Bestは旬のアーティスト/グループを取り上げ、大胆なデザインで作り込まれており、見るだけでも楽しい雑誌です。
 そんな2人の夢のコラボをキュレートしたのが、Stephen O’Malleyらしく、彼が2011年に作ったレーベルIdeologic Organから、本作品もリリースされています。本作品は、Runhild Gammelsæter (Vo, G, Bells, Digital Organ, Digital Piano, Processing, Lyrics)と
Lasse Marhaug (Electronics, Synth, Objects, Mix)によって作曲・録音・プロデュースが為されており、マスタリングは、Stephan Mathieuが行っています。また、迫力あるポートレート写真は、Jo Michael De Figueiredoによるもので、それらを使ったジャケ写等のアートワークはStephen O’Malleyによるものです。内容は、Runhildの天使と悪魔の間を行き来するような変幻自在のヴォーカリゼーションとLasseの絶妙なエレクトロニスクとミックスから成るバックトラックの融合であり、燻し銀のような熟練したサウンドに、時に呟き、時に叫び、時に淡々として、時に喉を掻き切るような、RunhlidのVoが多重的にミックスされています。歌詞カードと英訳が付いているともっと楽しめたようにも思います。A1とA2は連続しており、A3での大太鼓のようなゆったり重いリズムと乗る朗読調或いは地獄からの呻き声のようなVo、そして、不安定な音程のシンセの持続音とディレイを効かせた打撃音に呪いのようなVoが多層化したA4, 歪んだギターの不協和音を中心に、非常にゆっくりとした低音パルスに禍々しいVoや呻き声等が重なるA5でA面を締めています。B面も、極端にスローなディレイを効かせたキックで始まり、細かい電子粒やノーウェーブなギターに、再び、多層化したRunhild の恨めし気なVoと天使のようなVoが重なり、やがて救済のオルガンへと移るドラマチックなB1, ダルなギターのリフと絶妙な電子音のミックスをバックに、囁くようなVoが乗るB2、それに連続して、深い残響を掛けた歪んだ低音の強迫的な繰り返しと天使のハミングで始まり、朗読調のVoと変調Voが絶妙のミックスで乗るB3で、アルバムを締めています。ここに収められている音楽を一言で言えば、「ブラックメタルとエレクトロ化したスラッジ・コアから成るアブストラクトな音楽」と言えば良いのでしようか? 多分、北欧でしか生まれなかったような異様な音楽が詰まっています。女性Voと言うとDiamanda Galasも引き合いに出されるかもしれませんが、Runhildの過去の音源を知っていると、似て非なる背景を感じますが、両者の共通点(非キリスト教国の出自)もあるのかもしれませんね。因みに、33rpmで、なるべく良いオーディオで聴くようにとの注意書きがありますので、やはり、この手の音楽は、良いオーディオ環境で聴くことをお勧めします!

A1 “The Stark Effect” (2:52)
A2 “The Magus” (4:44)
A3 “Static Case” (3:56)
A4 “Ondes De Fase” (4:00)
A5 “Forces” (5:50)
B1 “Propeller Arc” (6:46)
B2 “Hadron Collider” (5:35)
B3 “These Questions” (9:55)

A1 “The Stark Effect” (2:52)
https://youtu.be/fvryyAF-lyk?si=k6W2GbtLAjzHmmWM

A2 “The Magus” (4:44)
https://youtu.be/9eiB-VrUYAU?si=fcG7zHR2aMMPqzqf

A3 “Static Case” (3:56)
https://youtu.be/5uM2XbWlqf4?si=5NSC3LQGUgAoSSzy

A4 “Ondes De Fase” (4:00)
https://youtu.be/SS-7RvkXBfA?si=h1NeWWMHnsMxckq1

A5 “Forces” (5:50)
https://youtu.be/6aDHDHK0hs8?si=FHCorUeIjbcJ7-Mc

B1 “Propeller Arc” (6:46)
https://youtu.be/YHxe8BzDpxg?si=eBW5JtV1vewOlu0H

B2 “Hadron Collider” (5:35)
https://youtu.be/s1d5MAgOoGA?si=7LAlPEIEM1SB3g9T

B3 “These Questions” (9:55)
https://youtu.be/rojyeWhIWJE?si=NugFeVfLIKUt0iqS

[BandcampのURLも貼っておきます]
https://ideologicorgan.bandcamp.com/album/higgs-boson

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