CHBB “s/t”

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CHBBを知っているかい?そう!あのデトロイト・テクノの源流とも言われており、1981年当時、最も先鋭的に電子音楽をやっていたChrislo HaasとBearte Bartelのデュオで、Liaisons Dangereusesの前身でもあるデュオのことです。当時は、10分カセット作品が4本(黒、赤、青、銀)50部限定で出ていただけで、その後、ブートでカセットやレコードが市場に出回ることもあったようですが、今回は、ちゃんと公式な発売で、しかも未発表音源も含む2枚組と言う仕様です。これは、
私が当時のRock MagazineでのNDW特集記事を読んで、死ぬ程聴きたかった音です。それで、ちょっとだけCHBBについて、このデュオ名はメンバーの頭文字を取っているのはよく知られていることですが、Chrislo Haasは、元々、初期のDAFに在籍しており、その時に知り合った(後にDer Planに加入するPyloratorこと)Kurt Dahlkeの使っていたKorg MS-20シンセとKorg SQ-10シーケンサーに魅了されて、DAFを脱退する際には、それらの機材に加えて、Korg MS-50シンセを購入し、毎日、黙々とこれらの機材で色んな実験を繰り返し、気に入った音等が出来た時には、サクッと録音をしていたとのこと。また、DAFのGabi Delgado-Lopezは、Virgin trilogyに影響を与えたのは、Chrislo Haasであると明言しています。一方、Bearte Bartelは、最初期のEinstürzende Neubautenの創設メンバーであり、その後、伝説のMの系譜Mania D.の創設メンバーでもあった女性アーティストで、Bartel自身もシンセに興味を持っており、新しいダンスミュージックを模索していました。CHBBは、そんな2人から結成されたデュオであり、各々の名前の頭文字を取って、CHBBと称されて、日々、上記のシンセを使っての音作りや曲作りに明け暮れていました。CHBB自体は1981年のかなり短い期間しか活動していませんでしたが、時々、後にLiaisons DangereusesのVoになるKrishna GoineauもVoで加わることもあったらしいです。そうして、3人で、Liaisons Dangereusesが結成されたのは必然であったと言えるでしょう。
 本作品は、元のカセット作品の装丁を思わせる簡素なデザインで、公式に発売された作品で、また、未発表音源も含まれることになっているのは、電子音楽系NDWのファンには堪らない内容ですね。それでは、CHBBの、このアルバム収録の各曲についてご紹介したいきましょう。(なお、*は未発表曲です。)

◼️黒
★A1 “Mau-Mau” (5:07)は、シンセで作った単調なリズムパタンに、変調Voと言うか変調ナレーションとホーンのようなシンセが被さる曲で、1980年代初頭の「不安感」を見事に表している。しかし、このタイトルはWolfgang Spelmannsとどっちが先だろう。
★A2 “Nbke” (4:53)は、一転、ダンサブルなシンセでのリズム隊に合わせてBartelのVoが奔放に歌う曲で、その奥には、チベット仏教の読経のような音(多分シンセ)も聴取できます。
★A3 “Bali” (3:18)は、マーチっぽいリズム隊に、金物様のPercと不明瞭なシーケンスから成る曲で、こじんまりと纏まっています。
★A4 “Schatten” (3:12)*は、S/Hを効かせた浮遊感のあるシンセ音から始まり、海獣の鳴き声のような低音シンセとランダムなシーケンスから成る曲で、一種の独逸人らしい遊び心を感じます。
★A5 “Highroller” (1:29)*は、重いキックの連打とシーケンスから成るミニマルな曲で、不器用に走り回る「何か」が想起させられます。
◼️赤
★B1 “Metall” (3:33)は、優しいシンセの持続音の後にいきなり機械の内部のようなシンセによるキックと電子(?)Percが挿入される激し目の曲で、至る所で金属質な音が聴かれます。
★B2 “Nobodies Perfect” (5:35)は、海辺での音風景のようにディレイ処理された音が寄せたり引いたりするノンビートの曲ですが、後半では、シンセの持続音にBartelのVoやその他のテープ音もその持続音上に聴取できます。ただ、薄らとシーケンスは入っているみたいです。
★B3 “Disconanz” (3:36)*も、太い低音持続音と不器用なホワイトノイズのスネアから成るミニマルな曲で、段々と圧迫感が増してきます。
★B4 “Voyage Au Bout De La Nuit” (4:34)*は、何とも奇怪なバタンのシンセ・リズムに一定のシンセ・ベースが並走していますが、途中で、ブレイク後、何かが逆回転しているようになり、BartelのスキャットVoやカエルの声みたいな音も顕になります。
◼️青
★C1 “Chou-Frou” (4:33)は、シンセで作った強靭なドラムに、Bartelの不明瞭な声やSE的シンセ音やテープ音が塗されたミニマルなダンス・ミュージックです。最後は戦場音に飲み込まれます。
★C2”La Petit Mort” (2:01)は、やや不明瞭なシンセのドラムに気体のような持続音とこれまた不明瞭なBartelのVoから成る曲で、最後で爆発します。
★C3 “Irriter Les Esprits” (3:00)は、ガマガエルのようなリズムがユニークな曲で、彼等の音に対する思考の柔軟さが良く分かります。
★C4 “Trigger Up Up!” (3:44)*は、割と正当なリズムとハイハットに、単調なシーケンスとSE的シンセ音が縦横無尽に飛び回る曲で、シンセの面白さや今までになかった楽器としての演奏を楽しんでいるようです。途中でテンポアップします。
★C5 “Klick-Clac” (1:31)*は、重いシーケンスとキック及びハイハットが中心になり、後退したシーケンスやシンセの微音も聴取されます。
★C6 “Speedloch” (2:59)*は、割とダウンテンポの単調なパタンから成るミニマルな曲で、所々でSE的シンセ音が挿入されますが、持続音にこそ成れ、決してメロディにはなりません。
◼️銀
★D1 “Ima Iki-Mashoo” (5:09)は、軽快なリズムパタンとシーケンスに、「今、いきましょ」と日本語で呟くようにVoが入る彼等の代表曲です、雷鳴のような音等も入っており、後半は、ドラムレスで、グラインドするようなシーケンスに、効果音的シンセ音や電子ノイズ音が絡みついています。
★D2 “Go Go Go” (5:06)は、気合い一発で、ダンサブルなリズムとシーケンスが始まり、変調した男女のVoが交差する曲です。電子Percも良い塩梅で、かなりダンサブルですが、唐突に、ループ音を挟んで、リズムパタンが変わり、シーケンスと共に、男性の声のテープ音が挿入されてきます。
★D3 “Monkey Rules” (3:33)*は、フェイドインしてくるキック音と何か良く分からないスネア音(?)から成るリズムに、不鮮明なベース・シーケンスと不明瞭なメロディから成る曲で、不安感が募ります。
★D4 “Shapeshifter” (2:44)*は、直線的シークエンスとポストパンク的ドラムパタンの曲で、不鮮明な女性Voに混じってディストーションをかけたシンセ音がGを模して演奏されている曲です。流石にこのアレンジは嗅覚の良さを感じますね。
★D5 “Two Track One” (1:23)*は、不可思議なパタンのシンセによるドラムパタンに、ランダムなシンセ音が絡んでくる小曲で、本作品を締めています。

 多分、レコード・ラベルの色が4色あるので、それぞれのカセット作品に対応しているのではないかと思われます。ただ、D面は、曲のパタン同士が繋がっていたり次の曲だったりして、1曲1曲の判別が困難でした。それにしても、Korgのシンセとシーケンサー(とテープ音や肉声)でここまで作り込んでくるのは、流石だと思いました。多分、Haasによるところが大きいと思いますが、先ず第一に、リズムマシンを全面的に使わず、シンセでキック音やスネア音を作っている所に感激しましたが、これはThe Future〜初期Human Leagueと同じ発想ですね。そして、ダンス・ミュージックを目指していたのか、感情に訴えるメロディを敢えて不鮮明にして、リズムパタンで曲を構築している所は、如何にも独逸人らしいなと感心しました。未発表曲も沢山収録されており、それだけでも、このアルバムの価値はあると思います。なので、ジャーマン・テクノに興味のある方には、これはマスト!

https://youtu.be/BG2ujGHnf_s?si=iBXfroFX-gIRj8U4

[partial album]
https://youtube.com/playlist?list=PLfcEHo81lTFyLtp4x5Jl-Ml2SHh_ShKG4&si=ktvMtYR6KXiZLXlH

[BandcampのURLも貼っておきます]
https://chbb.bandcamp.com/album/chbb

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