V. A. “Vidal Benjamin Presents: Uprooted #1 Vladimir Ivković“

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これを見つけた時は震えた!何せ、CHBBの音源がオフィシャルで入っているからだ!しかも、ジャケの作り1980年代前半っぽいモノクロで、中々センスが良い。と言う訳で飛びついた訳ですが、一応、スプリット・シングルなので、それぞれのアーティストについて調べてみました。それから、これは、Vidal Benjamin Presents Uprootedと言うシリーズものらしいのですが、まだこの1作しか出ていません。
 それで、A面のRex, Goran & Milanですが、
全員ルーツが東欧です。Rex Ilusiviiは、本名Mitar Subotić "Suba"で、セルビア生まれで、ベルグラード大学で電子音楽の研究を続けており、ユーゴスラビアでは、1980年代にはその国のニューウェーブ・バンドのミックスやプロデュースを沢山行っており、それ故に電子音楽の第一人者と称されています。彼は、Elik SatieやBrian Enoに興味を持っていたようです。1986年には、電子音楽とユーゴスラビアの民族音楽を融合したりして、UNESCOからの資金で、3カ月間、ブラジルのリズムの研究員としてブラジルに行きますが、そこでブラジルの音楽に惚れ込んで、サン・パウロに移住してしまいます。そこで、Milan MladenovićのプロジェクトAngel's Breathに参加、アルバム”São Paulo Confessions”の制作にも参加しています。それで、1999年11月2日に、彼の新しいパートナーBebel Gilbertoのアルバムのポストプロダクションを行っていたところ、煙草の火が原因で、スタジオから出火、彼はBebelと彼女の新作を何とか救い出そうとして、亡くなってしまいます。
 一方、Milan Mladenovićは、1982年に結成された、ユーゴスラビアのアートロック・バンドEkatarina VelikaのVo/Gかつフロントマンで、最初はハードロックが好きだったようですが、その内、Elvis Costello, Paul Weller, Andy Partridge (XTC)に好みが移っていき、1981年末に、Mladenović (Vo, G)は Limunovo drvo Gagi Mihajlović (G)を誘い、更にMargita Stefanović (Kbd), Bojan Pečar (B), Ivan Vdović Vd (Drs)を加えてKatarina IIを結成し、セルフタイトルのアルバムを出しますが、その後、Gagi Mihajlovićが脱退します。それで、バンド名をEkatarina Velikaと改名し、1985年にまたもやセルフタイトルのアルバムを出します。その後もセカンドアルバムを出しており、ユーゴスラビアでは重要かつ人気のバンドになります。1992年に、Mladenovićは、戦争反対プロジェクトRimtutitukiを結成し、1枚のシングルを出していますが、1994年春に、古い友人のRex (Mitar Subotić)とブラジルで、アルバム”Angel’s Breath”を録音しています。しかしながら、1994年8月に、膵癌が見つかり、同年11月5日に亡くなっています。
 Goran Vejvodaは、英国生まれのセルビア人作曲家/サウンド・ヴィジュアル・アーティスト/ パフォーマンス・アーティスト/ 写真家/作家/役者で、主に仏で活動しています。1980年代初頭に、Vejvoda (G)は、ガールフレンドのBebi Dol (Vo), Slobodan Trbojevic (B), Vd (Drs)でAnnika Rougeと言うバンドを組んでいましたが、何もリリースはしていませんでした。その後、彼は、Bebi Dolのソロ・シングル”Mustafa”や”Rudi”を出し、彼女のアルバム”Ruze i krv”も出しています。その後、Vejvodaは、ユーゴスラビアのニューウェーブ・バンドやシンセ・ポップバンドと一緒に仕事をしています。その途中で、Mladenovićが、電子音響音楽を学びに、1985年に、パリにやってきた時、Vejvodaは、彼とコラボ・アルバム”The Dreambird, in the Mooncage”を制作し、1986年〜1992年の間、ユーゴスラビア、イタリア、ブラジルの主要都市でラジオ放送されています。
 そんな東欧にルーツを持つ3人が、1984年、ベルグラードで録音したトラックを一部が、本シングルに収録されています。その3人が組むことになった経緯は判然としませんが、多分、この時期に、ユーゴスラビアに3人共いて、偶々、録音されたものではではないでしょうか。
 それから、B面のCHBBですが、このデュオは、元DAFのChrislo Haasと元Mania D.のBearte Bartelと言う男女で、名前の頭文字を取ってCHBBとしています。このデュオは、後に、あの超重要かつ超有名な独エレクトロ・バンドLiaisons Dangereusesの前身でもあり、50本限定の10分カセット作品4種類(赤、青、銀、黒)しか公式の音源は無く、過去にもブートレッグが出たりしており、マニア誕涎の貴重なアイテムです。内容の一部は、今はYouTubeでも聴くことができますが、Korg MS-20を中心に作ったハード・エレクトロニクスな作品です。恐らく、Haasのシンセ偏執狂的志向が反映されているものと考えられています。と言う訳で、今回の狙いは、B面のCHBBなのですが、調べてみると、A面も非常に興味深いですね。それでは、各曲を紹介していきましょう。
★A1 Rex, Vejvoda, Milan “Untitled”は、淡々と続くミドルテンポのDrsと単調なリフBに、恐らくシンセらしき音と過剰エコーを掛かった女性Voが被ってくる曲で、やがてGのカッティングが入ってきます。
★B1 CHBB “NBKE”は、重く激しいキックとホワイトノイズのスネアのリズムを中心に、Bearteの呪文のようなVoや民族的歌うようなVoが被ってきて、そのバックには不明瞭な電子音が聴取できる曲で、次第に電子音は無くなって、リズムとVoだけになり、曲もフェイドアウトしていきます。
 どちらかも抽象的な音楽なのですが、A面はロックの基本構成成分によって形成されているのに対して、B面のCHBBは、ほぼほぼ電子音と人声だけで形成されているところが違う点でしようか? 意外とどちらも面白かったです。それにしても、CHBBの音源が正規のルートで発表されたのは喜ばしいです。これを機に、4種類のカセット作品のリイシューとか未発表音源の蔵出しとかをやって欲しいですね。また、旧ユーゴスラビアの音源とかも珍しいので、また、規模を拡大して出して欲しいものです。このアイテムはある種コレクターズ・アイテムになるかもしれないので、買うなら今のうちですよ!

A: Rex, Vejvoda, Milan “Untitled”
https://youtu.be/8YkCSc5U9Ww?si=UmxGpdbYktgYmfGI

CHBB “Go Go Go” [“NBKE”はYouTubeに無かったので代わりに]
https://youtu.be/C4wC4LvA8T0?si=8N7prkrvZbLx6ca3

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