Snatch “Shopping For Clothes”

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皆さん、Snatchって覚えていますか? NYCのパンク・ガールズ・デュオで、Judy NylonとPatti Palladinが1980年代初頭にやっていました。私自身も、高校生か大学生の頃に、Snatchの名前は聞いていたのですが、実際の音楽を聴いたことがありませんでしたので、今回、偶々入手した12㌅EPを紹介したいと思います。

 先ず、Snatch(と言うか、彼女らそれぞれの)のバイオグラフィーを書いておきます。Judy Nylon (本名Judith Anne Niland)は、米マルチメディアアーティストで、1970年にLondonに行っていますが、1970年半ばには、米国Patti PalladinとパンクバンドSnatchを結成しています。Nylonは、当然、NYCとLondonのグラムロック、パンク、No Waveの影響を受けていましたが、彼女自身はそれらを録音してはいません。しかし、1982年に、彼女はAdrian Sherwoodとの共作アルバム”Pal Judy”を出して、話題になっています。一方、Palladinは、Nylonのアルバム”Pal Judy”に、"Trial by Fire"と言う曲を共作して、自身のバックバンドCrucialで参加もしています。そんなSnatchは、実は英国音響仙人Nurse With Woundのナース・リストにも関わっており、NWWの1980年のアルバム”To the Quiet Men from a Tiny Girl”のアートワークの一部を担当しています。Snatchは、1978年に、Brian Enoとの共作曲”R.A.F.”をEG Recordsのコンビ・アルバム”First Edition”に提供していますが、この曲にはバーダー・マインホフ(独逸赤軍派)の身代金要求メッセージがカットアップして使われています。また、Nylonは、Brian Enoの曲”Back In Judy’s Jungle”のモチーフにもなっており、Enoの1974年のアルバム” Taking Tiger Mountain (By Strategy)”からの抜粋”China My China”でも彼女が歌っているビデオがあります。なお、Enoは、1975年作”Discreet Music”の裏ジャケに、アンビエント・ミュージックの確立に影響を与えた人物の1人としてJudy Nylonを挙げています。一方、Palladinは、The HeartbreakersのJohnny Thundersとも関係を持っており、Thundersの1978年作ソロ・デビュー・アルバム”So Alone”と1985年作アルバム”Que Sera Sera”に参加、そして1988年ではThundersとPalladinはコラボ・アルバム”Copy Cats”をJungle Recordsからリリースしています。また、2人はFred Wise & Ben Weismanの”Craw Fish”のカバー曲を1984年に録音、オリジナルのレーベルPostcard Recordsとの和解後、Alan Horneが立ち上げたSwamplands Recordsからリリースしています。また、Palladinは、1980年辺りで、英国Flying Lizardsのメンバーになっており、1981年のアルバム”Fourth Wall”に参加しています。また、Palladinの曲”The Nuns New Clothes”は、London Recordsが1983年に出したコンピ・アルバム”The Batcave: Young Limbs And Numb Hymns”に収録されています。一方、Nylonの方は、1970年代には、VelvetsにいたJohn Caleとコラボしており、1974年には、Caleのソロアルバム”Fear”の中の曲”The Man Who Couldn't Afford to Orgy"にスポークンワードで参加、ライブや他の録音にも参加しており、Caleの1987年作のライブアルバム”Even Cowgirls Get the Blues”にも参加しているのが確認できます。また、PalladinとNylonは、Johnny Thundersの1978年の初期のライブで、バッキング・ヴォーカルをやっています。

 とまあ、Judy NylonとPatti Palladinは、それぞれ重要な場面で登場し、活躍している訳ですが、肝心のデュオSnatchに関しては、今一つよく知られていませんし、録音物も多くはありません。唯一のセルフタイトルのアルバムは、1983年にPandemoniumからリリースされています。また、シングル/EPは長い活動歴にも関わらず3枚だけです。その中で、今回、ご紹介する12㌅EPは、先述のように、John Caleのプロデュースで録音されています。そして、A面は、LAのドゥアップ・グループThe Coastersの曲のカバーで、B2では、Brian Enoとの1978年共曲”R.A.F.”に使用したヴォイス・サンプルを流用しており、その最後はロックト・グルーヴとなっています。それでは、各曲を紹介していきましょう。
★A “Shopping For Clothes” (5:16)では、原曲の断片をサンプリングしてバックトラックを作り、2人(メインはJudy Nylon?)がスポークンワードっぽく歌うと言う曲で、それにGノイズやフリーキーなSaxを少し加えて、異形の「ジャズもどき」な曲に再構成しています。
★B1 “Joey” (3:12)は、コンガとエレピらしき音によるエスニックなリズムに2人が歌っている曲になっていますが、何故か「似非エスノ」な臭いがします。
★B2 “Red Army” (4:49)は、四つ打ちキックとファンクっぽいBに、バーダー・マインホフの録音や2人による朗読が乗り、更にシンセらしき電子音やGノイズが挿入される曲で、個人的には、吉野大作&プロスティテュートの名曲”M.U.R.A.”との差異が興味深いです。

 何となく、No WaveとNYCの狂気(これはJohn Caleによるものか?)が混ざった、とんでもない音源だと感じました。素っ気ないジャケも余計に拍車をかけています。勿論、B2の政治的アウト感もそうなんですが、A面のサンプリングを上手く使った「似非ジャズ」への変換/ カバーが素晴らしく、全く原曲を感じさせない極めて冷徹なノリに感動すら覚えました!こりゃあ、LPも買わなきゃだな。

https://youtu.be/FCHrW2R4FGc?si=m6mJVr_B2SXkgs8P

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