John Duncan “Riot”

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これは基本の一枚ですね。John Duncanが在日中に録音した音源を当時の彼のレーベルAQM(All Question Music)よりリリースしたアルバム”Riot”です。元々、彼はコンセプチュアルな面が大きく、また,当時から彼の代名詞とも言える短波ラジオの音を大々的に使っていると言う意味で、是非とも聴いておきたい一枚となります。何度か他のレーベルでも再発されている「古典的」作品です。彼の音源としては、サードアルバムになります。前回も少し触れたかも知れませんが、彼のバイオグラフィーを少し(と言うか、彼の行動力は凄まじく、一言で言えない位の活動をしている)。カリフォルニア芸術大においてAllan Kaprow氏の元で絵画と心理学を学んでいた彼は、パフォーミング・アーティストとして活動を始めます。それが1970年代中頃です。当時は、Jerzy Grotowskiの「貧乏人劇場」やウイーン・アクショニズムのアーティストRudolf Schwarzkoglerなどに影響を受けた形で行われていたとのことです。例えば、 ”Scare”と題されたパフォーマンスでは、慎重に選ばれた2人(Tom RecchionとPaul McCarthy)に空砲のピストルを渡し、交互に引き金を引き合うと言った「恐怖心」に関するものでした。最も彼の有名にしたのは、”Blind Date”と名付けられたパフォーマンスで、それは女性の死体を屍姦をした時の音を真っ暗なステージの中で流すと言うものでした。この頃から、彼はPaul McCarthyと交流を持ち、彼のスタジオでビデオ作りに励んでました。”No”と題されたパフォーマンスは、彼がより多くの観客(?)に見せる為に、ラジオ放送を使い、一種の「心理学的テストと身体的反応」を観るもので、後に生体エネルギーの解析と呼ばれるものです。1978年に彼はLAFMSと接近し、Tom Recchion,やFredrik Nilsen及びJoe Pottsと音楽的なコラボを開始します。その結果が、1979年にリリースされた ”Organic” と言う彼の最初のソロアルバムになります。この後、彼は短波ラジオを使ったEP”Creed”を1982年にリリースし、そこには”Happy Homes”と題された完全版の放送作品が収められています。1982年から1988年の間、彼は活動の拠点を東京に移します。そこで、日本のノイズ・ミュージシャン(秋田昌美、灰野啓ニ、非常階段など)の交流します。この間に、彼は、Cosey Fanni TuttiとChris Carterとのコラボ作品”Kokka (国歌)”や自身のソロアルバ ”Riot”と”Dark Market Broadcast”をリリースしております。(やっとここまで来ましたか。)、1986年に発表された”Cast”と題されたパフォーマンスでは東京のSecond Annual Alternative Media Conferenceの女子トイレの隠し撮りをビデオで流し、これに短波ラジオのコラージュを組み合わせています。彼のパフォーマンスは日本の正規のギャラリーでは出来なかったので、この様な扇情的パフォーマンスを、敢えて国会前や日比谷や渋谷の街中で行っています。また、80年代中頃から、彼はカスタマイズされたトランスミッターで海賊放送を始めます。周波数はNHKのそれを超える形で、電波法(警察)に引っかからないように、一日に12分間だけ放送していました。また
この時期,彼は多数のビデオや映画も作製しており、特にKukiのアダルトビデオの作製にも関わっていました。実は私もある企画で彼と競演しているのですが、彼は自分自身はステージには立たずに、短波ラジオによるコラージュ音のテープを流しただけでした。その時はその意義な分からなかったのです。また、彼のライブも何回か観ましたが、無修正のアダルトビデオにノイズを被せると言うもので、彼は自分の姿をステージには見せなかったですね。一種のショック・タクティクスですね。その後、彼はアムステルダムへ拠点を移しますが、今回はここまでとします。
それで、今回、紹介する作品”Riot”は、当初、ピナコテカ・レコードからリリース予定だったので、録音などは佐藤隆史氏の協力の元に行われています。A面片面全部を使った表題曲”Riot”は、短波ラジオや軍のモールス信号などのコラージュから成ります。B-1”Hungry”はLAでのPaul McCarthyのパフォーマンスの時の観客の声のミックス音、B-2”Last Words”は1983年に行われた「天国注射」の時の音源で、短波ラジオ音の垂れ流し音源を、そしてB-3”Yoika”では、増幅された鉄製ドアを閉める音に、英語の詩を和訳・朗読した音源を収録しています。また、裏ジャケには被爆者の写真を使っています。多分、彼の意図は心理学者ウィリアム・ライヒのやり方で、扇情的な効果を狙ったものだと思いますが、その謎解きは、各々が考えてみてください。ちょっと長くなりましたので、ここまでにしておきますが、John Duncanは今でもバリバリ現役で活躍しているので、そのパフォーマンスや作品の意義を考えるのも一つの楽しみ方かもしれませんね。

A “Riot”
B1 “Hungry”
B2 “Last Words”
B3 “Yoika”

[RRRecords版]
https://youtu.be/5UAxan43R1w?si=QO1DFvNJPsBLIXMD

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