倉俣史朗のデザイン  記憶の中の小宇宙   続き #1

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氏のもっともよく知られる代表作「ミス・ブランチ」 アクリル内でバラが宙を浮遊する。
バラの造花が透明アクリルに封入された椅子、
液体状のアクリルを徐々に注ぎながら、造花をピンセットで配置し製作される。
倉俣事務所のデザイナーだった五十嵐 久江さんは、まさにこの瞬間に立ち会われていた。

愛称はテネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』のヒロイン/ブランチ の名にちなむ。 
「ミス・ブランチ」はほとんど手作りに近く高価だった事もあり56脚しか作られなかった。 そしてその数字は彼の享年である。

板ガラスを組み合わせただけの「硝子の椅子」
三保谷ガラスが持ち込んだ、フォトボンドの製作サンプルを見た 氏がヒラメキ、30分でデザインを起こした。
三保谷さんもさすがで、翌日には倉俣事務所に完成品を持ち込んだとの逸話が残る、1976年のことだ。
訊ねてきた友人たちに「硝子の椅子」に座つてもらう。
緊張したその様子を微笑みながら眺めていたそうです。
200㎏の耐荷重試験のスナップもUPしました。

エッジに3㎜のスチールロットを溶接したエキスパンドメタルの椅子。
「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」
アームチァーの形は保持しているが、ほとんどが空気により形づくられた椅子は「存在していながら、存在していない」という哲学的な問いを投げかけてくる。

「重力から解放され、素材の中で多様な軽やかさが現れる時代」
これまでのストイックなデザインから、
解放されたように自由な創造性を獲得していった。

最期の画像は、ヨーゼフ・ホフマンへのオマージュ「ビギン・ザ・ビギン」
オーストリアの建築家、ヨーゼフ・ホフマンが1920年代にデザインした「№811」にスチールの平棒を巻き付け、
ガソリンを撒いて椅子ごと焼き、平棒を椅子状に残した衝撃のアートピース、1985年。
椅子を燃やす時、倉俣はそっと手を合わせたという。

家具デザインについては「自分の思考の原点を確認するための手段」と考え、
180点余りの優れた家具デザインを遺している
日本におけるインテリアデザインの魁です。

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    tomonakaazu

    2023/12/31

    世田谷美術館での展示を見に行きました。ほんとうにユニークな、稀有な存在のデザイナーだったと思います。展示は、ずいぶん幅広く作品が集まっていて見応えがありますね。蔵書の一部が紹介されているのも、とても興味深く見ました。

    会場内で写真が撮れたら、もっとたくさんの人がその素晴らしさに気づいて見に行くのに〜〜、と思ったり。

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