V.A. “From Brussels With Love (ブリュッセルより愛をこめて)”

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1980年代の一つの傾向として、それまでは大雑把に言ってしまえば、ロックの中心は英国だったり、米国だったり、せめてものとして独クラウトロックやNDWであったりした訳でしたが、他の欧州の国から新しい音楽が、それこそカセット・カルチャーの拡がりと共に出てきた時代であったのではないかと思えます。そんな中でも、ベルギーのレーベルLes Disques Du Crépuscule (ラ・ディスクス・ドゥ・クレプスキュールと読む?通称「クレプスキュール」)は、独特の美的センスで、国に関わらず、精力的に活動していました。そんなクレプスキュールが、1980年にカセット作品として、自らの立ち位置を示す為にリリースしたのが、本作品のオリジナル”From Brussels With Love”です。ザッと眺めてみても、重鎮〜若手の旬なアーティスト/グループの音楽やインタビューが目に付くと思います。それで、このコンピのことを少し調べてみると、1980年リリースのオリジナル・カセット、1983年の再発カセット、1984年の日本盤、1986年のLP再発盤、1987年のCD再発盤、2020年のCD2枚組再発盤で、収録アーティストや微妙な収録時間、そして収録順序がどれも違っており、始め、本作品には日本語も併記されていることから、日本盤かとも思ったのですが、曲順等からして、1980年リリースのオリジナル・カセットに一番近く、2020年の40周年祈念の再発盤と特定しました。そもそも収録時間(カセット作品だと微妙にズレたり伸びたりしますから)も微妙に異なる表記が為されていますし、ジャケ写だけでは見分けがつかなかったです。と言う訳で、個々のアーティストについてはもう書きませんので、皆さん各人で調べてみて下さい。それでは、各収録曲(インタビューも含む)をご紹介していきましょう。

◼️LP1 (黒盤)
★A1 John Foxx “A Jingle #1” (0:25)は、単音シンセのメロディの残骸と言うシンプルさです。
★A2 Thomas Dolby “Airwaves” (5:14)は、ピアノの弾き語りから始まり、リズムマシンとBとシンセが支え、時にシンセ室内楽も入ってくる叙情派の曲です。
★A3 Repetition “Stranger” (3:35)は、Gとかで始まり、女性Voが入ってくると、DrsやBが入り、更に違うGも入ってくる曲で、最後にシンセも入ってきますが、結構、VoとBがキモだと思います。
★A4 Harold Budd “Children On The Hill” (5:10)は、ポロンポロンと弾くピアノ、しかもホンキートンクな音色のピアノをひたすら弾くリリカルさに、ノスタルジーを感じます。
★A5 The Durutti Column “Sleep Will Come” (1:50)では、簡素なDrsとBに、エレピと茫漠としたVoが小曲の中に詰め込まれています。
★A6 Martin Hannett “The Music Room” (4:40)は、単調なリズムマシンに主張の激しいGが唸るインスト曲です。荒ぶる中に叙情性を感じます。
★B1 The Names “Cat” (3:15)は、怪しげなBに鋭いGのカッティングとノリの良いDrsで始まり、女性Voと主張するストリング・シンセが如何にも欧州的な曲ですね。
★B2 Michael Nyman “A Walk Through H” (4:50)は、おもちゃ箱をひっくり返したような単音連打でのピアノやピッコロ等の楽器の演奏から成るインスト曲です。
★B3 Brian Eno “Interview with Brian Eno” (10:00)では、インタビュアーが尋ねると、バックの持続音の音量が上がります。「音」で答えると言うことかな?
★B4 John Foxx “A Jingle #2” (0:08)は、B3と連続しているようで、殆どの聴き取れません。

◼️LP2 (白盤)
★C1 Jeanne Moreau & Michel Duval “Un Entretien Avec Jeanne Moreau” (8:50)は、ラジオ体操のような明るいピアノに、おばさんのような声が語りのように乗る曲で、良くマッチしています。途中で、ピアノの伴奏がワルツのリズムに変わります。 
★C2 Richard Jobson “Armoury Show” (1:23)は、スポークン・ワードで、シアトリカルに発声しているようです。
★C3 Bill Nelson “The Shadow Garden” (4:07)では、逆回転を利用して、その中に正回転の音も混ぜていき、ディレイを効かしたGやシンセで、見事なアンサンブルを作り出しています。なおインスト曲です。
★C4 The Durutti Column “Piece For An Ideal” (2:05)は、ピアノと繊細なガラス細工のようなG、そして極めて簡素なドラムによるインスト曲です。
★C5 A Certain Ratio “Felch (Live At Hurrah, New York)” (3:25)は、力強いキックとPercに、ややファットなBから、怒涛のようにファンク・サウンドに変わり、トランペットやGも混じって、熱演をしていますが、Voが何だか弱いですね。
★D1 Kevin Hewick & New Order “Haystack” (3:35)は、軽く掻き鳴らされるGとミディアムなリズム隊に、女性Voが親しげに歌う曲で、怠い感じがまた良い。それと間奏のオルガン風シンセが一癖ありますね。
★D2 Radio Romance “Etrange Affinite” (2:40)は、ビョーンと言うシンセとGで始まり、リズムマシンのビートに乗せて、Synth-BとGをバックに、やや舌足らずの女性Voが元気に歌う曲で、Saxも中々の味を出しています。
★D3 Gavin Bryars ”White's S.S.” (5:00)は、重いピアノと弱々しい高音のピアノから成る演奏に混じって重低音ドローンが入ってたりするインスト曲ですが、表題はポリコレ的にマズいのでは?
★D4 Der Plan “Meine Freunde” (1:50)は、トンチキなリズムマシンにふざけたようなVoと脱力するシンセから成る曲ですが、コーラスワークは楽しいです。
★D5 B.C. Gilbert & Graham Lewis “Twist Up” (4:24)は、如何にもDomeらしいインダストリアルで、機械の内部にいるような感覚を覚える曲ですが、呪文のようなVoも微かに入っており、後半には曲調が変わります。
★D6 John Foxx “A Jingle #3” (0:13)は、ディレイ処理されたシンセの単音メロディの残骸です。

 全体的には、余りロックっぽい曲は少なかった印象で、ピアノの弾き語りやインスト曲等が多く、ベルギーの背景にあるクラシックの伝統の為なのかなぁと思いました。いや、それが悪いとは思わないです。こう言う静か目で、寡黙な音楽が、日本に向けて届けられていたのが、嬉しいですね。聴き疲れた時にそんな音楽をダラダラと聴いてみるのも良いと思いますよ。個人的には、1980年代初頭に活動していたNico De Haanのことを思い出しました(知ってる人、少ないと思いますが)。また、機会があったら、ベルギーも行ってみたいと思わせる作品です!

[full album except for D5]
https://youtube.com/playlist?list=PLJqOpAp7DIJRn7BfADu58cmQ_RRSRHm2T&si=cEPv_E2TrbvnvhSL

[D5: B.C. Gilbert & Graham Lewis “Twist Up”]
https://youtu.be/ExuoLPVonXk?si=FyzD4xlcLDDZFI18

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