Kleenex / LiLiPUT “First Songs”

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1970年代〜1980年代初頭のスイスパンク・バンドと聞いて、何を思い浮かべますか? 私は圧倒的にKleenex (後のLiLiPUT)ですね。それでは、Kleenex〜LiLiPUTのバイオグラフィーを書いておきます。
 元々は、スイスZürichで1978年に、Regula Sing (Vo), Lislot Ha (Drs), Marlene Marder (G; 2016年死去), Klaudia Schiff (B)によって、Kleenexは結成されましたが、Regula Singが脱退して、Chrigle Freund (Vo)が加入した後に、バンド名が商品登録に引っかかるとの理由で、1979年/1980年頃にLiLiPUTと改名しています。彼女らのバンドは、エネルギッシュでオリジナリティもあって、当時は、”New The Slits”とも呼ばれていました。数枚のレコードを出して、1983年に解散しています。もう少し、詳しく書きますね。Kleenexの一番最初のラインナップは、Lislot Ha (Drs; 本名Lieselotte Hafner), Klaudia Schiff (B, Vo; 本名Klaudia Schifferle), Regula Sing (Vo)で、Marlene Marder (G; 本名Marlene Marti)がギタリストとして加入したかったので、最初のライブのアンコールの時に、加わってもらって、それからはパーマネントのメンバーとして正式に加入しています。Kleenexは、話題性のあるデビューEPの録音に入り、1978年に、バンド・メンバーの友人がやっていたSunriseからスイス国内でリリースしています。このEPが、英国のラジオDJ John Peelのお気に入りになり、それで彼のラジオ番組で何度も掛けられており、更にその後、英国レーベルRough Trade Recordsも彼女達と契約しています。それで、1978年11月に、正式なデビュー・シングル”Ain’t You”をリリースして、翌年、欧州ツアーを敢行しています。その1年間のツアー後、Regula Sing (Vo)が脱退し、代わりにChrigle Freund (Vo)が加入してきます。それで、彼女らは、セカンド・シングル”You”を1979年にリリースし、バンド名をLiLiPUTに改名しています。その理由は、テッシュ・メイカーのKleenex社の商品登録を所持しているKimberly-Clarkが法的処置を起こそうとした為です。LiLiPUTになって、直ぐにAngie Barrack (Sax)が加入し、バンドは1980年に”Eisiger Wind”シングルと、1981年に”Split”シングルをリリースしますが、共に英国インディーズ・シングルス・チャートに入るヒットソングとなります。特に、前者は、Rough Trade Recordsが、1981年にも再発しています。しかしながら、Ha (Drs)とBarrack (Sax)がこの時期に脱退し、またその後、Freund (Vo)も脱退してしまいます。Astrid Spirit (Vo; 本名Astrid Spirig)は、LiLiPUTのVoとして加入し、 更にChristoph Herzog (Sax)とBeat Schlatter (Drs)に加わり、独逸ツアーを敢行し、成功していたにも関わらず、Herzog (Sax)とSchlatter (Drs)も脱退してしまいます。特に、Schlatterはスタジオで録音時には、充分な貢献をしていたのにも関わらずに脱退したのでした。その時に残った3名、Schiff (B, Vo), Marder (G), Spirit (Vo)で、LiLiPUTは、セルフ・タイトルのアルバムを1982年にリリースしており、それを広く知らせ、新シングル”You Did It”のプロモーションも兼ねて、1983年にもツアーを行っています。Spiritがセカンド・アルバムの録音について前向きに考えている一方でらSchiffとMarderはツアーでボロボロになっており、もうバンドはやめようとさえ考えていました。Spiritは、2人のバンドメイトが疲れている状態からの負担も和らげようと、2人の体調管理等もマネージメントも行うようになります。そうして、3人は、極限状態で、セカンド・アルバム”Some Songs”を作り上げ、1983年12月にリリースしています。しかしながら、3人は、このアルバムのリリースまでに、バンドを解散しようと合意していました。そこで、LiLiPUTは、何故、バンドがアルバムの為にツアーが出来なかったのか?それはSpiritの妊娠と彼女の母性を尊重したからであると宣言して、バンドは解散してしまいます。
 以上が、Kleenex/LiLiPUTの略歴です。結構、波瀾万丈でしたね。それで、本作品の内容やクレジットについてですが、どこにも記載が無く、出自は不明ですので、そこら辺の情報は勘弁して下さい。本作品の前に2011年に、Mississippi Recordsより4枚組のボックスセット”1977 1983”が出ており、そちらの方がクレジットがしっかり書いてあるみたいですので、詳しいことを知りたい方は、そちらの4枚組を入手された方が良いかもしれません。まぁ、それは置いておいて、本作品の各曲をご紹介していきたいと思います。

◼️Kleenex/LiLiPUT
★A1 Kleenex “Ain’t You” (3:03)は、プリミティブでrawなパンク・ソングで、コーラスワークもあり、元気がもらえます。途中で不自然なテンポチェンジあり。
★A2 Kleenex “Beri-Beri” (2:07)は、ややスローでBがキモな曲で、Voにも迫力がありますね。
★A3 Kleenex “Madness” (3:03)は、リズム隊と共にセミアコのようなGをひたすらかき鳴らし、叫ぶようなVoが乗るパンキッシュな曲で、Bもカッコ良いです。
★A4 Kleenex “Krimi” (1:39)は、典型的なヘタヘタなパンク・ソングですが、バックの叫び声がポイントか?
★A5 Kleenex “1978” (1:09)も、ヘタヘタなパンク・ソングですが、ほぼインストに近いです。
★A6 Kleenex “Nighttoad” (3:07)は、パンクからポストパンクへ移行しつつある曲で、力強いVoとコーラスは健在で、全然背伸びしていない所に好感が持てます。
★A7 Kleenex “Hedi's Head” (2:12)は、全員 ユニゾンVoで歌うパンキッシュな曲で、単純ですが、その引力は充ニ分です。
★B1 Kleenex “Ü” (2:33)は、彼女達ならではのロッケンローなのかな?ひたすら反復するVoと奇声のような間の手、ミニマルな曲調、素晴らしい!
★B2 Kleenex “You” (3:19)は、やや重めのパンク・ソングで、ある意味「没個性的」な位パンクです。ただ途中に不自然な変拍子が挟まっています。
★B3 Kleenex “Nice” (2:27)は、バックのコーラスワークが効果的な、G系ポスト・パンクな曲で、Voも力強くて、カッコ良いです。
★B4 Kleenex “DC-10” (3:28)は、深いエコーのDrsから始まり、B→Gと入ってきて、力強いVoと共にSaxも入ってきます。段々とGやBはメチャクチャになっていきます。
★B5 LiLiPUT “Die Matrosen” (3:49)は、何だかスッキリした音作りで、Saxや口笛のコーラスなんかも良い味を出しています。これは名曲ですね。
★B6 LiLiPUT “Split” (2:00)は、元気一杯のパンク・ソングで、全員が何らかのVoやコーラスを担当して、曲に合わせて、それを繰り出すので、個人的は好みです!

◼️ LiLiPUT
★C1 LiLiPUT “Hitch Hike” (2:38)は、キャッチーなポップ・パンクな曲で、Saxや笛もしっくりと曲に馴染んでいます。
★C2 LiLiPUT “Eisiger Wind” (3:28)は、太いGの単音リフから始まり、結構、空間的なアンサンブルを活かした曲になっています。相変わらずコーラスワークは良いですね。単に録音機材が良くなっただけかな?
★C3 LiLiPUT “Igel” (1:41)は、変拍子の曲で、サビだけ4/4拍子になっていますが、それ程違和感はありません。
★C4 LiLiPUT “Türk” (2:50)は、イカしたSaxソロの聴けるポストパンクな曲で、サビのメロディは素晴らし過ぎて、泣けます。最後の拍手はライブだから?
★C5 LiLiPUT “Wig-Wam” (3:01)は、メインVoとバックVoを上手く活かしたポストパンクな曲で、Saxも良い感じです。やっぱりライブか?
★C6 LiLiPUT “Thumblerdoll” (2:51)は、複数Voによる元気でサーフなポストパンクな曲で、途中で曲調が変わりますが、また戻ります。
★D1 LiLiPUT “Tisko” (1:52)は、ややハードな曲で、Voの緊迫感がバシバシ感じ、Saxも良い塩梅です。ライブかな?
★D2 LiLiPUT “Turn The Table” (4:35)は、鋭いGのカッティングとそれを宥めるようなSaxやVoのメロディが、新機軸なのかな? それにしても演奏は上手くなってますね。
★D3 LiLiPUT “Dolly Dollar” (3:07)は、ダウンするメロディとコーラスワークのイントロから始まるパンキッシュな曲で、メインVoとバックVoそしてSaxのコンビネーションがイカしています。
★D4 LiLiPUT “I Had A Dream” (3:10)は、カッコ良いイントロから始まるパンクな曲で、珍しくGが歪んでいます。メインVoとコーラスとSaxのコンビネーションは、やはりグー!
★D5 LiLiPUT “When The Cat's Away” (2:17)は、ワルツのリズムで、優雅なキックとGとアコーディオンがバックで、如何にも欧州風な曲なのですが、ここで聴くと新鮮です。

 Kleenexの時は、良く言ってヘタウマ、正直言うと下手なんですが、それを自覚した上で、自分達に何が出来るかを模索しているような曲が多い印象でしたが、LiLiPUTになると、演奏技術も向上したこともあって、単に勢いだけじゃない「持ち味」を存分に奮っての曲や演奏を行っていると思われ、それがまた魅力的に思えます。本作品には当然、シングルカットされた曲もありますが、それ以外の曲にも、彼女達のオリジナリティが存分に感じられ、好感が持てました。Spiritの妊娠とその後の育児を優先して、バンドは解散した訳ですが、出来れば何らかの形で続けて欲しかったですね。ライブ音源らしき曲も含まれていましたが、どれも珠玉の名曲ばかりなので、ここら辺の1970年代末〜1980年代初頭の米英以外の国でのパンクに興味のある方には、お勧めします!特にフィメール・パンク・ファンには!

https://youtu.be/MOgoSOqOkAs?si=didKwSnLM_ctCnWa

[incomplete full album]
https://youtube.com/playlist?list=PLpvztXgGzYSGLO5p-9KVcGqd9RFrFxJvB&si=2DXyqV5CCzRDU2Gs

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