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John Cale “Animal Justice”
この作品は、元VelevetsのJohn Caleのソロ・マキシ・シングルなのですが、偶々、YouTubeで聴いて気に入ったので、入手してしまいました。John Caleのバイオグラフィーについては既に書いてあると思いますので、そちらをご参照下さい。少し補足しておくと、この時期、John Caleは英国に戻っており、またパンク・ムーブメントが勃興してきた時代と重なり、Sham 69等のパンクバンドのプロデュースをやったりしています。本作品のB面”Hedda Gabbler”に関しては、Caleは、1891年に公開された、リアリズムの父と呼ばれたノルウェー脚本家Henrik Ibsenの演劇”Hedda Gabler”に関連付けて作曲されたようです。また、ライブでは、A1 “Chicken Shit”の演奏の時、Caleは、ホッケーのキーパーのヘルメットを被って、死んだ鶏の頭をかち割ると言うパフォーマンスを行い、その為、ヴェジタリアンのDrsが脱退したと言う逸話も残っています。このEPで、マスタリングの音量が大きいのは、パンク・ロックの影響のようです。それで、本作品では、John Cale (Vo, G, Piano, Viola, Produce)の他に、Ritchie Fliegler (Lead-G), Bruce Brody (Moog Synth), Jimmy Bain (B), Kevin Currie (Drs)が参加して、バンド形態での演奏になっています。それでは、各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “Chicken Shit” (3:25)では、”Chicken Shit!”の掛け声で、突っ走るリズム隊とGと濁声のCaleのVoと、それらに絡みつくリードG、全てがぶっ壊れていてカッコ良い。 ★A2 “Memphis” (3:15)は、カバー曲で、ホーン風のシンセと突っかかるようなリズム隊もカッコ良く、Caleなりの野卑な解釈がイカしている。最後のGの絡みもグー! ★B “Hedda Gabbler” (7:53)では、ひゅうひゅうと言う風音の中、エレピの弾き語りが続きますが、サビではバンド一丸となって盛り立てています。間奏でのリードGもシンプルながらも艶があってカッコ良く、中盤からの盛り上げ方も様になっています。 実は、私はこのEPを何処かのサイトで聴いてカッコ良いなぁと思って購入しました。多分聴いたのはA1 “Chicken Shit”だったのと思いますが、この曲の「ある種の暴力性」に魅入られたんだと思います。それとダブルミーニング的なジャケ写もカッコ良かった!いざ、聴いて見ると、A1は確かにぶっ壊れているカッコ良さを感じることができますが、A2 “Memphis”のカバーの秀逸さやB面”Hedda Gabbler”での古典的な盛り上げ方なんかも何故か新鮮に感じました。と言うことは、これ1枚で、John Caleの魅力が端から端まで堪能出来る訳です。そんな1枚だと思うますので、是非とも皆さんも聴いてみて下さい! Ihttps://youtu.be/z0KeJ4KBUNo?si=qND7CFW1N2thoPgW #JohnCale #AnimalJustice #IllegalRecords #12-inchEP #1977年 #PsychedelicRock #GarageRock #ArtRock #ChickenShit #Memphis #CoverSong #HeddaGabbler #Guests #RitchieFliegler #BruceBrody #JimmyBain #KevinCurrie #Playwright&Director #HenrikIbsen #HeddaGabler #PunkRockMovement
Psychedelic Rock / Art Rock Illegal Records 不明Dr K2
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Brian Eno “Ambient 4: On Land”
正直、私は余りアンビエント・ミュージックにそれ程興味を持ったことはありません。なので、その提唱者であるBrian EnoのAmbient seriesも、以前にCDを1枚位しか聴いたこともないですし、レコードで聴いたこともないです。まぁ、ノイズ・ミュージックの世界でも、アンビエントはあるにはあるのですが、その手の作品を積極的にも聴いては来ませんでした。と言う前提で、ここに来て、やっとBrian Enoの本作品”Ambient 4: On Land”を購入し、聴いてみようと思い立った訳です。Enoのバイオグラフィーについては、以前にも書いてありますので、そちらをご参照下さい。本作品への流れとしては、独のClusterとのコラボやHarold Buddとのコラボ等から次第にAmbientシリーズに移行してきた先に位置するものと捉えることが出来そうです。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。◉はゲストです。 ★A1 “Lizard Point” (4:34)は、モアっとした霞のような不明瞭な音を中心に、不明瞭な低音打撃音やSE的電子音或いはは電子持続音が混ざる曲です。 ◉Michael Beinhorn (Synth), Axel Gros (G), Bill Laswell (B) ★A2 “The Lost Day” (9:13)も、不明瞭な低音に、その奥から時々、SE的電子音やチェロらしき音が緩やかなメロディらしき旋律が薄ら聴こえてきたりする、ややダークな曲で、其々の音は、波のように聴こえます。 ★A3 “Tal Coat” (5:30)は、持続音とあぶくの音とSE的電子音から成る曲で、時々低音や明瞭な高音も入ってきます。EMSを使っているのだろうか? ★A4 “Shadow” (3:00)は、キュルキュルする持続音に、不明瞭な電子音や吹奏楽器音やG?らしき音や女性Voのスキャット?等が現れては消える曲です。 ◉John Hassel (Trumpet) ★B1 “Lantern Marsh” (5:33)でも、茫漠とした音がゆったりと伸縮し、時々、異なる音色の音も入ってきて、時間感覚が無くなりそうになります。 ★B2 “Unfamiliar Wind (Leeks Hills)” (5:23)は、中音域に不定形の持続音が流れる中、時に重低音が挿入されたり、少しだけ妙光が差してくる曲です。 ◉Felipe Orrego (Frogs on Field Recording) ★B3 “A Clearing” (4:09)でも、ゆったりとした中低音が茫漠と流れ、すこーしだけ音が重なり合い、僅かに盛り上がる部分もあります。 ★B4 “Dunwich Beach, Autumn, 1960” (7:13)では、漠然とした電子音の中で、Gの低音を爪弾いていますが、メロディにはなっていません。ディレイも掛けているのかな? ◉Michael Brook (G), Dan Lanois (live equalization) 兎に角、時間がゆっくりと進み、更に時間感覚も延長させられるような音楽ですね。また音の輪郭は常に不明瞭なので、一体、何処にいて何を聴いているのかが、分からなくなりそうです。これが、Brian Enoのアンビエントかと納得しました。積極的に「聴く」音楽と言うよりも「聞こえてくる」音楽ですね。後、裏ジャケに書いてあるのですが、このレコードは、クアドロフォニック・スピーカー・システムで聴いて欲しいと。それで、もう流行は終わったのかもしれませんが、2000年代以降、日本でもアンビエントが流行りましたが、皆んな、過剰な音に疲れたからかもしれませんね。そんなことを考えさせてくれる音楽でした! A3 “Tal Coat” (5:30) https://youtu.be/10uVS6ssCxU?si=25qeN8fuXiAzma1s [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_nGPxToS0FelseuN1PKsG-Z4ypMtFtaENY&si=ikplQYJsEXtb2ZKg #BrianEno #Ambient4 #OnLand #VirginEMIRecords #Reissue #Remastering #180g #2018年 #VirginRecords #1982年 #AmbientSeries #SoloAlbum #Electronic #Ambient #Guests #MichaelBeinhorn #AxelGros #BillLaswell #JohnHassel #FelipeOrrego #MichaelBrook #DanLanois
Ambient / Experimental Virgin EMI Records (Virgin Records) 3250円Dr K2
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V. A. “Soft Selection ‘84”
実は、私はこのコンピレーション・アルバムの存在は全然知らなかったです。なので、1984年の日本のニューウェーブ(ややマイナーな?)を聴いてみようと思って購入してみました。私が知っているのは、この中では、Picky Picnicだけですね。また、レーベルのSoftと言うのも全然知りませんでしたが、どうもこのコンピレーション・アルバムだけしか出していないようです。なので、収録バンドと各曲についてご紹介出来ればと思います。 ◉Clä-Sickは、Kazuo Saida (Synth, TR-808, Program), Goro Some (Piano, Synth, Vo, Noises, Program)のデュオで、この名義ではこのコンピにしか参加していません。Goro Someは本作品以前には様々なアルバムに参加しています。 ◉La Sellrose Can Canは、Yasuyo Kawakita (Vo), Hiroshi Moriguchi (Synth), Hitoshi Uemura (G), Mahito Fujiwara (B, Synth), Soshi Tanaka (Synth)から成る5人組で、単独作品は無いようで、このコンピの他に2〜3のコンピ・カセットに参加しています。 ◉Linoliumは、Seigen Kyu (Synth, PC, Program), Hiroshi (Tapes, TR-808)から成るデュオで、ほぼこのコンピだけしか参加していません。 ◉Picky Picnicは、独ATA TAKからもアルバムを出している、Yuji Asuka (Synth, Drs, G)とKaoru Todoroki (Perc, Clap, etc)のデュオです。 ◉Pink Labelは、ちーぼー(Vo)とM. Tuno (G, Synth, TR-606)のデュオで、やはりこのコンピにしか参加していません。 ◉Nameは、Makiko Nakamura (Song)とHiroshi Matsuyama (Program, Vo, Synth)のデュオで、本作品以外では、2014年のネット・コンピに1曲参加しています。 ◉Reverは、Tetsuri Syunnosuke (Vo Performance)のソロユニットで、本作品以外には、1本のコンピ・カセットと2018年のネット・コンピに参加しているだけです。 ◉Classic Pearlは、Kazuo Saida (Program, Synth, Vo)とUmi (Back-Vo)のデュオで、本作品以外では、2008年のコンピCDに参加していますが、単独作はないです。 それでは、収録曲を其々、ご紹介していきますね。 ★A1 Clä-Sick “Morning In China”は、今一歩初期YMOに追いつけない中華民謡風のドラムレスの曲です。 ★A2 La Sellrose Can Can “Aerobicise”は、ディスコ風のドラムマシンに舌足らずのVoが英詞で歌う曲で、バックは唸るSynth-Bとシンセで固めています。 ★A3 Linolium “Unit 25”は、声のコラージュから始まり、中華風のメロディのシンセとシーケンサーとキックに、テープ音を挿入させた曲ですが、ちょっとした悪意を感じます。 ★A4 Picky Picnic “Sume Ba Miyako”では、シンセで変調させたリズムで始まり、変調Voに通常Voも加えてのサビが中々面白いです。コード進行自体はシンプルです。 ★A5 Pink Label “Good Luck”は、一言で言えば、ニューミュージック(シティーポップ)をテクノポップでやっている印象です。Voが当時のシティーポップのように歌い上げています。 ★A6 Name “N.H.K.”は、(時にエフェクトを掛けた)テープ音とドラムマシンを中心に、シンセの優しいメロディから成る曲で、バックて流れるシンセは南国風です。 ★A7 Picky Picnic “Kibo No Asu”は、オモチャ箱をひっくり返したようなテクノポップで、曲やハンド・クラップなどをコラージュしたようで展開の予測が不可能です。 ★A8 Rever “Performan”は、ドラムマシンとエフェクトを掛けたVo(何語かは分かりません)から構築された曲です。時に複数のVoから成る部分もあります。 ★B1 Name “Do We All Need Love”は、軽妙なマシンリズムとシーケンスに、雨音のテープ音と思ったら、囁くようなVoが英詞で語るように歌ってきます。間奏のオルガン風シンセも良い感じです。 ★B2 Classic Pearl “Pearl”は、大胆なポリ・シンセとマシンリズムで始まり、割とミニマルな展開の曲で、聴き取り辛いVoですが、日本語の歌詞なのでしようか。 ★B3 La Sellrose Can Can “Happy Morning”は、ややずっしりとしたマシンリズムとピコったシンセと分厚いシンセのコード弾きに英詞のVoが歌う曲ですが、どうもBも弾いているようです。 ★B4 Clä-Sick “Every Night”は、重めのキックとスネアのマシンリズムに、やはり英詞のVoと英国OMiDのような曲調の曲で、中々盛り上がっています。 ★B5 Clä-Sick “Black Nile”は、ややスローなテンポなドラムマシンとシンセ音にダブ処理が為されているインスト曲で、ちょっと実験なのでしょうか?この後、隠しトラックが2つ入っています。 私の個人的な意見なのですが、日本のニューウェーブなら、やはり日本語で歌って欲しいこと。英語で呟くように歌っても何も響かないです。それから、時代的そうだったのかもしれませんが、リズムマシンは良い機材を使っているのに、どうもどのグループも「軽さ」を押し出しているのも、何か納得出来ないんですよ。だから、日本のニューウェーブって、良い言い方をすれば「軽妙」、悪く言えば「軽薄」なんですよね。多分、本作品に参加している人達って、業界人かその取り巻きだと思うんですが、そう言うこともあって、どうも色眼鏡で見てしまいますね。そんな中でも、Picky Picnicは、音の面白さや曲構成のアイデアに満ちていて、やはり別格だなと納得しました。皆さんはどう思われますか? https://youtu.be/C6viA9Ex5as?si=rfhxmvobpx9kqrkE [full album] https://youtube.com/playlist?list=PLuGAvXrEzoIn7b_WfbSFwGD4LbDCjenM5&si=Uh9L7uknxA5-_2MK #VariousArtists #SoftSelection’84 #GlossyMistakes #SpanishLabel #2024年 #Reissue #Remastering #LimitedEdition #Soft #1983年 #JapaneseNewWave #CompilationAlbum #NewWave #SynthPop #Experimental #Minimal #Abstract #Clä-Sick #Linolium #PinkLabel #PickyPicnic #Rever #Name #ClassicPearl #LaSellroseCanCan
Synth Pop / New Wave / Minimal Glossy Mistakes (Soft) 4950円Dr K2
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Elektric Music “TV”
ここらで、もう一度、元KraftwerkのKarl Bartos関係の1枚を!と言う訳で、今回は、Elektric Music名義の12-inch Maxi-Singleをご紹介します。Elektric Musicは、元々は、元KraftwerkのKarl Bartosと元RheingoldのLothar Manteuffelのデュオのことで、1991年〜1998年に活動していました。Bartosについては、前回、彼のソロアルバム”Off The Records”で書いてありますので、そちらをご参照下さい。それで、Lothar Manteuffelについて、少し調べてみました。先ず、Manteuffelが在籍していたRheingold(以前にもバイオグラフィーは書いてあります)と言うのは、Bodo Staiger (Vo, G), Lothar Manteuffel (Lyrics), Brigitte Kunze (Kbd)から成る独のNDWバンドで、彼等は、Düsseldorfの音楽シーンに触発された、Kraftwerkのフォロワーでもありました。デビューアルバムでは、Manteuffelが曲を書いて、Kunzeが少し歌うと言う形態でした。彼等の出したシングルで最も成功したのは、"Dreiklangsdimensionen"でしたが、他にも"Fluss"や"Fan Fan Fanatisch"も評判は良かったようです。また、この歌は、Staigerが主役の映画”The Fan”のサントラにも収録されています。また、彼等はは、英米のシーンへのアプローチとして、英詞ヴァージョンも作っていますが、思った程の成功は得難く、そうして、彼等のラスト・アルバムを出して、解散してしまい、Rheingoldの名前で、曲を作ることはありませんでした。その後、Lothar Manteuffelは、前述のようにKraftwerkのKarl Bartosと、Elektric Musicを結成し、Bodo Staigerは、1997年に、自身のソロアルバムの制作で、KraftwerkのWolfgang Flürとコラボしており、このコラボ作品はYamo名義でリリースされています。Brigitte KunzeことBrigitte Staigerは、夫のBodo Staigerと共にレーベル3Klangrecordsで働いていましたが、2019年12月に夫の方は他界しています。以上がLothar Manteuffelの略歴ですが、本作品は、Elektric Musicのファースト・アルバム”Esperanto”(1991年)とセカンド&ラスト・アルバム”Electric Music”(1998年)の間にリリースされたシングルの2枚目に当たりますが、2人のコラボとして録音されたのは、ファーストとセカンド・シングル及びファースト・アルバムだけのようです。Emil Schultが元のジャケ絵をデザインしています。それでは、各曲を紹介していきましょう。 ★A “TV 2” (5:40)は、Kraftwerk直系のリズム隊とメロディなんですが、よりダンサブルかつ強靭なリズム隊に、Manteuffelと思われる軟らかいVoの乗った極上のテクノ・ポップとなっていますね。流石ですね、Karl Bartos! ★B “Television” (4:00)では、変調ロボットVoと太い低音Synth-Bで始まり、そのまま、幾分軽めのE-Drsとシンセのリフが入ってきて、Kraftwerkよりも、Karl Barton’sよりも幾分叙情的なメロディが流れてきます。 A面は生の声で如何にもなテクノ・ポップを、B面では変調ロボットVoで若干抒情味を付け加えると言う真反対のアプローチをした、似て非なる曲をカップリングすると言うニクいピクチャー盤ですね。しかしながら、Kraftwerkファンほどうか分かりませんが、少なくともKarl Bartosファンにはマスト・アイテムだと思いますね! A “TV 2” (5:40) https://youtu.be/IrDHVNB5Lqs?si=wd_i-hPoYt23JWna B “Television” (4:00) https://youtu.be/xLiIjWe7IQE?si=qgAsKEoHVQDDfGL1 #ElektricMusic #TV #SPVglRecords #PictureMaxi-Single #SynthPop #Electro #Synthesizers #KarlBartos #LotharManteuffel #Kraftwerk #Rheingold #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #TV2 #Television
Techno Pop / Electro Pop SPV Records 2250円Dr K2
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V.A. “From Brussels With Love (ブリュッセルより愛をこめて)”
1980年代の一つの傾向として、それまでは大雑把に言ってしまえば、ロックの中心は英国だったり、米国だったり、せめてものとして独クラウトロックやNDWであったりした訳でしたが、他の欧州の国から新しい音楽が、それこそカセット・カルチャーの拡がりと共に出てきた時代であったのではないかと思えます。そんな中でも、ベルギーのレーベルLes Disques Du Crépuscule (ラ・ディスクス・ドゥ・クレプスキュールと読む?通称「クレプスキュール」)は、独特の美的センスで、国に関わらず、精力的に活動していました。そんなクレプスキュールが、1980年にカセット作品として、自らの立ち位置を示す為にリリースしたのが、本作品のオリジナル”From Brussels With Love”です。ザッと眺めてみても、重鎮〜若手の旬なアーティスト/グループの音楽やインタビューが目に付くと思います。それで、このコンピのことを少し調べてみると、1980年リリースのオリジナル・カセット、1983年の再発カセット、1984年の日本盤、1986年のLP再発盤、1987年のCD再発盤、2020年のCD2枚組再発盤で、収録アーティストや微妙な収録時間、そして収録順序がどれも違っており、始め、本作品には日本語も併記されていることから、日本盤かとも思ったのですが、曲順等からして、1980年リリースのオリジナル・カセットに一番近く、2020年の40周年祈念の再発盤と特定しました。そもそも収録時間(カセット作品だと微妙にズレたり伸びたりしますから)も微妙に異なる表記が為されていますし、ジャケ写だけでは見分けがつかなかったです。と言う訳で、個々のアーティストについてはもう書きませんので、皆さん各人で調べてみて下さい。それでは、各収録曲(インタビューも含む)をご紹介していきましょう。 ◼️LP1 (黒盤) ★A1 John Foxx “A Jingle #1” (0:25)は、単音シンセのメロディの残骸と言うシンプルさです。 ★A2 Thomas Dolby “Airwaves” (5:14)は、ピアノの弾き語りから始まり、リズムマシンとBとシンセが支え、時にシンセ室内楽も入ってくる叙情派の曲です。 ★A3 Repetition “Stranger” (3:35)は、Gとかで始まり、女性Voが入ってくると、DrsやBが入り、更に違うGも入ってくる曲で、最後にシンセも入ってきますが、結構、VoとBがキモだと思います。 ★A4 Harold Budd “Children On The Hill” (5:10)は、ポロンポロンと弾くピアノ、しかもホンキートンクな音色のピアノをひたすら弾くリリカルさに、ノスタルジーを感じます。 ★A5 The Durutti Column “Sleep Will Come” (1:50)では、簡素なDrsとBに、エレピと茫漠としたVoが小曲の中に詰め込まれています。 ★A6 Martin Hannett “The Music Room” (4:40)は、単調なリズムマシンに主張の激しいGが唸るインスト曲です。荒ぶる中に叙情性を感じます。 ★B1 The Names “Cat” (3:15)は、怪しげなBに鋭いGのカッティングとノリの良いDrsで始まり、女性Voと主張するストリング・シンセが如何にも欧州的な曲ですね。 ★B2 Michael Nyman “A Walk Through H” (4:50)は、おもちゃ箱をひっくり返したような単音連打でのピアノやピッコロ等の楽器の演奏から成るインスト曲です。 ★B3 Brian Eno “Interview with Brian Eno” (10:00)では、インタビュアーが尋ねると、バックの持続音の音量が上がります。「音」で答えると言うことかな? ★B4 John Foxx “A Jingle #2” (0:08)は、B3と連続しているようで、殆どの聴き取れません。 ◼️LP2 (白盤) ★C1 Jeanne Moreau & Michel Duval “Un Entretien Avec Jeanne Moreau” (8:50)は、ラジオ体操のような明るいピアノに、おばさんのような声が語りのように乗る曲で、良くマッチしています。途中で、ピアノの伴奏がワルツのリズムに変わります。 ★C2 Richard Jobson “Armoury Show” (1:23)は、スポークン・ワードで、シアトリカルに発声しているようです。 ★C3 Bill Nelson “The Shadow Garden” (4:07)では、逆回転を利用して、その中に正回転の音も混ぜていき、ディレイを効かしたGやシンセで、見事なアンサンブルを作り出しています。なおインスト曲です。 ★C4 The Durutti Column “Piece For An Ideal” (2:05)は、ピアノと繊細なガラス細工のようなG、そして極めて簡素なドラムによるインスト曲です。 ★C5 A Certain Ratio “Felch (Live At Hurrah, New York)” (3:25)は、力強いキックとPercに、ややファットなBから、怒涛のようにファンク・サウンドに変わり、トランペットやGも混じって、熱演をしていますが、Voが何だか弱いですね。 ★D1 Kevin Hewick & New Order “Haystack” (3:35)は、軽く掻き鳴らされるGとミディアムなリズム隊に、女性Voが親しげに歌う曲で、怠い感じがまた良い。それと間奏のオルガン風シンセが一癖ありますね。 ★D2 Radio Romance “Etrange Affinite” (2:40)は、ビョーンと言うシンセとGで始まり、リズムマシンのビートに乗せて、Synth-BとGをバックに、やや舌足らずの女性Voが元気に歌う曲で、Saxも中々の味を出しています。 ★D3 Gavin Bryars ”White's S.S.” (5:00)は、重いピアノと弱々しい高音のピアノから成る演奏に混じって重低音ドローンが入ってたりするインスト曲ですが、表題はポリコレ的にマズいのでは? ★D4 Der Plan “Meine Freunde” (1:50)は、トンチキなリズムマシンにふざけたようなVoと脱力するシンセから成る曲ですが、コーラスワークは楽しいです。 ★D5 B.C. Gilbert & Graham Lewis “Twist Up” (4:24)は、如何にもDomeらしいインダストリアルで、機械の内部にいるような感覚を覚える曲ですが、呪文のようなVoも微かに入っており、後半には曲調が変わります。 ★D6 John Foxx “A Jingle #3” (0:13)は、ディレイ処理されたシンセの単音メロディの残骸です。 全体的には、余りロックっぽい曲は少なかった印象で、ピアノの弾き語りやインスト曲等が多く、ベルギーの背景にあるクラシックの伝統の為なのかなぁと思いました。いや、それが悪いとは思わないです。こう言う静か目で、寡黙な音楽が、日本に向けて届けられていたのが、嬉しいですね。聴き疲れた時にそんな音楽をダラダラと聴いてみるのも良いと思いますよ。個人的には、1980年代初頭に活動していたNico De Haanのことを思い出しました(知ってる人、少ないと思いますが)。また、機会があったら、ベルギーも行ってみたいと思わせる作品です! [full album except for D5] https://youtube.com/playlist?list=PLJqOpAp7DIJRn7BfADu58cmQ_RRSRHm2T&si=cEPv_E2TrbvnvhSL [D5: B.C. Gilbert & Graham Lewis “Twist Up”] https://youtu.be/ExuoLPVonXk?si=FyzD4xlcLDDZFI18 #VariousArtists #FromBrusselsWithLove #ブリュッセルより愛をこめて #LesDisquesDuCrépuscule #Reissue #Remastering #2020年 #Original #CassetteVersion #1980年 #Leftfield #Abstract #Ambient #Interview #Soundtracks #BelgianLabel #JohnFoxx #ThomasDolby #Repetition #HaroldBudd #TheDuruttiColumn #MartinHannett #TheNames #MichaelNyman #BrianEno #JeanneMoreau #RichardJobson #BillNelson #ACertainRatio #KevinHewick&NewOrder #RadioRomance #GavinBryars #DerPlan #B.C.Gilbert&GrahamLewis
Left field / Ambient / Abstract / Interview Les Disques Du Crépuscule 3850円Dr K2
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Chrome “The Visitation”
Chromeの音楽を知れば知る程、聴きたくなるのが、まだHelios Creedがメンバーでなかったファースト・アルバム”The Visitation”ですが、再発盤とは言え、やっと入手しました。私の個人的なChromeとの出会いは、国内盤も出ていた”Red Exposure”であり、そこから、Chromeを追いかけるようになりました。しかし、どんなに探しても、このファースト・アルバムには今まで出会いませんでした。そんなレアもんなのです。Chromeのバイオグラフィーは以前書いていますので、ここでは、省略しますが、このアルバムは、Damon Edge (Back-Vo, Drs, Tape Effects, Synth, Perc), Mike Low (Back-Vo, B, G, Lead-Vo, Synth), John Lambdin (Back-Vo, B, Lead-G, Mandolin, Strings, Synth, E-Vln), Gary Spain (B, Kbd, Vln)によって録音・作製されており、プロデュースもDamon Edge自身がやっています。オリジナルは、スプレーで殴り書きしたジャケに3枚のインサートが入っており、”Siren Records”のクレジットも入ってないもので、それ以外には、ゴム印でレーベル名が押してあるものもあります。セカンド・プレスでは、白ラベルに”produced by damon edge”とプリントされています。その後の再発盤では、黒ラベルに銀の手書きで書いてあるラベルに変わっています。このように最初のプレスでは3種類のものがありますが、これらは非常にレアです。その後も、再発盤は何度か出ていますが、今回、入手したのは、独レーベルDossierのもので、クリア盤になっています。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。 ★A1 “How Many Years Too Soon” (5:10)には、既にChromeらしさ(変なシンセ音)が見え隠れしますが、どちらかと言うと、もっと1960年代のサイケっぽいアレンジと言うか曲調ですね。Voも初々しいですし。Gソロなんかも延々と入っていますし。 ★A2 “Raider” (3:58)は、ベル音やシンセ音に導かれて、諸USサイケ調の曲で、これがどうして「あんなChrome」になるのか?よく分かりませんね。まぁ、この曲のリードVoはDamon Edgeではないですし。 ★A3 “Return To Zanzibar” (3:52)は、変拍子の曲ですが、全体を通してもそれ程の違和感はなく、寧ろ、彼等の捻くれた面を垣間見た感じです。しかし間奏のGソロ、凄いな! そしてDrsの音は初期Chromeっぽいです。 ★A4 “Caroline” (3:42)は、激しいDrsソロで始まり、ややスローテンポの曲になりますが、もう完全にUSサイケな曲ですね。ユニゾンでのVoとGソロが諸です。 ★B1 “Riding You” (4:51)は、シンセによる「風」音から始まり、弾きまくるGを交えたサイケな曲調となり、Voも伸び伸びと歌っています。ただ何となくChromeっぽい臭いがします。 ★B2 “Kinky Lover” (3:32)は、非常にゆったりしたムーディな曲で、Bに合わせたVoとコーラスが中心ですが、歌詞がね!ちょっと不謹慎な感じです。 ★B3 “Sun Control” (3:10)では、フェイザーを掛けたBが既にChromeっぽいんです。結構、激しい曲調で、間奏のGソロもフランジャーかけまくりですが、最後は通常サイケで終わります。 ★B4 “My Time To Live” (4:20)は、段々とChromeっぽい音色になってきますが、曲調はまだ抜け出していませんね。結構「暑苦しい」感じがします。Gソロは弾きまくりですが、シンセも入っているのかな? ★B5 “Memory Cords Over The Bay” (4:46)は、ハイハットの連打にフランジャー掛けた所から始まり、オルガンと怒涛のGソロを効かせたややアップテンポのインスト曲で、このアルバムを締めています。 このアルバムから、Chromeが始まったと考えると、やはり彼等(主にDamon Edge)は、USサイケとガレージの暗部にルーツがあるのだなと言うことがよく分かる一枚ですね。この後から、Helios CreedとDamon Edgeが中心となっていく訳で、逆回転や過剰エフェクト、曲のコラージュ等、有りとあらゆる実験性を加えつつ、独自の「サイケデリア」を奏でていくことになります。そんな彼等、と言うかDamon Edgeの原点が窺い知れて、大変興味深かったですね! https://youtu.be/c0XVQ47Q44I?si=H5dieR2TSIlVtWF5 [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_m9WBPRx3GZ-z3M8PQl9if8wzG7g-ocIxg&si=aKBM7RsYyNlIdciX #Chrome #TheVisitation #Dossier #1989年 #Reissue #ClearVinyl #SirenRecords #1976年 #FirstAlbum #PsychedelicRock #Experimental #DamonEdge #MikeLow #JohnLambdin #GarySpain
Experimental / Psychedelic Rock Siren Records (Dossier) 3650円Dr K2
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Die Partei “La Freiheit Des Geistes”
Die Partei (ディー・パルタイ)を君は知っているかい?Die Parteiは、The WirtschaftswunderやSiluetes 61をやっていた奇人変人Tom Dokoupil (トム・ドクピル)とJoseph Beusyの生徒で、画家/写真家/サウンド・アーティストのWalter Dahn (ヴァルター・ダーン)から成るデュオで、短命な、と言うよりも一回だけの活動でした。因みに、Walter Dahnは、クラウトロック、特にCanとも既に関係があったようです。1981年、2人はたった1週間で会って、本作品”La Freiheit des Geists (精神の自由)”を録音を始めています。このアルバムはインストゥルメンタルなポストパンク・シンセポップ・アルバムですが、時に冷たくで、落ち着きがなく、多忙で前に進むように聴こえますが、その一方で心地よく心地よいメロディックでもあります。映画の引用と散発的に演奏される楽器 (特にドクピルのクリーンなGとSax) が出来上がったサウンドに大きな影響を与えています。2人は、この作品の制作に当たって、厳密なガイドラインを定めています。録音は週末に行うこと、音楽はインストゥルメンタルでエレクトロニックでダンサブルであること、そして映画の引用が含まれていることです。本作品”La Freiheit des Geists”は、DokoupilとDahnの目論見通り、二律背反するものを組み合わせたアルバムと言えるでしょう。個人的にも、先ず、ジャケ写を見た時に、まさか、こんなジャケのアルバムにTom Dokoupilが関係しているとは思いも寄りませんでした。なんか何かもっと仰々しい音楽を想像していました。 と言う訳で、真面目にふざけたような1回限りの作品ですが、よくよく調べてみると、何と!Brian Enoを迎えて、2024年に、再びDie Partei名義で新録アルバム”Celaviemachinery”をリリースしているではありませんか! まぁ、それは置いておいて、本作品の紹介をしていきますね。内容的には、A面5曲/B面6曲が収録されています。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。 P.S. 最近、セカンド・アルバムが、出たみたいです! ★はA1 “Guten Morgen In Köln” (3:55)は、パンされたリズムマシンに簡素なオルガン、更にGによるメロディが乗る曲で、シーケンサーによるSynth-Bも小気味良いです。時々、ピアノも入り、爽やかな雰囲気です。 ★A2 “Ostafrika” (3:45)は、唸り声から性急なビートと切れ味鋭いシンセへと突然始まり、SE的シンセやシーケンスもナイスです。時々、唸り声も聞こえたり、ピコった音も聞こえたりで、楽しい。 ★A3 “Wo Sind Sie” (3:55)は、A2の直後、ナレーションから突然、ピコったシーケンスとリズムマシンの速度が丁度良い曲で、時に金属質なシンセもあって良い塩梅で、更に伸びやかなシンセも上手く調和しています。 ★A4 “Böse Träume” (4:00)は、オモチャの合奏から段々とリズムマシンやシーケンスやハーモニカなんかの音が次々と入ってくる曲ですが、基本的にミニマルです。ディレイの掛かった台詞や上物シンセの波も聴取可! ★A5 “Föhn In Den Bergen” (2:25)は、王道のシンセウェーブで、タイトなリズムマシンと太いシーケンスを中心に、SE的シンセやリリカルなピアノも乗ってきます。安心の1曲! ★B1 “Austauschprogramm” (2:40)は、怪しげな雰囲気のリズムとシーケンスとナレーションがスパイ映画風の曲で、時々、音を弄っていて、面白いです。 ★B2 “Rote Schuhe” (2:58)は、パンで振られたGと機械の中のようなリズム隊の組合せが興味深い曲で、時に聴こえるシンセのメロディやSaxもナイスなアレンジで、全体に見事なアンサンブルとなっています。 ★B3 “Allerheiligen” (2:32)は、一転、低音に集中するリズム隊とスローテンポな曲で、シンセのリフ以外にもテープ音も混じってきます。 ★B4 “Tag An Der Grenze” (3:15)は、B3に連続して、緊張感溢れるシーケンスに、シンカッションや映画のナレーションやSaxが入り乱れている曲で、何故か落ち着かないです。後半はリズムマシンが変わります。 ★B5 “Strahlsund” (3:45)も、いきなり落ち着いた曲調に変わり、電子民族音楽的な曲で、電子打楽器やSE的シンセ音以外にも、ゆったりした伸びやかなシンセのメロディが心地良いです。 ★B6 “Nord-Süd-Fahrt” (2:30)は、テクノポップ調の曲で、リズムマシンにステップシーケンスが前面に出ており、そこにG?シンセ?の伸び伸びとしたメロディが何とも気持ち良いです。 思っていた程、難解とか滑稽な音楽ではなく、また、映画のナレーションも少なくて、あれ?とは思ったのですが、「新しい」ダンス・ミュージックとしては完璧に機能している音楽だと思います。Tom Dokoupilが関わっているのに対して、真面目な音作りで、とてもDokoupilがやっているとは思えませんでしたが、それも彼の音楽的才能なのでしょう。また、Dahnの影響なのかもしれませんね。割とミニマルなコード進行が多く、しかもそれを「単なる反復」と感じさせないアレンジ力も凄いと思います。そう言う意味では、アナログ・シーケンサーを用いて良くここまで出来たなぁと感心してしまいました! また、1曲に色んな音が詰め込まれているのですが、ぎゅうぎゅう詰めの印象は全く無く、必然と言える程、馴染んでいます。完璧なダンスミュージックがあるとするなら、本作品もそれに入るでしょう!そんな真面目なアルバムです! B1 “Austauschprogramm” (2:40) https://youtu.be/I3GQqP8PtWY?si=OeqXv7W-sGvQxL-o [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lBhWDiV9JuLqmtPKvYxrccAVfryVGqQdE&si=B8ovPCx4xXCrMsfo #DiePartei #LaFreiheitDesGeistes #TausendAugen #1981年 #1回限り #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Electro #SynthPop #Techno-Industrial-Project #InstrumentalSongs #FilmSounds #相反するもの #TomDokoupil #WalterDahn #TheWirtschaftswunder #Siluetes61 #DieRadierer #JosephBeuys #Painter #SoundArtist #Photographer #Can
Neue Deutsche Welle (German New Wave) Tausend Augen 6000円Dr K2
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Gudrun Gut “Moment”
独NDWの生き証人、Gudrun Gutについては、今更説明することもない程、有名なアーティストです。古くは、Einstürzende NeubautenやMania D.の創設メンバーでもあり、Malaria!でカッコ良い女傑であった彼女ですが、やがて、Matadorを結成、また並行して、ベルリンの女性ミュージシャンやプロデューサーのコラボ集団Monika Werkstattを組織し、運営しており、1997年からはMonika Enterpriseと言うレーベル運営も始め、ソロアルバムやコラボ作品、更には映像作品やTomas Fehlmannとのラジオ番組OceanclubのDJ等、八面六臂の活動を今でも続けています。そんな彼女の5枚目のソロアルバム”Moment”を今回は紹介します。楽器やVoは全て彼女が担っていますが、最近は、FaustのAntye Greie (AGF)とHans-Joachim Irmlerともコラボをやっていたり、Âmeとのコラボ・ライブをRoyal Albert Hallで行っているとのことで、その影響はあるかもしれません。また、A6 “Boys Keep Swinging”は、David Bowieのカバーであり、そこら辺にもこのアルバムを理解するヒントがあるのかもしれません。それでは、各曲について、ご紹介していきましょう。 ★A1 “Startup Loch” (5:57)は、静かなイントロから、強力な電子リズム隊とハスキーなGutの呟くようなVoが乗る曲で、後半ではバックに女性コーラスが薄ら入ってきて、オープニングに相応しいです。 ★A2 “Musik” (3:38)は、多層化したマシンドラムに、Gutの声が耳元で”Musik”と何度も聴こえてきます。何だか催眠術を受けているような気分になりますね。 ★A3 “Shuttle Service” (1:12)は、一見ランダムなシーケンスとマシンドラムのビートから成る小曲です。 ★A4 “Seltene Erde” (0:44)は、唸る電子音が大蛇のようにのたうち回るかのような小曲です。 ★A5 “Baby, I Can Drive My Car” (3:27)では、四つ打ちキックに簡素な電子音とGutのVoが最小限の音量でミックスされており、呪文のように聴こえます。最後に可愛い女性Voで終わります。 ★A6 “Boys Keep Swinging” (3:16)は、力強い四つ打ちキックと複数の女性Voと共に、GutのVoと滑るようなSynth-Bから成る曲になっており、随分原曲と雰囲気が違います。 ★A7 “Seven FMP” (2:02)では、怪しげな電子音の反復から始まり、生に近いドラムが入ってきますが、曲自体は結構ランダムな構成です。 ★A8 “Schienenersatzverkehr” (1:23)は、反復する電子音に合わせて、SE的電子音が絡みついてくる小曲になっています。 ★B1 “Lover” (5:17)は、直線的ベースラインとビートを中心に時に挿入されるSE的電子音や呻くようなGutのVoが強迫的に発せられる曲です。英詞ですが、終わり方がカッコ良い! ★B2 “Glieder” (3:40)は、独詩の朗読から始まり、軽い感じのポップな曲調となります。この曲では、Gutの声の魅力とアレンジ力が爆発しています。最後のノイズも良い! ★B3 “Biste Schon Weg” (4:13)は、フランジャーを掛けたドラムと多層化したドラムの組合せに、Gutの呟くようなVoが乗り、ダブルBっぽい低音が映える渋い曲になっています。 ★B4 “Are You Hungry?” (2:21)は、単調なリズム隊に、簡素な電子音とGut独特の呟くようなVoから成る曲ですが、後半は多重録音されたVoで終わっていきます。 ★B5 “Sein” (3:45)は、ランダムな電子音と四つ打ちキックに、割とハッキリしたGutのVoが聴こえる曲ですが、Voのテンポなのか?洗脳されている感じがします。 ★B6 “Backup” (3:39)は、今までとは全く異なる電子音によるランダムなノイズ的楽曲で、何故か、この曲が本作品を象徴しているか?あるいは次作へのヒントを提示しているように感じます。 思っていたよりも、かなり渋い作品で、ある種のエレクトロニカのようにも思えました。特に、GutのVoは、歳相応なのかもしれませんが、やや掠れ気味で、良い味だなあと感心してしまい、また、曲も、それまでの外方への向きから内省的な方向も感じられて、新鮮でした。1980年代のNDWが電子音楽とパンク/ポストパンクとの邂逅から生まれた私生児だとすると、2020年代には、当然、このようなエレクトロニカになるのかな?とも思いました。破茶滅茶さはありませんが、じっくり聴くことも出来る良作だと思います! B1 “Lover” (5:17) https://youtu.be/6FE5NpO9kao?si=PVDAc1AIGiHl-JQE [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_lkqK112XALxdSeE_VPf30rSfj5zRqVWCk&si=W8vRsrLquqQPUQ39 #GudrunGut #Moment #MonikaEnterprise #SoloAlbum #5thAlbum #SynthPop #Electro #Experimental #AllInstruments #Self-Produced #EinstürzendeNeubauten #ManiaD. #Malaria! #Matador #MonikaWerkstatt #MonikaEnterprise #Oceanclub #Berlin
Experimental / Synth Pop Monika Enterprise 1400円Dr K2
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Gudrun Gut & Mabe Fratti “Let's Talk About The Weather“
今回は、独Mの系譜(Mania D., Malaria!, Matador, Monika Werkstatt)の1人Gudrun Gutとグアテマラ出身の前衛音楽家Mabe Frattiのコラボ作品”Let’s Talk About The Weather”をご紹介したいと思います。Gudrun Gutの方は、前回、ソロ作品”Moment”の時にも、その略歴は書いてありますので、そちらをご参照下さい。今回は、コラボレーターのMabe Frattiのバイオグラフィーを少し書いてみたいと思います。Frattiは、そのエーテル的な声と音楽から、グアテマラの代表的な前衛チェリストとして知られていますが、現在は、メキシコに住んでいます。その振り幅は、ノイズ〜クラシック〜エレクトロニクス〜現代音楽のインディペンデントな領域にまで及んでいます。彼女は、グアテマラのペンテコステ派の家庭で育っており、小さい頃から、クラシック音楽しか聴かず、チェロのクラシック教育を受けていました。 また、父親がランダムに持ってきたGyorgy Ligeti(ジョルジ・リゲティ)のレコードや、レコード店で見つけたチェリストのJacqueline du Pré (ジャクリーヌ・デュ・プレ)のDVD等を見聴きして、より前衛的な音楽も体験することとなります。 彼女は10代の頃から自分の音楽を作り始め、教会から外に出た時には、レゲエ、ブルース、ファンクなどさまざまな演奏スタイルを演奏していたようです。因みに、現在使用しているチェロは学校からのプレゼントだそうです。その後、自分のPCで、ファイル共有サイト LimeWireを使いこなすようになって、更に色々な音楽を聴くようになり、その結果、本格的な前衛演奏家/作曲家として、活動を始めています。そうして、2015 年に、Goethe Institutの研修の一環とした、彼女は音楽制作のためにメキシコに行っており、その時に、彼女は著名なアーティストであるGudrun GutやJulian Bonequiなどの多くの音楽家達と共演し、Mexico Cityの即興音楽シーンに参加するようになります。また、その時に、彼女のパートナーとなるHector Tosta(その時はLa Vida Bohèmeに在籍していた)とも知り合い、その後、Amore Muereというグループを結成することになります。2019年に、Frattiは、作家W.G.Sebaldの作品「土星の輪」にインスピレーションを受けて、彼女のファースト・アルバム” Pies Sobre La Tierra”を制作しており、その翌年には、彼女のセカンド・アルバム”Será Que Ahora Podremos Entendernos”を、作曲家Claire Rousayと彼の実験音楽グループTajakの協力の元、作製しています。そうして、2023年には、彼女のパートナーである画家のHector Toscaとのコラボ・ユニットTitanic名義で、アルバム”Vidrio”を作製、「ジャスとチャンバー・ポップの間にある音楽」と評されています。また、同年には、Amor Muereとして、アルバム”A Time To Love, A Time To Die”を作製、リリースしています。このグループは、FrattiとConcepción Huerta, Gibrana Cervantes, Camille Mandokiから成り、またこのアルバムには数年間掛けて作製されているそうです。 以上が、Mabe Frattiの略歴となります。それで、本作品ですが、恐らく、2015年に、FrattiがMexico Cityを訪れた時に、Gudrun Gutと出会い、コラボの約束をしたものだと思います。クレジットを見ると、ヴァーチャル・コラボであり、FrattiはMexico cityの自宅スタジオで作業し、GutはBerlinの自宅スタジオで作業し、2020/2021年に、GutがBerlinのStern Studioでミックスを行っています。なお、レーベルはメキシコのUmor Rexからのリリースです。内容的には、A面4曲/B面5曲が収録されていますが、B2-B5は連作のようです。A1の歌詞はGut, A2の歌詞はFratti, B1-5の歌詞はGut & Frattiの共作となっています。B2-B4は大きな曲を4章に分けていますが、実際の曲間の境界は不明瞭ですので、全体を1曲と捉えても良いかもしれません。それでは、各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “Aufregend” (4:25)は、軽いリズムマシンに太めのSynth-Bによるミニマルな曲で、Gutの呟くような歌が微音で入っており、バックには辛うじて/はっきり聴こえるチェロが入っているのが不気味です。 ★A2 “El Cielo Responde” (3:47)は、ダブ的な打楽器と子守唄を囁くようなFrattiのVo、それにピアノやドラムマシンのキック音等から成る曲で、声のループや刻むハイハット、太く蠢くSynth-Bの低音等が挿入されています。 ★A3 “Walk” (6:03)は、ジャジーなハイハットとそれに不釣り合いなSynth-B、歪んでいくチェロや不明瞭なVoice等が複雑に絡み合う曲で、単に「ジャズ的」とは片付けられない程、破壊的音響になっていきます。 ★A4 “In D” (5:25)では、蠢く低音シンセと四つ打ちキックで始まり、段々とビート感が増して、ダイナミックになり、チェロや電子音も入ってきますが、キーはDからは外れません。Terry Rileyの”In C”の別ヴァージョン⁈ ★B1 “Air Condition” (5:21)は、浮遊感のあるFrattiのVoとハスキーなGutのVoの絡みが、バックのピアノや電子音の上で繰り広げられているような曲で、全てが曖昧模糊で、虚空に溶けていきそうです。 ★B2 “Let's Talk About The Weather I” (2:30)は、不明瞭なチェロの音に、電磁波音やナレーションが絡む曲で、段々とチェロの音が埋もれていきます。 ★B3 “Let's Talk About The Weather II” (2:16)は、B2との曲の境界がハッキリしませんが、ナレーション等の音と曖昧な電子音の蠢きから成る曲で、混線した通信を傍受しているようです。 ★B4 “Let's Talk About The Weather III” (3:50)も、B3に連続して始まり、バックでドラムが鳴っていますが、完全に前面のナレーションや不明瞭な電子音?に隠されています。 ★B5 “Let's Talk About The Weather IV” (4:01)も、B4に連続して始まりますが、段々とモコモコと蠢く電子パルスに形を変えていき、すこーしだけビート感が感じられますが、やはり具体音等に隠れてしまい、収束していきます。 Gudrun Gutのポップネスは完全に封印され、Mabe Frattiが自由に出来るように配慮されたものと想像します。しかも、明瞭な音は少なく、何処か曖昧模糊として不明瞭な音が鳴っているキャンバスに、2人が水彩画で抽象画を描いているかのような音楽となっています。しかしながら、ぼーっと聴いていても、聴き込んでみても、大丈夫なだけの完成度と強靭さも兼ね備えていますので、片意地張らなくても、充分楽しめます。しかし、意外なところで、接点があり、かつ今の通信環境であれば、ヴァーチャルでコラボも出来ると言う、現代のテクノロジーはこの2人のように異文化間の接続を可能にしているのだなぁと感心しました。多分、Gutのミックスも相当、気をつけてやっているのが分かりますね。そんな2人のイカした音楽も体験してみて下さい! A3 “Walk” (6:03) https://youtu.be/IrGtWduunS4?si=GKcPO32Rsw2RL3Hv [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_klJCx56gloYSTVn9sp8QxYwreDM0GefHE&si=ECtpsf1AT2YGGSfu #GudrunGut #MabeFratti #Let’sTalkAboutTheWeather #UmorRex #CollaborationAlbum #VirtualCollaboration #Berlin-MexicoCity #FinalMixByGudrunGut #GermanComposer #GermanElectronicsPlayer #GuatemalanCellist #GuatemalanComposer #Experimental #Electronics #Abstract #Cello #SoundArt
Experimental / Ethno / Electro Umor Rex 2450円Dr K2
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Deutsch-Amerikanische Freundschaft “Absolutely Body Control”
今回は、Deutsch-Amerikanische Freundschaft、略してDAFのリミックス盤をご紹介します。このマキシ・シングルは、Virgin Trilogy (有名なDAFの3部作)の後、一旦解散したDAFが直ぐに(1985年)、再結成して、その時にリリースされたアルバム”1st Step To Heaven”の販促の関係で、英語圏をターゲットに出されたアイテムです。当然、アルバムも歌詞やタイトルは全て英語になっていました。ただ、このアルバムはスウェーデンのチャートを除いて、チャートインすることは無かったのですが、このことに対して、Gabiは「俺たちは、自分達に課したルールを破らなきゃいけなかったんだ。だから、俺は英語で歌ったのさ。それにもう黒いレザーの服を着ることも無い。」とコメントをしています。まぁ、確かにイメチェンは必要だったのかもしれませんが、商業的には失敗でしたね。しかしながら、そうしたチャレンジがDAFの本質を露呈したとも言え、英国BBCのRadio 1のDJ John Peelは、DAFを「テクノのゴッドファーザー」と呼んでいます。まぁ、それはそう言う賞賛もあるとして、ある意味、先述のアルバムと一緒にリリースされた本作品(ミックス違いのシングルカット)はどうなのか?ちょっと心配だったんですよね。と言う訳で、本作品を聴いてみて、また考えてみましょう。 ★A “Absolute Body Control (Mix II)” (5:26)は、今までのDAFと異なり、音数もやや多く、また英語の歌詞で歌われています。正直、シーケンスにも余りDAF臭さはなく、バックにも(余計な)シンセなんかが入っており、単なるエレクトロ・ダンス・ミュージックに聴こえてしまいますね。 ★B “1st Step To Heaven (Instrumental)” (6:40)は、アラビックな音階を使ったエレ・ポップで、インスト曲の為か、音数も多く、シーケンス・パターンも余りDAFらしくはないです。またパーカッション等も入っており、DAFの無駄を削ぎ落としたダンス・ミュージックからは180°転換していますね。 良い悪いは別として、ここら辺がDAFの過去との決別の分岐点であったように思います。Virgin Trilogyで入ったリスナーさんは多分面食らったと思いますが、ここから入ったリスナーさんはカラフルなエレクトロ・ダンス・ミュージックで踊っていたのではないでしょうか?まぁ、正直、私は前者なのですが、それでもDAFの行く末を見守りたかったです。残念ながら、Gabiが2020年3月22日に急逝してしまいましたので、それは叶いませんでしたが。まあ、ボチボチ、出ているレコードを聴いて行こうと思います! Side A “Absolute Body Control (Mix II)” (5:26) https://youtu.be/cY77_M5w19g?si=q53_1RjQlOEAWIY1 Side B “1st Step To Heaven (Instrumental)” (6:40) https://youtu.be/_AscBdfTNKQ?si=xuCASJE4SNQ0F4we #Deutsch-AmerikanischeFreundschaft #DAF #AbsolutelyBodyControl #SolidMix #1stStepToHeaven #InstrumentalVersion #IlluminatedRecords #12InchMaxi-Single #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Electro #DanceMusic #Synthesizers #Sequencer #Drums #GabiDelgado-Lopez #RobertGörl #GodfatherOfTechno
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Synth Pop Illuminated Records 1550円Dr K2
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Die Tödliche Doris “…”
漸く、たどり着きました。独逸が誇るアヴァンギャルド・グループ、Die Tödliche Doris (ディー・テードリッヒェ・ドーリス)のファースト・アルバムです。特にタイトルとかは付いておらず、”….”なんて表記されていたりします。それで、Die Tödliche Dorisの命名については皆さんも知っているとは思いますが、英語に直訳すると”The lethal Doris”で、lethal dose(致死量)とDoris(女の子の名前)を引っ掛けた造語のグループ名で、そこら辺にも彼等が只者では無いのが分かると思います。そして、その結成には、1981年に西ベルリンで行われたイベントGeniale Dilletanten運動(ゲニアーレ・ディレタンテン; タイプミスをそのまま使っていますが、意味としては「天才的アマチュア」)が大きく関わってきます。このフェスでは、音楽、絵画、映像等を問わず、何か面白くて、新しいことをやろうとするのが、コンセプトだったようで、音楽方面からは、Die Tödliche Dorisの他に、Frieder Butzmann, Einstürzende Neubautenなんかのメンバーが集まっています。また、Die Tödliche Dorisのリーダーであり、作家兼音楽家でもあるWolfgang Müllerが出版社メルヴェ社に”Geniale Dilletanten”という本を書いており、これは、仏のポストモダン哲学者を独で最初に出版したこととして知られています。Die Tödliche Dorisは、ポップミュージック・グループに通常不可欠である一貫したアイデンティティを構築するのではなく、「慣習」や「固定観念」の概念に挑戦しています。 その代わりに、彼らはそれぞれの楽曲やプロダクションにおいて、「スタイル」とか「イメージ」に従わないようにしています。 ボードリヤール、フーコー、ガタリ、リオタールのポスト構造主義に触発されたDie Tödliche Dorisは、音によって作られた彫刻を解体したいと考えており、この音楽的、娯楽的、或いは非音楽的な目に見えない彫刻は、Die Tödliche Dorisそのものの身体となるはずだと言うことです。とまぁ、その頃のDie Tödliche Dorisは、ポストモダンのコンセプトで理論武装した頭脳派演奏下手バンドだった訳です。 それで、Die Tödliche Dorisの最初の12インチのアルバムにはタイトルがありませんが、通称”7 tödliche Unfälle im Haushalt (「家庭内の 7 つの死亡事故」の意味)” と呼ばれており、それは前回ご紹介しました。 その後、彼らは、1982年に”….”(通称”Die Tödliche Doris”と呼ばれています)をリリースしています。このアルバムには 13曲が収録されていますが、共通点は無いように思えます。つまり、「面白い」曲、「シリアス」な曲、その次が「平凡」な曲、「残酷な」曲、「ソフト」な曲、 どれも一緒に収録されるようには思えず、すべてのスタイルやテーマが互いに厳密に分離されて、バラバラになっている訳です。 なので、Die Tödliche Dorisは人間と同じように、多くの異なる矛盾した特性で構成されており、それらは 1 つの身体の中に存在しますが、同時に存在する訳ではないと言うことを表していると言えましょう。それで、彼等は、このコンセプトを更にレコードで再現することはできないとの考えに至り、「レコード」と言うメディア自体も解体することにしました。それが、あの有名な1983年作の”Chöre & Soli”で、要するに、音質の悪い小さなソノシート8枚とそれ専用のバッテリー付き再生機及びブックレットをボックスに入れたと言う作品です。この作品は、世界中のコレクターズ・アイテムとなっています。 と言うように、かなりコンセプチュアルな作品を作り続けているDie Tödliche Dorisですが、今回は、先述の”….” (通称”Die Tödliche Doris”)をご紹介します。何せ常に観客を裏切るのが、Die Tödliche Dorisであり、それを期待している観客を更に裏切ってくるとまで言われた頭脳集団の音ですから。先ずは、タイトル”….”のファースト・アルバムから聴いてみます。因みに、参加メンバーは、Wolfgang Müller(ヴォルフガング・ミューラー)とNikolaus Utermöhlen (ニコラウス・ウーターメーレン)及び(多分)Käthe Kruse(ケェーテ・クルーゼ)の3人ですね。内容的には、A面7曲/B面6曲が収録されています。それでは、各曲の紹介をしていきましょう。 ★A1 “Stümmel Mir Die Sprache” (3:37)では、単調なDrsに、男性の叫び声と女性のうめき声の阿鼻叫喚と歪んだBらしき音から成り、一部でコードを弾くオルガンやフリーキーなGも聴取されます。 ★A2 “Posaunen Der Liebe” (1:40)では、壊れたラジオのようなノイズが段々と分厚くなってきます。大声援のテープ音も最後に放たれます。 ★A3 “Der Tod Ist Ein Skandal” (4:29)では、何とも頼りな気ないDrsと存在感あり過ぎなBに、弱々しい男性Voが呪文のように流れ出してきます。 ★A4 “Panzerabwehrfaust” (0:13)は、叫び声とDrsから成る一瞬の曲で、直ぐに過ぎ去ります。 ★A5 “Wie Still Es Im Wald Ist” (2:21)は、チェロとおもちゃ楽器(?)をバックに、引き攣るような語り男性Voから成る曲で、不安感が部屋中に充満します。 ★A6 “Sie Werden Nicht Beobachtet” (1:50)は、ドカドカしたDrsに合わせた男性の叫び声と、そのバックでGが鳴っている曲で、その構造自体がヘンテコ。 ★A7 “Haare Im Mund” (3:35)は、単調なスネアの打撃音に、男性の叫び声Voと女性の叫び声の合いの手が乗る曲で、多層化されたクラリネットが挿入されたり、一瞬の大音量ノイズやBのループ音も加わります。 ★B1 “M. Röck: Rhythmus Im Blut” (2:27)は、言葉遊びのようなリズミックな合いの手に、スライド奏法のGとB及び男性Voが乗る曲で、その内、バックに伸びやかな男性コーラスが挿入されてきます。 ★B2 “Kavaliere” (3:42)では、多層化したリズムを刻むDrsに、フリーなクラリネットとGノイズ及び多重録音された男女Voが被ってきて、せめぎ合います。 ★B3 “Fliegt Schnell Laut Summend” (2:48)は、反復するアコーディオンの上に、語るような女性Voが乗る曲で、それぞれの音や声は多層化して再生されます。 ★B4 “Robert” (3:09)は、ホワイトノイズのリズムの上にナレーションが乗っていたと思ったら、いきなり、リムショットにフリーキーなBやG、或いはそれらの逆回転再生音が押し寄せますが、ナレーションは続いています。 ★B5 “Über-Mutti” (2:21)では、単調なDrsにBとGの不協和音と段々エキサイトしてくる女性Voが乗る曲で、まるで出来損ないのMarsのようです。それが数回繰り返されます。 ★B6 “In Der Pause” (4:25)は、リズムマシンとSynth-Bから成る曲で、ラジオ調のナレーションが重なってきます。しかし、リズムレスになってきて、音数は減少していき、そのまま終わります。 いやー、凄かった!と言うのが、このアルバムを聴いた時の第一印象です。とにかく、男女問わずにVoはただただ叫んでいるだけで、「歌う」ことはしてないです。Drsとかも多分、Kruseだと思いますが、とても叩いていると言える程のテクはないと思われます。メインVo(男性)のMüllerもただ喚いているだけのように聴こえますが、独逸語が分かれば、もっと楽しめるのでしょう。彼の歌の調子っ外れ振りが魅力的ですね。しかし、それらの外れた音をUtermöhlenがしっかり補完している感じで、ちゃんと「曲」として成り立たせ、ギリギリのところで一線を保っているのも凄いです。そう言う意味で、Die Tödliche Dorisは「天才的アマチュア」なのかもしれませんね。必聴の一枚です! https://youtu.be/iVMGLohJV1Q?si=efxh7yz5ZsMdO9q0 #DieTödlicheDoris #… #ZickZack #FirstAlbum #7TödlicheUnfälleImHaushalt #1982年 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Berlin #Avant-Garde #Dadaism #Fluxus #Noise #GenialeDilletantenFestival #WolfgangMüller #NikolausUtermöhlen #KätheKruse
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Avantgarde Zick Zack 不明Dr K2
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Sprung Aus Den Wolken “Pas Attendre/Que Pa”
久しぶりに出ました!独のSprung Aus Den Wolken (スプルンク・アウス・デン・ヴォルケン;以下SADWと表記)の12㌅マキシ・シングル“Pas Attendre”/“Que Pa“です。SADWは、元々ベルリン在住のKiddy Citnyのソロプロジェクトとして、1981年に活動を開始しており、メンバーの変遷を経て、現在は、CitnyとRenault Schubertのデュオになっているようです。詳細については、以前にも書いてありますので、そちらをご参照下さい。本作品は、Wim Wenders監督の映画”Der Himmel über Berlin (ベルリン・天使の詩)”のサントラに使われた曲で、Kiddy Citnyの他、後にEinstürzende Neubautenに入るAlexander HackeとJohann Arbeitの他、Peter PrimaとThierry Noirも参加しています。それでは、各曲を紹介していきましょう。 ★A1 “Pas Attendre” (4:34)は、淡々と続く単調なリズムに、不釣り合いな程、感傷的なアコギのカッティングと悲しげに歌い上げるVoが堪らない曲になっています。また、バックのノイズや最後のフリーキーなGソロも聴かせてくれます。 ★A2 “Pas Attendre (Minimal)” (1:48)は、A1の別ヴァージョンで、アコギの弾き語りから始まり、後からDrum Machineが入ってきます。 ★B1 “Que Pa” (3:41)も、エレ・アコの弾き語りで始まりますが、Voが渋い男性低音の語りなので、グッときます。後から入ってくるGソロやアコーディオンやシンセも結構、通好みですね。 ★B2 “Que Pa (Minimal)” (2:56)は、重低音のキックとBに合わせて、語り口なVoが入ってきますが、バックにメタル・パーカッションらしき音やノイズも入ってきて、とてもB1と同じ曲とは思えないですね。 A1やB1は、素直に、心にグッとくる曲で、SADWでもこう言う音楽、ちゃんと出来るんだと感心しますが、問題は、B2のヴァージョンで、これは明らかにAlexander Hackeとかの影響だろうなと思う位、破壊的なミックスがしてあります。特に、バックにメタル・パーカッションなんかを入れる所なんかは「モロ」ですね。いゃ〜凄い振り幅のあるシングルでした。もし、映画も観ている方は、是非、こちらのマキシ・シングルもチェックしてみて下さい! A1 “Pas Attendre” (4:34) https://youtu.be/N_YMhA-yISs?si=LNNoRgDYl5DYGilO B1 “Que Pa” (3:41) https://youtu.be/ebBtUro5z-E?si=hfpGRUc8--BSnhpF #SprungAusDenWolken #PasAttendre #QuePa #LesDisquesDuSoleilEtDeLAcier #MaxiSingle #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #Experimental #Rhythm #KiddyCitny #AlexanderHacke #JohannArbeit #PeterPrima #ThierryNoir #WimWenders #DerHimmelüberBerlin #ベルリン・天使の詩 #Soundtrack
Neue Deutsche Welle (German New Wave) / Experimental Les Disques Du Soleil Et De L'Acier 1000円Dr K2
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Ja Ja Ja “s/t”
しかしながら、ATA TAKは、いつも凄いバンドを見つけてくるよなー。と言う訳で、今回、ご紹介するのは、当時、Neue Deutsche Welle (NDW: German New Wave)の渦中にあったバンドJa Ja Ja (ヤーヤーヤー)の唯一のアルバムです。もう、ジャケからして脱力してしまう、このバンドは、米国人のJulie Jigsaw,に、独逸人のWietn Wito (ヴイートン・ヴィト)とFrank Sambaから成るトリオです。 それで、ちょっと調べていたら、VoのJulie JigsawことJulie A. Ashcraftのちょっとした自叙伝みたいな記事を見つけましたので、なるべく簡潔に書いておきます(現在はJigsawnovich名義で活動)。どうも、彼女は米国在住であったようで、1980年にNYCのPratt研究所に通う為にDallasから引っ越して、そこで、美学生のTed Parsons (Drs)とGregory Grinnell (G)とで、最初のバンドGroup of Treesを組んで、彼女はVoとCasiotoneを担当しています。彼女曰く、サーフの影響を受けたポストパンク/ノーウェーブなサウンドであったとのこと。しかし、ParsonsはThe Swansに、GrinnellはThe Toastersに加入して、バンドは消滅します。話しが少し前後しますが、1978年〜1980年には、彼女は、Liquid Liquid, Siouxsie & The Banshees, Bad Brains, The Slits, Captain BeefheartやDevoのライブを観ており、その中で、CrassのSteve Ignorantとも直接会っています。一方で、彼女は、京劇や小野洋子, Der Plan, DAF, Holger Hiller, The Wirtschaftswunder, ? & The Mysterians, The Residents, Kraftwerk, Mars, DNA, PIL, Wire, Ornette Colemanなんかも聴いていました。それで、週1回、ラジオ局WPIRのPratt RadioでDJをやるようになります。1981年に、彼女はDer Planのアルバム”Geri Reig”をジャケ買いし、独逸語のサウンドが大好きになって、Der Planの曲を歌おうと練習していました。そして、彼等にファンレターを送り、そのアートワークとか彼等の求めている音楽とかについて尋ねます。それに対して、レーベルのグラフィック・デザイナー兼リードVoのMoritz Rから返事ももらい、その後、手紙やカセット作品の交換を経て、独逸に来ないかと誘われます。それで、彼女はDüsseldorfに行き、ATA TAKスタジオのゲストルームに住みつきます。そこで、PyrolatorことKurt DahlkeとFrank Fenstermacherらと、かなりディープな哲学的な会話を交わすようになり、特に、Dahlkeが”同一性”について語ったことを、彼女にもっと詩的に書き直させて、それが後のJa! Ja! Ja! (意味は「はい!はい!はい!」)の持ち歌の歌詞になります。それで、彼女は、ピアノでメロディを、ドラムでリズムを作っていたりしましたが、ATA TAKスタジオにあったベースやトランペット、シンセにもチャレンジして、Fenstermacherには「天然の才能だね」と言われ、Dahlkeも友人を紹介するからと言って、Frank SambaとWietn Witoを連れてきました。会った日の晩に早速3人でセッションを行い、即興で歌詞も歌も付けてジャムっていました。それを聴いていたDahlkeがサッと録音ブースに入って、そのセッションを録音しています。その中からベストテイクを選び、Witoの一言で、”Wahrheit (ヴァールハイト; The Truth)”として、1982年のコンビ・アルバム”Klar! 80 Sampler, ALLES ODER NICHTS (アーレス・オーダー・ニヒツ; EVERYTHING OR NOTHING)”に収録し、その翌日、3人で、”Katz Rap”(カッツ・ラップ; Cat Rap)と“Mom”の2曲をシングルとして、ATA TAKからリリースしています。その時に、グループ名をJa Ja Jaとしています。1981年〜1982年に、彼女は、Blixa BargeldやGudrun Gut, Bettina Köster, Robert Görl, Andreas Dorauらと会い、NMEの記事の為に、Holger Hillerにインタビューし、実際にPalais SchaumburgやEinstürzende Neubauten, Der KFCのステージも観ています。彼女はその時に、ベルリンの壁で、西側と東側の両方から、その緊張感やスクワットや暴れ方を実体験しており、独の若者達から「米軍基地の為に、冷戦中、しなければならない業務があるのだ」と言うことを再度伝えて欲しいと言われ、その体験から、“Habt Nicht Mehr Angst (Have No More Fear)”の歌詞が出来たとか。それで、NYCで書いていた歌詞に加えて、Ja Ja Jaでの新曲では、彼女は、全て独逸語で歌詞を書くようになりました。それと、1982年にリリースした”Katz Rap”で、彼女は、欧州で最初の女性ラッパーとして録音されたらしく、また、同年のその後、“Graffiti Artists International”も欧州で最初に「落書きアート」に関してのラップ曲となったとも言われています。また、ジャケ絵は、David Icke (デヴィット・イケ)によるモノで、バンドの曲”I Am An Animal”に関係しています。一方、他の2人は、素晴らしいミュージシャンHenry Scott IIIをバンドに加えることを提案し、実際、ライブでも凄かったらしいです。ただ、3人の音楽性がバラバラで、良い意味で、バンドとしては、色んな要素を含んでいました。例えば、Zurichでのライブでは、観客の半分はゴリゴリのパンクスで、残りの半分はオタクのような若者と言う感じだったとか。彼等は、独、蘭、スイス、ベルギーのクラブや大学、フェスでライブ活動を行っていますし、NYCのダンステリア・クラブからのオファーもありました。John Peelも、BBCラジオ番組で”Katz Rap”を掛けてくれていますし、Zurichの独逸語ラジオ番組でもインタビューも受けています。後、NDWの裏番長Xao Seffchequeが1曲、彼女(Julie Jigsaw)のことを取り上げた曲”Julie In Germany”を1982年にリリースされたコンピ”Klar und Wahr – Sounds Rettet Deutschland (クラー・ウント・ヴァール-サウンズ・レテッテ・ドイッチュランド)”に収録したのは、彼女にとっては嬉しかったようです。Ja Ja Jaでは、彼女が歌詞とメロディを作り、他の2人がアレンジして曲にすると言うやり方でしたので、クレジットもそれぞれ別にしていましたが、ある日、Witoが新曲を書いたと言ってきて、彼の主張によると、複数のクレジットにしてもらえないかと言うことでした。また、彼自身は、よりプログレ・ジャズの方向に向かっていましたが、Jigsawはもっとヒップポップ的にしたかったようです。そう言うこともあって、彼女は、1983年にNYCに戻り、ヒップポップ・ムーブメントにどっぷりハマり、また落書きアーティストとしても活動していくことになり、独でのJa Ja Ja は自然消滅してしまいます。 ちょっと長くなってしまいましたね。すいません。それで、即席セッションから発展したJa Ja Jaの唯一のセルフ・タイトルのアルバムを紹介していきます。先述のように、このバンドは、Julie Jigsaw (Vo, Casiotone, Harmonica), Wietn Wito (Fretless-B, Chapman Stick), Frank Samba (Drs[Sonor], Perc, Vibes)から成るトリオで、本作品には、Henry Scott III (Trumpet, Flugelhorn, Vo)がゲストで参加しています。またプロデューサーは、PyrolatorことKurt Dahlkeです。内容的には、A面4曲/B面6曲を収録しています。それでは、各曲について紹介していきましょう。 ★A1 “Ain't Gonna Give Up Yet” (2:33)はChapman Stick (以下Stickと表記)とカシオの音に導かれて、不思議なメロディとなる曲で、B級感満載です。 ★A2 “Graffitti Artists International” (6:29)も、Stickのリフから始まり、Drsとカシオが被って行きますが、VoがモロRap調で、NDWとしては異端的ですね。間奏にはホーン類が吹きまくってますし、Stickのソロもあります。 ★A3 “Mom” (3:48)では、ミュートしたBから静かに始まったかと思ったら、いきなり急かすようなアンサンブルが始まります。Slap奏法も交えて、凄い迫力です。 ★A4 “I Am An Animal” (3:36)は、カシオの音とVoから成るキュートな曲ですが、バックの演奏は高度です。この曲でジャケが決まったとのことですが、私にはその理由は良く分かりません。 ★B1 “On The Other Side” (2:36)でも、Stickの高度な演奏とビートをキープするDrsに、英詞のVoがシアトリカルに絡んできます。 ★B2 “Red” (3:36)は、アップテンポで手数の多いDrsとBをバックに、元気一杯なVoが乗っかる曲ですが、途中、鉄琴ソロで、一息付けます。 ★B3 “Katz Rap” (2:51)は、Slap奏法も冴えるBとDrsとVoで始まりますが、やがて更にアップテンポになって、ややRap調のVoとStickの速弾きが最高にファンキーでご機嫌です。 ★B4 “Ja! Ja! Ja!” (2:20)は、リバーブの効いたDrsに、Bと囁くようなVoが被ってきますが、間奏にハーモニカのソロも良い味付けです。 ★B5 “Destiny” (3:50)は、ホーン類のユニゾンで始まり、強力なリズム隊と、爽やかなVoが独自の空間を作り上げています。間奏のトランペット・ソロも良し!更にそれに絡まるBソロとの掛け合いも凄いです。 ★B6 “Habt Nicht Mehr Angst!” (1:45)は、地を這うようなリズム隊に、Voが独語歌詞を不貞腐れたように歌い、間奏には歪んだStick(?)のノイジーなソロも聴取できます。 これは、当時のNDWの流れの中では、異色作ですね。多くはどちらかと言うとミニマルで、ドラムマシンを使うことが多い印象でしたが、Ja Ja Jaは、上手過ぎるStick/Bの演奏(私は当時、Chapman Stickを弾きこなすNDW関係のアーティストを知らなかったです)とそれに耐えうるDrsの力量からして、別格で、更に曲もプログレっぽくもあり、アレンジも最高です。まだ、Jigsawが米国人の為、独逸語の歌詞が極端に少なく、その点でも通常のNDWとは異なります。購入当時、個人的には、そのStick/Bとかの速弾きがどうにも腑に至らず、そのまま、余り聴いていませんでしたが、今聴くと、凄っく面白いです❗️しかも、これが、ATA TAKからあんなジャケでリリースされたことに驚愕してしまいます。なので、ジャケとかに惑わさらないで、聴いてみて下さい! https://youtu.be/m_-iH3Y8PD4?si=uCMdjUDHfCVGMYzt #JaJaJa #ATATAK #First&LastAlbum #1982年 #NeueDeutscheWelle #GermanNewWave #JulieJigsaw #NewYorker #WietnWito #FrankSamba #Drums #Casiotone #ChapmanStick #HipHop #Rap #Guest #HenryScottIII #Producer #Pyrolator
Neue Deutsche Welle (German New Wave) ATA TAK 不明Dr K2
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Bomis Prendin “Clear Memory”
またまた、謎物件です。Bomis Prendinとは?グループ名であり、個人名でもあります。まぁ、どちらにしても、米国Washington D.C.で活動しているのには変わりませんが、、、。良く分からないので、ちょっと調べてみました。結成は1978年11月で、Washington D.C.に住んでいた実験音楽好きのノイジシャン、またはDIY、インダストリアル、カセット・カルチャー或いは実験的電子音楽シーンのパイオニアの集合体が、Bomis Prendinなのです(メンバーには、同名のメンバーがおり、ソロでも活動しています)。その時に集まったメンバーと言うのが、CandeeeことBill Altice, Bomis Prendin, Miles Anderson, Norbert Heubusch, Corvus Crorson或いはSteve WallことStephen E. Wall, William Burke で、後に、William Burkeは、レーベルARTIFACTS/ycleptを立ち上げ、運営しており、また、Candeeeは、2019年に他界しています。それで、彼等は、先ず最初に、1979年と1980年にソノシートをそれぞれ1枚ずつリリースし、1980年には、仏Bain Total / Scopaによる国際 コンピ・アルバム”International CompilationI Part 2”にも参加しており、その後も、1984年と1986年にも2枚以上のコンピに参加しています。2001年になると、活動15年で初のCDRをリリースし、その後もCDR作品をリリースし、更に1980年代に録音していた音源をデジタル配信も始めています。そうして、2020年になって、漸く、1984年作のカセット作品”Clear Memory”をCDとLPで再発しており、これが今回ご紹介する作品となります。彼等は、1970年代後半から、サーキットベンディングしたおもちゃの楽器やG, B, アナログ・エフェクター、安物のKbdそれに、接続し直した回路などでの演奏を、カセット・レコーダーで録音しており、特に、最初のミニ・アルバム的な9㌅ソノシート”Test”と ”Phantom Limb”2枚は、あのNurse With WoundのNurseリストにも加えられています。まぁ、当時としては、それだけ実験的な「ロック」らしき音楽をやっていたのでしよう。そして、彼等が当時、興味を持っていたグループは、The Residents, Chrome, Cabaret Voltaire, Throbbing Gristle, Faust, Cluster, Olivia Tremor Control等だそうです。しかしながら、近年は、活動をしているかどうかは不明でしたが、2011年までは、リリースは確認できました。 以上が、Bomis Prendinの略歴となります。それで、彼等は最初に再発をした音源になりますが、1984年と時点では、カセットとして50部だけしか販売されておらず、その宣伝効果は余り無かったのではないでしょうか?そして、彼等に言わせると、この作品には、DIYで作られた異形のサイケ・ポップや手作り電子音楽が当時のまま封印されている」とのことです。 それで、本作品ちょっとややこしいのですが、Bomis Prendinのメンバーは、Bomis Prendin (Kbd, Perc, Vo, 落書き, 録音), Corvus Crorson (Noises), Miles Anderson (G, Vo, 反作曲), Hungry "Isaac" Hidden (B, Vo), Candeee (空電/雰囲気)で、以前はBill Alticも在籍していました。なお、B7は、ヴァージニア州のBenny’s Richmondでのライブ音源です。内容は、A面8曲/b面7曲が収録されています。それでは、本作品の各曲をご紹介していきましょう。 ★A1 “First Light” (2:54)は、簡素なリズムボックスとカシオとSynth-B及び鳥の囀りから成る朴訥としたポップソングで、インスト曲です。 ★A2 “French Passport” (1:56)は、何ともぐにゃぐにゃなKbdとペケペケのGとSynth-Bからなるインストの小曲です。 ★A3 “Respect The Road” (3:05)では、ややマシなリズムボックスにカシオの伴奏とシンセやGが絡み、やっとVoが出てきます。Gのアーム奏法も時代を感じさせます。 ★A4 “Street Without Lunch” (2:51)では、またチープなリズムボックスとジャジーなオルガンに、歪んだGを弾きまくってます。宅録ジャズ? ★A5 “Why Blondes Eat” (0:16)は、オルガンとかの楽器音の断片のみで、そのままA6に移行します。 ★A6 “I Don't Want” (3:45)では 逆回転したリズムボックスに合わせてのオルガンやGの伴奏に、ちゃんとした歌詞のVoが加わります。 ★A7 “Hell's Little Ransom” (4:51)は、ビックリするような重いSynth-Bとカシオの壁に、SE的シンセなんかが踊っているインスト曲で、重厚な出来です。 ★A8 “Forced Delight / Debris Factory” (2:04)は、最初、簡素なリズムボックスとのんびりしたカシオとGの合奏ですが、突然、激しく歪んだGとBと快活なシンセ音から成る2部構成のインスト曲です。 ★B1 “Jumpstart” (1:20)では、轟音な音塊の中から、リズムボックスやウニョウニョの電子パルス音やGが立ち現れます。 ★B2 “Robop” (3:26)は、単調なリズムボックスに、ジャジーなBと如何にもなGによる「即興ジャズもどき」な曲で、LFOを掛けたカシオも入っています。 ★B3 “Keep The Letters” (4:22)は、チープなリズムボックスに合ったBとGとカシオの伴奏に、途中から入るGやカシオがメロディを取るような構成のインスト曲で、何とも明るいLo-Fiポップですね。 ★B4 “Busy” (0:46)は、シグナル音とリズムボックス音と電子音の混合物から成る小曲です。 ★B5 “I Walk The Lawn” (2:26)では、カリプソ風のノリの良いリズムボックスに、カッコ良いGを弾きまくっていますが、時にKbdにメインが代わったりもするインスト曲です。 ★B6 “The Big Horizon” (3:04)は、キュートな電子音とそれに同期するオルガンらしきKbdから成るシーケンスに、更に重厚なオルガン音が被ってくる曲です。 ★B7 “Integers” (2:53)は、ライブ音源で、ドラムボックスとGのファンキーなカッティングを背景に、自在にカシオを弾きまくったり、また逆にカシオを背景にファズGを弾きまくったりして、メンバー紹介しています。 Bomis Prendinと言うバンドは、結構、古いバンドであり、その為か、録音もチープで、一聴するとLo-Fiバンドのようにも思えますが、これは単に録音機材に制約があったからだと思います。そして、殆どの曲はインストである点とカシオトーンを多用している点も面白いです。個人的には、DD. Recordsの吉松さんとか鎌田さんの作品を思い出しました。多分、彼等はライブをガンガンやるタイプではなく、地下室やガレージ等の閉鎖空間で、音を出して、ジャムったりして、それをそのまま録音した後に、ベストテイクを選んで、カセット作品を作っていたのではないでしようか。曲の完成度は別として、曲自体はアイデア満載で面白いので、そう言った米国アングラ・シーンの最底辺に興味がある方は是非とも一聴してみて下さい!また、今回の再発盤にはインタビューもついていますので、読んでみたい方は購入することをお勧めします。 B1 “Jumpstart” (1:20) https://youtu.be/SkKQNZhnNqo?si=nsQwisdS7C8vt7NT [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_l2CQmBX-uqXktN_Mh38Cd6TBmJ-G9Ocgo&si=NYJc5W5mP_sLtYUd [BandcampのURLも貼っておきます] https://bomisprendintheband.bandcamp.com/album/clear-memory #BomisPrendin #ClearMemory #MentalExperience #2020年 #Reissue #Remastering #ARTIFACTS/yclept #1984年 #USUnderground #NurseList #WashingtonD.C. #Lo-Fi #ExperimentalPop #JazzyTaste #CircuitVending #CheapInstruments #ToyInstruments #BomisPrendin #CorvusCrorson #MilesAnderson #Hungry’Isaac’Hidden #Candeee #BillAltice
Lo-Fi / Experimental Pop Mental Experience (ARTIFACTS/yclept) 3250円Dr K2
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POP. 1280 “Way Station”
またまた、謎物件です。POP. 1280と言うバンドをご紹介します。米国NYCで2008年に結成されたバンドで、この風変わりなバンド名は、1964年発刊のJim Thompsonの犯罪小説の表題から取られています。まぁ、なんだか良く分からなかったので、ちょっと調べてみました。元々は、2008年に、Chris Bugが、高校卒業後2年間、中国「そうじょういん」での勉強が終わったタイミングで、長年の友人Ivan Lipに説得されて、米国NYCに移住してきたことから始まりました。最初は、Greenpointで、Bugがヴォーカル、Lipがギターと言うデュオで始まりましたが、その内、楽器を弾いたことの無いメンバーを誘うようになりました。その結果、最初、John Skultraneがベース、Andrew Smithがドラムと言うバンド形態となり、Bugが曲を書き始めます。しかしながら、それを演奏してみると、ダウナーなパンク・サウンドのようになってしまいましたが、彼等は自分達のサウンドを直ぐに自己分析しています。その結果、彼等の音楽は、No WaveとNew Wave、PunkとIndustrial、NoiseとTribal、ElectroとPost-Hardcoreと言った異なるジャンルの音楽をミックスしたものだと結論付け、まるで、The Velvet Underground, Suicide, Joy Division, The Birthday Party, Sonic Youth, Liarsみたいじゃないかと思って、そのまま活動を続けることになります。BugとLipは不動のメンバーですが、その後、関わったメンバーはJohn Skultrane, Andrew Smith, Zach Ziemann, Pascal Ludet, Allegra Sauvage, Andy Chuggらがいます。本作品では、Matthew Hordが正式メンバーとなっています。彼は、シカゴ在住でしたが、アナログ・シンセ等のハードウェアに詳しいことから、正式メンバーになったようで、アルバム作製1年前にNYCに引っ越してきています。また、Andy Chuggは演奏ではなく、エンジニアとプロデュースとして関わっています。2021年には、5作目のアルバム”Museum On The Horizon”をカナダのレーベルProfound Lore Recordsからリリースしており、現在も活動しています。 以上がPOP. 1280の略歴となりますが、彼等は3枚目のアルバムまでは、自身のレーベルSacred Bones Recordsからアルバムを出してきましたが、この4作目のアルバム”Way Station”に関しては、ベルギーのレーベルWeyrd Son Recordsからのリリースとなっています。前作”Paradise”を出してから、彼等は、音楽的モデルを考え直すことにして、毎晩、セッションを繰り返しては、サンプリングしていたそうで、そこで気付いたのは、BugとLipと言うシンプルなデュオ形態では、寧ろ、ミニマル・ミュージックの美学を導き出せることで、それを後にライブでも演奏できるように形作るにはどうしたら良いかも考えるようになったらしいです。因みに、彼等は、2013年にライブ・カセット作品” Live In Hell”を出していますので、ライブもそこそこやっているようです。また、歌詞も、心の一番奥底にまで潜り込み、それらを取り出す時の痛みや恐れをテーマにしているとのことです(私にはよく分かりませんが)。本作品のメンバーは、Ivan Drip [Ivan Lipの別名] (G, Synth, Drum Machine, Piano), Chris Bug (Vo, Sampler, Synth), Matthew Hord (Synth)で、Scott Kiernan (G, Artwork)がゲストで参加しています。本作品では、A面6曲/B面5曲が収録されています。それでは、各曲についてご紹介していきましょう。 ★A1 “Boom Operator” (3:08)は、重めのドラムマシンと荒いシーケンス・ベースに、呻くような狂的Voが挿入される曲で、フリーキーなGもバックに入っていますが、所謂インダストリアル・ロックのようです。 ★A2 “Under Duress” (4:08)は、繊細なピアノと持続電子音で始まる、割と落ち着いた曲ですが、Voには明らかに「ロック」を感じます。また、曲構成も秀逸です。 ★A3 “The Convoy” (1:38)は、物音系サンプル音をリズムにリリカルで不穏なピアノが曲を牽引する小曲です。 ★A4 “Doves” (2:55)は、疾走するマシンリズムに狂騒的なGと荒っぽいVoから成る曲で、Gの音色は1980年代の日本のニューウェーブっぽいです。 ★A5 “Hospice” (4:34)は、ミドルテンポの粘着度の高い曲で、Voは今までの人とは違うように感じますが、歌い方とか録音方法が違うのかな? また、曲構成も絶妙で、Gもカッコ良くて聴かせてくれます。 ★A6 “Monument” (4:19)は、引き摺るようなダウンテンポの曲で、重々しい雰囲気と単調なリズム隊に恨めしいVoから成り、初期のSwansを想起させる位の重圧感があります。 ★B1 “Empathetics” (3:30)も、重いマシンリズムと重厚なシンセ音に、Michel Gilaを想起させる、苦悶に満ちたVoが乗る曲ですが、間奏でのメタパーを思わせる打楽器の挿入もカッコ良いです。 ★B2 “Leading The Spider On” (3:38)は、珍しくGのリフと吐き捨てるようなVoから成る曲ですが、やがて重苦しいリズム隊が入ってきます。 ★B3 “The Deserter” (2:17)は、意外にもアコギとピアノの繊細な調べから成る悲しげな曲で、薄っら電子音も流れています。 ★B4 “Home Sweet Hole” (4:01)では、キックとBの単調なリズムに粗暴なVoが乗り、やがてシンセによるコードやメロディも入ってきます。歌詞はヤバそうです。 ★B5 “Secret Rendezvous” (5:11)では、宇宙音と共に諦念したVoが語るように歌っていますが、やがて奥ばったキックやSynth-Bも挿入され、リリカルなピアノも入ってきます。アルバム最後に相応しい”The End”な曲です。 まあ、バンド名から予想していたようなポップネスは無く、NYCのエキセントリックなロックバンド、MinistryやSwans等からの濃い影響を感じさせるインダストリアル・ロックで、かなり息苦しい程の重いサウンドを彼等は持っていると思います。世界的には、まだまだ無名ですが、NYCの狂気を伝承する直系バンドとしてのポテンシャルはありますので、日本のリスナーの方にももっと聴いて欲しいですね。ドラムマシンを使っていますが、サウンドのヘビネスや曲の構成はピカイチですので、そこら辺のNYCバンドが気になるリスナーさんには激お勧めします❗️ A6 “Monument” (4:19) https://youtu.be/kRj-2vEe5y0?si=5dLcITGtOtH_lK5z [full album] https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mo598wDV-hZ7qXtL182rEIkDjFkppPzPM&si=hO-Uc3ZfpYbaIBhY [BandcampのURLも貼っておきます] https://weyrdsonrecords.bandcamp.com/album/way-station #POP.1280 #WayStation #WeyrdSonRecords #4TheAlbum #USUnderground #NYC #NYInsanity #IndustrialRock #Cyberpunk #Swans #Ministry #JimThompson’sNovel #ChrisBug #IvanDrip #MatthewHord #Synthesizers #Guest #ScottKiernan
Industrial Rock / Cyberpunk Weyrd Son Records 1100円Dr K2