V. A. “Ex-Yu Electronica Vol. IX”

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これは大変珍しいコンピです。1983年〜1990年の期間のスロヴェニア(旧ユーゴスラヴィアを含む)の地下音楽のコンピで、今までにVol.Xまで出ています。そのスタイルも様々で、大変興味深いものです。2010年から始まった、他のコンピ・シリーズを聴いてはいませんし、また、またそれぞれの単独作も聴いたことは無いので、調べながら聴いてみました。このコンピの首謀者はスロヴェニアのバンドCenter Za DehumanizacijoをやっているDušan Hedlを中心とした4人のようです。それでは、各グループ/各曲についてご紹介していきます(グループ名や曲名、人名の読み方は分かりませんので、そのまま記述しています)。
A1 Tužne ušiは、Saša Kesić (G)やDinko Fazinić (Vo)及びVicko Krivić (Back-Vo)によって結成されたSplitのポストパンク/ゴス・ロックの草分け的存在で、Davor Bilić (B, Vo), Mirjam Jovanović (Drs), Dragan Lukić (Kbd)も加えて、名ライブ・コンピ・アルバム”Omladina '87 - Najbolji Uživo”にも収録されています。“Hod Kroz Maglu”もそこから取られた曲で、Joy Division的な翳りを持ったゴス・ロックですが、後半のギターソロは上手いです。ライブ音源ですが、音の分離や音質は良いです。
A2 SexAは、Ratko Danilović (Drs), Saša Last (Synth, Tapes, B), Nikica Valentić (Vo), Nino Prišuta (B), Ivan Bitz (G)から成る1980年代の旧ユーゴ地下音楽シーンの重鎮で、彼等はPere Ubuや Sonic Youth〜Minimal ManやFactrixの音楽性を持っており、5枚のアルバムを出しています。”Cvijeće”は、確かに、Sonic YouthとFactrixの間を埋める音楽性を持った曲で、中々カッコいいです。
A3 RLSはGoran Lekić, Mirjam Jovanović (Tužne ušiのドラマー), Nikola Radmanの3人組で、後にRumplstinskiとなり、1990年代のバンドに大きな影響を与えています。“Holokaust (early version)”は、単調なドラム(ドラムマシン?)を背景に、情緒たっぷりなシンセとギターのアルペジオが絡むセクシーなインスト曲です。切ない感じが何とも沁みますね。
A4 Nowy LEFことGoran Lišnjićは、1985年にMetroplie Transとミックス・メディア活動を開始、電子音楽からアンビエント・コラージュまで3本のカセット作品を出しています。 “Financial Capital. Fear Of Silence”は彼がMetropoli Transを脱退し、Lebensformerを結成する1992年までに作った曲で、轟々たるバック音とポエトリー・リーディングが主体を占めていますが、その間にクラシカルで重厚なシンセ音のメロディが聴かせてくれます。
A5 Satan PanonskiことIvica Čuljakは1979/1980年にKečer II名義で音楽活動を始め、パンクバンドPogrebのVoをやっていましたが、1987/1989年にSatan Panonski名義でソロで活動、1981年に殺人で10年間精神病院に入院して、テープを使ったLo-Fiな実験的音楽やミニマル・ミュージックをやっています。“Posljednji Dinosaur Umire (edited)”は彼のファーストカセットからピックアップされており、恐らくは弦を緩めたギター音やヴォイスのテープ速度を落とした音に、適当に叩いたパーカッシヴな音も加わった実験的な曲です。
では、B面にいきます。B1 Fritz Und Hansは、FritzことFaris StankovićとHansことZeljiko AndrićそしてRobaことRobert Banićのトリオで、DAFやGranzoneなどの独逸ニューウェーブから影響を受けています。“Luda Kutija”は、所謂、チープなリズムマシンを使ったシンセ・ウェーブな曲で、使われている電子音は砂糖菓子のように可愛らしいです。Voがちょっと弱いかな?
B2 Trobecove Krušne Pećは、ユーゴで1981-1987年に活動していたDamir Prica (Kbd), Darko Begić (Vo, G), Ivica Vinski (G), Mario Barišin (B), Gordan Dorvak (Drs)から成る5人組で、Zabregの地下音楽界で活動、1枚のLPと1枚のライブアルバムを残して、1987年に解散しています。”Aualida”は、ドタバタしたドラムと怪しいKbdからはポストパンクです。Voは不明瞭ですが、どうも逆回転みたいです。そう言う意味で中々面白い曲です。
B3 Masakerは1979年にSelnica ob MuriでMasakr として出てきましたが、後にMasakerに改名。メンバーはMariborの電子工学科の学生Dušan Hedl, Marko Derganc, Viljem Musekがコアメンバーで、後にMarjan Bone (G)とGran Podgorelec (Drs)が加入しています。彼等はNovi Rock Fesにも参加し、また西欧州にもツアーをしています。なお、1984年にHedlは脱退し、C.Z.D. Masakerを結成。“Dol Z Bando”は、初期SwansやMissing Foundation或いはEinstürzende Neubautenを想起させる重いパーカッシヴな音/メタパー音と絶叫Voからなり、めちゃカッコいいです。
B4 Abbildungen Varieteは、Branko Mirt, Darko Senekovič, Igor Zupe, Marko Ornikがメンバー。1983年1月に結成され、最初はDrsと歪んだGとラジオで、Novi Rock ‘83 Festivalに参加。1984年初頭にグループは解散。彼等は主にギャラリーやアート関係の場で活動していました。特に、Maribor Synagogueでの展示は有名とのこと。“Republikanski Marš (edit)”は、バックにループ音を配しながら、単調な重いドラムのキック音とパーカッション類が鳴り響く曲です。そこに暗いメロディも絡んできて、Laibachみたいです。
B5 Mario Marzidovšekは、ユーゴ/スロヴェニアのノイズ・インダストリアル・ミュージックの草分けで、1984年にカセット作品を自身のレーベルMarzidovsek Minimal Laboratrium (MML)からリリースし、メールアート・シーンで1988年まで活動しています。その後は蘭、その後、独逸に移住し、1991年にSlovenska Bistricaに戻ってきています。“Elektrizität VI”は、恐らくタンテやテープ再生の速度を調節したコラージュ的な曲で、ビートレスで、かつディレイ処理も施している曲で、如何にも宅録ノイズです。
とまあ、スロヴェニアの地下音楽の一端を垣間見ることのできたコンピですが、殆どのバンドが聴いたことの無い音楽だったので、楽しめました。もし、このシリーズのコンピに出会ったら、即買いですね❗️

A1 Tužne uši “Hod Kroz Maglu”
https://youtu.be/Cfi1m_JRcgA

A2 SexA ”Cvijeće”
https://youtu.be/FMynLsfJ63I

A3 RLS (Rumplstinski) “Holokaust“
https://youtu.be/T1Kv5GWGmXs

A4 Nowy LEF “Toward The Silence”(YouTubeに無かったので、同バンドの別曲です)
https://youtu.be/Qu39VltHtYU

A5 Satan Panonski “Posljednji Dinosaur Umire”
https://youtu.be/PHho3eolLJI

B1 Fritz Und Hans “Luda Kutija”
https://youtu.be/MRe26BnOBQE

B2 Trobecove Krušne Peć ”Aualida”
https://youtu.be/ELYXzey2VY8

B3 Masaker “Dol Z Bando”
https://youtu.be/ghsIMr4U1Xg

B4 Abbildungen Variete “Republikanski Marš”
https://youtu.be/xsAOA87wgCk

B5 Mario Marzidovšek “Elektrizität VI”
https://youtu.be/6bTLTPC-r8E

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