Jean Cras (=ジャン・クラ)の室内楽2  ピアノ五重奏曲 弦楽四重奏曲

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この作曲家のピアノが入った室内楽は前回紹介したCD以外はおそらくこれだけだと思う。協奏曲もあるけれど、、あとはLabで記事にした弦楽三重奏曲とハープのための五重奏曲がある。ボクが知っているのはそれくらい。器楽曲、管弦楽曲含めればまだ多くの作品がありそうだけど、アンり・リヴィエールの絵が気に入ったのがこの作曲家に興味を持ったきっかけだっただけに、あまり手を広げたくはない。
ピアノ五重奏曲は難しいね。構築的な作風でない人にはなかなかとっつきにくいよね。フランスの音楽家でもやはり、セザールフランクとかフォーレとかブラームス張りの構築的な音楽を書ける人でなければもう、お腹いっぱいになるような曲は難しい。フライ級からウェルター迄飛び越したみたいだ。
フォーレか誰かが歩いた跡がある作品という気がする。だけど、第1楽章は思いのほかよかった。
あちこちに光る旋律と独特のピアノのパッセージがちりばめられ、感覚的な作品になっている。レイノルド・アーンを聴いているようです。

 Piano Quintet (1922)

I. Clair et joyeux. Assez animé [10:34]

II. Calme et paisible. Lent [7:54]
III. Alerte et décidé. Assez animé [6:54]
IV. Ardent et fier. Modéré [9:21]

 String Quartet

Ⅰ.Lento Allrgro   [12:31]
Ⅱ.Calme       [08:49]
Ⅲ.Vite et leger Modere[07:13]
Ⅳ.Lento Allegro    [10:57]

まだ完全に聴ききっていないけど、この作品は素晴らしい。
特に第2楽章の静かな歌はチェロのゆったりとした通奏の上で3つの弦楽器がゆったりと夢のような歌を歌う。浮遊感のある歌が、共感する楽器間を受け渡されながら次第に縒り合されていく。その気になって聴けばもっと深く潜れそうな期待感がある。
第3楽章も優しい。チェロの籠ったピチカートをフーガのようになぞってゆく。乾きかけたユリの花に水滴が落ちて、ゆっくりと花が開くような音楽。海軍提督は凄く繊細な感覚をお持ちのようだ。3楽章の踊るようなリズムと静かに消えて行く音の間合いが素晴らしい。
終楽章はセザールフランクのよう悲し気な旋律が、数瞬楽器間を走り、次第に時間をかけて走り始める。中間部の歌が暗闇に花開く白い蘭の花の馥郁たる香りを載せながら少しずつドラマの終わりに向けて螺旋を切って登ってゆく。
実験的な部分が微塵もなくて、曲は終楽章の冒頭に戻り、すべてを閉じる。感覚的にシェーンベルクの浄夜を聴いたような気がした。

四重奏って、弦楽の理想だね。

YouTubeでの演奏はボクのソースのものとは違うけど、いい演奏です。第2楽章を。
https://youtu.be/I8jqDCOyI0s

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