ヒューバート・パリーのピアノ協奏曲嬰ヘ長調とスタンフォードのピアノ協奏曲第1番

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HyperionのロマンティックピアノコンチェルトVol.12として発売されたレコードのCD盤。
イギリスの代表的な作曲家のピアノ協奏曲ですが、うまくいかないものでスタンフォードは第2番を聴きたかったね。
ピアニスト:ピアーズ・レーン
オケ:BBCスコティッシュSO
指揮:マーティン・ブラビンズイギリスに現現代のポップスロックに至るまで脈々と系譜を繋ぐ古典音楽の重鎮の二人の作品。ここでは
サー=ヒューバート・パリーの『イングランドの重い風』を感じて欲しい。

Sir=ヒューバート・パリー/ピアノ協奏曲嬰ヘ長調 

第1楽章 アレグロ マエストーソ [11'52]
第2楽章 マエストーソ [9'07]
第3楽章 アレグロ ヴィヴァーチェ [13'45]

 ヒューバート パリーの作曲家としてのデビュー作になるか。
彼の5曲のシンフォニーは大好きだけど、この作品については彼の中のブラームスが未消化に感じられ、
正直一度聴いたときは、すぐにやめてしまった。
二度目に聴いたときもかなりの忍耐を要した。

三度目くらいで楽章ごとに集中出来るようになった。

そこら辺で今まで聞こえなかったものがやっと聞こえるようになってきた。
クラシックっていうのは、感性が作品にシンクロするまでに暇がかかるものがある。その辺はフリージャズにも言える。
それは普段読まない小説家の作品に無理矢理興味を向けるのと似ている。
音の力と文字の力の違いはあるが、どちらも普通の人間の表現力ではない。

この作品にはスタイルを確立する前のパリーのあがきのようなものがあって、何処かにスクリャービンが聞こえたり、
ラフマニノフがいたり、リストがいたりする。
ただ、後年の管弦楽の緻密さからすれば驚くほど軽いところがあったりしてめまぐるしい。

第1楽章はフェルディナンド・ヒラーのピアノ協奏曲の主題に似ている。
(…と書いてもヒラー自体が全然ポピュラーではないのであんまり意味はないけれど。)

弦楽がソロピアノに絡む部分の清冽な抒情は初めて嬰ハ短調のスクリャービンのピアノ協奏曲を聴いたときの淡さがあったけれど、
そこからこの人の重厚な部分が始まる。
ブラームスの影響と言うよりも、もう、この頃から彼のオーケストレーションはそれが個性と言えるほどブラームスっぽい。
イギリスの庶民的な旋律に縁取られ、その溶け合いが何処か自然に聞こえてこなかった。
発売されているCDは世界初録音とされていて、作曲家の指定したテンポよりマエストーソの表現に引っ張られているようで、そこが最初の取っ付きを悪くしていた。
何度も聴くうちに、『ああ、やっぱりこの作曲家は好きだなあ』と思ってしまった。

イングランドに吹く風は決して軽々と舞い上がることなく、曇り空の草原の葉先を滑るように蛇行しながら英国の果ての断崖を滝のように落ちて行く。
未聴の協奏曲を聴くならまず、聴いておくべき腹の据わった音楽である。

第3楽章もいいねえ。長いけど。この楽章はピアノがオケから数歩抜け出て、活き活きとしたフレーズを跳ねるように駆ける。
管弦楽と混然となる部分の重奏的な構築は堅牢で、ピアノにかなりのタフネスを求める部分だろうと思う。
このピアニストは一連のロマンティック・ピアノ協奏曲シリーズをよく演奏している人だが、この作品にはかなり共感を持っているようだ。
女々しさのないごつい音楽である。

https://youtu.be/uaPJcyu7fCk?si=u1Om8hGBLi4zvZ00

サー=C.V.スタンフォード

ピアノ協奏曲第1番ト長調Op.59
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第1楽章: アレグロ コモド  いきなりのローカリティ豊かな3/4のピアノのおしゃべりが始まり、「え?」と二度聴き。あ、序奏なん        だと納得。ブラームスの夢を見て起きた後のプーランクかサン=サーンスみたい。

第2楽章:アダ―ジオ モルト ブラームスのシンフォニーの序奏のような入り方にほつほつとピアノの旋律が歌いこむ。とても印象的で静謐な緻密な音楽。重奏部に至るソロパートは説得力がある。

第3楽章 : アレグロ・エ・ジョコーゾ 美しいんだけど、、第2楽章がよすぎ。
YouTubeで全曲聴けるけど、CMでセンスのかけらもないデジタル的ぶった切りでブチブチ切れるのでCD聴いた方がストレスが少ない。 

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