レメディオス・バロ「鳥の創造」   日経 美の十選「透明なものたち」

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先日の、日経 美の十選に、
レメディオス・バロ(Remedios Varo 1908-1963)「鳥の創造」が取り上げられていました。

大好きなシュールレアリスム画家だ。

夜のアトリエで、梟(ふくろう)画家が机に向かって鳥を描いている。
そばでは、卵を2つ繫げた形状の蒸留器が、窓の外から星屑を回収し、
ガラス管を通してパレットに絵の具を抽出しているところだ。

画家が右手に握る絵筆は、首から下げたヴァイオリンと白い弦で結びつき、
紙の中に鳥の姿を生み出してゆく。
そして、左手に持つ三角形の凸レンズは、窓から差し込む星の光を集めている。
画家がそれを紙に当てると、描かれた鳥は実体化し、飛び立とうとする。

古代ギリシャ神話において、梟は女神アテナの聖鳥であり、叡智の象徴とみなされてきた。
それ故、梟を擬人化したような人物に対しても、賢者や創造者のイメージが結びつけられる。
その証拠に、アトリエに置かれた奇妙な器具は、錬金術を象徴しているとのことだ。

バロの絵には、不思議な形をしたガラス製の装置がよく登場するが、透明な容器内で起こる現象は、不透明で謎に包まれている。
植物めいた姿のそれは、夢や詩的イメージを原料として生み出された、一種の錬金術的な産物なのだろう。
フラスコやガラス管、レンズなどガラス器具は創造の神秘を表しつつも、その実態は隠され見ることは適わないのだ。

シュルレアリスムの幻想的な世界観と“魔術的”と評される独特の画風は、
物語を喚起するような童話的な親しみやすさが感じられ、不思議な世界へと誘ってくれます。(1957年、メキシコ近代美術館蔵)

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