Julius Röntgen/ Complete Cello Concertos  ユリウス・レントゲン/チェロ協奏曲全集

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ユリウス・レントゲン/チェロ協奏曲全集(3曲)

ジャケットとCDの絵がとても魅力的でつい買ってしまった。いい音楽です。

チェロ:アルト―ロ・ムルザベル
指揮:ポール・ワトキンㇲ(第1.第2番)ヘンリク・シェーファー第3番)
オケ:  オランダ放送室内管弦楽団

長くなるけど、あんまりやらなかった全曲の感想をやってみた。

ユリウス・レントゲン/チェロ協奏曲第1番ホ短調(1983-1894):牧歌的な歌 手数の多い安定したフライ級 

第1楽章 序奏部にいきなりチェロが重い音域から入る。バリトンがちょっと古びたオケの背景音を引き摺るように歌い出す。ちょっとエルガーっぽいけど、どっちかというとラロのチェロ協奏曲やヴィルトゥオーゾ的なチェリストのためのアレグロ。
ボクサーでいうと技巧が図抜けていて負けないんだけど、KOが少なくて人気がない軽量級のチャンピオン。

第2楽章は良く歌う。心に浮かんだ旋律をこねくり回さずに素直に音符にしたような歌。
時折入ってくるオケのフォーマットはちと古臭い木スペイン風の間奏。チェロものびやかだけど、ホルンの古雅なメロディがいい。チェロ好きにはずっと聞いていられるような眉間にしわを寄せなくてもいい音域が広々と眉を開かせる。
奥行きのあるはるか遠くの山に響くような管楽器に音楽はかすむように消える。

第3楽章は良く撥ねる熱情的というよりは両手を広げてくるくる回っているようなアレグロ。やっぱりちょっとラテン系の匂いがする。オケも練られていてピッツイカートで入ってくるチェロのコケッとな軽さが楽しい。

チェロ協奏曲第2番ト短調(1909)
第1楽章 即興曲-アレグロ・マ・ノントロッポ
いきなりのチェロのカンタービレ。鬱屈とした苦みから立ち上がるエルガーの仄暗い熱はないけれど、バッハの旋律のような綿密に選別された序奏部のチェロから、ヒロイックなテーマが立ち上がる。なかなか聞かせてくれます。
再現部に冒頭の歌がなかなか聴かせる。ホルンの使い方がこの人はとても上手。
第2楽章 アンダンテ・コン・モート
第3楽章 アレグロ スケルツァンド
第4楽章 アンダンテ エクスプレッシーヴォ
第5楽章 アレエグロ ・マ・ノントロッポ-マ・コン・フォーコ

切れ目のない単一楽章として聴くべきかな。ストーリィ性があって叙情的。サンプルはこれにしよう。

https://youtu.be/ejXUeLiRiQk?si=kTgOtFbeuAQZwPvY

チェロ協奏曲第3番嬰ヘ短調(1928)
最晩年死の4年前の作品。20世紀の調性音楽としてやっぱり頭抜けて圧倒的なものではないけれど、聴かせどころが随所にある。何か「難しいよ弾くには。どう、これ?」的な押し付けがましさがなくて好きですね。ヴァイオリンのように歌う。
第1楽章 アレグロ・ノントロッポ
第2楽章 アンダンテ・トランクィロ エ カンタービレ
第3楽章 アレグロ・コン スピリート

第2楽章はとてもきれい。叙景的な旋律がとても牧歌的。時折入るホルンがやっぱり美しい。通奏低音のビブラートから第3楽章のヒロイックな歌に切れ目なくつながり、胃もたれのないやっぱり軽量級のテクニシャン。巨匠的なドラマはないけれど、押しなべて質がいい。 

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