リチャード・セラとは?

1938年、アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれの彫刻家・映像作家。

サイトスペシフィックかつ、ミニマルな彫刻作品を数多く手がける。

アクションペインティング風の絵画から出発し、1966年ローマで初個展。’60年代後半はAFA「軟らかい彫刻」巡回展、「新しい媒体、新しい方法」巡回展などゴム、鉛、鉄などを素材とした重力バランスによる緊張感のある場を作品化に努める。

初期の代表作品に、「巻くto roll」「持ち上げるto lift」「裂くto tear」「はねかけるto splash」といった彫刻の素材に対し可能と考えられる動作を一覧にした『動詞のリストverb List』(1967-68)およびこれらの動作を実際に鉛やゴムといった可塑性の高い物質に対して及ぼすことによって制作された一連の彫刻作品がある。

このような制作における動作に焦点を当てた作品が大きく変化するきっかけとなったのが、美術評論家の中原佑介がコミッショナーを務めた第10回東京ビエンナーレ「人間と物質」展(1970)に出展された『環で囲む一底板(ヘクサグラム)』で、それまでの制作する作家の身体から「歩きながら観る」観者の身体の動作へと焦点が移行した。

その後、’70〜72年カナダの丘陵に巨大なコンクリート板を埋め込み、また、’80年にはセント・ジョンのローターリーに巨大な半円鉄板を設置するなど芸術的制約の排除、物質の自立表現化を推進した。

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羊文学・塩塚モエカと観る近代日本の前衛写真(後編)

東京都写真美術館では、8月21日(日)まで「アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真」が開催されています。

今回はオルタナティブ・ロックバンド「羊文学」のボーカル・ギターの塩塚モエカさんをお招きし、東京都写真美術館学芸員の藤村里美さんと展示を観ながら言葉を交わしました。

日本の前衛写真は関西から広がったと言っても過言ではないのですが、その中心はアマチュア写真家が活動していたグループでした。アマチュアと言っても、単なる趣味を超えて海外の情報をいち早く取り入れて、新しく自由な表現を追求していた写真家たちの熱量が感じられたのではないでしょうか。

後編では名古屋、福岡、東京の前衛写真を見て回ります。

※こちらはTOPMuseum Podcast「#02ゲスト・トーク|塩塚モエカ(ミュージシャン)×藤村里美(学芸員)【アヴァンガルド勃興】(後編)」のトークを編集した記事です。

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ビデオアーティストCOBRAの原点回帰「言葉で説明できないもの」

ごく普通の世間的主題や美術史を軽妙に取り入れた映像作品を多く発表しているCOBRAさん。アーティスト・ラン・スペース「XYZ collective」のディレクターとしてその名を耳にしたことがある人も多いのではないだろうか

シュールでユーモア溢れる作品は、鑑賞者をたちまちCOBRAワールドへと引きずりこむ。そのインパクトは日本を飛び越え海外にも伝播し、ニューヨークやチューリッヒのギャラリーでも展示をおこなっている。

直近ではMISAKO & ROSENで加賀美健さんとの二人展「Romantic Comedy」を開催。「アクション」「パフォーマンス」といった美術の形式を取り入れた作品を発表した。近年はアートフェアに囚われるコレクターを揶揄する作品を作るなど批評性にも磨きがかかる。そんなCOBRAさんに今後の展望を尋ねると「原点回帰」と語ってくれた。

COBRAさんの「原点」とはどこにあるのだろう。新たなスタートラインに立とうとしているCOBRAさんに、本企画モデレーターでアート コレクターの深野一朗さんが質問をぶつけた。

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世界各地で作品を制作。若き視覺藝術家 リュウ・ジーホンの現在地

日常生活や旅先での出来事を多面的にとらえ、独自の詩的感覚を織り交ぜながら物語を紡ぐ台湾出身の作家、劉致宏(リュウ・ジーホン)。

2016年には台北市立美術館が開催するTaipei Art Awardsを受賞。2020年には台北のメガギャラリー「TKG+」で個展が開催されることが決まっている。彼の作品は絵画にとどまらない。インスタレーション、映像、文字、立体など多岐に渡る。テーマごとにさまざまな素材を用いた展示を見ていると、豊かな感性は単一のメディウムだけでは表せないように思えてくる。物静かな青年はどのように制作に取り組んでいるのか。現代アート・コレクターの神田さんが話を聞いた。

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理想の滑稽さを求めてテイク40。高田冬彦のストレートな性的表現に潜む不完全性への愛

一度見たら忘れないある意味ショッキングな映像体験。宗教、神話、おとぎ話、ジェンダー、トラウマ、性、BL(ボーイズ・ラブ)など、現代社会が抱えるさまざまなテーマを表現する気鋭の若手アーティスト高田冬彦さん。

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