出光真子とは?

日本の映像作家出光真子(1940~)。石油会社出光興産の創業者、出光佐三の四女として東京で生まれる。大富豪ではあったが家父長制の強い封建的な家庭で育ち、「家」から抜け出すために大学卒業後にニューヨークへ留学。画家サム・ フランシスと結婚、カリフォルニアに住む。二児の母になった後、母親、フランシス夫人としてのアイデンティティの葛藤から表現の道を模索する。8ミリ作品を撮りはじめ、やがて本格的な映像作家活動開始。70年代初頭のウーマンリブ運動のさなか、コンシャスネス・レイジング・グループ(女性意識覚醒運動)に加わり、女性の視点で現状批判を行う独自な映像を斬新な手法で構築してゆく。初の16ミリフィルム作品『Woman's House』(1972)はロサンゼルスのウーマンズ・ハウス(*)のドキュメント。
73年、東京に移住し、16ミリで「場所」をテーマにした作品を撮り続ける。80年代、ビデオ作品を中心に『グレート・マザー』シリーズ等の日本の家庭を舞台にした作品を多数発表し、ニューヨーク近代美術館、ポンピドー・センター など多くの美術館に収蔵されている。わが国では最もキャリアの長い女性映像作家。

(*)フェミニズム・アーティストとして知られるジュディ・シカゴ (Judy Chicago) と ミリアム シャピロ(Miriam Schapiro) は1971年にカリフォルニア ・アート・インスティテュートでフェミニスト・アート・プログラムを共同で組織化。1972年にはロスアンゼルス市が取り壊そうとしていた家を借り上げウーマンズ・ハウスと称して、家屋の至る所にインスタレーションやオブジェを設置し、フェミニズムを主題としたパフォーマンスを行った。

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父から娘に引き継がれるコレクション。インタビューで、弘さんは、しばしば実業家としての顔をみせながらアート購入時のアドバイスや、現代アートが持つ力を語った。美和さんからは、ギャラリー巡りを始めたころの意外なエピソードが明かされた。

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世界各地で作品を制作。若き視覺藝術家 リュウ・ジーホンの現在地

日常生活や旅先での出来事を多面的にとらえ、独自の詩的感覚を織り交ぜながら物語を紡ぐ台湾出身の作家、劉致宏(リュウ・ジーホン)。

2016年には台北市立美術館が開催するTaipei Art Awardsを受賞。2020年には台北のメガギャラリー「TKG+」で個展が開催されることが決まっている。彼の作品は絵画にとどまらない。インスタレーション、映像、文字、立体など多岐に渡る。テーマごとにさまざまな素材を用いた展示を見ていると、豊かな感性は単一のメディウムだけでは表せないように思えてくる。物静かな青年はどのように制作に取り組んでいるのか。現代アート・コレクターの神田さんが話を聞いた。