Butzmann & Kapielski “War Pur War”

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やっと入手できました。早熟の天才Frieder Butzmann (ブリーダー・ブッツマン)と独のマルチ・アーティストThomas Kapielski(トーマス・カピールスキ)のコラボ・アルバム”War Pur War (ヴァル・プール・ヴァル)”です。Frieder Butzmannについては、以前にバイオグラフィーを書いてありますので、今回のコラボレーターThomas Kapielskiについて、ちょっと調べてみました。Kapielskiは、1951年9月生まれで、BerlinのCharlottenburg地区生まれの作家/文芸批評家/ビジュアル・アーティスト/音楽家と言う多彩な顔を持つアーティストです。彼は、1970年代には、Freie大学ベルリン校に入学して、地理学、文献学、哲学を学んで、そこから総合的芸術活動に参入します。彼は日常的な物事に潜んだ不条理や異常な側面に注目したオブジェや写真、絵画を作製しています。1980年代には、今回のコラボの相手でもあるFrieder Butzmannと知り合い、彼と共に、日常の騒音やノイズや言葉をミックスした作品を作り始めます。1981年にベルリンで行われた有名なイベントFestival Genialer Dilletantenでは、演奏の機会/時間をも与えられています。1984年には、Der bestwerliner Tunkfurmという活動家関係の雑誌を出版、その中に、Helmut HögeとSabine Vogelと共に「こんにちは、地獄へようこそ」との文章を書いてたり、アナーキスト系雑誌にも「唯一無比と開始宣言: 中くらいの損失」なる文章も寄せています。また、1988年には、「ベルリンのバーDschungelは満杯のガス室だ」との記事も書いています。1990年代には、Zeit紙やFAZ紙或いはFrankfurter Rundschau紙から本を出版しています。また、ミュンヘンのValentin-Karlstadt美術館に、彼の作品の写真・目録展を開催し、1999年度のIngeborg-Bachmann賞を受賞しています。その後も、2011年にはKassel文芸賞を、2010年には文学館賞も受賞しています。そして、彼はダダやFluxusからの流れを組み、既存の美学を洒落た気で破壊するような表現を行うマルチ・アーティストでもあり、オーバークロイツベルク鼻笛オーケストラ(Oberkreuzberger Nasenflötenorchester)も率いています。と言う訳で、Thomas Kapielskiは、どちらかと言うと音楽家と言うよりも総合芸術家みたいな人物みたいです(Wikiが独語なので訳するのツラい!)。

 と言うバックボーンを持った天才2人が、1987年に作り上げたのが、本作品”War Pur War”です。まぁ、このバックボーンを知っていれば、大体、音も想像出来ると思いますが、何処までも逸れていくミニマルエレクトロ、寸劇交じりのコラージュ工作など、Die Tödliche Dorisあたりを彷彿とさせる曲が、2曲のボーナス・トラック(B8, B9)を含んで、18曲詰め込まれています。2人の担当等の情報は記載されていないです。因みに、ジャケ写は、Thomas Kapielskiの代表作にもなっているスリッパクリーチャーとのことです。それでは、各曲について紹介していきましょう。

★A1 “Freebeer” (2:44)は、割と自由に弾いているシンセBとホワイトノイズのスネアによるアンサンブルで、前者はメロディも兼ねています。そこに変調した人声が入ってきます。
★A2 “Damit Des Ergetzens Auf Erden Kein Ende Seyn Möge” (1:25)では、加工しまくった具体音と叫び声に、シンセの電子音が渦巻き状に絡みつきます。
★A3 “Die Luftmatratze” (0:29)では、細かいシーケンスとそれに同期したシンセが、やがて異形のメロディへの昇華していく小曲です。
★A4 “Der Garagenschlager” (1:16)は、性急なリズムボックスと掻きむしられるGに変調Voが乗る曲で、何とも言えない焦燥感を感じます。
★A5 “Pavel From Prague” (0:58)は、重いホワイトノイズのスネアに様々に変調したVoと電子音の断片から成る小曲です。
★A6 “Incendio (Versione Per Danza)” (4:36)では、怪しげなシーケンスとドラムマシンが反復する中で、淡々とした変調Voが語り出し、更にディレイも掛けられます。バックにも怪しげなシンセのメロディも流れています。
★A7 “Do The VoPo” (4:25)は、A6に連続して始まり、強靭なドラムマシンと硬質なシンセBのシーケンスに、SE的な音や時に変調Voも聴取できるミニマルな曲です。後半では少しだけメロディも聴取できます。
★A8 “Zweitstimme” (0:40)は、語り口とラジオのコラージュ及びシンセのSE音から成る小曲です。
★A9 “Wunderbar” (1:46)は、微かながらもゆったりとしたゆり籠に乗せられたような曲ですが、後半にはやや盛り上がりかけます。
★B1 “Wurmberg” (4:10)は、パンを振られた石を引き摺るような音に、ひび割れた電子音が加わる、何とも不気味なリズムレスの曲です。突発性に電子音や時に少女合唱団やSEシンセ音も挿入され、最後は電子持続音へと収束します。
★B2 “Rolle Der Frau” (3:17)は、ジャズ演奏のサンプリングや電子SE音や人声が高速コラージュされた曲で、2人の宣言や微かにリズムボックスも含まれます。
★B3 “Qua Pur Qua” (0:28)は、美しいシーケンスに不定形の電子音が上下しつつ絡んでくる小曲です。
★B4 “Con Fermezza” (1:00)は、低速再生されたような既存の音楽をループにした曲ですが、これにはギミックがあるようです。
★B5 “Haacke & Gross” (3:14)は、モーターのような物音系ノイズと通奏低音から成るリズムレスな曲で、フィードバック音は段々上がっていきます。
★B6 “Kurzstück” (0:20)は、シンセ音と人声などのコラージュから成る小曲です。
★B7 “Ein Beglockendes Rauschen” (5:13)では、ショートディレイをかけたリズムマシンと単調なシンセB及びシンセのリフが骨格を成し、不定形の電子音やホワイトノイズ、または同期した新しいシーケンスなどが加わっていきます。更に、大胆なシンセのメロディも。
★B8 “Akron, Ohio” (0:41)では、チューニングのズレたアコギを掻きむしる音に、意味不明のVoやシンセ音も加わります。
★B9 “Kojote” (2:29)では、シンセによる基本メロディ(途中、ダレたりもする)と、そのバックに人声や犬の鳴き声やらが薄っすらと入っています。

 とまぁ、やりたい放題なのですが、聴く前に想像していた程の無茶苦茶さは無いように感じました。そして、一つ気付いたことがあります。個々の曲の面白さもありますが、アルバム全体としても、「サウンド・コラージュ」の様相を呈していることです。ご紹介の都合上、個々の曲の解説文も書きましたが、全体として聴いてみると、マクロでも各々の曲がコラージュされて、配置されており、A面/B面それぞれが一つの作品になっているのではないでしょうか? それから、全体的に流れる一種の「ユーモア」みたいな雰囲気があって、それが、本作品を堅苦しい音楽ではなく、柔軟で柔和な音楽にしていると思います。まぁ、この手の「ユーモア」は、NDWの多くのバンドに共通しているところから想像するに、独逸人気質なのかもしれませんね。この作品の面白さは、とにかく、アルバムを聴いてみることで初めて分かることなので、気になるリスナーさんは是非ともご購入して、堪能して下さい❗️

A7 “Do The VoPo (Panoptique Ajustement)”
https://youtu.be/KCgT7pxW66o?si=MjH3tQEFBMgVEboO

[full album]
https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_l15GOVTX4eMdBld59wWcHJqQ13TTdiiPg&si=_QK48HlMzdHgzdr5

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