DVD「暗黒街の顔役」

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 本展示アイテム収録作である『暗黒街の顔役』という作品の存在を知ったのは、1984年に本邦公開された映画『スカーフェイス』に関する映画雑誌の記事でした。そもそも本展示アイテム収録作の原題が『SCARFACE』で、『スカーフェイス』はリメイク作品なわけですが、何と言ってもブライアン・デ・パルマ監督、オリバー・ストーン脚本、アル・パシーノ主演の大作ギャング映画でしたので、そのオリジナル作品にも当然興味は湧きました。ただ、いかんせん1932年製作の作品ですので観ることは叶わないのかな、と漠然と思い込んでいたのですが、程なく見る機会に恵まれました。
 1986年の11月から12月にかけて、『東宝シネ・ルネッサンス'86』というイベント上映会が日比谷みゆき座で行われたのですが、その際『暗黒街の顔役』が『グランドホテル』との2本立てで上映されました。前段で述べたような思いがありましたので、当然観に行ったわけですが、圧倒されましたね。設定等は現代風にアレンジされていたものの基本的な筋立ては『スカーフェイス』と同じでしたが、作品的には別物という感じで、両作とも監督の個性がかなり前面に出ていたのが印象的でした。
 本作を観るまでハワード・ホークス監督というと、『三つ数えろ』や『紳士は金髪がお好き』などもあいましたが、基本的には『赤い河』『リオ・ブラボー』『ハタリ!』『エル・ドラド』『リオ・ロボ』に代表される「西部劇」「ジョン・ウェイン」に紐づけられたイメージがありましたので、若かりし頃(といっても、すでに30歳代半ばでしたが)には、こんなハードでストレートな演出をしていたのは、意外でした。もっとも、さらに程なく『赤ちゃん教育』や『ヒズ・ガール・フライデー』を観ることができ、この監督の守備範囲の広さに感服させられたのですが、それはともかく、本作で描かれたラストの銃撃戦の激しさは圧巻で、ポール・ムニ演じるトニーの最期のシーンは迫力満点でした。
 ちなみに、その過激な暴力描写や近親相姦を彷彿させる内容が問題となり、ラスト・シーンがホークスや製作のハワード・ヒューズなどの了解もなしに勝手に撮り直され、結局ホークスのオリジナル版と検閲版の両者が存在することになったのですが、私がみゆき座で観たのはオリジナル版の方でした。そして、本展示アイテムにはその両方の版が収録されています。「IVCにしては珍しくサービスしたものだ」という別の感想はあるのですが、それはともかく、一応検閲版も観たのですが、ホークスのオリジナル版の方がいいに決まっている、というのは言うまでもありません。
https://www.youtube.com/watch?v=XRmWftEjit0
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