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Bronica Nikkor-P 75mm F2.8
学生の頃に愛用していた6×6判ゼンザブロニカS2のニコン製標準レンズです。焦点距離75mm F2.8、4群5枚構成のXenotar(クセノター)型です。 『1971年版カメラ・レンズ白書』によると、画質は中心部は良くて周辺で落ちるというタイプで、絞り開放でも中心部はシャープ感があって良いのに、周辺では画質がどんどん落ちて、周辺には流れが放射方向に生じていると書かれていました。 そんなレンズですが、フルサイズで撮影すると6X6判の中心部分だけを使用するので、周辺部は全く気にせず画質の良い、美味しいところだけを使うことができます。 このレンズ、開放でお花の近接撮影をすると、背景がニョロニョロとボケるときがあって、油絵のような面白い効果が出ることに気づきました。 ただ、Xenotar型は軸上色収差の補正が完全ではなく、明るい背景では葉っぱの輪郭にカラーフリンジが出ることがありました。よく見るとボールチェーンの玉ボケの輪郭にもカラーフリンジが少し出ていることが分かります。 船の写真はF5.6まで絞って撮影したもので、開放F2.8から2段絞ると画像右下隅の階段部分までシャープな像になります。 『カメラドクター・シリーズ[第1集]、最新カメラ診断室』によると、ゼンザブロニカECの記事にこのレンズの評価が掲載されており、開放でもハロが少なく優秀なレンズとされていました。また、収差図が掲載されており、球面収差は過剰補正で、焦点距離が75mm程度の標準ンレンズとしては収差量がきわめて小さくて良い、そのためF5.6に絞ったときの焦点移動量も、測定できぬほど小さかったと書かれています。
標準レンズ(6×6判) NikonCheap Lens Officer
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TTArtisan 100mm F2.8 M42
TTArtisan(銘匠光学)製、100mm F2.8 M42マウントのトリプレット(3群3枚)レンズです。Trioplanと同様のスペックが気になり入手しました。 Meyer Optik Gorlitz Trioplan 100mm F2.8と同じ開放F値、焦点距離で、2023年8月に発売された新設計のレンズです。MTF曲線が公開されていますので、描写の目安になります。 CLOとしては珍しく、予約購入した新品のレンズです。 綺麗なバブルボケが出るところはTrioplanとほぼ同等に見えますので、オールドレンズの美味しいところが再現されていると思います。レンズのコーティングはマルチコートではありませんが、手元にある1950年代のTrioplanと比較するとコントラストが高く、現代の技術で製造されたレンズという感じです。鏡筒は金属で絞りのクリック感も良く、ヘリコイドのスムーズさも手抜きはありません。 ただし、最短撮影距離が90cmですので市販のM42マウントアダプタでは被写体にあまり寄れません。厚さ1mmのM42→NEXアダプタとM42-M42ヘリコイドリング(25-55mm)を組み合わせることで、α7Ⅱで無限遠から最短撮影距離約30cmまで撮影できるようになりました。 遠景の船を絞り開放で撮影したところ、画像中央あたりの、ピントに芯があって、わずかに滲みを伴う描写は独特の雰囲気がありました。ポートレート撮影にも相性抜群だと思います。
中望遠レンズ TTArtisan 2023年8月Cheap Lens Officer
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EL Nikkor 63mm F3.5
Nikonの引き伸ばしレンズ、EL Nikkor(エルニッコール)63mm F3.5です。 脇本善司氏設計のエルニッコール型(前群ガウス、後群オルソメター)と呼ばれる4群6枚のレンズです。脇本モデルには、63mm F3.5の他に50mm F2.8がありますが、流通量は63mmのほうがが圧倒的に少ないです。 このレンズはマイクロフィルムの撮影用として設計され、EL Nikkorのシリーズの中で最も解像力が高いレンズと言われています。また、色収差補正波長域が近紫外域まで及んでいるのはEL Nikkorシリーズの中でこのレンズだけだそうです。 1980年代はじめ頃に50mmは森征雄氏設計のガウスタイプにモデルチェンジされましたが、63mmのレンズタイプはそのままで、F2.8の少し明かるいレンズ(Nタイプ)になりました。Nタイプは樹脂部品が使われていますので、個人的には金属鏡筒の旧タイプが好みです。 イメージサークルは、マイクロ判(32mm×45mm)以下のサイズに対応しており、35mm判(24mm×36mm)フルサイズは余裕でカバーしています。 データシートによると、フランジバック55mm、マウントはL39ですので、L39→M42変換リング、M42ヘリコイドリングなどを組み合わせると、ミラーレスで無限遠が簡単に出せます。 アゲハ蝶の写真から羽根の部分を切り出した拡大画像を見ると、鱗粉が識別でき解像度の高さを実感することができます。 お花の接写用マクロレンズとしてお気に入りの1本です。
引き伸ばしレンズ NikonCheap Lens Officer
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レンズ収差論
収差論の本を集めているときに見つけた、富岡光学機械製作所の創業者である富岡正重が編集した書籍です。 はしがきに、中村清二博士のレンズ収差論の講義(口述)を収録して出版したもの(旧著)に、解説や実例を加えてた新装版として刊行したという説明があります。 球面と媒体の説明では、レンズの実例としてTessarのレンズ構成図が用いられています。 球面収差の章では、シュタインハイルのアプラナートレンズは球面収差が補正不足だが、それに比べて富岡光学製の「トリローザー80mm、F/3.5」は球面収差が完全補正されており、残存収差も非常に小さい(第27図(b))という説明があります。また、シュタインハイルのアプラナートの正弦条件曲線(第36図(a))と富岡光学製のトリローザーの正弦条件曲線(第36図(b))を比較すると、富岡光学製の方が理想に近いところまで正弦条件が満足されており優れているという記述がある。このあたりは、対抗意識満載で面白い。 色収差の章では、Carl Zeissのルドルフが設計したPlanarが紹介されており、新種ガラスを用いた明るいレンズが設計されているという説明もあります。 富岡光学製のレンズは世の中にたくさん出回っていますが、富岡光学の社長が書いた本はかなりレアだと思います。 第1章 総論 第2章 近軸光線 第3章 球面収差論 第4章 像と物体との相似 第5章 色収差 第6章 収差の数値計算法 附録Ⅰ 本文の中の式の証明 附録Ⅱ 光学公式集
1957年(昭和32年) 宗高書房 中村清二,富岡正重Cheap Lens Officer
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レンズ設計の論理
著者がオリンパスに入社して以来50年間のレンズ設計実務の総括として、ヘーゲルの論理学にならってレンズ設計の論理学を書いてみたいという思いからまとめられた本。 レンズタイプごとの特徴やレンズ発展の歴史が詳しく説明されている。 特に、レンズタイプごとの説明では、標準レンズに使われてきた代表的な単焦点レンズについて、タイプごとにアメリカ特許に基づく典型的なレンズ構成図と収差図が示されており興味深い。 同じ著者の「レンズ設計工学」と比較して、数式がほとんど使われておらず読みやすいので、趣味のレンズの本としてお薦めです。 逆に、設計実務を学びたい場合には物足りないかもしれない。 第1章 レンズ設計の論理 第2章 レンズ設計のカテゴリー 第3章 レンズシステム認識の論理 第4章 レンズシステム発展の論理 第5章 レンズシステム構成の論理 第6章 レンズシステム最適化の論理
2006年初版 東海大学出版会 中川治平Cheap Lens Officer
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球面平凸レンズをフルサイズで
ペンタックスSuper-Takumar 55mm F1.8の鏡筒へ搭載した球面平凸レンズを、フルサイズで撮影してみた。 ボールチェーンはAPS-cの時と比較して、輪郭の薄いバブルと虹色のリングが交互に見えるところが大きな違い。 画像中央から周辺へ行くほど収差起因の様々な形状が出るところはAPS-cとは違うところで、フルサイズの方が面白い。 球面1枚平面1枚のレンズなので、球面収差は補正不足どころか補正なし。 公園のすべり台の写真1枚目が絞り開放、2枚目がレンズの絞り環表記F5.6相当。 すべり台の写真3枚目は絞り環F5.6でピントを前にずらしたもの。中央すべり台あたりはピンボケ、その周囲にリング状に比較的鮮明な領域があり、その外側が放射状に流れているように見える。これ、像面湾曲の様子が写っているのではないかと想像。 黄色のキクの花は、1枚目が絞り開放、2枚目が開放と絞り環表記F2.8の中間、3枚目がF2.8で撮影。 球面収差によるソフト量が、絞ることでコントロールできますね。 花びらの輪郭に色収差によるグリーンのフリンジがちょこっと出ていますが、背景のボケ方はなめらかで良い感じです。 絞り開放時の開口直径をノギスで測ったところ約26mmでした。 レンズは絞り開口に接しており焦点距離が62mmですので、開放F値は単純計算でF2.4。 ところで、シグマ光機のリーズナブル球面平凸レンズがアマゾンで売っているのを見つけました。 今回の球面平凸レンズと良く似たスペックのレンズ(外径φ30mm ノンコート 焦点距離f=60mm)が2000円程度でした。 他の焦点距離のレンズでも気楽に遊べそうです。
ソフトフォーカスレンズ 不明 0円 ゴミ箱Cheap Lens Officer
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レンズ設計工学
「写真工業」誌、1980年10月号から1982年10月号までの25回の「最新レンズ設計講座」をもとに加筆、再構成してまとめられた書籍です。 近軸追跡、光線追跡、3次収差係数の導出、性能改善など、数式を使用して理論から実際の設計まで説明されています。 ペリスコープレンズから始まるレンズシステムの歴史や、標準レンズ、望遠レンズ、広角レンズの発展についても詳しく書かれており、レンズ好きが楽しむことができるお薦めの一冊です。 この書籍は、ニッコール千夜一夜物語「第五十五夜 Ai NIKKOR 18mm F4」で引用されています。 著者はオリンパスで光学レンズの設計に携わった後、独立して中川レンズデザイン研究所を設立された方です。 『アサヒカメラ』のニューフェース診断室のレンズテストでお馴染みだった方もいらっしゃると思います。 第1章レンズ設計のプロセス 第2章光線追跡とレンズシステムの情報 2.1 近軸追跡 2.2 ヘルムホルツ-ラグランジュの不変量 2.3 光線追跡 2.4 精密な性能評価 第3章3次収差係数とレンズシステムの情報 3.1 3次収差係数の導出 3.2 3次収差係数とレンズシステムの情報 第4章レンズシステムの構成 4.1 レンズシステムの発展 4.2 レンズシステムの特徴 4.3 レンズシステムの構成 第5章性能改善の手法 5.1 ベンディング 5.2 色収差の補正 5.3 アプラナチックレンズ 5.4 平行平面いた 5.5 ペッツバール和 5.6 ハンドメソッドと自動設計 第6章各種レンズシステムの設計 6.1 標準レンズ 6.2 望遠レンズ 6.3 広角レンズ 6.4 ズームレンズ 6.5 顕微鏡対物レンズ 6.6 非球面レンズ 6.7 プラスチックレンズ 6.8 レンズ設計と製造・公差 第7章レンズ設計の理念 7.1 レンズ設計の論理 7.2 レンズ設計の方法 7.3 設計者の主体性
光学設計(Optical Enginieering) 1986年初版 東海大学出版会 中川治平Cheap Lens Officer
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球面平凸レンズでソフトフォーカスレンズを作ろう
昔むかし、とあるゴミ箱から拾ってきた外径φ28mm、焦点距離62mm、材質BK7、ノンコートの球面平凸レンズを引き出しから探し出してきました。 1群1枚、球面がたった1枚しかない最小限のレンズで写真を撮ると、どんな描写をするのか紹介します。 部屋に転がっていた、ペンタックスのSuper-Takumar 55mm F1.8のレンズを用意して、バラしてレンズを全て取り外します。 鏡筒の手前から、絞りユニットの座面に平凸レンズの平らな面を載せ、前群レンズを抜いた筒をねじ込み、適度に芯出ししながらレンズを固定します。 最後に化粧リングを元に戻して、ハイできあがり。 外したレンズ類は、紛失しないように保管しておきます。 球面がたった1枚なので、球面収差は補正不足、色消ししていないので色収差が盛大に出ることを予想。 いつものボールチェンを被写体にして、絞りユニット開放で試写。 奥にピントを合わせると、手前に出るバブルボケが虹色になり、とってもカラフル。 次に、鏡筒の絞りリングをF11まで絞ってボールチェーンの手前側にピントを合わせて撮影。 平凸レンズと言わなければ、誰も気づかないくらいのシャープな描写になる! 白いバラを撮影してみると、絞り開放では完全なソフトフォーカス。ちょっとソフト量が強すぎ。 次に絞りF2.8の位置まで絞った場合、ふんわり適度なソフト量でいい感じ。 絞りF4まで絞ると、右側の手前にあるバラのしべが鮮明になり、真ん中のバラから左のバラへ徐々に滲みが多くなっていく。 花びらの輪郭に色収差による色づきがあまり目立たないのは意外でした。 紅葉している葉っぱは、絞りF5.6の位置まで絞ったもの。 画像周辺部は放射状に流れているものの、中央部分は葉脈が鮮明ですね。 コーティングの無いレンズなので、ちょっと深めのフードは必携です。 富士のボディ(X-S10)→(FXマウント-M42変換リング)→(M42-M42ヘリコイドリング)を間に入れると、ヘリコイドで調整することで無限遠を出すことができました。 チープなソフトフォーカスレンズのできあがり!
ソフトフォーカスレンズ 不明 0円 ゴミ箱Cheap Lens Officer
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レンズ設計―収差係数から自動設計まで
光学(Optics)の本を何冊か読んだ後、新刊書として本屋さんで見つけて即買いした本で、初めて買った光学設計(Optical Enginieering)の本です。 さすがに初学者には内容が難しく何度も読み返したのですが、例題や問題が多く掲載されており、回答も丁寧に解説されていますので、実践的な良書だと思います。 光線追跡はスネルの法則を繰り返して使うという基本から学びました。 元々ニコンのカメラ・レンズが大好きですので、著者がニコンの人というのもポイントが高く、愛着のある1冊です。 第1章光学設計概論 第2章レンズの構成 第3章近軸理論 第4章収差論Ⅰ(1次収差) 第5章収差論Ⅱ 第6章光線追跡と光線収差 第7章光学系の評価と製造公差 第8章自動設計 第9章補講Ⅰ(収差論) 第10章補講Ⅱ(評価&自動設計)
光学設計(Optical Enginieering) 1994年初版 東海大学出版会Cheap Lens Officer
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RICOH RICONAR 55mm F2.2
リコーのXRシリーズ一眼レフカメラ用のレンズで、マウントはペンタックスのKマウント(バヨネット)が採用されています。 和製ズミクロンと呼ばれている、XRリケノン50mm F2の安価なレンズと同じ時期の製造ですが、さらにスペックダウンされたチープなレンズです。 最短撮影距離も初期の50mmXRリケノンの0.45mと比較すると0.8mしかなく、かなり見劣りします。 レンズ構成は4群4枚で、面白いことに大昔の蛇腹カメラのように、前玉だけを回転させて繰り出すことでピントを合わせます。 ヘリコイドを使わないという、大胆なコストダウンですね。 前玉だけを繰り出すことで球面収差が増え、絞り開放ではソフトフォーカスになります。バラを撮影してみると、ふんわりいい感じ。 前玉を最短撮影距離まで繰り出すと球面収差が補正不足になり、ボールチェーンの1枚目の写真のように、絞り開放で前ボケにバブルボケが出ます。 試しに前玉を無限遠の位置にして、接写リングを入れて全群繰り出しで撮影すると、ボールチェーンの2枚目の写真のように、後ろ側がバブルボケになりました。 同様に、全群繰り出しで後方にピントを合わせると、手前のバブルボケは消えていしまいます。 絞り開放無限遠で球面収差は過剰補正、前玉を繰り出して最短撮影距離にすると球面収差が補正不足になるという、とても面白いレンズです。 チープなレンズですが、バラエティに富んだ描写が楽しめる、お気に入りのレンズです。
標準レンズ RICOHCheap Lens Officer
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FUJI PHOTOFILM X-FUJINON 55mm F2.2
富士フィルムのフジカAXシリーズ用バヨネットマウントのレンズです。 X-FUJINONというレンズ名称ですが、現行のXマウントとは異なります。 コーティングはEBCではなくシングルコートで、1980年版カメラ・レンズ白書で調べてみると定価9000円のチープなレンズでした。 このレンズはバブルボケで有名になっているようですが、評判どおり綺麗なバブルボケが出ますね。 画像周辺でもラグビーボール形状につぶれないところが好みです。 特に、夏場の日差しが強い時に撮影すると、バルブボケオンパレードの素敵な写真をとることがでできますのでお薦めです。 最短撮影距離が0.6mですが、掲載しているお花の写真は0.6m~0.8m程度の距離ですので、バブルボケ狙いでしたらヘリコイドリングや接写リングは不要だと思います。 一押しのチープで楽しめるレンズです。 M42マウントにも同じレンズがありますのでお好みで選べばよいですね。
標準レンズ 富士フィルムCheap Lens Officer
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TOPCON HI TOPCOR 55mm F1.8
初めて入手したトプコンのレンズです。 センサーサイズがAPS-cの富士フイルムX-S10で撮影。最短撮影距離が0.7mなので、M42ヘリコイドリングを入れて近接撮影しました。 トプコンIC-1用のレンズだそうですが、1974年版カメラ・レンズ白書で調べてみると、IC-1はフォーカルプレーンシャッターだったのですね。 レンズシャッター式一眼レフのユニレックスの後継機かと思っていたのでちょっと驚きです。 レンズ構成は4群6枚のダブルガウスで、第2群が分離していないタイプのレンズ。 生憎の曇天での試写でしたが、絞り開放でコントラスト低めながら繊細な描写をするところが気に入りました。 開放からF4に絞るとコントラストが上がり、F8まで絞るとキリッと引き締まった像になりますね。背景ボケとの対比も気持ち良いです。 バブルボケの出方も面白いレンズです。 晴れた日の撮影が楽しみです。 お気に入りの1本に追加です。 ※2023/10/22追記 風の強い日でしたが、ようやく晴れたので、絞り開放でバラを撮影してみました。 堅くなりがちな花びらの柔らかさが上手く表現されていると思います。 背景の滲み加減が絶妙ですね。
標準レンズ 光学光学Cheap Lens Officer