レンズ収差論

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収差論の本を集めているときに見つけた、富岡光学機械製作所の創業者である富岡正重が編集した書籍です。
はしがきに、中村清二博士のレンズ収差論の講義(口述)を収録して出版したもの(旧著)に、解説や実例を加えてた新装版として刊行したという説明があります。

球面と媒体の説明では、レンズの実例としてTessarのレンズ構成図が用いられています。
球面収差の章では、シュタインハイルのアプラナートレンズは球面収差が補正不足だが、それに比べて富岡光学製の「トリローザー80mm、F/3.5」は球面収差が完全補正されており、残存収差も非常に小さい(第27図(b))という説明があります。また、シュタインハイルのアプラナートの正弦条件曲線(第36図(a))と富岡光学製のトリローザーの正弦条件曲線(第36図(b))を比較すると、富岡光学製の方が理想に近いところまで正弦条件が満足されており優れているという記述がある。このあたりは、対抗意識満載で面白い。
色収差の章では、Carl Zeissのルドルフが設計したPlanarが紹介されており、新種ガラスを用いた明るいレンズが設計されているという説明もあります。

富岡光学製のレンズは世の中にたくさん出回っていますが、富岡光学の社長が書いた本はかなりレアだと思います。

第1章 総論
第2章 近軸光線
第3章 球面収差論
第4章 像と物体との相似
第5章 色収差
第6章 収差の数値計算法
附録Ⅰ 本文の中の式の証明
附録Ⅱ 光学公式集

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