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Phacops saryarcensis ?
当館所蔵の謎ファコプス頭鞍部化石です。入手ルートは確かだったのですがラベル情報が不十分でした。 種名:Phacops saryarkensis (MAXIMOVA 1968)であればカザフスタン産(採取された1989年ですと旧カザフ・ソビエト社会主義共和国)になります。残念ながらラベルのスペルが微妙に違っていました。 地層:Moscow Formationというと、アメリカNYを思い浮かべるのですが、中央アジアからヨーロッパにかけて同名の地層が存在するのでしょうか。 場所:CSSR、1989年と記載されています。旧チェコスロバキア共和国の晩年になります。チェコだと当種が採取されるカザフと異なる可能性があります。 以上を総合すると、旧ソビエト時代のどこかで見つかったファコプスの1種なのではないか、止まりです。
Devonian Moscow ? CSSR ? Phacops saryarcensis ?tatsutoy
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Calymene blumenbachii
1700年代半ばにイギリスダドリーで発見され、鉱山従事者に「出来損ないのイナゴ」と呼ばれたカリメネです。 (ちなみに1698年に見つかったOgygiocarellaはヒラメと呼ばれていました。)イギリスの古典的な種類の三葉虫化石は標本と共に膨大なストーリーが付随するので、とても好奇心が湧きます。1800年代、既に三葉虫化石はプライベートコレクターに売買されていた記録も残っており、意外にも化石を購入する事の歴史は古い様です。 また、このカリメネは現地コミュニティのシンボルにも採用され、楯のイラストの中心に鎮座しています。 https://www.heraldry-wiki.com/heraldrywiki/wiki/Dudley 当標本の前所有者はJ. Page氏。採取された時期はかなり古そうです。
Middle Silurian Wenlock limestone Dudley, West Midlands, UK Calymene blumenbachii(BRONGNIART,1817)tatsutoy
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Olenellus clarki
ロサンゼルスから東へカリフォルニア州の端にあるSan Bernardino郡モハべ砂漠にあるマーブルマウンテンには、レーサム頁岩と呼ばれる緑茶色-赤茶色の板状地層があります。ここからは初期カンブリア紀三葉虫を始め、腕足類や棘皮動物の化石が見つかります。三葉虫は部分化石がほとんどですが、面白い事にオレネルスの仲間にほぼ特化しており、Bristolia bristolensis, Bristolia insolens, Bristolia anteros, Olenellus nevadensis, Olenellus mohavensis, Olenellus fremonti, Olenellus clarki, Olenellus gilberti, Peachella iddingsiなどが見つかっています。
Lower Cambrian Latham shale Marble Mountains, California, USA Olenellus clarki(RESLER,1928)tatsutoy
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Ceraurus globulobatus
以前紹介した、Xylabion sp.と同じ産地であるカナダ、オンタリオ州ボブケイジョン層からの化石です。こちらは過去、多産しており良質な標本が多いです。現在、新規の採掘は出来ないのですが、時折古くからのコレクターさんの放出で目にする事があるのではないかと思います。特徴的な頬と尾部の棘があり、人気のある種だと思います。
Middle Ordovician Bobcaygeon Simcoe Co, Ontario, Canada Ceraurus globulobatus Bradley, 1930tatsutoy
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Acanthopyge haueri
チェコ産の異なる個体の頭部および尾部の部分化石です。もし、モロッコ産の完全体標本であれば大変貴重な種類の三葉虫化石になります。また、かつてはLichas haueriやEuarges haueriと呼ばれ、リカスの代表種です。 採取された地層について調べてみると、ベロウン近郊のKoněprusyはデボン紀中期アイフェリアン期Choteč層からファコプス、ハルぺス、ティサノペルティスなど40種類近く見つかり、モロッコデボン紀の地層に極めて近似する環境であったと伺えます。
Lower Devonian Koněprusy Kalk (石灰岩) Koněprusy, Bohemia Acanthopyge haueri (Barrande, 1846)tatsutoy
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Neogriffithides imbricatus
完全体を見る事はほぼ不可能で、画像の様に部分毎に採取した標本を酸で培出してプレパレーションが行われたものです。この三葉虫が採れる滋賀県霊仙山や多賀町権現谷は、近郊の伊吹山同様石灰岩で構成されています。ただ、三葉虫が採れる場所を目指そうとするとヒルの生息地に踏み込むため怖いです。10年ほど前に訪れた事がありますが、道路そばの転石からフズリナを見つけるのが精一杯でした。
Middle Permian ? 滋賀県犬神郡多賀町、権現谷 Neogriffithides imbricatus(KOBAYASHI&HAMADA,1980)tatsutoy
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Cummingella belisama
フランスに接するベルギー西部は石炭紀の地層が多く、詳細な研究が行われています。エノー州アントアン近郊の採石所Lemayも古くから石灰岩が採掘され、それに伴い三葉虫化石が見つかっています。当標本は新潟県でも見つかるカミンゲラの仲間になります。 参考:ベルギー鉱物学・古生物学センターのサイト http://www.cmpb.net/en/index.php
Lower Carboniferous ? Lemay, Antoing, Belgium Cummingella belisama (Hahn & Brauckmann 1985)tatsutoy
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Nephalicephalus beebei
確か裸名であったはずと思い、資料を見るとMENOMONIA SAHRATIANI new speciesとカンザス大学2011年の論文に記載されていました。 https://doi.org/10.17161/PC.1808.8543 また、Trilobite館長の収蔵品にサイズ、状態共に良い標本がございました。 https://muuseo.com/trilobites/items/359 圧縮のせいか同じ種に見えないのが困りものです。 特徴は頭部から目にかけての凹凸が少なく不明瞭、また体節が多い種になります。
Middle Cambrian Weeks Millard County,Utah,USA Nephalicephalus beebeitatsutoy
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Otarion burmeisteri
チェコで見つかるAulacopleuridの仲間の三葉虫です。かつてはプラハからベロウンにかけて細長く存在するシルル紀、Kopanina層で多産された種類だと記述されていますが、近年あまり目にする事がありません。もともとシルル紀の化石自体が、オルドビス紀やデボン紀の化石に比べて少ないので、相対的に発掘機会が低いのかもしれません。
Upper Silurian Kopanina Dlouha hora, near Beroun, Bohemia Otarion burmeisteri (Barrande 1846)tatsutoy
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Calodiscus cf. lobatus
ポーランド国境沿いのドイツ、ザクセン州ゲルリッツ郡ルートヴィッヒスドルフのカンブリア紀地層から採取されたアグノスタスと三葉虫の間に位置する、エオディスカス(部分化石)です。この産地からは複数種のエオディスカスや、Ellipsocephalidae、Holmiidaeなど、他の地域のカンブリア紀地層とよく似た三葉虫化石が見つかっています。ゲルリッツでは三葉虫は1908年に見つかっているのですが、あまり研究されてこなかった模様で、知名度が低い産地です。
Lower Cambrian Eodiscus 頁岩 Quarry 3, Nieder ludwigsdorf, Görlitz, Germany Calodiscus cf. lobatus (HALL 1847)tatsutoy
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Remopleurides deani
遊泳型三葉虫の防御態勢化石です。頭鞍部には大きな複眼の痕跡があり、視覚に優れた三葉虫とされています。 素人の私よりも参考になるリンクがあるので、以下ご参考下さい。 参考:静岡大学鈴木先生の研究グループによる、Remopleurides複眼のジャイロ機能検証と進化の裏付け https://www.sci.shizuoka.ac.jp/news/1434.html 参考:Remopleurides の分類(本標本の種名について命名者本人が解説しています) http://www.geologi.no/images/NJG_articles/NGT_62_4_231-329.pdf
Upper Ordovician Acton Scott Beds Acton Scott, Shropshire, UK Remopleurides deani (Nikolaisen 1983)tatsutoy
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Remopleurides colbi
遊泳型の三葉虫の仲間で、有名な種はロシア産のRemopleurides nanusがいます。ロシア産の標本を見る限り、尾部にはアンテナの様に張り出した一本の長い棘があったのではないかと推測します。この標本はRemopleuridesとしては大型です。また同種は北欧やアイルランドでも見つかっており、生息域が広かった三葉虫なのだと想像します。 参考:British Geological Surveyのバーチャル標本(レクトタイプ) http://www.3d-fossils.ac.uk/fossilType.cfm?typSampleId=29843
Upper Ordovician ? Corwen, North Wales, UK Remopleurides colbi (Portlock 1843)tatsutoy
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Prionocheilus vokovicensis
Pharostoma pulchrum vokovicenseとも言われるチェコのPrionocheilusです。表面が顆粒で覆われ、部分化石ながらも保存状態が良好です。ロキツァニ近郊で採取され、ノジュールの母岩です。 1000種も見つかっているボヘミアの三葉虫達は古くから研究され、この地層の丸いノジュールに収まった本種はオルドビス紀の浅瀬で暮らしていた事が判明しています。 最近の研究では消化管位置まで特定されており、チェコボヘミア三葉虫研究が脈々と今日まで続いている事に驚きます。 Geologica Acta, Vol.16, Nº 1, March 2018, 65-73 DOI: 10.1344/GeologicaActa2018.16.1.4
Middle Ordovician Šárka Formation Díly, near Rokycany, Plzeň, Bohemia Prionocheilus vokovicensis (Šnajdr, 1956)tatsutoy
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Modocia whiteleyi
Elrathiaと共にユタ州を代表する三葉虫、Modocia属は種類が多く同定が難しいです。Modocia属の種名特定を更に困難にしているのは裸名の存在です。一見、正式な学名に見えてもその実、記載事項が不十分で、学名に至っていない名前がこのModociaには多く与えられてしまっています。入手時、Modocia weeksensisだったのですが、これは裸名でした。採取地の名称が充てられおり、それっぽいのですが、どうやらM whiteleyiの模様です。 誤っていた場合はご指摘下さい。 ちなみにこの標本、両頬が後加工で母岩に貼り合わせていました。
Middle Cambrian Weeks House Range, Millard County,Utah,USA Modocia whiteleyitatsutoy
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Porterfieldia sp.
Olenidの仲間になりますが、アメリカ、New York州やその近郊のカナダで見つかる、有名なTriarthrusに近い種類だと思います。産地はSt. Davids他同様、アイリッシュ海のそばで、かつて石炭・鉱物資源で繁栄した、ウェールズ地方の地層を思い起こさせます。
Lower Ordovician Pyroclastic shales near Mathry, Dyfed, South Wales, UK Porterfieldia sp.tatsutoy