TOKEN Crown Modal.Ⅲ (国産蛇腹カメラ)

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1950年代にTOKENという日本のメーカーで製造された120ロールフィルム(撮影規格は6×6のみ)を使う蛇腹カメラです。
レンズは Seriter Anastigmat  f3.5 80mm、シャッターは珍しく無銘(最高1/200)です。
蛇腹も各種動作も正常で某オークションで800円、競争相手もいなくすんなりと落札してしまいました。

この時代は多数のカメラメーカーが乱立したおかげで小さなメーカーは歴史に埋没しがちになるのですが、TOKENもそのうちの一つでしょう。
実際にカメラ自体の情報も少なく、調べてもTOKEN と似た様な会社がいっぱいあって正体がわかりません。

ただ、ここに展示する意味としては、やはりこのカメラボディの美しさがあります。
他社蛇腹カメラは平面的なトッププレートが多い中、見ての通りCrownのそれは優美なまでの曲線美を誇っているのです。
しかもその湾曲したプレートにCrownの刻印をしているのがなかなかの鑑賞ポイントです。(平面に刻印するより手間かと…)
一見、頼りなさそうなCrownの細いフォントですが、見慣れると流れる様なプレート曲面と相まって独特の清楚で気品ある美しさを醸し出しています。

あと特徴的なのはシャッタートリガーがレンズ側やトッププレート側ではなく、タスキの横についていることです。(写真4枚目)
こんな場所にシャッタートリガーのある蛇腹カメラはあまり見かけません。
トリガーは指先が自然にかかるように緩やかに湾曲しており、手前方向に押し込むとシャッターが軽快に切れます。
しっかりボディをホールドしてトリガーを押せば、トッププレート上にトリガーがあるよりも手ブレが抑えられ、とても使い心地が良いものです。
また蛇腹を畳むと当然ながらトリガーはケース内に収納されるのでスマートなものです。

レンズやファインダー自体に特に目立った特徴がないかわり、ボディデザインや使い勝手にちょっと拘ってみたカメラだったのかもしれません。
しかしながらネット上でもなかなか当該機種を見かけることがなく(見かけるとしたら camera-wikiくらい?)、ごく少数を製造してメーカーごと消えてしまった儚いカメラだったのかもしれません。

あとModal.Ⅲ という刻印ですが、Model.Ⅲ の打ち間違いじゃないかと…
そして多分Modal.ⅡもModal.Ⅰ も存在していない様な気がします。

この時代の小規模メーカーでよくある事ですが、何となく通りの良い名前(海外輸出した時に売れそうな名前とか…)を付けたり、適当な英語(たまに間違っている)を使ったり…
こう堂々とエラー刻印しでかすの?と現代の我々は考えちゃいますが、例えば1980年代の中国時計部品メーカー製の文字盤に意味不明な(かっこいいと思える様な)文法無視の刻印があったりしたわけで、1950年代の日本の小規模メーカーでも同じことが起きていたのでは?と考えたりします。

ただ本気で「様式の」「様態の」「形式上の」という意味があるModalという英語表現を使ったのなら、それはそれで「ごめんなさい」ですが…

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