- Sekisentei Japanese Mineral Museum
- 46F 鉱山絵葉書
- 鴻之舞鉱山 青化場/北海道紋別市
鴻之舞鉱山 青化場/北海道紋別市
鴻之舞鉱山は1915年(大正4年)に発見され、1917年(大正6年)に住友総本店(後の住友金属鉱山)が買収、以後資源枯渇等により1973年(昭和48年)に閉山になるまで、累計で金72.6トン、銀1,234トンを産出したとされ、金生産量は菱刈鉱山(鹿児島県、現在も稼行中)、佐渡鉱山(新潟県、1989年(平成元年)閉山)に次ぐ日本第3位の大規模金山でした。
この絵葉書には「住友鴻之舞鉱業所 青化場「メリル」金銀沈殿装置」とあります。青化法(せいかほう)は、シアン(青酸)化合物の水溶液に金が溶けることを利用して低品位の金鉱石から金を浸出させる湿式製錬技術です。金鉱石を粉砕・加水してスラリーと呼ばれる懸濁液を作成し、このスラリーにシアン化ナトリウムやシアン化カリウムの水溶液を加え、更に酸素を供給して金を水溶性の錯体(金属と非金属の原子が結合した構造を持つ化合物)である[Au(CN)2]−に変化させます。これを濾過して得られた溶液(貴液)から真空装置により酸素を脱気したうえで、シアン酸イオンとの化学親和性の強い亜鉛粉末を加えて金を沈殿させます(このとき金鉱石に含まれる銀や銅も同時に沈殿します)。沈殿物を硫酸と混合することにより沈殿物中の亜鉛粉末を溶解除去し、更に濾過して残った物質を溶融製錬しドーレと呼ばれる延べ棒に加工し、更にこの延べ棒を分離精製して金(および銀、銅)を得ます。
絵葉書にある「メリル」とは、貴液を脱気の上、亜鉛粉末を加えて金を沈殿させ、次いで沈殿物から亜鉛を除去し金を精製する基本的なプロセスを確立し、1910年(明治43年)に特許を取得した米国の製錬技術者Charles Washington Merrill (1869年〜1956年)のことで、アコーディオン状に見えるのは貴液を得るための縦型リーフフィルターと呼ばれる濾過装置です。
