蛍石 (fluorite) 神武鉱山 #0698

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白色の母岩上に細粒の蛍石の結晶が無数に見られます。紫色の結晶が目立ちますが、よく観察すると淡緑色や透明のものも含まれています。紫外線に対する蛍光はあまり強くないようです。(背景はソフトウエア処理しています。)

神武鉱山は、この地域に見られる粗粒の黒雲母花崗岩と石灰岩の間にできたスカルン鉱床で、銅、蛍石、柘榴石等を算出しました。1904年(明治37年)頃に開発されましたが間もなく休山、その後1933年(昭和8年)頃から再稼行し、1936(昭和11)年に東京都の山口茂氏が金銀銅の試掘鉱区として鉱業権を買収し、1937年(昭和12年)に神武鉱山株式会社が設立されました。一方、同鉱山産の蛍石を目的とした土石採取権を八幡製鉄所が保有しており(蛍石は製鉄工程で溶剤として用いられる)、1938年(昭和13念)年~1939年(昭和14年)の間、八幡製鉄所の委託を受けて神武鉱山の蛍石を採掘、八幡に送鉱していました。1941年(昭和16年)に法定鉱物に追加された蛍石の採石権を神武鉱山の鉱業権に併合、1945(昭和20)年まで稼行しました。戦後1948年(昭和23年)に採掘を再開し、1954年(昭和29年)には銅鉱石の月産90トンという記録が残っています。また、蛍石の産地としても日本有数といわれ、1951年(昭和26年)~1953年(昭和28年)にかけて年間約500トンを出鉱、品位は平均30~40%、最高では70~80%に達したということです。1964年(昭和39年)に落盤事故が発生し、閉山しました。

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