ヤコブズ鉱・ばら輝石 (jacobsite/rhodonite) 濱横川鉱山 #0558

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ヤコブズ鉱は磁鉄鉱の二価鉄(Fe2+)を二価マンガン(Mn2+)で置換したもので、磁マンガン鉱とも呼ばれ、磁性があります。変成層状マンガン鉱床中、高品位マンガン鉱石中に含まれ、本標本でも観察できるように微細な結晶が集合し黒色層状を示します。ばら輝石は準輝石の一種で、他のマンガン鉱物と共に層状マンガン鉱床中に産出します。本標本ではピンク色に見える部分に当たります。(1~3枚目は背景をソフトウエア処理しています。)

濱横川鉱山は南信濃の辰野町横川上流に位置し、層状マンガン鉱床からマンガンを採掘していた鉱山です。1897年(明治30年)頃に濱勝衛が優良な二酸化マンガン鉱を発見し試掘権を登録、1910年(明治43年)に採掘鉱区を登録し、輸出向に二酸化マンガン鉱を坑夫数名で断続的に採掘したことに始まるとされます。1937年(昭和12年) に金属マンガン鉱の採掘を開始し重要鉱山に指定され、1943年(昭和18年)に重要鉱物増産法により中央電気工業が使用権を設定しました。1953年(昭和28年)8月18日には濱家、中央電気工業、福岡商会により濱横川鉱業が設立され、金属マンガン鉱月産800~1,000トン(Mn 40%,SiO2 16%)と二酸化マンガン鉱月産約10トン(MnO2 78~81%)を採掘、1976年(昭和51年)からは濱鉱業㈱が稼行しましたが、1983年(昭和58年)に閉山しました。閉山までの累計約35万トン,平均Mn品位34.5%、これは岩手県の野田玉川鉱山の累計約60万トン(Mn 33.5%)に次ぐもので、日本屈指のマンガン鉱山でした。

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