褐鉄鉱 (limonite) 諏訪鉱山 #0669

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褐鉄鉱(limonite)は鉱物学上の正式名ではなく、針鉄鉱(goethite)と鱗鉄鉱(lepidocrocite)の一方または両者の集合体です。本標本は元は組標本の一部であったものです。(1~4枚目は背景をソフトウエア処理しています。)

諏訪鉱山は北八ヶ岳火山群の北山溶岩上に鉄と硫酸イオンに富む温泉から沈澱した針鉄鉱-鉄明礬石鉱床で、温泉水中の鉄イオンが葦などイネ科の植物の根元につく鉄バクテリアによって固定され塊となって針鉄鉱が生成されたいわゆる沼鉄鉱鉱床と考えられており、一部では現在も生成中といわれています。
諏訪鉱山は古くは武田信玄がこの地で鉄鉱石を発見し、軍用に供したと言い伝えられていますが、近代では1937年(昭和12年)から1962年(昭和37年)にかけて製鉄原料となる褐鉄鉱を露天掘りした国内有数の鉱山でした。諏訪鉱山の褐鉄鉱は燐成分を多く含んでおり、製鉄過程で取り除かれた燐成分は肥料としても活用可能でした。稼行中約120万トンの褐鉄鉱を産出し、最盛期には常に2,000人以上が従事していたとされます。

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