岡山芸術交流2019

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岡山芸術交流2019
閉校した旧内山下小学校に設置された作品群は約2000年後の地球。アートディレクターのピエール・ユイグ氏によれば、永遠の命を得た一部の人類は生きる場所を探して宇宙に出で行き、残った限られた命の人類はこの学校に立て篭もる、といったコンセプト。
校門脇のプールはパメラ・ローゼンクランツ「皮膜のプール」として淡いピンクの液体で満たされ、道路を挟んだ向かいのRSK山陽放送の社屋壁面に掲げられた巨大モニターには宇宙空間の無重力状態で漂うカエルの映像ジョン・ジェラート「アフリカツメガエル(宇宙実験室)」が映し出されている。宇宙に出たカエルはもう地上のプールで泳ぐことは無いのだろうか。人類の居住を拒否するかのような砂丘を思わせるグラウンドに置かれた物体エティエンヌ・シャンボー「微積分/石」はロダンの考える人の台座部分だそうだ。思考する主を失った台座の傍にはf-MRIで撮影された被験者の脳活動を特殊処理して画像化した映像作品が上映されている。そして更にその傍には古い石碑が鎮座しており、最新テクノロジーと日本古来の文化とのコントラストが絶妙だ。今回のシンボルでもあるヘビがロボット化され周囲の音などに反応して動く。校舎内には酸素ボンベや新生児保育器などが打ち捨てられたように配置され、ここで隠遁生活をしていた人類の気配が残っている。体育館ではタレク・アトウィの音響インスタレーション「ワイルドなシンセ」がうねりを上げていた。コンセプトアートは事前の情報が無いとなかなか理解が難しく、いや今回は知っていても難解だったなぁ。特にマシュー・バーニーとピエール,ユイグの「ノンタイトル」は水性生物のいる水槽と銅メッキが施される水槽が並べられ、会期の最後にこれらを合体させる事で作品が完成するという事で、解説が無いと全く分からない。
今回最も興味深かったのは旧福岡醤油建物ので地下で経験したVR作品エヴァ・ロエストの「自動制御下」。ゴーグルを装着すると3Dスキャンされた飛行機内で眠る乗客の様子が眼前に現れる物で、初めてのVRは面白い経験だった。
その他、シネマクレールや岡山城、オリエント美術館、林原美術館、天神山文化プラザでも展示作品があり、久しぶりに岡山市カルチャーゾーンを歩き回って良い気分転換になったが、現代アートを楽しむのには体力が必要だ。

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