ハレルヤ

0

 1929年製作。『ビッグ・パレード』 の作品的・興行的大成功により、MGM社で最重要監督の1人となったキング・ヴィダー監督は、興行的なリスクを負った冒険が出来る立場になりました。その表れの一つが自ら脚本にも携わった 『群衆』 (1928年)で、平凡な市民の半生をあえて無名の俳優を起用して描いた意欲作となり、ヴィダー監督の最高傑作との評価もあります。そして、『ビッグ・パレード』から下ること4年、『剣侠時代』『ラ・ボエーム』『群衆』『活動役者』といった4作品を挟んで製作されたヴィダー監督自身初のトーキー作品で、当時としては画期的なオール黒人キャストのミュージカル映画です。
 メジャー会社では初の、これも興行的なリスクを負った試みで、難色を示した会社を説得するために、ヴィダー監督は給料の返上を申し出たといいます。もっとも、興行的にはアメリカ南部で上演反対運動が起こったり、日本でもわずか1日で上映が打ち切りとなってしまうなどのことがありましたが、作品の評価は高く、ヴィダー監督は前年の『群衆』に引き続き、2度目のアカデミー賞監督賞候補になりました。
 ただ、個人的な感想を言わせてもらうと、この主人公、直接・間接的に弟を含む3人を死に追い込み、妻にも不義理を働いたにもかかわらず、最後は証拠不十分で罪に問われず、家族にも温かく迎え入れられるというのは、御都合主義もいいところなのですが、結局何となく感動してしまい、思わず不覚をとったような気がしました。要するに、数多くのブラックの名曲、そして演出の魔術がかけられてしまったわけで、それだけでもキング・ヴィダー監督の非凡さを実感してしまうわけです。
https://www.youtube.com/watch?v=eHnmmoYRKYI
#DVD #淀川長治 #ハレルヤ #キング・ヴィダー #ニーナ・メイ・マッキニー #ダニエル・L・ハインズ 

Default