グリード
オールドファン、または多少なりとも映画のことを知っている者であれば、シュトロハイムの『グリード』なる作品が映画史上に輝く傑作の一つである、という世評は見聞きしたことはあるのでしょうが、本展示アイテムが出版された頃(1998年)は「グリード」というと、その年に公開された『ザ・グリード』という愚にもつかないモンスター海洋パニック映画の存在があり、その数年後に本展示アイテムを入手した際にそのことを他人に話した際も、『ザ・グリード』のDVDを購入したと誤解されることが何回かありました。テレビ放映されたものを断片的に観たことはありますが、作品そのものには興味がないですね。ただ、音楽が何とジェリー・ゴールドスミスなので、いずれサントラ盤は紹介したいとは思っています。あと、蛇足ですが、スターウォーズシリーズに「グリード」なるキャラクターが登場する、というのも付け加えておきますかね。
閑話休題、本題の本展示アイテム収録作『グリード』は、アメリカの生んだ自然主義作家フランク・ノリスの長編『死の谷』の映画化で、作品の舞台を19世紀から現代(1920年代)に移し変え、人間の貪欲と我欲をテーマに、サンフランシスコの無免許歯科医マクティーグとその妻の生活や本能を凄まじいリアリズムで描いた異色の力作であり、シュトロハイムの名を不滅のものにした作品ですが、DVD購入時に初めて観て、これまでこの作品についてきて語られた上記のような評価が決して大袈裟なものではなかったということが確認できたと同時に、このストーリーのどうしようもない幕切れは心に重くのしかかり、後を引きました。
とは言うものの、翻ってシュトロハイム自身の凄さ、ということになると、同じフロアの『愚かなる妻』の展示紹介文の中で述べたように、どうもピンと来ない。この2作しか観ていないことと、その片方の『愚かなる妻』がそれほど名作とは思えなかった(もちろん私見ですが)からなのでしょうが、要はこの2作でシュトロハイムに関しては「お腹いっぱい」になってしまった、というのが本音であり、この映画作家が私ごときの貧弱な知見など弾き飛ばしてしまうような偉大な存在ということなのは間違いないようです。
https://www.youtube.com/watch?v=MGjSpPgJAoA
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