MUUSEO SQUARE
トゥールビヨンは、150以上ものパーツを組み合わせて作られている、製造することが最も難しいとされている時計のうちの一つ。時計はポケットに入れたままにしたり、腕に付けて歩くなどの状態次第で、通常は重力により微妙なたわみが生じ、誤差が生まれてしまう。それを解決すべく、時計の精度をより上げるために作られたもの。このような圧迫や傾いてしまうことによってかかる「姿勢差」を消滅させるべく、機械自体を回転させ、姿勢を平準化させている。
ファンの力を結集して作った時計が話題に。実直にモノ作りの道をゆく若き時計製作師。
時計を裏から見て幸福な気持ちになるのは僕だけだろうか。いや、機械好きの多く(特に男性)は魅了されているに違いない。シースルーバックと呼ばれる裏が透ける構造になった時計を見ると、複雑に入り組んだパーツがどのように動くのか? 探求したい気持ちで心躍ってしまう。あるいは一つ一つ磨きによって手間が掛けられた微細なパーツを見て惚れ惚れしてしまうという方もいるだろう。今日お話を伺うのは、そんな時計を自らの手で作り、自らの手で磨き挙げる時計製作師の牧原大造氏。日本でも稀な“時計製作”と“時計彫金”の2足のわらじを履く職人さんだ。そもそも時計師という職業は2つの職人が存在する。一つは主に修理を行う人、そしてもう一つは時計を製作する人(一般に独立時計師という)。今回ご紹介する牧原氏は後者に近い。
機械式時計をもっと楽しむための書籍まとめ
気になる時計を「インターネットで検索」というのも手軽だが、良質な情報が凝縮された書籍や雑誌も見逃せない。時計デビューの良きナビゲートとして、また困った時のアドバイス役として頼れる存在になってくれるだろうオススメの書籍をご紹介。
幕開けを迎える中国靴 ー靴職人の成長と消費者の洗練、そして靴業界の成熟ー
無類の革製品好きであるライターのOyaが、千葉県印西市に店舗を構えるレザーショップ「LEATHER PORT」代表の井熊氏を訪ねた当企画。前編では当ショップの代表ブランド「名も無きビジネスシューズ」のディテールについてご紹介した。後編となる本稿では「LEATHER PORT」で取り扱う美しきマスターピースを制作する中国南部の靴職人について、日本、いや世界の靴マニアにとって未知の領域である中国の靴業界事情についてお届けする。中国という名の近くて巨大な「パンドラの箱」を開けてしまった井熊氏。どんな話が飛び出してくるだろうか。
機械式時計を分解!その構造を覗いてみました
時計修理の専門学校に通う時計師の卵です。この連載ではわずかな空間で広げられる“小宇宙”とも言える腕時計の世界を、自分の拙い経験の中から見えてきたことや専門家の方々にお話を伺うことで腕時計の魅力を伝えていきたいと思います。
作り手の偏愛と熱量が溢れ出る腕時計。世にも奇妙な「GEEK WATCH」のお話
「その時はやってきた」。これは、初代「Apple Watch」発売時のキャッチコピーだ。今や、老若男女がスマートフォンを握りしめ、何千何万の機能を持ち運ぶ時代が到来した。だが、そのはるか以前から腕に機能を集約するということは研究者たちの憧れであり夢だった。もっとも象徴的なプロダクトは腕時計だろう。時を計るための機能に加え、どんな機能を搭載するかという競争にメーカーは技術の粋を尽くしてきた。そんな作る側の熱量と偏愛とも呼ぶべきセンスが反映された腕時計を「ギーク・ウォッチ」と命名した男がいる。コレクターのドナルド・ムネアキ氏だ。氏は南青山にあるワタリウム美術館の地下、「on Sundays」というミュージアムショップの一角に自作のアトリエを構え、そこにずらりと腕時計を並べて販売している。その数はなんと400本以上。生産国やメーカーの垣根がなく、膨大な量のアーカイブ群から銘品を発掘するのは、並大抵の知識と労力ではできないはずだ。今回、「ギーク・ウォッチ」の背景や魅力について、ドナルド博士(敬意を込めて)に教鞭を振るっていただいた。
ビスポークシューズ
ジェイエムウエストン
パラブーツ
ミニッツリピーター
トゥールビヨン
デュプイ
メスチャネル
LEATHER PORT
リューズ
日本文化は杉とともに。針葉樹を家具に活かす
ウォルナット、マホガニー、チークと聞けば、家具を思い浮かべる人は多いはず。しかし杉と聞いた時はどうだろう。まず連想するのは、残念ながら花粉ではないだろうか。針葉樹は家具には向かない。花粉を飛散させる。どうもネガティブなイメージがつきまとう。太平洋戦争後の復興期に植えられた杉の木が、いま伐り頃を迎えている。当時、最優先課題だった住宅供給の需要に応えるべく国策として大量に植えた杉の木が、現在は上手く活用されず日本の森林管理を悩ませている。グループモノ・モノ編集の書籍『杉でつくる家具』では、肘掛け椅子、ベビーチェア、サイドテーブルなど、いずれも素朴な木肌と洗練されたデザインが融合する魅力的な家具が紹介されている。ページをめくるうちにひとつの疑問が湧いてきた。「本当に杉は家具に向かないのだろうか」東京都国立市の公団住宅の一角にある、シェア工房「クミタテ」を訪ね、同著のテキスト監修をつとめた家具デザイナーの笠原嘉人さんにお話を聞いた。
お店の内装はすべてDIY。“個人商店”の魅力を発信し続ける十条の古着屋「PEG」
北区・十条には、街の人たちから愛されている古着屋がある。お店の名前は「PEG(ペグ)」。この地に根を張り、早10年。オーナーの冨田広志さんは、古着を愛し、個人商店を愛し、そしてこの街を誰よりも愛している熱い人物だ。
第一回 はじめまして。いち素人ですが、靴を作っています。
なんとなく靴作りを始めてみた、いち素人です。この連載では、履ける靴を一足仕上げるまでをドキュメントスタイルでお伝えしていきます。靴制作の過程を見てもらう中で、靴マニアじゃなくても「なぜ、いい靴はこんなにも高いのか?」の疑問、さらには靴を愛したくなるヒミツがわかってもらえるのではないかと思います。靴の裏側(というと大げさですが)がわかると、靴を見るのが楽しくなる!(購入に至るか否かはまた別の話…) まずは、僭越ながら、私の自己紹介と靴作りの魅力をお伝えします。
小さき世界に輝く。磨きと彫りの職人技とは。
東京の閑静な住宅街の一角。『DAIZOH MAKIHARA』の表札が掛かったアパートの一室が牧原氏の工房だ。部屋の中にお邪魔すると、工具や大型の切削マシン、旋盤、図面などがずらりと取り揃えられている。ここは牧原大造氏の住居兼工房だ。改めて紹介すると牧原氏は“時計製作師”という一風変わった肩書きを名乗っている時計師だ。前回も書いたが、”時計師”という言葉を使う時、その仕事内容は2つに分けられる。1つは時計の修理を専門とする時計修理師。そしてもう一つは時計の設計や組み立てなどの製作を自らの手で行う独立時計師。牧原氏は海外から調達した時計のムーブメント(メカ部)をベースに磨きや彫りを施すことから、仕事の内容としては時計の製作、どちらかというと後者に近い。前回は彼が“時計製作師”になるまでのプロセスを紹介したが、今回は、精緻さと大胆さが求められる、そして牧原氏が最も得意とする磨きと彫りの手仕事にクローズアップしてお届けしたいと思う。