EDWARD GREEN(エドワードグリーン)。どこまでも美しいストレートチップを比較する

EDWARD GREEN(エドワードグリーン)。どこまでも美しいストレートチップを比較する_image

取材/廣瀬 文

「革靴ブランド大全」 シリーズ 1 回目。

今回は、ミューゼオ・スクエア編集長がこよなく愛するエドワードグリーン ラスト808を始め、John Lobb(ジョンロブ)、Alden(オールデン)など名ブランドのストレートチップを比較。ストレートチップはシンプルが故にちょっとした違いで大きく印象も変わるもの。シンプルだからこそ際立つ、その美しさについて語ります。

生き物のような立体感。エドワードグリーン チャーチル

MuuseoSquareイメージ
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靴が好きだ。革靴が好きだ。

人生の転機や、仕事をやりきったタイミングなどに自分へのご褒美として一足一足増えていった靴たち。

毎日着る服は、履きたい靴に合わせてコーディネートすることも多々ある。週末に靴たちを磨いて、その後、眺めているのが一番好きな時間であるほど惚れ込んでいる。

どの靴にも私なりの愛着ポイントがある。最高の一足を決めることは困難だが、この先もずっと人生を共にしたい相棒のような存在の靴がある。それがEdward Green(エドワードグリーン)のCHURCHILL(チャーチル)だ。

中央がエドワードグリーン チャーチル。側面のフォルムが左右で大きく違っているのがわかるだろうか。

中央がエドワードグリーン チャーチル。側面のフォルムが左右で大きく違っているのがわかるだろうか。

チャーチルと名前のついたこの靴の形は一般的に発売されているチャーチルとは少し違って純粋なストレートチップである。(通常、エドワードグリーンのチャーチルにはつま先部分の切り返しに飾り穴が付いている)

ストレートチップは冠婚葬祭にも使える非常にフォーマルなものとされている。カラーはブラック。誰もが一足は持っているであろう定番と言ってもいいだろう。紳士靴の中では飾りが少ない極めてシンプルな形なのだが、このエドワードグリーンのチャーチルには目を見張る「圧倒的な立体感」があるのだ。

中央がエドワードグリーン チャーチルのかかと。洋ナシのような、はたまた女性の腰部分のようなまろやかな曲線美が感じられる。

中央がエドワードグリーン チャーチルのかかと。洋ナシのような、はたまた女性の腰部分のようなまろやかな曲線美が感じられる。

それは、靴のかかと後方部分から眺めたときによくわかる。

かかとを包み込む部分。底面に向かって楕円のような曲線を描いている。そして、靴側面も足の土踏まずに沿うようにぐっと内側にカーブし、落ち込んでいるのだ。

私が感じる立体感は実際に履いてみた足の感触でも感じ取れる。まるで生き物のようなグラマラスな立体感。実際に履いてみても足にしっとり吸い付くようなはき心地。どこまでも歩いて行けそうなフィット感とホールド感がある。

脱ぐときには、その密着度故か「スポッ」という音がする。容姿と履き心地の両立を追求し、隙なく細部まで作り込まれた一足。眺めていても身につけていてもうっとりしてしまうのだ。

この美しさはいったい何が決め手なのか、エドワードグリーンの808という名作ラスト(靴を作る為の木型)なのか、使われている革のしなやかさなのかといつも思い巡らせている。

繊細な靴でもあるので、普段用というよりここぞというハレの日に着用する。

チャーチルとの好きな組み合わせの装いは、ヴィンテージのドーメルのトニック(フランス服地ブランド)ミッドナイトブルーの生地で仕立てたスリーピーススーツ。自然と背筋がスッと伸び、自分のコンディションもシーンに合うよう整ってくる感じがする。

このチャーチルという一足への好奇心と同様に、ストレートチップという形の靴への好奇心も強い。世の中にはいったいどんなストレートチップの靴があるのだろうか、一足一足の違いは何か。元となる形がシンプルであるが故に、メーカーごとの細部の違いを比べ探求してみたくなるのだ。

◆エドワードグリーンとは◆

イギリスのノースハンプトンに本拠地を置く、シューズメーカー。1890年、小さな工場で靴作りを始めたエドワード・グリーン氏の名がそのままブランド名となっている。最高級品質の革と、職人たちの熟練の技によって作り上げられた靴は、多くの靴好きたちを魅了している。

◆ストレートチップとは◆

つま先部分に一文字の切り返しがあるデザイン。切り返しにメダリオン(飾り穴)が施されたもの、されていないものがある。編集長所有のチャーチルは後者。シンプルで洗練された佇まいのあるフォーマルな靴とされる。

編集長愛用。ストレートチップの細部比較を楽しむ

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Edward Green(エドワードグリーン) CHELSEA(チェルシー)

同じエドワードグリーンでも、使っているラスト(木型)の違いででフォルムに随分変化がある。こちらはラスト202。ハネとトウの境目となる線のカーブの違いを見比べるのも楽しい。創業1930年代から変わらないスワンネックが特徴。クラッシックな印象の内ハネタイプ。インソールが深紅なのもポイント。

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Alden(オールデン)ダブルソールストレートチップ

底がダブルソールで厚く、太い縫い目がしっかりと見える。ストレートチップでありながらゴツ目の男っぽい印象のある一足。

参考記事:オールデン(Alden)、コードバンの輝きと質感に惹かれて

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John Lobb(ジョンロブ) STAFFORD(スタッフォード)

仕事でのONモードで着用するが、ジーンズと組み合わせることが多い。ハネ周りの切り替えしの線が後ろに流れ、再びUターンするようにカーブしてヒールにストンと落ちるている。一見シンプルだがとても凝ったデザイン。

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John Lobb(ジョンロブ) Vintage2002(ヴィンテージ2002)

ラスト(木型)は8000。紐を結うハネ部分が外ハネのタイプ。トウ部分のカーブした一文字がユニーク。カジュアルな装いとも相性の良い一足。

ーおわりー

公開日:2015年12月24日

更新日:2022年5月2日

Contributor Profile

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廣瀬 文

オトナかわいい女性に憧れるアラサー編集部員。憧れの女史は、石田ゆり子さまと本上まなみさま。ずぼら脱却にお茶か日舞を習ってみようかと思案中。最近気になる被写体の組み合わせは「おじさんと犬」。

終わりに

廣瀬 文_image

成松さんの愛用品といえば靴! 編集部内そして、成松さんを知る人の間では誰もが知っているといっても過言ではないほど。自他共に認める靴愛好家であります。そんな編集長に影響されてか、私も最近靴の世界について知りたい!と強く好奇心をくすぐられております。半年前は「ストレートチップ? ラスト? なにそれ?」というくらい全く知らなかったのに……。

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