嘉永四年(1851年)作 若狭瓣當箱

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嘉永四年作の瓣當箱です。幅16㎝ほどの小さなものですが、若狭塗の魅力がぎっしり詰まった傑作です。製作から170年経過していますが、滑らかな塗りは健在です。木地の厚さは3ミリほどですが、全く狂いがないのは見事としか言いようがありません。これは木の乾燥に大変な時間を掛けているということで、手間とお金をふんだんに使っている証拠でもあります。

画像4枚目から8枚目のように、蓋と各段、5つの異なった変り塗が施されています。それぞれの変り塗には風流な名称が付けられており、蓋は「玉蔓(たまかずら)」、一段目は「さざれ」、二段目は「汐干(しおかん)」、三段目は「藤縄(ふじなわ)」、四段目は「寒菊(かんぎく)」です。一段目、四段目のみにわずかに微塵貝が使われています。私の持つ若狭塗の中での最高傑作ですが、最初に出会った若狭塗がこの作品だったのが運の尽きでした(笑)。

このような華麗な変り塗が開発されたのは「天保年間」と言われています。天保から嘉永の終わりまではわずか25年程しかありませんが、この短期間で驚くべき発展を遂げています。若狭塗のひとつの完成形を見るようです。

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