雨
ジョーン・クロフォードが、その女優としてのキャリアは映画史に残るものであるということには異論はないものの、共演した他の女優の前ではその存在感に貫録負けすることがあった、という旨は、同フロアの『グランド・ホテル』の紹介文で述べました。ちなみにガルボの方がクロフォードより一つ年下なのですけれどもね。ということは、強力な共演女優の存在さえなければ、彼女の魅力が損なわれる可能性が低くなる、というのはそのとおりだと思われ、その証左の一つが『グランド・ホテル』と同年(1932年)製作の本作であり、もう一つ挙げればアカデミー賞主演女優賞を受賞した『ミルドレッド・ピアース』ということになります。
サマセット・モームの原作は1921年に執筆されましたが、その内容は皮肉に満ちたものであり、戯曲や映画(本作)の演出にも反映された、ということになっています。戯曲に関しては知る由もありませんが、少なくとも映画の方は、人間の持つ心の脆弱さ、哀れさ、そしてしたたかさも描かれており、その背景には多雨の南国の島という場面設定と、どうしようもない宗教観の押し付け的思想の二つが配されています。これらのことを踏まえて映像化したルイス・マイルストンの演出はまさに圧巻としか言いようがなく、画像のクロフォードを観てもわかるとおり、その目力は強烈で、それだけでもこの作品は観る価値があります。
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