松井みどりとは?

美術評論家。東京大学大学院英米文学博士課程満期退学、プリンストン大学より比較文学の博士号取得。国内外の美術学術誌や企画展カタログに同時代の日本や英米の現代美術の潮流や作家について論文を寄稿。多摩美術大学非常勤講師。

企画原案を手がけた「夏への扉 マイクロポップの時代」展(2007年、水戸芸術館現代美術センター)は、90年代以降の日本の現代美術を振り返る上で欠かすことのできない重要な展覧会である。タイトルの「マイクロポップ」とは松井の造語で、無名、時代遅れ、廃棄可能、断片的と言われるものに新たな用途や文脈を与え、新しい表現やコミュニケーションの場を作る芸術表現を意味している。同じく松井が企画した「ウィンター・ガーデン:日本現代美術におけるマイクロポップ的想像力の展開」展(2009年、原美術館)は国際交流基金巡回展として海外を巡回し、最近では2019年2月から6月までイスラエルのティコティン日本美術館(ハイファ)で開催されている。

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フランシス真悟は情報飽和の現代アートシーンに一石を投じる

インターネットでどんな情報だって手に入る今、作品のイメージを見ただけで“何となくわかった気”になってしまうことはないだろうか?そんな現代のアートシーンに一石を投じているのが、アーティストのフランシス真悟さん。

これまでにアメリカやヨーロッパ、日本などで個展を開催し、「抽象と形態:何処までも顕れないもの」、「レイヤー・オブ・ネイチャー」、「Emergence: Art and the Incarnation of Space」など、多様なグループ展に参加。作品はJPモルガン・チェイス・アート・コレクション、森アーツセンターなどに所蔵されている。

彼が2017年より取り組むペインティングシリーズ『Interference』は、見る角度によって色合いが変わる。光によって変化する彼の作品はその時々によって変わる鑑賞者の心を映す鏡のようだ。幼少期からアーティストの両親のもとで育ち、常に芸術とともに生きてきた彼が考える現代アートとは?現代アート・コレクターの笹川直子さんがインタビューした。

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ビデオアーティストCOBRAの原点回帰「言葉で説明できないもの」

ごく普通の世間的主題や美術史を軽妙に取り入れた映像作品を多く発表しているCOBRAさん。アーティスト・ラン・スペース「XYZ collective」のディレクターとしてその名を耳にしたことがある人も多いのではないだろうか

シュールでユーモア溢れる作品は、鑑賞者をたちまちCOBRAワールドへと引きずりこむ。そのインパクトは日本を飛び越え海外にも伝播し、ニューヨークやチューリッヒのギャラリーでも展示をおこなっている。

直近ではMISAKO & ROSENで加賀美健さんとの二人展「Romantic Comedy」を開催。「アクション」「パフォーマンス」といった美術の形式を取り入れた作品を発表した。近年はアートフェアに囚われるコレクターを揶揄する作品を作るなど批評性にも磨きがかかる。そんなCOBRAさんに今後の展望を尋ねると「原点回帰」と語ってくれた。

COBRAさんの「原点」とはどこにあるのだろう。新たなスタートラインに立とうとしているCOBRAさんに、本企画モデレーターでアート コレクターの深野一朗さんが質問をぶつけた。

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羊文学・塩塚モエカと観る近代日本の前衛写真(前編)

東京都写真美術館では、8月21日(日)まで「アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真」が開催されています。

近代日本写真史における前衛写真は、海外から伝わってきたシュルレアリスムや抽象美術の影響を受け、1930年代から1940年代までの間に全国各地のアマチュア団体を中心に勃興した写真の潮流です。活動期間が短く、またピクトリアリズム写真やリアリズム写真といった潮流の間に位置することでこれまではあまり顧みられていませんでした。しかし、ここ数年福岡や名古屋をはじめとする各地の美術館により研究が進み、海外の展覧会でも展示される機会も増えています。

今回はオルタナティブ・ロックバンド「羊文学」ボーカル・ギターの塩塚モエカさんをお招きし、東京都写真美術館学芸員の藤村里美さんと展示を観ながら言葉を交わしました。新しい表現を模索した作家の足跡を、前衛写真を塩塚さんはどのように観たのでしょうか。

※こちらはTOPMuseum Podcast「#01ゲスト・トーク|塩塚モエカ(ミュージシャン)×藤村里美(学芸員)【アヴァンガルド勃興】(前編)」のトークを編集した記事です。

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「You are what you "collect".」現代アート・コレクター深野一朗のコレクション観

現代アートは、時に読み解くことがむずかしい。現在進行形なだけに、美術史におけるはっきりとした評価が定まっていないことも多い。そんなアート作品を購入するコレクターさんは、何をみて、何を決め手にしているのだろう。

そこで現代アート・コレクターの深野一朗さんに、こんな質問をした。

‟身近な方がアート作品の購入を迷っていたら、どんなアドバイスをしますか?”

深野さんは「何もいえません」と笑った。

現代アートとの出会いから、作品購入時のチェックポイントまで、深野さんはなんでも具体的に答えてくれていたので、この反応は少し意外だった。しかし「何もいえない」の先にあったのは、あらゆるジャンルの純粋なコレクターほど、深く共感できるであろう、深野さんのコレクション観だった。

あなたなら、どんなアドバイスをしますか?あなたは、何を集めますか?