Muuseo(以下mso):最初の質問になりますが、「櫛・かんざし美術館」が開館した経緯を教えてください
櫛・かんざし美術館(以下小澤さん):20年前ぐらいになるのですが、岡崎智予さんという日本でも著名な櫛・かんざしの収集家の方がいまして、この方が45年間集められた3000点のコレクションがありました。
このコレクションを「*澤乃井ままごと屋」が全て買い取りまして、最初は蔵の中へ入れておきましたが、こういう物は出来るだけ多くの人に見てもらい、それでこそ価値があると思いました。江戸時代の物が多いので、”櫛・かんざしを通して日本の江戸時代の伝統工芸の美を再認識してもらいたい”と、こういう目的から美術館を作りまして、平成10年の4月にオープンしました。
それから16年ぐらいが経ちますね。
*(注)澤乃井ままごと屋 --- 澤乃井にある豆腐料理のお店
インタビューに答えてもらう、館長の小澤さん
mso:現在、美術館では何点ほど所有しているのですか?
小澤さん:5000点ほどになります。さらに、随時増えています。
mso:コレクションを特徴を教えてください。
小澤さん:江戸時代の名品が中心で、量より質を重視しており「何点持っているから」という事ではなく、「どういう作品が、いい状態でどれだけあるか」ということが問題だと思っています。そういう観点で江戸時代を中心とした櫛・かんざしの世界においては、名品が非常に多いと言えると思います。
江戸時代を中心に展示している第1展示室
mso:展示方法で気を使っている事はありますか?
小澤さん:当美術館は展示室が第1、第2、第3と3つありまして、時代別に展示しています。
第1展示室が江戸時代。第2展示室が明治、大正、昭和の時代。第3展示室は特別展示室と言いまして、櫛・かんざし以外の物を展示しています。
今で言うと(2014年12月取材時)、大正、昭和の子供の着物展、外国の櫛世界の展示など別のジャンルの展示をしています。
mso:青梅に美術館を作ったのはどうしてですか?
小澤さん:親会社が酒造の「澤乃井」と言いまして、「ままごと屋」という豆腐料理のお店、これは全て同じ経営でやっています。
澤乃井、ままごと屋に来て下さったお客様の滞留時間を長くしたい、もっと楽しい時間を過ごして欲しいと思っています。
ままごと屋で食事して、他に何も見る物がないのでは、つまらないですよね。
何か、もっと面白い物はないですか?と聞かれます。
そういうお客様の要望に応える為には、ままごと屋の大半である女性のお客様が「ちょっと見てみたい」「楽しそうだわ、行ってみたい」と思ってもらえる女性の装飾品を展示する美術館を作りたかったのです。
美術館内の大きな窓から見える、四季折々の風景
mso:この先、「櫛・かんざし美術館」はどうような展開を予定していますか?
小澤さん:ここで16年経ちましたけど、つい昨年までは年に4回展示替えを行っていました。季節展示という形で、春、夏、秋、冬の季節に合わせた展示をしていました。
今年の春から内容を変えまして、「櫛・かんざし」っていうのは、美術館の名前になっているので、改めて春の櫛、夏の櫛、秋の櫛、冬の櫛としなくても、櫛・かんざしが展示されているのは分かっています。それ以外に、何か面白い物はないでしょうか?との要望があり、櫛・かんざし意外の物をテーマとした企画展をやろうということになりまして、今は「はこせこ展」をやっていまして、その前は「紅板展」をやっていました。次回は「印籠展」(2014年12月取材時)をやることで櫛・かんざし以外の物の興味がある人に楽しんでもらえるようにしました。印籠でしたら男性のお客様も興味ありますので。
今後もバリエーションを増やして、いろいろなお客様に楽しんでもらえるようにしていきたいです。
mso:企画展の情報は、どこから入手できますか?
小澤さん:ぜひ、ホームページを見てください。
mso:これから初めて「櫛・かんざし美術館」に来られる方にメッセージがありましたら、お願いします。
小澤さん:年に4回入れ替えをしておりまして、その都度、櫛・かんざしの内容が変わりますし、企画展として櫛・かんざし以外の物も展示されます。
また、季節も一緒に楽しんで欲しいです。特に、美術館の窓から見える四季折々の景色を楽しんで頂きたいですね。
展示内容に関してもホームページを確認して頂いて、来て頂きたいと思います。
mso:小澤さんのお勧めの季節はいつですか?
小澤さん:個人的には新緑の頃が一番お勧めです。4月の後半から5月にかけてですね。GWの前後が一番見所です。
ーおわりー
江戸時代とても高価だった鼈甲の櫛が、最高の状態で保存されています
色とりどりの櫛。当時の女性が身につけいている姿を想像してしまいます。
櫛・かんざし美術館の外観。16年が経ったとは思えないほどの綺麗な美術館でした。
櫛かんざし美術館
櫛かんざし美術館は、故 岡崎智予さんの40年にわたるコレクションをもとに展示を開始した美術館。所蔵品は約4000点となり、髪かざりのほかに、当時の女性風俗を偲ぶ衣装、身装品、生活用品も幅広く展示し、鑑賞の奥行を深めている。
コレクションを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍
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江戸時代から昭和初期まで―、日本人の独自の感性が紡ぎ上げた装身具の歴史と文化を時代・アイテム別にたどる
終わりに
東京都青梅市にある「櫛・かんざし美術館」。
まず、一番最初に驚いたのが美術館を囲む景観でした。透明度が高い綺麗な川、木々の多さに驚きました。
美術館で展示されている櫛、かんざしを見ると、当時の職人が持っていた高い技術に加えて、櫛の図柄に日本の四季を表現するなどの、絵画的な側面も楽しめます。
展示は時代毎に分かれているので、櫛、かんざしの流行の変化なども感じることができます。
ぜひ、四季の季節も楽しめるので「櫛・かんざし美術館」に足を運んでみてください!