MUUSEO SQUARE
文/Muuseo Square編集部監修/飯野高広
型押し革、絞り革、ガラスレザー、スエードなどなど。皮から革へと変化を遂げた後、さらに加工を施すことで革のバリエーションは大きく広がってゆく。ここでは加工革について加工パターンを大きく4種に分けて紹介する。自分が持っているアイテムにはどの加工が施されているのか照らし合わせてみるのも面白い。
目次
皮から革になめす過程、もしくはなめした後に施す加工。加工の種類によって銀面側(体毛や表皮がもともとついていた外側)に施すこともあれば、床面(肉がついていた皮下組織側)に施すものもあるのだ。
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銀つき革
革の銀面をそのまま活かした加工革。革の風合いやしなやかさを残しているのが特徴。銀面を活かすということは、原皮についた虫さされの痕や、傷痕なども残ってしまう場合があり、スムースな銀つき革になれるのは元がダメージの少ない上質な原皮に限られる。誤魔化しが効きにくいので、価格も高くなる。革靴のアッパーでは「ボックスカーフ」と呼ばれるものが、その代表例。
パテントレザー
別名「エナメル」とも呼ばれるパテントレザーは、クロムなめしを施した革の表面にポリウレタン樹脂などを塗装したり、銀面を削った後に着色された塩化ビニールシートやフィルムを貼りつけたもの。コーティングによる加工で透明感のあるツヤがあり、水や汚れにも強い。また、お手入れは乾拭きするだけで輝きを取り戻すという利点があるが、一度傷や亀裂が入った場合は修復が実質不可能。湿度や温度変化に弱く型崩れをする場合もあるので、パテントレザーの革靴は保管時にシューキーパーを是非使用したい。
ガラスレザー
クロムなめしを施した革を平らなガラス板に張り付けて乾燥させ、銀面をバッフィング(サンドペーパーで磨く)したのち顔料でスプレー塗装を施したもの。バッフィングにより原皮に残った傷痕などもある程度カバーできるので、少々見た目の欠点がある皮もこの加工を通じ活用範囲を広げられる。大量生産向きの加工で、例えば学生用のローファーではよく使用される。
シュリンクレザー
なめしの過程で銀面に化学的な手法で縮みをかけた革。表面の細かなしわは、なめしの際に使用するドラムに薬剤と革を入れて回転させて作るのだが、しわ加減は結果を見ないとわからない。そのため、この加減はタンナー(なめし業者)の力量により仕上がりも大きく変わってくる。革靴ではカントリー系やカジュアルよりのデザインに使用されることが多い。
型押し革
なめしの過程で高圧加熱プレスマシンで型を押し付け作られたもの。革に付きがちな自然な細かな皺(シボ)の型押し以外にも、近年ではクロコダイルやリザードの型押しなどさまざまな模様のものが作られている。型押しはガラスレザーやパテントレザーなど既に加工を施した革にも重ねることが可能で、幅広く使用されている。「エンボスレザー」と呼ばれることもある。
絞り革
なめした革の水分を本来ならばピンと伸ばして乾かすところ、手や機械などで絞り乾燥させた革。シワやムラで独特の表情が生まれる。多くは鞄や財布などの革小物で使用されることが多い。
ベロア
革の床面(肉面)をサンドペーパーなどで摩擦し起毛させた革。スエードとの違いは、こちらは原皮がステアのような肉厚のものであること。またスエードに比べ毛足が長く、手で撫でるとよりふんわりとした感触がある。海外ではベロアはスエードと一括りにされることが多い。
スエード
革の床面(肉面)を起毛させて表面とした革。ベロアよりも毛足が短くキメも細かい。スエードの革靴は、起毛していることで撥水性が得られたり、また擦り傷なども目立ちにくくなるという利点もある。
ヌバック
スエードやベロアとは異なり、銀面に摩擦をかけて起毛させた革。スエードやベロアよりも毛足も短くさらにキメも細かい。手触りもよりなめらかな感触。もともとは、貴重な「バックスキン(牡鹿の銀面を起毛させた革)」をイメージして作られた新しい革(ニューバック)が語源となったと言われている。
オイルドレザー
なめしの過程で動物性の油分を多く加えて仕上げた革。油分が多い為、撥水性に富み、しっとりとやわらかい風合いになるのが特徴。浅い傷であれば、革の裏面から押し上げ摩擦することでカバーすることもできる。ハードで脂っぽい印象を活かしてワークブーツでよく使用される。
グローブレザー
名前の通り、野球のグローブ用として使われることの多い革。伸縮性や弾力性にも富む。革靴に使用すると甲部分の履きジワが目立ちにくいという利点もある。
ーおわりー
Series : 革靴を革の個性から知る
第3回 スエードにオイルドレザー。同じ牛革でも加工方法によってここまで変わる! (本記事)
公開日:2016年8月14日
更新日:2022年5月2日
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