昭和なんだけどおしゃれ。石油ストーブを集め続けた尾田さんが感じる「Stove & Peace」

昭和なんだけどおしゃれ。石油ストーブを集め続けた尾田さんが感じる「Stove & Peace」_image

取材・文 / 井本 貴明
写真 / 齋藤 創太

石油ストーブと宇宙船。
全く関係がなさそうな2つの言葉だが、石油ストーブの写真を眺めると、近いものを感じる。まるで、今にも石油ストーブが空に向かって飛び立つかのような錯覚になるのだ。
「スペーシー(宇宙的)な感じが好き」
そう語るコレクション・ダイバーの尾田さんは、昭和の古い石油ストーブを集め、冬の暖房器具として現在も利用をしている。25台の石油ストーブを集めた尾田さんに、石油ストーブの魅力を詳しく訪ねてみた。

コレクション・ダイバー【Collection Diver】とは、広大なモノ世界(ワールド)の奥深くに潜っていき、独自の愛をもってモノを採集する人間(ヒト)を指す。この連載は、モノに魅せられたダイバーたちをピックアップし、彼ら独自の味わいそして楽しみ方を語ってもらう。

エアコンには存在しない、石油ストーブが持つ視覚的な温かさとは。

MuuseoSquareイメージ

尾田さんと石油ストーブの最初の出会いは、幼少期。当時は、実家に”常にあるモノ”としての存在だった。大人になり、実家を出て暖房器具が必要になった尾田さんは、古い型の石油ストーブを選んだ。

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「ヤフオクで、トヨトミのムーンライター石油ストーブを購入しました。暖房器具としてファンヒーター、エアコンなどの選択肢もあったけど石油ストーブが良かった。燃えている炎によって暖かさが目で見えることで安心をする。そして、灯油が燃料なので、電気を必要とせずに外に持ち運んで利用できるのも良かった」

1台目の購入以降も、ヤフオクで石油ストーブを探し続け、ほしいものがたくさん見つかった。そして、2009年にマイホームを購入した尾田さんは、若干の置き場所が確保できたこともあり、ヤフオクで欲しかった石油ストーブを購入した。その数は、2015年末の時点で25台になる。

2011年の震災の時に力を発揮した石油ストーブ。電気に頼りすぎた現在の生活の”スキマ”を埋める。

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冬の間、3日に1回はヤフオクで気になる石油ストーブを探している尾田さんに、購入する際の基準となるポリシーを訪ねると、3つの答えが返ってきた。

1つ目は、「対流型」であること。石油ストーブを簡単に分類すると「対流型」と「反射型」がある。対流型は尾田さんのストーブを見てわかるように筒状の物が多く、熱を四方八方に放射させる。一方で反射型は四角い形状が多く、熱を後方の反射板に反射させる為、前方に熱が集中する。一般的に対流型の方が暖かく、個性があるデザインの物が多い。

2つ目は、片手で持てること。石油ストーブを持って階段を移動する機会が多いので、片手に石油ストーブ、もう片方の手にライターを持って移動できることが重要である。

3つ目は、電気を使わないこと。意外かもしれないが、石油ストーブの中には灯油燃料とは別に、電気を使って動かす物もある。電気が必要になると移動に制限が出る為、購入をしないようにしている。

3つ目のポリシーから分かるように、石油ストーブは緊急時にとても強い暖房器具である。もしも震災などで停電になっても、灯油さえあれば暖を取れるのである。そんなこともあり、尾田さんは2011年の震災直後に、支援物資として最初に購入したムーンライター石油ストーブを被災地へ送っている。

インテリアとしても映える、尾田さん自慢の石油ストーブ・コレクション

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TURM L51

「ドイツ製。スイス軍用正式ストーブ。かなり小型で普通の部屋だと全然暖かくならない・・けどかわいいので許してしまう」

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日本船燈株式会社 ニッセンIS-3

又の名をゴールドフレーム。通称フリージア。
「とにかく明るいが暖かさはまあフツー。1977年発売以来の超ロングセラーで今でも新品が売っているから凄い。7万もするけど・・車で例えるならモーガンか。一発で点火出来るし、その後芯の調節なんてしなくても炎が安定しているのはすごい。点火して火屋を下げるまでに煙が出てしまうがその後は一切匂いがしないのも優秀。欠点は・・ヤカンが置けないトップの形状。なんでだろう」

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トヨトミ レインボーRB−2

他の石油ストーブより少々小型なこちら。
「ガラス火屋が虹色に光るなんて世界で唯一トヨトミだけのアイデアです。今でもレインボーは新品で手に入るので、レトロで少し変わった石油ストーブがほしい方におすすめ。色具合はひとつひとつ微妙に違うようです」

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PERFECTION #750

左が日本製。右がアメリカ製。同じ製品でも、日本製の方が白と茶の色の境目がはっきりしている。
「1988年創業アメリカを代表するオイルヒーター。ガラスからまばゆい光を放つ。
今はもう無いはず・・だが芯は入手可能」

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内田製作所 コロナSU-D

「色合いが絶妙。すごく可愛い」

石油ストーブが作り出す、Stove and Peace な世界。

最後に、尾田さんに石油ストーブの魅力を尋ねると、「鉄の感覚」と「暖かさが見えること」だと語ってくれた。

「現在は、プラスチック製品で溢れています。便利だとは思うけど、僕は鉄が好き。あのズッシリした鉄の塊の感じと、徐々に錆びてくる感じに愛着が湧くのです。そして、石油ストーブは炎が目に見える。ファンヒーターやエアコンでは見ることのできない、暖かさを視覚的に感じられる。もっと詳しく言うと、石油ストーブごとに、炎の色も形も違う。オレンジ色の炎があったり青色の炎があったり。それぞれの個性を感じることができる」

尾田さんと石油ストーブの関係は、冬の間、親密になる。

点火した石油ストーブは数分後に、部屋を暖かくしてくれる。そして、石油ストーブの上に置かれたヤカンからゆらゆらと立ち上る湯気。それを見つめるゆっくりとした時間の流れ。自宅で飼っている二匹の猫は、石油ストーブが暖かくなると自然に集まってきて、背中を丸くして気持ちよさそうに寝るのだ。その空間では、誰もが不思議と肩の力が抜けてくるから不思議である。

昭和の時代では、どこの家でも見られた日常的な風景かもしれないが、そこには「平和」を感じさせる何かがあるのだ。

ーおわりー

MuuseoSquareイメージ

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尾田さんの家での日常風景。
石油ストーブを点けると、自然と猫が寄ってきます。可愛い!

石油ストーブが作り出す青い炎。眺めると気持ちよくなります

石油ストーブが作り出す青い炎。眺めると気持ちよくなります

各石油ストーブの違いを分かりやすく説明しくれました

各石油ストーブの違いを分かりやすく説明しくれました

尾田さんの石油ストーブの炎を見ていると落ち着きますね。

コレクションを一層楽しむために。編集部おすすめの書籍

シンプルでミニマルな生活のお手本がここにある!!

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昭和なくらし方 (らんぷの本)

電気に頼らない、捨てない・買わない。始末よく、人を育てるくらし!シンプルでミニマムな毎日の原点を、昭和のくらし博物館長が伝授

昭和30年代は史上、もっともくらしが充実した時代だった。

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くらしの昭和史 昭和のくらし博物館から (朝日選書)

昭和以後普及したちゃぶ台を囲んで、一家団欒が満面開花する。
戦争中のもんぺ着用、戦後の衣服払底を画期に、キモノから洋服への衣服革命が進行したのも昭和20~30年代半ばであった。
また明治以来の西洋医学が一般家庭に普及し、吸入器や注射器を常備するなど、家庭看護がハイレベルで浸透したのも、結核はじめ伝染病の根治が可能となる直前の、この時代のことであった。
著者が館長をつとめる「昭和の暮らし博物館」では、17年に及ぶ企画展示でくらしの変化とその要因を詳細に検証してきた。
その成果をまとめ、戦争、敗戦から経済成長による奇跡の発展を遂げた昭和史の変化と画期を、鮮やかに描き出す。

公開日:2016年2月27日

更新日:2022年1月13日

Contributor Profile

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井本 貴明

いろいろなWebサービス作っています。 浦和レッズ、ヨーロッパサッカー中心の生活。 何か面白い企画があったら、ぜひ仲間に入れてください! 好きな映画は、「LOST IN TRANSLATION」。

終わりに

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懐かしい、石油ストーブ。
僕が通っていた小学校で使っていた石油ストーブは単純なデザインでしたが、世界中には素敵なデザインの石油ストーブが数多く存在することに驚きました。あの頃に、こんな素敵なデザインの石油ストーブが小学校に置かれていたら、もっと感性が豊かな人間になっていたかも?と考えてしまいます。。。
尾田さんが語っていた「暖かさが視覚的に感じられる」という言葉が印象的でしたね。身の回りでは、たくさんの物がデジタルに切り替わり便利になったけど、視覚的に”物”を感じられる事って、大事だなーと感じた取材でした!

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