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角川書店 角川文庫 蠟面博士
昭和五十四年六月二十五日 初版発行
発行所 株式会社角川書店
昭和29年(1954年)に雑誌「おもしろブック」に連載された横溝正史の長編小説「蠟面博士」。
“探偵小僧”のあだ名を持つ新日報社の給仕、御子柴進少年が社用で有楽町から日比谷の方角へ自転車を走らせていると、2台のトラックの衝突事故に遭遇した。片方のトラックから、積んでいた大きな木箱が落ちてきたが、その中には女の蠟人形が入っていた。そして、木箱が弾き飛ばされた拍子に蠟人形の手首の後ろが剥げ落ち、その下から何と紫色をした本物の女の手首が現れた。この事件こそ、のちに世間を驚かせた、蠟面博士の奇怪な蠟人形事件の始まりであった...
横溝正史が少年少女向けに書いたものを、山村正夫が編集構成したジュヴナイル作品ですね。ジュヴナイルの探偵小説には怪盗や怪人といった悪役キャラクターが欠かせませんが、本作に登場する蠟面博士は、その中でも極めて異質で、死体を蠟人形に仕立て上げるという何ともアブノーマルな犯罪者。それは江戸川乱歩の「蜘蛛男」や横溝正史の「幽霊男」といった大人向けの通俗ミステリーにも通じる猟奇的な世界観の物語で、他のジュヴナイル作品には無い、刺激に満ち溢れていました。ただ、この山村正夫編集版の「蠟面博士」、元々は三津木俊助が探偵役だったものを金田一耕助に改変したものであり、今読み返すと、真犯人との対比という意味でもオリジナルのままのほうが良かったのではないか、と思いますね。本書には表題作の他に「黒薔薇荘の秘密」「燈台島の怪」「謎のルビー」の短編3編が併録されています。いずれも少年少女向け雑誌に掲載されたものですが、個人的には金田一耕助とその助手の立花滋少年が活躍する「燈台島の怪」が面白かったです。角川文庫には昭和54年(1979年)に収録されました。
画像は昭和54年(1979年)に角川書店より刊行された「角川文庫 蠟面博士」です。蝋細工のお面のような顔をした奇妙な人物と美女の蠟人形。まさに蠟面博士と、彼が死体で作り上げた蠟人形を描いた表紙画ですね。蠟人形のあちこちに見られる“ひび割れ”が何ともいえない悍ましさを醸し出しています。
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