LP初期のジャケット その7 デニス・ブレインのブリテン

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ブリテンのセレナーデ(テノール、ホルンと弦楽合奏のための)です。

この曲はホルン奏者デニス・ブレインの依頼によって書かれたもので、初演を行ったデニスとテノールのピーター・ビアースに献呈されています。
このレコードのソリストも初演を行った2人によるものです。
発売日は判りませんが、録音は1953年11月25日〜27日に行われました。

全部で8曲からなる歌曲ですが、プロローグとエピローグは無伴奏ホルン・ソロとなっており、しかもF管でヴァルブ操作なしで演奏するよう指示されています。つまり、Fのナチュラル・ホルンを吹くのと同じことになります。これはデニスのアイディアだったようですが、自然倍音のみを使い、更には平均律から外れる音程も含まれています。初演時にはこの意図を正しく理解しない批評家が「音程が悪い」といった的外れなコメントを書いたりしていたようです。
その他の歌曲部分でのホルンは現代の一般的な奏法によりますが、音域の広さ(特に最高音部での完璧なコントロール)や急速なパーセッージ等、極めて難易度の高いものになっています。デニスとの共同ワークがなければ、書かれることはなかったと思います。

以前アップしたモーツァルトのホルン協奏曲集の演奏も、一般の音楽ファンを喜ばせたことはもちろんですが、同業者にとってとてつもない刺激になったことでしょう。(ホルン演奏は難しいからこの位でで勘弁して、といった甘えが通用しなくなる)
更に作曲家も「ホルンでそういうことが出来るのか」と啓発され、創作意欲を掻き立てられることになります。このブリテンのセレナードも、そうして創られた1曲です。

並外れた演奏家の出現が演奏技術全体のレベル・アップに貢献し、更に優れた新作を実り豊かなものにしてくれる、デニス・ブレインというホルン奏者は正にそのような存在だったわけです。

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